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2005年02月15日
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休憩


 この貴きお教えの御開祖様は、1910年に御生誕あそばされ、20世紀を駆け抜ける寸前他界された『何やゆうたか?』様=別名『埴谷 雄高』様=またの名を『般若 豊』様その人である。

 このご教義の真髄を理解された方は誰でもいつでもどこでも入信出来ますが、そのご利益の程は当方には保証出来かねまする。

 教義の御利益は定かではないが、その戒律たるや生半可なことではない。戒律の厳しさに耐えかねて今現在埴谷教の信者は一人もいない。

 戒律の話に入る前に、教団の合言葉を公開する必要があろう。日蓮様なら南無妙法蓮華経のお題目、真宗ならば南無阿弥陀仏のご称名(号?)があるように、埴谷教にも当然合言葉というものがある。

 敵は制度、味方はすべての人間

 これがそれである。が、しかし、あらゆる名言や金言がそうであるように、この言葉も最初から矛盾を孕んでいる。なんとなれば、人間の介在しない制度はなく、制度に依拠しない人間もまた存在し得ないからである。

 ではいよいよこの高貴なるご教義の内容に入って行くのですよ。ここからが本論で重要なのですから・・・はい、そこのあなた、居眠りはもう止めて講義に集中しましょう。

 どの教団にもありますが、我が埴谷教にも経典というものが存在します。それが、



です。この一冊の書物の題名は、

『 死霊 』

ですが、ここに、文部省や教育委員会が何と言おうと、これを「しりょう」と読んではいけないという、第一の厳格な戒律が存在します。正しくは「しれい」と読みます。

 この世にも有難き御経典の入手経路でありますが、それは『ヤースケ伝アトランダム』というページ(ここや!)の左上のアフィーリエイトから行って戴くのが最善で、モーこれっきゃないっちゅうかぁんじ、なのである。

この経典の後半は御開祖様が自らの余命と相談しながら書き続けられたものであるため様々なバージョンがある。

例えば、師が大病から回復され、それまで第四章半ばで中断されていた御経典の第五章をお書きになった際には、五章までを一括して『定本 死霊』として講談社から目出度く出版の運びとなり、見事その年の『講談社出版文化賞』を受賞されたのであった。無論ベストセラーにもなった。

 御経典を一番手っ取り早く入手する方法は、同じく講談社から出ている『埴谷 雄高全集』の第3巻(第一回配本だった)を入手することである。これには全9章が納められているから少々値は張るが1冊で済むという利点がある。
 古本屋にもないことはないが、全9章ということになると、意外に揃えにくいかも知れない。ちなみに全集の編集には教祖様が生前住まわれていた東京は吉祥寺某所の一軒家が使われている(いた?)ようである。

 講談社ばかりが目に付くが、他にも師の著作は未来社等様々な出版社で扱われたのである。しかしその売り上げたるやいずれも惨憺たる有様であったようで、さながら師は出版社にとっては疫病神そのものであった。

 えーと、次の戒律は何にしようかな、などと考え込んでいる場合ではない。以下は順不同である。

 「好きな花は?」と問われたら、信者たる者ノータイムで「ルドン風の幻の花」と答えなければならない。


 『幸せについて』問われたら、決して「今の私たちのことよっ!」などとのろけてはならない。そのような神をも畏れぬ不逞の輩はこの私が出て行ってお尻ペンペンしちゃうのである。(こればっかしや!)
 「幸せ? そんなものはありゃしない」と答えるのが信者たる者の務めである。

 次いで『飲酒の戒律』(そんなものあるのかよ?!)であるが、ここは一つ優雅にしかも風変わりに決めなければならない。「秋刀魚は目黒に限る」(落語『目黒のさんま』より)のであるからには、酒はワインに限るのである(?)。

 ではそのワインであるが・・・ん?コラ、そこの若い衆、やれボジョレヌーボがどうだとか、南米産がどうだとか、いや国産もなかなかいいだとか、通ぶって得意がってはいけないのですよ。それは戒律違反になってしまうのです。

 氏自身が認めているように、ワインとしては『邪道』の部類に属する、ハンガリー産のあの、甘きに甘いトカイワイン限定で、信者たるもの飲酒を敢行しなければならないのである。



 さてその味であるが、普段殆ど飲酒しない私にとっては旨いとかまずいとか言う以前の問題で、いや正直に言うと、はっきり言ってただ甘いだけならまだ良いのだが、なんだか癖のある甘さで、あれなら赤玉ポートワインの方が遥かに旨いと思った。
 なにしろ我が教祖様は中野豊玉刑務所に在監中は砂糖を差し入れして貰って、それを短期間で(1/2斤を1日で)嘗め尽くしてしまったという伝説の男(宇宙人?)だったのである。
 ちなみに、収監された容疑は治安維持法違反で、当時共産党内にいたスパイの密告により一網打尽にされた中の一人であった。我が教祖様は獄中で「天皇制は当分続く」との転向論文を書いて保釈され終戦を迎えたわけだが、そうでもしなければ命の保証は無かった時代であった。
 終戦=敗戦を知り、所謂第一次戦後派の作家たちは「これでやっと文学が出来る」と喜んだとか。

 次は女性問題である。
「好きな女性は?」と問われたら、信者たるもの間髪を入れず『ナスターシャ・フィリッポブナ!』と嬉々として応えなければならず、しかもその名前たるや簡潔明瞭に淀みなく一気呵成に発せられなければならないのである。まっこと信者の道は険しいのである。

 この、ナスターシャ・フィ・・フィ・・・んも~っ!だからロシア名は嫌なんじゃ! おほん、フィリッポブナというのはドストエフスキーの『白痴』に出て来る性悪女で、ムイシュキン公爵を手玉に取った妖艶な美女かつ悪女である。

 何もよりによってあんな女を選ばなくても良さそうなものであるが、我ら信徒としては教祖様が右と言えば右、フィリちゃんと言えばフィリちゃんなのである。師事するものには選択の自由はなく、あるのは自分のシャツを洗濯する自由くらいなものである。

 これには聞き手たる文芸誌『文藝』の編集部から再度、
「現実の女性では?」という質問が発せられて、これに我が教祖様は「どこかのマダム」と応じたものだから、さあ大変、教祖様が当時呑み歩いたBAR等々では「あら、あれ私よ、私のことよ」と鏡も見ず独断で決めつけたマダムたちのオンパレードだったそうである。

 師は長身痩躯、鼻筋の通ったまっこと見目麗しき美男で、しかも団十郎張りの良く通る男らしい声の持ち主であったからあちこちでモテモテだったのである。

 はい。質問?何でしょうか?私に答えられる質問にして下さいよ。ふんふん、私は女だから「好きな男は?」と聞かれた場合の答えを教えて欲しい・・って?同性愛じゃないから?・・じゃ両刀?あ、ノーマルなのね、うん、じゃあ教えちゃうっ!うふふっ!

 そんなこと経典に書いてあったかどうか知りませんが、とりあえずムイシュキン公爵かラスコーリニコフあたりにしておいたらどうでしょうか?
 は?現実の男性ですか?そりゃあーた、小杉とマキコさんって答えておくに決まってるっしょ?
 お後が宜しいようで・・テケテンテンテン・・・。





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Last updated  2005年02月16日 09時20分54秒
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