A65-2. 証拠収集の重要性
早期に事実の裏付けなる証拠を確保しておくこともとても重要なことです。法的な紛争では、後にその元となる事実関係が争いになる場合が少なくありません。どのような事実があったのかについて、その裏付けとなる証拠をそろえておかなければ事実自体が認められないことがあります。事件に関連しそうなものはできるだけ保管を心がけてください。
例えば残業代や賃金の未払いのケースであれば、出勤日及び出退勤の時間の記録が重要な証拠になります。具体的には職場に置いてあるタイムカードや出勤簿などがその証拠となりますが、後日紛争が表面化した際に使用者によって改ざんされたり破棄されたりするおそれがあります。原則としてこれら職場の証拠書類を勝手に持ち出すことは許されませんので、内容を書き留めておいたりデジタルカメラで撮影しておくことが考えられます。
解雇のケースでは会社側が解雇の理由を何と言って説明していたかが問題となり、また退職強要のケースでは労働者の自発的な退職なのか使用者からの圧力があったのかが問題となります。その場合使用者と労働者の間のやりとりについて言った言わないの争いになることが多く、証拠がなければやりとりがあったとは認められにくいものです。重要な話し合いについては直接ICレコーダーで録音をしておくとか、話し合いの後にやりとりの内容をメールや文書で確認しておくなど証拠化を心がけてください。解雇や退職強要に対して何も反論せずに長期間放置してしまうと解雇や退職を認めているものと受け止められ、その後にアクションを起こすのが難しくなってしまうことがあります。内容証明郵便という発信内容の記録が残る郵便で、早期に解雇の撤回を求めたり、退職強要により退職届提出を余儀なくされた事実を勤務先に対して通知しておくことが必要です。
暴行や労災のケースでは、傷害を負った場合に医師にかかるまでもないと思われる程度のものであったとしても必ず医療機関を受診してください。また医師には傷害を負うに至った経緯なども説明してください。その事実は診療記録に残り、後日証拠とすることができるからです。
セクハラやパワハラのケースでは客観的な証拠が揃いにくいものですが、ご自身で作成した記録も証拠となります。日記や手帳を証拠として出すことが可能ですので記録を心がけてください。後から都合よく作成したのではないかと言われそうな場合、事実の経緯を記載した文書を公証役場に持って行って確定日付を付与してもらえば、少なくとも確定日付より前に作成した書面であることは爭われません。メールのやりとりは貴重な証拠になることが多いので、証拠になりそうなメールは消去せず保護しておき画面を写真で撮影しておくことも有用です。セクハラやパワハラ行為によって心身にダメージを受けた場合には、必ず医療機関を受診してください。
Q70. 非正規労働者の組合 2014.02.02
Q70. 非正規労働者の組合 2014.02.01
Q69. 労働組合とは 2014.01.31