美月らしく

美月らしく

2006.08.30
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カテゴリ: theatergoing
三島由紀夫の原作を、三島氏の親友だった浅利慶太氏が演出した


文明開化の明治の日本の上流社会の華麗さと真実、
政治的背景、
人間の心の深淵、
そこに三島文学の真骨頂の日本語の豊饒さ、甘美さ、
森英恵さんの衣装の豪華な雅やかさがプラスされて、
すべてが相乗して、そこに停止したひとつの歴史上の時間を描き出す。

かつて芸妓であった朝子(野村玲子)は

けっして公の場には出ず、内で和装を通す貞淑な妻。
朝子は、とあることから、かつての恋人・清原(広瀬明雄)と、
ふたりの間の息子・久雄(田邊真也)が
政治的陰謀に取り込まれ、生命の危機にあることを知る。
清原は夫・影山の政敵、
妾の子として冷遇された久雄は父を憎んでいる。

愛する者たちを救いたい。
清原にも、久雄にも、健やかに豊かに人生を送って欲しい。
そう考えた朝子は策を巡らし、すべてがうまくいくように取り計らう。
そしてそのために、デコルテを装い、夜会の女主人を勤める決意をする。

これ以上はネタバレになるので、書けないのだけど、

朝子の清原への愛、
20年間も枯れることのなかったふたりの想い、
そして、母としての久雄への想いが、ジンジンと伝わってくる。
野村玲子さん、今も変わらず美しく、そして、うまい。

そして、妻と政敵との過去を知った景山を演じる日下さんが秀逸。さすが。

焼け付くような嫉妬、
そしてまた、久雄の若さへの、男としての嫉妬、
政治的な立場にある男としての策略・・・

女としての自分に負けて、朝子の忠実な奥女中としての立場から
寝返ってしまう、女中頭・草乃(中野今日子)も
すごくリアルで共感を呼ぶ。

久雄の、父への屈折した思い。
愛しているからこそ、許せない。最大の仕返しで父を打ちのめす息子。
男同士であり、父子である、微妙な関係性。

これらすべては、日常的にごく当たり前にある感情なのだけど、
それを「ほら」「さあ、みてごらん」と出されると、
「これが自分だよ」と言われているようでもあり、思わずたじろいてしまう。

すべてがうまくいくはずだったのに、
完璧な計画だったはずなのに、
なのに、もろくも崩れ果ててしまう運命の歯車は
誰にも、どうすることもできない。
それは、存在しているそのこと事態が孕んでいた矛盾であり、運命なのだから。

ストーリー構成としては、シェイクスピアの古典悲劇的であるが、
三島のするどい人間観察で、グサグサと切り取って描かれているところがすごい。
それは、華麗な日本語の世界であるだけに、よけいに肌寒い感じがする。

劇団四季の演目はミュージカル、と思っている人からは
「今日は歌と踊りはないの?」という声も聞かれたとか…(^^;ですが、
こういうタイプのものをじっくりと鑑賞するのもまた愉しくもあり、と思います。


   名古屋ミュージカル劇場にて






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最終更新日  2006.08.30 11:53:05
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