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うずくまる私に、2人は駆け寄り
「大丈夫!?」と言うが、
たんなる腹痛とは、感じが違うのだ。
鉄棒から落ちた時は、たしかに激痛だった。
しばらく、立ち上がることも出来ずに
2人に抱えられながら、とりあえず保健室に連れて行ってもらった。
保健室の先生はもう60歳は越えている女の先生で
私は、2年になって保険委員になっていたので
この先生とは、よく知る仲だった。
「あら~~。どうしたの?まりちゃん!」
のんき顔の先生に少々ムカッと来たが、
先生にとっては、毎日の事、
いちいち驚いてはいられない。
いくつか質問をされ、先生は深刻な顔に。
「たぶんね~、「おめでた」だわね。」
そばにいた二人は、「え~うそ。。。」と
うしろづたり。
冗談じゃない。私は、思い当たる節がない!!
教室で、男子と同じ空気を吸っているだけで、
妊娠するというのか!!
その時、先生は笑い出した。。。
「冗談やから!
おめでたゆうても、そっちとちごて、ほら!」
先生がそういうと、2人はすぐさまわかったようで、
笑い出した。
私は、何のことかわからず、ポケーっといていた。
「菊乃ちゃんは、いつだった?」
「私は、小6!」
「マリちゃん、おそ!」
そんなやり取りを聞いていて、初めてそれが「生理」だと気付いた。
でも、まだ何も出てきていない。
先生の間違いじゃ、、、。
そう思ったが、お腹は次第に鈍痛に変わっていった。
そして、それは当たりだった。
家に帰って、それを母に言うと、
「あんたも、もう立派な大人やな。
今日は、赤飯やな~!」
と上機嫌。
小さい頃から、早く大きくなれと言い続けてきた母。
これで、大人なったと思ったのだろうか、
なんだかテンションハイだ。
ついで、父の耳にもすぐさま入り、
「そうか!マリもこれでいっちょ前の女っちゅうわけやな!
お前、これからは誰にでも足開いたらあかんぞ!
なんせ、メスっちゅーのはすぐ妊娠するからな!わっはっは~!!」
なんちゅうー、お祝いの言葉や。。。
完全に、二人は私の生理ばなしで盛り上がっている。
「うちは、俺以外、全員女や!!ボクシングの相手にもならん。
おまけに犬と猫までメスや!」
と父が言い、母が「ほんまやな~」と言って笑う。
あぁ、あけすけと言うか、開かれすぎた家族。。。
娘の思春期をおもんばかる優しさは、ないのか。
とにかく、散々笑いものにされながら、私は腹痛に耐えた。
どうやら、生理通がきつかったらしい。
しかし、肝心の赤飯はいつまでも出てこなかった。
ちょうどその頃、菊野ちゃんと私が何かで遅れ、
体育の授業に出るため急いで着替えていたときの事。
もう誰もいないと思って、適当なかっこで着替えていたのに、
後ろのドアが「ガラッ」と開いた。
とっさに、二人で「キャー!!」と言って、しゃがんだが
後ろを見ると、浅田だった。
こやつ、わざとか?にらんでみたが、
すぐさま「あっゴメン」と言ったので
ホッとしたら、ドアの閉め際に「純情!!」
といって笑いながら、走っていった。
二人で、「なんやあれ?」といっていたが、
私は、その一瞬に1年生の時とは
なんだか違う目をしている浅田を見た。
そして私も、もうガキではないんだと思った。
その頃、私は好きな子がクラスに出来た。
背が高くて、面長でかっこいい子だった。
もちろん、告白も何も出来ず、しかし学校に行くのが余計に楽しくなった。
いつも3人、一緒。。。
お弁当も、3人。
好きな人を言い合って、キャーキャー言って、
たまに他のクラスに移動する時、
例の不良達と会ってしまうことはあるけど、
もう、どってことない。
私は、初めて中学校が楽しいと感じ始めていた。
夏休みが、近付いていた。
今年の夏休みは、去年と違って楽しいはず、
そう思っていたが、現実は違った。
家でまた問題が出始めた。
父が、仕事に失敗し、また職を変えるという。
母は、もちろんまたヒステリックになっていく。
もう、いくつ目だろうか。
父の仕事が変わるのは。
今度は、自分でシロアリを駆除する仕事をするという。
いろんな本を読んで、高い機材を買い集めている。
いくら説明しても、母は不機嫌だ。
いつまで続くやら。。。そう思っているのだろう。
夏休みが、始まるや否や、
父が自分の仕事について来いという。
「社会勉強だ」というのが、言い訳らしい。
やっと友達も出来、楽しいはずの夏休みが
父との、仕事で毎日つぶれた。
シロアリの仕事は、体力勝負だ。
夏は、一番シロアリが出てくる時期。
宣伝上手なのか、父はほぼ素人なのに
毎日、毎日仕事が入る。
午前中に、お客さんの家の辺りまで行き、
そこで軽トラックの荷台にある機材をセットする。
薬剤は、とてもきつく、父の手は見る間に荒れていった。
父は、全身白い防護スーツをかぶり、家の床下に
どんどん入ってゆく。
炎天下の中、私は父の支持があるまで待つ。
ホースが、どんどん入ってゆくので、それが絡まないように
回して送ったり、床下から父が何か叫ぶたびに
物を探して持って行く。
一度、潜ったら2時間は出てこない。
熱くて死にそうだが、もっと熱い床下に入っている父のことを考えると
文句は言えない。
あの熱がりの父が、炎天下の中、
どれだけ苦しい思いをしているだろう。
夕方、ようやく終えると父は、薬剤がかかって真っ白になっている。
吸い込んだら体にも、相当悪いだろう。
だって、あのしぶといシロアリを殺すほどの薬剤を
長い間、壁に吹き付けるのだから。
でも、終わって帰るときお客さんは喜んでいた。
何処も込み合っていて、すぐ来てくれるのは
おたく位だったと、、、。
そりゃそうだろう。
お店もなく、宣伝もなく
つい最近まで、デスクワークだった父が、
まるでこの道何年?というプロの顔で、説明しているのだ。
器用というか、すごいというか。
しかし、母は一度も父の仕事には来なかった。
父が誘わなかったわけではない。
淋しがりの父だから、たとえ役に立たなくても
来て欲しいのは、私にもわかる。
「私は、そんなんようせんわ~」
そういうことで、毎日私が行く事になる。
今まで、父には怒られた思い出しかなく、
家を省みず、浮気を繰り返す父が
どう考えても好きじゃなかったのに、
朝、父が「マリは今日はどうする」と聞かれると、
「やめとく」とはなかなか言えない。
どうしようか悩んでいると、一人で出て行く用意をしている父のうしろ姿が
やけに淋しく見える。
「やっぱり、行く。」
そう返事しても、父はいつも別にどっちでもいいという顔で
「そうか。」と言うだけだった。
仕事が終わると、二人ともクタクタだった。
帰り道、もう日も暮れてお腹が空いたし、どうせ家に帰っても
ろくなものがないからと、食べて帰る事になる。
二人で、お好み焼きを食べていると、
父が疲れているのが、わかる。
あぁ、男って父親って大変だな~っと思った。
今まで、好き勝手に生きてきた
父だったけど
私は初めて、父らしい顔を見た気がした。
お金は、なくてもずっとこんな真面目な父がいいと思った。
お金がないほうが、いいと思った。
お金がない時は、父が夜、家にいることが多い。
そうなると、母の機嫌がいい。
お金がある時は、父だけ裕福で
母と私は、何も変わらない。
貧乏な方がいい。
その方が、あったかい。
しかし、貧乏はそんな生易しいものではなかった。
つづく。。。
私の人生 no55 悪魔の手紙 2007年09月24日 コメント(6)
私の人生 no54 父の横暴 2007年09月19日 コメント(4)