最期の一行 詩✳︎俳句

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2024.01.21
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深碧に滲む世界

その中心に
一本の大樹がある

冷たい雨粒を受けとめて
微かに震える

一枚の葉は

一つの国かもしれない
一軒の家かもしれない
一個のわたしかもしれない

向こうの枝で揺れているのは
あなたかもしれない

かつては
小さな一本の双葉だった
けれど いま
どうしてこんなに遠いのだろう

鳥が囁く
鳥が囁かない

虫が来る
虫が来ない

光があたる
光があたらない

時が流れる早ささえ きっと

パタ
パタ
パタ

ヘリコプターのプロペラ音が
のどかに響く昼の空

太く張られた根元から
今朝の雨を静かに吸いあげる

それぞれが違う形をした葉脈は
それぞれの月の色へと透けてゆく
互いの遠さを見つめながら

同じ雨に満たされて

病葉のざりりとした穴の向こう
陽が沈む

重たげな雲を
光で縁取りがら沈んでゆく

その残光を閉じこめて
どろりと滲む樹液
これはいったい誰の傷だろう

誰かの傷を
痛いと感じる不思議

時の重さに
揺れる
すべての葉はゆりかご

ささめく寝息がいつか
ひとつに重なるときを待って
待ちつづけて

諦めのように散り
希望のように芽吹く

繰り返される
命の満ち引き

樹洞のなかへ
さみしい風を眠らせて

降りくる夜のとばり
よりも濃く深い大樹の影に
包み込みこまれた地上で

いつか
あなたとわたしは溶けあう
わたしたちは溶けあう

無数の星々だけが
青く目醒めている夜に






◆いただいた評◆
きれいな叙景と情感で、秋さんワールドに浸ってるだけで、もう気持ちいいってものがあるので、そこでまず評価は立つのですが。

この詩はね、ちょっと主人公が輻輳してるんですよね。そこがスッキリしないところでして。詩においては主従関係はハッキリした方がいいのですよ。主役が二人になると、混乱して、足を引っ張り合うというか、マイナス効果になるのです。
何回も読み返したんですが、この詩はやっぱり大樹そのものが主人公だと思うのです。描かれた詩行のボリューム感から言っても、絶対そうだと思う。大樹はのち、世界そのものであったり、命の根源の宇宙にも喩えられてきます。これら、大樹というものへの考察表現や叙景が、この詩のまずもっての読みどころです。あくまで大樹を主役として読んだほうが、この詩はスッキリします。
しかしその観点に立った時、邪魔をする者があるのです。

 かつては

 わたしたち いま
 どうしてこんなに遠いのだろう

この連ですね。これが、主役級の重い意味をもった連なので、この連の登場で、意識が「わたしとあなた」の関係性の方に向いてしまうのです。しかしながら、これを主役で読もうとすると、次にこの人称が登場するのは、後ろから2連目しかなくって、その間の伏線が途中でぶっつり切れてしまっているので、ストーリーが立ってなくて「わたしとあなた」を追うと混乱してしまいます。
ですので「わたしとあなた」を混ぜたいのはわかるが、「主従」の「従」に徹すべき(脇役案件に徹すべき)、というのが私の意見です。上記の主役級に見える連は、これだけ見ると魅力的な連ではありますが、別の方向性に引っ張っちゃっていく連なので、あとのことを考えずに不用意に入れてはいけない連というか、削除したほうが、詩全体のためにはいいと考えます。







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最終更新日  2024.01.21 07:05:41
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