Atelier Mashenka

Atelier Mashenka

2006.02.25
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カテゴリ: アート

洋画&工芸編です。


日本の洋画もひとり1品ずつ、いいものが揃っていて、
まるでケーキバイキングに来ているような気持ちになる。


松本峻介「都会」、赤や青や緑などの色に
黒の線で女や疲れたような男や、街並み(なぜか馬まで)などが
重なりあって描かれている。
情景の重なりは心象風景をあらわしているようだ。
シャガールと共通するものを感じる。

7~8年くらい前に松本峻介の展覧会を見に行ったときは、
こうした都会のシリーズもよかったが、
黒のみで描かれた川や橋、工場などのスケッチが非常に印象的だった。
センスを感じ、ジェラシーを感じたものだった。


佐伯祐三「リュクサンブール公園」、秋の情景だろうか。
茶や黒やさまざまな色が勢いよく煩雑にこすりつけられており、
しかし離れてみると、それは木々の立ち並ぶパリの公園だし、
華奢な脚で闊歩するパリジェンヌたち、ベンチにくつろぐ夫婦、なのだ。
ちょっと茶が陰鬱なトーンに見える。死の前年の作品。


古賀春江「白い貝殻」、遠くでこれが目に入ったときには
東郷青児?かと思ってしまった。
昨年見た 「超現実派の散歩」 とちょっと雰囲気が似てて。
近くで見ると、また違った独特の味わい。
嫌いではないが、まだよく良さが私には入ってこない。


林 武「富士」、彩度の低い青灰色の空に突き出た富士、
富士は、紅というより強烈な紅紫─まるで赤キャベツの葉の色─で
すそには黄と黒と緑のどよどよ塗りたくってある樹海、
絵の具がつややかにそのまま盛り上がり、
非常に扇情的でインパクトがあるが、
人はこの絵の前にあまり立ち止まらない。
毒のある絵、なのだろう。


逆に、洋画で人だかりしているのは、
岸田劉生「二人麗子図(童女髪飾図)」と
藤田嗣治「私の夢」が隣りあったコーナー。

「二人麗子図」は思いのほかあたたかみのある絵だった。
どうも岸田劉生は、私にとっては
ひんやりした粘土のような絵の印象が強くて。


フジタの「私の夢」は、彼独特の裸婦とそれを囲む、
おとぎの国のようにさまざまな扮装をしている動物たちで
写実的でありながら、動物の表情や動きが面白く、
いったいフジタは本当に何考えてるんだろう?と思ってしまう。
背景の均一に塗られた茶とグレーが、なんとも言えずシック。
すべてがちぐはぐだ。


そして、これまであまり知らなくて、今回出会えてよかった!と
思えた洋画家は、須田国太郎と香月泰男。

須田国太郎はNHK日曜美術館でも紹介されていたし、
現在竹橋で開催されている展覧会も評判いいし興味はあるけれど
実際見に行こうかどうしようか迷っていた。
けれど、彼の作品「樹上の鷲」に出会ってみると、
素晴らしい!心がざわざわした。

木の枝につかまった鷲、もやもやの背景、と
なんともつかみどころのない絵なのだが、
荒い、流れるようなタッチには、勝手にドラクロワを思い出した。

何だろう?
どこが何故いいのかわからないけれど、とにかくいいと感じた。
まだ彼の絵を語る言葉を私は持たない。
これはぜひ竹橋に行かなくては。


そして香月泰男「人と梟」。
まったく知らなかったが、この作品にとても惹きつけられて
何度も戻って見てしまった。

ほとんどベージュと黒だけの彩色。
厚みのあるマチエールも味わい深い。
かくかくとした面で構成された男とふくろうがこちら側に視線を投げている。
両者の風貌が似ていて、ちょっとしたおかしみと味わいがある。
男はほとんどモアイ像のような顔をしている。
両者は視線を合わせないが、相棒のような空気もただよい、
それでいて無言の、無動の世界をつくっている。

あまりにも気になって家で調べてみると、
この画家はどうやら戦争体験を題材としたシベリアシリーズなどが有名なよう。
それらの絵にもモアイのような表情の男が多く描かれていた。
著書の一部を読んだら、かなり重苦しい。過酷だ。
この画家の信念、絵に対し担おうとしているもの、を痛く感じた。

「人と梟」にただようものとはずいぶん違うので驚いたが、
この絵にはいったい何が込められているのだろう?
それは容易には解けないが、
この絵の何かが私にくさびを打ち込んだのは間違いのないことだ。

そんなふうに思える画家や作品に出会えたのは大変な収穫で、嬉しい。
香月泰男、彼の作品も機会があったらぜひ見に行きたい。


洋画のあとは、こぢんまりした工芸室で近代の工芸作品を見た。


加藤唐九郎「志野茶碗 銘:唐獅子」
工芸の展示室に入ると、すーっと引き寄せられるように
斜めに突っ切ってひとつの茶碗に向かうと
それが、加藤唐九郎だった。

力強く大ぶりで、志野らしくない志野、と思った。
唐獅子と名づけられているだけあって、
釉薬の踊りがたくましく、躍動感がある。
焼き物は触覚にも訴えるものがあるので、触れないのが残念。

彼の狂気じみた生き方には、数年前から興味をそそられている。
その奔放な熱を私にも呼び込みたい。


加守田章二「曲線文扁壷」、
彼の作品はテレビなどでしか、見たことがない。
初めて実物を見たけれど、想像より手作りっぽい印象。
もっと均一な、アールデコっぽいデザインかと思っていた。
しかし実際は、ゆらぎの造形、といった印象。


高村光太郎「うそ鳥」、かわいい。
高村光太郎の木彫りは初めて見た。
地味めな、小さな作品だが、木の肌のあたたかみが生かされている。
後ろに閉じた翼の表情がつつましい。
派手でなく彩色してあり、ほおの下のともしびのような赤、
背中にほんのりわずかに差す緑、などがとてもいい。


下の階におりて、日本や朝鮮の焼き物の部屋もあり、
こちらはざっとだけ見た。
古久谷、鍋島、伊万里などきらびやかな磁器は
何度見ても私にはあまり魅力的にうつらない。
青磁はわりと好きだけど、今回の朝鮮の青磁では惹かれるものがなかった。

焼き物は好きだけど、実際使うものが好きだし、
手にとって触るのが好きなので、こうした展覧会では
あまり熱心に見ないなあ。


混んだ国宝室では、源氏物語絵巻を人の肩越しに見た。
金箔をちらし美しくしつらえた台紙に、
はかなげなかな文字が、はらはらと桜の散るがごとく舞い、
栄華と滅び、両者をそのまま体現しているよう。
ため息の出るほど美しい文字だった。


1品ずつが非常にクオリティが高く、
しかも日本の代表的な画家を網羅したような
こんな贅沢な展覧会は、今後なかなか見られないのでは・・・
ますます日本の美術に期待と誇りと興味を持つことができた。
大収穫。


すみません、もう終了してますネ。
新橋美術倶楽部「大いなる遺産 美の伝統展」
2月5日(日)から2月26日(日)まで。






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Last updated  2017.02.18 00:32:38
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Re:名品との出会い!!新橋美術倶楽部「大いなる遺産 美の伝統展」~洋画・工芸編(02/25)  
一村雨  さん
そうでしょ~古賀春江、私も最初は
初期の東郷青児だと一瞬思いましたよ。

加守田章二は昨秋、東京ステーションギャラリーで
展覧会やってました。私もその時初めて知ったのですが、
あの曲線の魅力に取りつかれました。

お疲れ様でした~
(2006.03.03 05:51:10)

Re[1]:名品との出会い!!新橋美術倶楽部「大いなる遺産 美の伝統展」~洋画・工芸編(02/25)  
mashenka  さん
一村雨さん、こんにちは。

>そうでしょ~古賀春江、私も最初は
>初期の東郷青児だと一瞬思いましたよ。

似てました・・・

>加守田章二は昨秋、東京ステーションギャラリーで
>展覧会やってました。私もその時初めて知ったのですが、
>あの曲線の魅力に取りつかれました。

ステーションギャラリーでやってたときは
さほど興味がなかったです。
装飾的だけどかたそうな焼き物、という印象で。
でも本当はゆらぎの焼き物だったんですね。

>お疲れ様でした~

後半は人もまばらになってきて、見やすかったです。
いや~、素晴らしい作品をたくさんたくさん見れました。
ものを「見る」ことができること自体、感謝したくなりました。
一村雨さんにも感謝です♪
(2006.03.04 00:03:06)

Re:名品との出会い!!新橋美術倶楽部「大いなる遺産 美の伝統展」~洋画・工芸編(02/  
瑠璃鳥 さん
読み応えのある文章、ありがとうございます。
作品と一緒にマーシャさんの感想・分析も堪能いたしました。

わたしが洋画で一番好きだったのは、
浅井忠の「グレーの秋」です。
あのスペシャルな感じに凝縮された一瞬の秋の景色は、
宝石みたいに思えます。

須田国太郎は大好き。
あの鷲のかっこよいこと。
マーシャさんの感想が聞けてうれしいです。

工芸では、鈴木治の「雪の中の馬」がロマンチックでした。
繊細な面を見せながら、そこが男性的だと思いました。
男の人ってロマンチストだもんね。

加守田章二が「ゆらぎの造形」とは、まさしく!
端正で達者な人だと思っていたけれど、
実際にはもっと温かい感じのひとなのかなと思いました。
素敵でしたね。

わたしは工芸作品も好きなので、もっと見たかったけれど、
それでは出口に至るまで三時間くらいかかりますものね。
いやあ、見応えありました。
今年は春から幸先がいいですね☆


(2006.03.05 12:30:53)

Re[1]:名品との出会い!!新橋美術倶楽部「大いなる遺産 美の伝統展」~洋画・工芸編(02/(02/25)  
mashenka  さん
瑠璃鳥さん、遅ればせながら・・・・

>読み応えのある文章、ありがとうございます。
>作品と一緒にマーシャさんの感想・分析も堪能いたしました。

こちらこそ、ありがとうございます。

>わたしが洋画で一番好きだったのは、
>浅井忠の「グレーの秋」です。
>あのスペシャルな感じに凝縮された一瞬の秋の景色は、
>宝石みたいに思えます。

“秋”が“グレー”ってところがやられた!って感じですよね。
繊細な空気感を描いた絵だったと記憶してます。

>須田国太郎は大好き。
>あの鷲のかっこよいこと。
>マーシャさんの感想が聞けてうれしいです。

ほんと、あの1枚はすごくよかったです!
日本の洋画のすばらしさに目覚めました!

>工芸では、鈴木治の「雪の中の馬」がロマンチックでした。
>繊細な面を見せながら、そこが男性的だと思いました。
>男の人ってロマンチストだもんね。

面白い作品でしたね。かわいくてきれいだし。
男性は確かにロマンティストかも。

>加守田章二が「ゆらぎの造形」とは、まさしく!
>端正で達者な人だと思っていたけれど、
>実際にはもっと温かい感じのひとなのかなと思いました。
>素敵でしたね。

私もどっちかというと固い冷たいイメージを持ってました。
実際見てみるもんですね~。

>いやあ、見応えありました。
>今年は春から幸先がいいですね☆

見たいものがいっぱいあって嬉しい悲鳴ってやつですね♪
今年もいいものたくさん見て、心豊かに過ごしたいものですね。
(2006.03.27 22:50:55)

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