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小説 「 scene clipper 」 Episode 9
3
日前のハグは結構気を入れてしまった。
けれどあの後、あの場で命より大事かもしれない女の「記憶」をそっとしまい込んであるだろう、その胸の扉をノックするほど俺は野暮じゃない。
ドアを開けて外通路に出るといきなり強い風にあおられてサマージャケットの裾がが音を立ててめくれた。
9階建てのマンションの最上階なら、しかも甲州街道と環七が交わる交差点がすぐそばにあれば
遮るものは少なく
何時ものことだが・・・。
いつものコンビニの前を通る、(競馬新聞・・・それはないな)
おっと丁度横断歩道の信号が青になった。環七を笹塚の方へ渡る。
やがて何時ものように 京王クラウン街笹塚の出入り口が見える角で立ち止まる。
(いるいる、もうこれは皆勤賞ものだぞ、けどどっちが貰うんだ?彼女か?俺にもその資格はある・・・馬鹿なことを )
いつもの場所で何時ものように、譲れないルーティンなんだな・・・。
お、気づいてくれたみたいだな、白い歯を見せてスマホの電源を落として
立ち上がりながらジーンズの後ろポケットに差し込んだ。
「おはよう」
「おはよう、てか今日は競馬新聞持ってないんだ」
両手をジーンズの前ポケットに突っ込んで俺をからかうように言った。
(危なかったな・・・)
「誰かさんと違って俺の生活にはルーティンはないんだ」
「あらそう、でもそれって『根無し草的な生活』じゃないのかしら?」
(痛いところを突いてくんなあ・・・話題を・・主導権を取れよ俺!)
「まあ、それはさておいてだねえ・・・こないだ出来なかった質問をさせて欲しいんだけど」
「接続詞、ずいぶん乱暴な使い方するのね・・ま、いいわどうぞ」
(いやいや、乱暴と言われようが今の場合、話を転換させるしかないでしょうが)
「じゃあ・・・あそこでいつも何をしてたのか、それが知りたい」
「その一言を口にするまで、実に辛抱強く粘ったわね、えらいわ」
(上げたり下げたり・・・ここまで良く耐えてるよなあ俺)
「過去と繋がっていたの」
「・・・・・・・・・ 」
「あっちに行っちゃったあの人と繋がっていたの」
「スマホで?」
「そう」
「まさか、あっちと繋がるスマホがあるって言うわけ?」
「あんた SF
してあるの、それを聴いてたのよ」
すぐには何も言うことが出来なかった。
やっと口から出せたのは謝罪の言葉でしかなかった。
「悪かった・・・そんな大切な時を・・・邪魔してしまった。すまない」
(身の置き所が無いってこういう事だな・・・)
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