夢みるきのこ

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2005年02月20日
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 図書館が長い間閲覧のない図書の放出を来園者にプレゼントするシステムがはじまってすでに一年余り経ったように感じている。書物は読み手がいなければ単なる紙くずでしかないことがニュータウンの片隅で現実化しているのだ。この10年の間に世の中はめまぐるしく変わったが、ひとりの読者のために語り継がれる書物の存在価値がまったく無化されてしまったということだ。あらかじめマスメディアによって洗脳された上での民主的とか、大衆の名のもとに行われる魔女狩りにも似た現象がまかり通っているように思えてならない。
今日も垂涎の的であった書物が無造作に持ち帰り自由の棚に並べられていた。毎日でも通い、持ち帰りたいような書物がずらりと並んでいるのは本好きにはこたえられない。
種村季弘「黒い錬金術」、丸山健二の短編集「台風見物」、奥本大三郎のエッセイ集「考えるごきぶり」、海野弘の「ざわめく町のシンフォニー」、高山宏の「世紀末異貌」、歌舞伎女形・歌右衛門を通して近代を論じきった渡辺保の「女形の運命」、これらはマス・トレンドから支流やワンドに流入した書物とはいえまだまだ生命力のあるものだ。しかし、わたしがドキドキしながら手にした書物は、木地師の歴史を辿った力作・菅野新一編著の「こけしのふるさと」、同じく土橋慶三の「こけしの旅」、そして樺太アイヌの強制移住の記録・樺太アイヌ史研究会編の「対雁の碑」。これらはたった一人の語り部的存在をつくるためにこそ書かれたものだが、粗大ゴミ化したということだ。なかなか訪れる機会がつくれない図書館訪問だが、たまさかおとずれると鼻血が出るほどの興奮を覚えるのだ。しかし、それは同時に、こうした人々から忘れられていく書物に胸きゅん状態になる私という存在をどう考えればよいのかしみじみ考えさせられる瞬間でもある。とってもうれしいけれどなかなか複雑な思いの交錯するプレゼントなのである。





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最終更新日  2005年02月20日 23時02分07秒
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