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2004年07月13日
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カテゴリ: 役立ち法律と判例


相談内容をまとめるとこんな感じです。

 「山田君はX塾(仮名)という個別指導塾にアルバイト講師として採用されました。
採用面接では、1コマ90分1500円ということだけ聞かされていました。
ただ、それについて何の書面も交わしておらず、面接したその日から授業を受け持った事に何となく違和感を感じていました。
 そうしたら、案の定一方的に授業延長を申し渡されるわ、居残りさせられて延々と教室長の話を聞かされるわというように、残業を押し付けられるようになったのです。
 しかもそれが初めは15分程度だったのですが、ある日はついに45分も残業させられるに至りました。
 そこで、山田君は『早く帰らせて欲しい』と申し出たものの教室長は応じません。
 それどころか、『サービス残業を断るとは何事だ』と逆に怒ってきたのです。
ここに至って山田君はX塾がおかしいことに気づき、私に残業代は取れるか、また今すぐ辞めても問題ないかということを相談しに来たのです」


しかし私は労働法について勉強したことが無く、何となく「サービス残業は違法だ」と言うことしか知りません。そこで、私は山田君に「労働基準監督署へ行ってみたら?」と
アドバイスしました。

その後、山田君は労働基準監督署に行き、興味深いことを教えてもらったようです。私にもいろいろ教えてくれました。
これは、山田君以外にも役立つお話なので皆さんにもお知らせします。

1、アルバイトにも労働基準法は適用される。

・山田君の勤務先の教室長は「アルバイトには労働基準法が適用されない」と勘違いしているので平気で残業を押し付けていたようです。しかし、労働基準法はお金を貰って仕事をする人全てに適用されます。
(労働基準法9条 「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」)


2、契約の内容を明示しないこと自体が法律違反

・山田君の勤務先の教室長は契約内容を明示していませんでした。
これ自体が労働基準法違反になります。
(労働基準法15条 「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。)

しかも、違反者には刑事罰が課されます。
(労働基準法120条 「次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一  第十四条、第十五条 ・・・までの規定に違反した者」)


3、面接時と話が食い違えば一方的に解除できる。

・山田君の勤務先の教室長は残業があることを明示していませんでした。
なので後に一方的に残業を押し付けることは面接時と話が食い違うことになり、法律上解除が出来るのです。
(労働基準法15条2項 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる)

また、15条2項を持ち出すまでも無く、契約時に期間が定められていなかった場合は両者のどちらからでも即時解除を主張できる可能性が高いと言うことです。
これで、山田君の疑問の一つ、「すぐに辞められるのか」という
疑問に対しては「辞められる」という回答が得られました。

4、サービス残業は当然違法。ただし、真の意味で「残業」と言えるかが問題

・つまり、業務の延長であれば賃金を得られるのは当然の権利であり、これに対し賃金を支払わないのは違法です。
ですから、講師の場合授業の延長を一方的に押し付けられれば、それに対する賃金が得られるのは当然のことだと言うことです。
「サービス残業を断るとは何事だ」と平気で言えるほうがどうかしているのです。
 また、授業の延長の場合は、タイムカードが無くても
生徒と言う証人がいますから、仮に裁判になっても
ほぼ確実に勝てると言うことです。

問題は「教室長の話を延々聞かされた」時間に給与が出るかということです。
法律上、契約で定められた業務でなくても、「強制的か、本来の業務に密接に関連している事柄についての身柄拘束時間」については労働時間とみなされ給与支払義務が生じます。そうすると、「教室長の話」が強制的であれば問題はありません。
山田君の場合は、「帰らせて欲しい」と申し出ても応じられなかったのですから、
強制的であることは疑いありません。
そこで、山田君の場合は授業延長分のみならず、「教室長の話を延々聞かされた」時間についても残業代が出ることになります。
これで、山田君のもう一つの疑問「残業代は出るのか」という疑問に対しても、「全ての残業について出る」という回答が出ました。

ただし、山田君が聞いてきたところによると、強制的でなく、単に人生訓をべらべら喋っていたような場合には本来の業務に密接に関連しているとは言えず、「残業」ともいえないので、無給でつき合わされても違法ではないと言うことです。

5、労働基準監督署には支払い強制能力は無い

・労働基準監督署は裁判所と違い、行政府なので強制執行することができません。
なので、残業代を払わないことが違法であると認定し、「支払なさい」という行政指導は出来ても、直接金銭を徴収することまでは出来ないのです。
ただ、労働基準監督署の方も「今すぐ何かするわけではないが、
近頃教育業界からの相談が増えており、何とかしたいとは
考えている」と言ってくれたそうです。
つまり、労働基準監督署も何かしらは考えて下さっているのです。
そこで、実体を労働基準監督署にお知らせして、労働基準監督署を動きやすくしようではありませんか。
思い当たる節のある塾講師・個別指導講師の方々、今すぐ労働基準監督署に行ってみてはいかがですか。
お役所と言うとお堅いイメージがありますが、山田君は「労働基準監督署の方は実に親身になって話を聞いてくださった」と喜んでいます。
さらに、山田君は「自分の言い分を労働基準監督署が認めてくれたというその事実だけでX塾と戦う勇気が出た」と言っており、X塾に契約解除通知と今までの賃金支払請求をしたそうです。
 X塾の反応はまだ来ていないので、反応が来たら私にも教えてくれると言っています。
その際にはこのページで皆さんにもお知らせしますね。


山田君から聞いた話は以上です。
又聞きゆえ、やや不正確なところもあるかもしれませんが、
サービス残業は一定の場合に違法であるということと、予め聞かされた話と食い違いがあればすぐに辞められるというのは間違いの無いところでしょう。
ですから、少しでもサービス残業があれば最寄の労働基準監督署に相談して、サービス残業が無給か給料がつくかを判断してもらい、もし、給料がつく残業であれば、自ら会社に請求をして残業代を取り戻そうではありませんか。
かく言う私も、かつてのバイト先でのサービス残業代を取り戻すべく、今日朝一で労働基準監督署に電話しようと思います。
それでは、おやすみなさい!





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最終更新日  2004年08月17日 16時29分45秒
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