ここで重要なことを書き忘れていた。C2から一人で下山していた時、無線でHimex隊のガイドShinjiさんが日本語で興奮気味に告げているのが聞こえた。「総撤退が決まりました!。総撤退が決まりました!」 総撤退?一体何の話?
BCに帰還した午後、石川直樹くんの訪問があった。Himex隊はエベレスト、ローツェ、ヌプツエのすべてのルートから撤退し、明日下山しますとの報告にわざわざ来てくれたのだった。びっくり仰天、晴天の霹靂とはこのこと。まだ5月6日で登頂シーズンはこれからである。三脚持参の彼に「いい写真が撮れましたか?」と言うと「高い所まで行ってないから・・・」と彼は悔しさをにじませていた。


いつ会っても凛々しい石川くん ラッセル・プライスご自慢のホワイト・ポッド 中にはバーとシアターがあるということだが、そこまで入ったことがない
今年の山の状況は20年に一度と言われる悪さでアイスフォールも例年になく不安定、雪が少ないためローツェは岩肌丸出しでそこから落石がひんぴんとある。このためHimex隊のシェルパが重症を負ったり死んだりしている。アイスフォールに落ちて死亡したシェルパも何人かいる。そしてHimex隊の優秀なシェルパ達ですらこのような状況で活動するのは危険すぎるとしてフィックスロープを上に伸ばさない。
フィックスロープはHimex隊だけが張るわけではなく他の隊からも出るわけだが、主になるのはやはりHimexのシェルパというのがここ数年の流れである。彼らの働きによって例年5月1日頃にはエベレスト山頂までフィックスロープが完成し、一般登山者は登頂可能になっていたのだった。
しかし今年はこのような状況で5月6日になってもC3あたりまでしかフィックスは張られていないという。この状況でラッセル・プライスは総撤退を決断して下山していくとすると誰がフィックスを山頂まで張るのか?
予期しない大問題が浮かび上がってきた。
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