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小倉百人一首 六大伴家持(おおとものやかもち)鵲かささぎの渡せる橋に置く霜の 白きを見れば夜よぞ更けにける家集「家持集」 / 新古今和歌集 620かささぎが翼を連ねて渡した天の川の橋に置いた霜が真っ白なのを見ると晩秋の夜はすっかり更けたんだなあ。註晩秋から初冬の天の川の白いほのめきに、恋人同士の邂逅する橋を見ている、季節外れの幻想(ファンタシー)。その一方、宮中の階梯(きざはし)の象徴的な表現であるともいわれる。おそらく、その両義をこめているか。艶麗なる佳品である。鵲かささぎの渡せる橋:〔1〕七夕(たなばた)の夜に、牽牛(けんぎゅう、ひこぼし、鷲座アルタイル)と織女(しょくじょ、たなばたつめ、琴座ベガ)の二星を逢わせるため、カササギが翼を並べて天の川に渡すという橋。男女の仲を取り持つものの意にいう。鵲橋(じゃっきょう)。〔2〕(〔1〕から転じて、宮中を天上になぞらえて)宮中の殿舎の階段。
2012.10.16
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猿丸太夫(さるまるのたいふ、さるまるだゆう)奥山にもみぢ踏み分け鳴く鹿の こゑ聞くときぞ秋はかなしき古今和歌集 215 / 小倉百人一首 5奥山に積もった紅葉をさくさくと踏み分けて鳴く牡鹿の嬬恋つまごいの声を聞くときに秋はしみじみかなしいなあ。註古今和歌集では「詠み人知らず」、「小倉百人一首」では猿丸太夫作となっている。花札の「紅葉に鹿」の取り合わせは、この歌に依っている。ちなみに、「そっぽを向く」の意味の俗語「シカト(する)」は、この花札の絵柄から来ているといわれる。(とき)ぞ・・・かなしき:強意の係助詞「ぞ」の係り結びで、文末は形容詞「かなし」の連体形。この語法の起源は倒置法ともいう。かなし:現代語「かなしい」の語源だが、古語としてはきわめて多義的で、簡明な現代語訳は不可能。「心にしみる、強く心ひかれる、胸がいっぱいになる」「いとしい、かわいくてたまらない」「悲しい(哀しい)、切ない」などの感情を包含する重要語。現代語「かなしい」においても、こういったニュアンスは完全には失われていないように思う。
2012.10.15
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小倉百人一首 四山部赤人(やまべのあかひと)田子の浦にうち出いでてみれば 白妙しろたへの富士の高嶺に雪は降りつつ新古今和歌集 675田子の浦に出て見れば白妙のような富士の高嶺に雪は降りつつ。田子の浦ゆうち出でてみれば 真白ましろにぞ不尽ふじの高嶺に雪は降りける万葉集 318田子の浦よりうち出て見れば真っ白に富士の高嶺に雪は降っているなあ。〔リービ英雄・英訳〕Coming out from Tago's nestle cobe,I gazewhite, pure whitethe snow has fallenon Fuji's lofty peak(c) Hideo Levy 2004註(田子の浦)ゆ:動作(この場合「うち出でてみる」)の行われる地点・経由地を示す奈良時代の格助詞。「・・・を通って」「・・・で」「・・・より、から」。英語でよむ万葉集 リービ英雄【送料無料】798円(税込)
2012.10.15
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小倉百人一首 三柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)あしびきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む万葉集 2802‐2 / 拾遺和歌集 778足を引きずってゆくほど深い山奥に棲む山鳥の尾の枝垂(しだ)れた尾のように長い長い夜を思いびとと離れて私は独りで寝るのだろうか。註あしびきの:「山」にかかる枕詞(まくらことば)。「足引き(足曳き)」が語源といわれる。山鳥:国鳥。雌雄が峰を隔てて寝るという伝承から「独り寝」の縁語。「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」までが「ながながし」を導く序詞(じょことば)で、序詞の技巧の代表例とされる名歌。
2012.10.13
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小倉百人一首 二持統天皇(じとうてんのう)春過ぎて夏来にけらし しろたへの衣ころもほすてふ天あまの香具山新古今和歌集 175春が過ぎて夏が来たらしいなあ。真っ白な衣が干してあるという天の香具山。春過ぎて夏来きたるらし 白栲しろたへの衣ころもほしたり天あめの香具山万葉集 28春が過ぎて夏が来たらしい。真っ白な衣が干してある天の香具山。註天の香具山:奈良県橿原市。
2012.10.13
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小倉百人一首 一天智天皇(てんじてんのう)秋の田のかりほの庵いほの苫とまをあらみ わが衣手ころもでは露に濡れつつ後撰和歌集 302秋の田の刈り穂を見守る仮庵(かりほ)の屋根に葺いた莚(むしろ)の編み目が粗いので私の袖はしだいに露に濡れてゆく。註かりほ:実った稲の「刈り穂」と「仮庵(かりいほ → かりほ)」を掛けている。苫:菅(すげ)や茅(かや)などを粗く編んだ莚(むしろ)。小屋や和船などを覆って雨露をしのぐのに用いた。これで葺いた農漁村の粗末な仮小屋が「苫屋(とまや)」。収穫を禽獣から守るために夜もすがら見張りをした。苫とまをあらみ:「苫の編み目が粗いので」。古典文学特有の「ヲ・ミ」語法(「・・・が・・・なので」)。露、衣手(袖):「涙」の縁語、または象徴的表現。* きょうから「百人一首」のカテゴリーで、小倉百人一首・全百首の通釈を順次掲載します
2012.10.13
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