美月らしく

美月らしく

2006.08.19
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カテゴリ: books
伊藤たかみ氏の『八月の路上に捨てる』


が、最近の文学賞、特に芥川賞の作品には、なんか
物足りない思いがずっとしている。
生意気な言い方だけど、
圧倒的な力、というものが近年の作品にはないような気がする。

自販機の缶飲料を補填してまわるアルバイト社員・敦(30歳)と
少し年上の正社員の女性・水城さんの一日である。
敦は脚本家志望くずれ、大学時代からの付き合いの妻・智恵子がいて、

水城さんもふたりの子持ちのバツいちで、恋人あり。
ふたりの会話から回想の形でストーリーが展開していくのだが。

敦と智恵子の日々の描写は、とてもうまい。
愛しながら噛みあわなくなっていく若い夫婦を、
場面、場面で切り取って丁寧に描いている。

だけど、なんとなく、描写力に溺れているようなところもある。
結果的に、
だから、なんなんだ、という感じがしてしまう。

選考委員の宮本輝氏が
「描写の積み重ねがある地点から膨らんでいかない。
それは小説の土台が初めから小さいからだ」


男女の恋愛も、薄く、粘りがなく、
すぐに透き通って溶解してしまいそうな
なさけなさだ。

生きることの難しさだとか、閉鎖的な状況の苦しさだとか、
鬱屈した精神だとか、そういうものを文学は

だから最近の小説の表現しようとしているものを否定しないし、
まっとうな文学の方向だと思う。

でも、かつての作品には、鬱屈しているなりに、
そこには爆発しそうな危険な大きなエネルギーがあったと思う。

近年の作品は、鬱屈しつつ、怒りつつ、
でも、それなりに折り合いをつけて、
だましだまし、うまく生きていく人間を、
ごくごく日常的にきりとって描いているだけのような
感じがしてならない。

もっと、ものすごいパワーに押し倒されるような作品が
読みたいと思う。

現実で、みんなチマチマと悩みながらそれなりに生きているのだから、
それをまた虚構の世界に描いて見せられたところで
なんにもおもしろくない。
感動がない。

誰もが小さくまとまっていく中で、
小説までが小さくまとまって、
一億総勢こころの病気、みたいなのは、
なんか、とってもつまらないと思うのだが。。。

ならば、おまえが書けるのか、と言われると、
もちろん、書けないのだけど。






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最終更新日  2006.08.19 18:23:37


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