ユビキタスモバイルの夢

August 15, 2017
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カテゴリ: 車・ITS
デンソーが7月末に開いた4~6月期の決算説明会ではEVに対する質問が相次いだ。欧州の規制強化を念頭に置いた問いかけに対して同社幹部は「昨今の報道から電動化の動きが早期化した印象を受けるかもしれないが、想定内の範囲だ」と答えた。

 EVが話題の中心となっているのは欧州だ。昨年10月、ドイツの連邦参議院(上院)が2030年までにエンジン車の販売を禁止する方向で検討を進めていることが明らかになったのに続き、今年7月に入るとフランスと英国が相次いで40年までにエンジン車をEVなどに置き換える方針を示した。
 これまでもEVメーカーの育成を目指す中国や、世界的な環境規制の先駆けとなることが多い米カリフォルニア州などが普及を後押ししてきたこともあり、16年の世界のEV販売は前年比43%増の46万6000台に増えた。だが、世界の新車販売に占める割合は1%未満にとどまる。

■普及の条件は「1回の充電で500キロ走行」
 普及の前提となるのは、電池の性能向上だ。EVが普及する条件として「1回の充電で500キロメートルの走行が可能なこと」が指摘されている。だが、安全性を確保しつつエネルギー密度を高めて小型化し、充電時間の短縮やコスト削減を同時に実現する――という連立方程式を解くには時間がかかるという見方は少なくない。
 EV推進派の間には「問題解決のスピードは加速度的に高まる」との期待もあるが、英フィナンシャル・タイムズ(FT)は7月、「電池は原爆、集積回路、ペニシリンとは異なる」と題した記事を載せて「化学に依存する電池は半導体と異なり、年5%程度の性能向上が現実的」とする専門家の意見を紹介した。
 消費者立場に立つと電池の劣化も課題だ。ゴーゴーラボ(神奈川県鎌倉市)によると、量産型のEVとしてもっとも成功した日産自動車「リーフ」の直近の中古車価格は平均130万円前後となり、3カ月前より10万円近く下がった。EVの中古車が値崩れを起こしやすい背景には原価に占める割合が大きい電池の劣化があり、改善が要る分野だ。

 電池の材料の供給にも目を向ける必要がある。現在、EVに使われることが多いリチウムイオン電池の原料であるリチウムやコバルトの供給に限りがあるからだ。供給を増やすと同時に、代替素材の開発や使用量の削減が急務だ。コバルトの約6割を産出するコンゴ民主共和国には児童労働などの問題もあり、これも直視しなければならない課題だ。
EVは燃料電池車(FCV)と並び、走行時に排ガスを一切出さない「究極の環境車」と呼ばれるが、電気の源までさかのぼると別の側面も見えてくる。米テスラを率いるイーロン・マスク氏のように家庭に太陽光パネルを据え付けるといった取り組みまで進めれば話は別だが、特に新興国では環境負荷の高い旧式の火力発電所を使っている事例もある。


 エンジンを効率よく動かしてつくった電気を電池にためる仕組みで、EVの航続距離や充電の手間といった短所を補う。トヨタ自動車のHVも累計販売台数が1000万台に達するなど実績を積んでいる。EVやFCVに完全移行するまでの「つなぎ」との見方もあるが、環境問題の現実的な解決策として活用の場面はあるはずだ。
 実際、19年に「脱内燃機関」を実現すると表明したスウェーデンのボルボ・カーは、エンジンを併用するHVやPHVを作り続ける。デンソーのライバルである独ボッシュも今年2月、電動化に対応した事業部門の再編を発表した際、「25年に年間2000万台近いHVとEVが生産される」との見方を示した。

 デンソーのようなゼロエミッション車への段階的な移行論は株式市場を含む外部の評価がいまひとつだが、様々な前提条件を無視した楽観的なEV推進論は過剰な期待を生み、それが失望に転じるおそれもある。目の前にある課題を直視して現実的な解決策を探ることこそ、様々な利害関係者を抱える自動車業界に必要なアプローチだ。
出典:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO19994180V10C17A8I00000/?dg=1





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最終更新日  August 15, 2017 03:29:24 PM
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