Atelier Mashenka

Atelier Mashenka

2006.03.03
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カテゴリ: アート
「大いなる遺産 美の伝統展」
「樹上の鷲」に頭をがーんと殴られ、これはぜひ見に行かなくてはと
竹橋の東京国立近代美術館「須田国太郎展」に行ってきた。

けっこうなボリュームがあったので、ざざっと全体を見てから
最初に戻ってゆっくり見た。
あの独特の赤褐色やオレンジ、ピンク、あれはどこから
彼の中に入り込んだのだろう?
特に初期の作品はあたたかく密度のあるオレンジがかったピンクに
むせかえっているように感じた。

アーヴィラ
「アーヴィラ」

残照を受けているのか、おそらく白壁の街が一体となって
優しいオレンジがかったピンクに輝いている。
なんともいえない懐かしいようなあたたかみのある色。
近景に本当は黒っぽい木が描かれていたらしく、でも塗りつぶされているのが伺えた。
小さな作品なので、確かに手前に木がないほうが、
空気のほどけた感じが、ほんわりとより前面に伝わってくる気がする。


法隆寺卒塔婆
「法隆寺卒塔婆」

「法隆寺卒塔婆」も、なんとも言えないピンクの色調で描かれている。
手前の電柱、街の生活感があふれてしまうはずなのに、
この電柱もまた卒塔婆のように見えてくるから不思議だ。
つまり、墓の群れであるかのように。
立ち枯れた卒塔婆たちの屹立、静けさ。


「発掘」、大きな作品だ。
どこか中近東での風景だろうか、遠景の砂漠に、
手前に3人の男が大きな身体を動かして作業している。
ドーミエの作品のように、背景には光があふれ、
人物はほとんどシルエットとなっている。
初期のこの作品以外にも、彼の作品には
こうしたシルエット的な構図がときどき見られ、
光と対象との関係を独特なやり方で追究したのだろうと感じた。


歩む鷲
「歩む鷲」

「歩む鷲」、これもシルエットまで行かないけれど、背景がひどく明るい。
暗めな色調で描かれている鷲は、その背後の光に背を向け、
背を低め、太いしっかりした足で歩み、何かを担っているよう。
左手から鷲に覆いかぶさるように弧を描く木々の枝は
そんな鷲を応援しているようにも、また威嚇しおびやかそうとしているようにも見える。


「冬の空」、これも少しシルエットっぽい絵。
背景の水色の空に、「樹上の鷲」の背景と同じように
さまざまな色が下に塗りこまれている。
やや平面的な作品だが、それによって木の枝と鳥たちの様子が
網目模様のように、浮いて見える。
また、右手手前に大きめに描かれた唯一のカラスは、
画面での断ち切り方がかなり思い切っていて、並々ならぬセンスを感じさせる。


「ヴァイオリン」、これはとても気に入った作品。
"黒々"といえるほどのチョコレート色のかたまりで、
ヴァイオリンとしての表情をわざと消して、マットに描かれている。
背景は荒いタッチで、またさまざまな色で塗りこまれているので
ヴァイオリン本体は静けさの中に目を閉じているのに、
かえってその楽器のかもし出す音の情感の激しさを感じさせる。


「ある建築家の肖像」、今回の作品群の中でももっとも抽象的な作品。
右端に描きこまれた顔は、白くデスマスクのよう。
全体黒っぽく、しかもがさがさした黒なので、不吉な感じがする。
そして、他の作品にあまり見られないような
青緑、朱赤、彩度の低いターコイズ、赤紫、群青などが
ところどころに利いていて、色の噴出、といった感じ。
葛藤を感じる。
かなり遠く離れて見ると、実は窓から光が差し込む室内のようにも見え、
もしかしたら具象作品なのかもしれない・・


犬
「犬」

ちらしにもなっている「犬」、同じ黒でもきれいな黒。
遠景の家の屋根の緑も近くで見ると色が混じっていてきれいではないのだが、
離れてみると、犬の黒と屋根の緑が光っていて、それぞれ宝石のようだ。


「樹下」、木の根元にへんな動物がいる!
目を光らせ、鋭い歯をむき出しにして何かをかじっている。
獰猛さ。荒々しさ。ある意味、異形なものを見たようなざわざわ感。


晩年の珠玉の小品コーナーの「鷲」、
オレンジと黒の、珍しく柔らかなリッチな味わいが胸に残る。
黒が暖色的な黒で、目に美しい。
これは茶色が下塗りしてあるからだろう。
目は鋭いが茶目っ気あるかのように上目遣いし、
くちばしも微笑さえ感じる。
鷲や鳥が好きなのだろう、たくさん取り上げているが
ここまで表情を描きこんでいるのはほかになかった。


また、能や狂言のスケッチが数多く出品されていた。
線に息吹が感じられる。
そこから作りあげた油彩の作品もいくつか展示されていたが、
スケッチのほうがより興味深かった。
特に「弱法師(よろぼし)」「葵上」「野宮」などの
比較的簡単なスケッチは、簡単だからこそ、
よくその少ない線で、しかも短時間で、
これだけ役者の姿勢、衣装、動きを表現できるものだと舌を巻く思いだった。
線の力、確かな目と技術に感嘆の思いを抱いた。
また、「道成寺」の連作はアニメのように、役者の刻々と動くさまが
描かれ、面白かった。


「須田国太郎展」は 東京国立近代美術館 にて
2006年1月13日(金) ~3月5日(日)まで。
いつもぎりぎりの情報でごめんなさい!






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Last updated  2017.02.15 23:10:03 コメント(8) | コメントを書く
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mashenka @ Re[1]:生誕120年 棟方志功展(11/12) 一村雨さんへ お久しぶりです! 私もうな…
一村雨 @ Re:生誕120年 棟方志功展(11/12) お久しぶりです。 この展覧会、棟方志功の…
mashenka @ Re[1]:サントリー美術館「京都・智積院の名宝」(01/21) 一村雨さんへ 素晴らしい障壁画でしたね…
一村雨 @ Re:サントリー美術館「京都・智積院の名宝」(01/21) 安部龍太郎の「等伯」を読んで、この親子…
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