「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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大泥棒の路地裏
第十三章
「雪山と僕」
いつもの馬車にいつもの御者。いつもと変わらぬ装備にいつもと変わらぬアイテムを入れたいつもと変わらぬバッグとポーチ。
しかし今向かっているところはいつもとはかなり違い、レヴァンから南へ大きく進んだ場所に位置する〈雪山〉であった。
つい数ヶ月前に猟区と定められるようになり、ギルドも調査中な為あまり知名度こそはないが、未知なるものが数多くあるということでハンターの注目も多く集めている場所だ。
ユーリンドのさまざまな通行手段を扱う人たちは雪山の方にまで手を伸ばすようになり、開拓作業なども行っているのだとか。だが今回の依頼は、そういった通行隊の護衛なんかではなく、ギルドナイツの仕事――調査として、ある生物の捕獲であった。
ドドブランゴ――知る人ぞ知る、新種のモンスターだ。寒い土地に生息し、群れでいるそうだ。白い毛に口から飛び出すほど大きな牙をもつ巨大なヒヒだとギルドマスターは言っていた。
もうすでにドドブランゴの調査は進んでいるのだが、どうしても一体だけ調査対象として捕獲してほしいとの要請だ。どこかの学者の依頼だが、新種のモンスターでありまだなぞの多い雪山であることから、ギルドの最重要依頼として銘打たれていた。
馬車に揺られる生活を送り丸四日が立つ。さらに三日間馬車を走らせてようやく雪山に着くそうだ。ハンターなら一週間以上の移動も稀ではないが、アニスターは近くの場所にしかいかなかったため初めての体験となる。
「ねぇ、フレイド」
「ふわ~あぁ?」フレイドはあくびをしながら返事をした。
「これから僕達が行く雪山だけど、フレイドは行った事あるの?」
「…ああ、まあ一応な」
眠そうに答えるフレイドの手には書類の束がくしゃくしゃになるくらい強く握られている。フレイドは馬車にいるこの四日間、ほとんどその書類を見ていた。
「なにか依頼をしたの?」
「いや、別にそういうわけじゃないんだけど……」言いにくそうに頭をかきながら、「一度ドドブランゴを狩ったからなぁ」
「……え?」一瞬、間を置いてアニスターは考え、フレイドの言った言葉の意味を頭に入れた。「……ドロブランゴを狩ったぁ!?」
いつものおしゃべり御者がアニスターの声にびっくりして手綱を落としかけ、バランスを崩しそうになって悲鳴を上げた。
「ドドブランゴな」頭痛そうにフレイドは顔をしかめて冷静に訂正する。
「えっ、でも、依頼をしていないってどういうこと? まさか…」
依頼を受けずに猟区のモンスターを狩る。すなわちギルドに無断で狩をしたということになる。それはギルドの掟に反する事で、重罪とみなされている。場合が悪ければ〈死刑執行人〉と呼ばれるギルドマスターが派遣されかねない。
恐る恐るフレイドの目を覗くと、彼は少年っぽく笑って両手を重ねてお願いのポーズをした。
「内緒な」
アニスターは騒然とした。今目の前に、ギルドナイツになろうというのにギルドナイツに反する掟破りを過去の話のように話す少年がいる。
「でもおかげで試験が楽になっただろ?」
今回の依頼はドドブランゴの捕獲だ。ドドブランゴは巨大なヒヒであるという事以外は何も知らない。酒場のハンターが噂しているのを聞いていただけなので、それすらも確証できるかもわからない。
だけど、フレイドがいる。フレイドはドドブランゴと戦い、実際に狩ったんだ。経験者がいるだけでも心強い。というか、本音を言うとこれはアニスターではなくフレイドの試験なのだから、当然ではないか。
「じゃあ、ドドブランゴを知っているんでしょ? どんなモンスターなの?」
と、聞くとフレイドは得意げに微笑を浮かべて、論説を発表する学者のように態度を大きくした。
「いいか、アニー?」という言葉から始まるフレイドの教授はいつもよりずっと饒舌だ。その件についてはもう慣れたと言っていい。「ドドブランゴは他の飛竜なんかと比べると結構俊敏に動きまわる。大型のモンスターというだけあって力も強いし、奴には腕がある。俺達と同じようにな。その力強い腕で岩を持ち上げて投げたりもしてくるんだぜ。
でも奴の腕の振りは大ぶり大雑把で見切りやすい。拳は単調な動きしかしないから、少し気を使っていればまあ危険じゃないさ。それでも奴はそれをいろんなものと使ってカバーに入る。奴が鳴けばいつの間にか周囲にブランゴが集まってきたり、あるものなんでも投げてきたり。――まあこれも、あいつの大雑把な動きを捉える事ができていればなんとかなる。
あっ、でも油断はするなよ? あいつには飛竜のように翼があるわけじゃないが、足腰が恐ろしく強いんだ。全身の力を使ったジャンプは軽々と谷を越えることだってできる。だから逃げ足も早い上にすぐに体勢を立て直すのが厄介だ。ペイントボールだって毛をむしってはがすしな」
「先生、対処法はあるんですか?」ノリノリなフレイドに乗じてアニスターも生真面目な態度で言った。
「ああ、あるともアニスターくん」さらにフレイドは乗る。「題して、全滅作戦だ!」
「…は?」突然頭が冷静になった。「全滅?」
「そうだ」フレイドの顔は自信満々で、得意げだ。「あいつは仲間を呼ぶからな。大量にブランゴがいる状態でやりあったら勝ち目がない。だからといってブランゴも無限にでるわけじゃないだろう? ――だったら、そのブランゴが尽きるまで倒せばいいんだよ。全部倒し終われば、ドドブランゴ一匹だけを相手にできるからな」
「えっ、でも、それって…」
つまり、結局ブランゴ全てを相手にするということだ。それがどれほどの労力を使うことになるのか、アニスターは知らないがフレイドは知っているのだろうか。群をなすというほどなのだから、かなりの数とみて間違いはないはず…。
「前に俺が一人でやったときは丸三日かかっちまったなぁ。なんたって持久戦だしな」
「そんな作戦で大丈夫なの? 僕はそんなに使い物にならないだろうし…」
「いやいや、お前がいるからこの作戦はなりたつんだよ」
「えっ?」そんな馬鹿な、とアニスターは頭の中で思った。自分の使い道と言えば、せいぜい囮がいいところだろう。
「ランポスを思い出せ、アニスター」
「な、ランポス? でも、なんで?」
「ランポスは群の雑兵だ。数だけのな。だから大した事がない。対するドスランポスは身体が大きくて一撃一撃が強力だ。そして軍のかなめである。つまり大将であり、大砲のような存在だ。
――つまり、俺が言いたい事はこうだ。ドドブランゴがドスランポスで、ブランゴがランポスだ。お前にドスランポスの相手はまだ早いだろうけど、ランポスならどうにかなるだろう?」
「っていうことは、僕がブランゴの相手をするってこと?」
「そうだ。お前ならできるはずだ」
「でも、でもブランゴとランポスは全然違うんじゃ…」
「ああ、見た目も行動も全然違う。だけど、お前が相手をして手に余るというほどでもない。ドドブランゴは俺が相手する。それに――」フレイドはアニスターの席の隣に掛けてあるコロナを指した。「連中はお前のその剣の炎の力に弱い。ランポスよりずっと簡単に倒せるはずだ」
「ほんと?」そのフレイドの言葉を聞いて、少し希望が湧いてくるのを感じた。
「おう、だから現場では俺に任せてりゃ大丈夫だって。ドドブランゴはある条件を満たすと執拗に一体の得物だけを狙うからな。その特性を生かせば、奴は俺にしか攻撃を仕掛けない」
「フレイドは大丈夫なの?」
「何言ってんだよ、アニー」フレイドはにやりと笑った。「片腕のフレイを目指す人間が、こんなもんで手こずってられるかっての」
五日目の朝、温暖期だというのに肌寒い目覚めがやってきた。馬車は走っているが、御者も寝ているためかなりゆっくり進んでいる。しかしこの馬、主人が眠っている時でも目的地まで走るなんて、どんな発達した頭脳を持っているのだろう。
窓から外を見ると、一面が雪に覆われた銀世界の光景が広がっていた。
そこは家が建ち並ぶ町で、家の屋根や地面には雪が厚く積もっている。あまりにも厚く積もっているため、アニスターは雪の乗っかる家を見てショートケーキみたいだと思った。
「わぁ!」初めてみる光景についアニスターは声を上げた。その声でフレイドが起き、御者が「ぎょえっ」と謎の声を上げてビクッ、と起きる音が聞こえた。
「アニー、どうした?」
「ひぇえ! 寒い!」アニスターが答える前に御者が大声を上げた。「なんだ、どこだここは!?」
「うるさいなぁ」外を眺めてフレイドは言った。アニスターより遥かに落ち着いた様子で銀世界を見つめている。「もうすぐそこまで雪山があるってことだろうよ」
「へぇ、そうなんだ。あと二日もあるから、てっきりまだまだ雪なんて見えないもんだと思ってたよ」
雪を見るのは初めてだ。だいたい話に聞いたり本を読んだ時に背景としてあるのを見るくらいで、実物を見る機会は全くなかった。
白くて、冷たい。それくらいしかわからないし、ただ固体状になった雨のようなもので価値もないことは承知の上なのに、雪を見ているとなんだかわくわくしてくる。
「ここが雪原地帯だとすると…もう中間区の町に着いたってことか」
「それってもう雪山が近いってこと?」
「そうだな、思ったより早く進んだってところかな。でも俺達の目的地までは最低でもあと一日は掛かるだろうよ」
「そんなに広いんだ…」
「そりゃユーリンド事態広いからな。人は少ないけど、この辺にはいくつか町もあるんだぜ。それにもっと南に進んだ所には氷でできた島があるそうだ」
確かにユーリンドは広い。大陸の四分の一を占めるだけでなく、グラベリスの領地もものにしたユーリンドはもはや大陸で一番大きな国となった。そのせいで狩の猟区が拡大したといってもいい。
「氷でできた島かぁ」
「そういうのお前好きそうだもんな」
「え、なんで?」
フレイドはにんまりとしている。それはどこか大人の抱擁じみたものだった。「だってこういう話したときのお前の顔、嬉しそうだもんな」
「…そんなことないよ」
「そんなことあるって。絶対お前そういう冒険みたいなのが好きなんだよ」
と、言われても実感はあまりわかない。でも、嫌いじゃないと思う。現にこうして行った事もない土地に初めて行くとなると、不安よりも先に楽しみが込みあげている。
否定はできないな、とアニスターは笑った。
「フレイドだって、片腕のフレイの話をしている時とか凄い嬉しそうだったじゃない」
「まあ、そりゃ憧れだしな」フレイドは恥ずかしがる事もなくあっさり認めた。そういえば、この事を言い出したのも彼自身だった。「一部では英雄視されるほどいっぱい功績をあげていたわけだしな」
「どんな功績を上げてきたの?」
「そりゃあ、グラベリスの軍人として誇れる成績を持っていたんだよ。彼が指揮につく戦争は負け知らず。フレイ自信が恐ろしく強くて、一騎打ちで勝てる相手なんて一人もいなかったんだ」
「でも、モンスターハンターなんでしょ?」
そういえば、聞いた事がある。グラベリスは他の国と比べて兵器学が進んでおり、その実験としてモンスターが狩られていたのだという。そのせいでグラベリスのモンスターはほぼ絶滅し、それと同時にモンスターハンターもグラベリスから姿を消したのだという。
「ああ。でも彼だけは特別にモンスターハンターとしても軍へ招き入れられたって話だ」
「凄い人なんだね」
「凄いなんてもんじゃないさ。でもまあ、俺がこのまま彼について語ると雪山につくまでかかりそうだからな。それでも聞きたいってんなら話すけど?」
「いや、遠慮しとくよ」フレイドなら本気で一日中話かねないと思い、アニスターは断った。
六日目の朝、村も見かける事がなくなり、周りは雪に覆われた山道になった。フレイドはこの先を過ぎればもう少しでつくのだという。
アニスターは昨日のフレイドの話を聞いていくつか引っ掛かる部分を見つけ、少しだけもやもやしていた。
片腕のフレイ――一部では大量虐殺者だの、英雄だの、綺麗に二つにわかれる二面的な称を持つ男に憧れるフレイド…。
片腕のフレイ、フレイド…。
ん?
フレイド、フレイ。フレイフレイド。フレイド。フレイ。
アニスターはフレイドに連れられて行った博物館の事を思い出す。あの時片腕のフレイの肖像画を見た時、思ったより新鮮さを覚えなかった。それどころか、久しぶりにみたという思いだしに近い何かがあった。
初めてフレイドを見た時、初めて会うはずなのにどこかで見た事あるような気がした。道行く人をたまたま覚えており、たまたまその人物と会ったような、そんな感覚があった。
まさか…。
「フレイド?」
丁度馬車のなかで食事していたこともあり、パンをかじっていたフレイドはくぐもった声で「んん?」と返事をした。
正面からフレイドを見る。そして片腕のフレイの肖像画を思い出す。髪形もそっくりだ。若干フレイドの方が長くて、色が薄いだけでそれ以外を除けば全て一緒だ。
「もしかして、君、片腕のフレイの親戚なの?」
馬車の御者が突然噴き出した。多分アニスターの声が聞こえたのだろう。肝心のフレイドはきょとんとアニスターを見ている。
「片腕のフレイ!?」御者が身を乗り出してアニスターの席にかがんだ。
「あれ、知ってるんですか?」
「そりゃあ、有名人じゃないか。逆に知らない人はいるのかいって言いたいくらいだね。特にレヴァンであの戦争を味わった人間は、忘れたくても忘れられないだろうよ」
その戦争の時、アニスターはレヴァンにはいなかった。遠く離れた辺境とも呼べる、小さすぎる村にいた。あの時はハンターになる気もなかったし、ましてや情報の伝達が一年周期でしかやってこないあの村では、レヴァンで戦争が起きていた事なんて知らされてもいなかった。
「んで、片腕のフレイがどうかしたの?」と御者はアニスターに顔を近づける。
「あ、いや、なんでもないですよ。ほら、前見ないと馬車が…」
おしゃべり御者はこれから何か花を咲かせることのできるおしゃべりが見つかると思っていたのか、しょんぼりして自分の席へ戻っていった。
御者が自分の席に戻り馬に鞭うち始めるのを確認して、フレイドはアニスターを見て小声で言った。
「それで、フレイがなんだって?」
「君は片腕のフレイと親戚かなんかなの?」
「………どうしてそう思う?」
「博物館に行ったの覚えているでしょ。そこで見た片腕のフレイの肖像画と君がちょっと似てるなぁって思ってさ。それに、名前も近いし」
「それで、俺がフレイと血のつながった兄弟かなんかと思ったんだな?」
フレイドの声は御者に聞こえない程度に抑えられていたが、どこか抑圧的だった。それになぜか口もとに不敵な笑みが浮かんでいる。
背筋に悪寒が走り、アニスターはあることに気づいた。もし本当に彼が、フレイドがあのフレイの親族だとしたら、彼はグラベリスの人間という事になる。つまり、グラベリスの残党という扱いになるのだ。
考えに乗せるようにフレイドの笑みは次第に笑い声になりはじめる。彼の返答が怖くなってきて、アニスターは身体が震え始めるのを感じた。
「フッフッフッフ…」
「ふ、フレイ、ド?」
「フフフ…」次の瞬間、まるで爆発したかのようにフレイドは大笑いを上げた。「ハーッハッハッハッハ!」
「え、ちょ、ど、どうしたの?」
もしかして、と嫌な感が走る…。本当に彼がグラベリスの残党で、僕に知られたとしたら…。
「アッーハハハ! んなわけぇねだろ!」
身構えて悲鳴を上げる一瞬前、フレイドの発した言葉にアニスターは戸惑って何も言えなかった。
「…へ?」ようやく口から出た言葉が、この情けない声である。
「俺がフレイと親族ぅ? 実際会った事も見た事もねぇよ! 名前が似ているのは偶然だし、この髪形も装備も彼に似せて俺が勝手に真似ただけだよ。でもま、それだけで兄弟とかに思われるなんて光栄なことだな」
つまり、アニスターの考え過ぎということだ。勝手に変な妄想を広げて、それに脅えていただけなのだ。そう思うと恥ずかしくなってきた。
「おやおや、アニー。顔が赤いぜ? 名推理を披露した後はゆであがったタコのモノマネか? 芸達者なことだなー」
「うぅ、う、うるさい!」恥ずかしさとフレイドへの怒りでアニスターは怒鳴り声を上げて窓の方を見た。外は相変わらず白一色の世界だ。昨日の夜は雪が降っていて、気がつけば寒いからとかいう理由で御者がアニスターとフレイドの間で包まって眠っていたものだ。
今日もよく冷える。こんなに寒いのは初めてだ。空は晴れているのに、下は冷たく真っ白な雪で覆われている。不思議な光景だ。
「アニー?」アニスターの機嫌を確かめるようにフレイドは顔を覗き込んできた。
「…なんだよ」
「他にも聞きたい事はあるかい? もうすぐ現地につくだろうし、それまでの暇つぶしとしてなんでも答えてやるぜ。フレイの兄弟様がよ」
さっきの事をまだ引きずろうとしているようだ。
「…じゃあ、僕と初めて会った時のあの密林でやってた仕事ってなに?」
この質問にフレイドがぎくりと肩を強張らせた。
「結構鋭くなったもんだな、アニー…」
「別に。ただ今となったら、何となく気になった程度だし」
「ああ、そうだな。確かにあの時の言い訳はいい加減だった」うんうん、とフレイドは頷いた。「あんときは依頼だのなんだの言って適当にごまかしてたけど、別にそういうもんじゃなかったんだよ」
「依頼じゃなかった?」
それは、つまり…嫌な予感。
「実は俺とある場所からレヴァンに移転する途中でよお。近道だったんであの密林を通るしかなかったんだよ。そしたら小腹が減ってきて、アプトノス一頭でも倒して飯にありつこうと思っていたら、お前がリオレイアに追いかけまわされるところを見かけてさ。つまりそういうこと!」
つまり猟区に許可もなく勝手に入ってきたということ! とフレイドは言っている。ついでに言うなれば、これからギルドナイツになるべき人間が当然のようにギルドの掟を破ってるんだぜ! と宣言をしているということだ。
ドドブランゴの時といい、今回のことといい、フレイドにはため息するばかりだ。なんともまあ、呆れる。
こんな調子で大丈夫なのだろうか。仮に今回の試験がうかってギルドナイツになれたとしても、その先がやっていけるかわからない。
フレイドは頼りになるけど、やっぱり子供だしまだまだ未熟すぎるところがある。特に内心面的なところが。
なるほど、今のギルドナイツにパートナーが必要なのはこの為だったのか。アニスターは納得した。フレイドのように未熟な人間もギルドナイツになるのなら、堅実にいきたいはずだ。だからフレイドが安心して選べる人間は、しっかりしているはずだ、と。
フレイドよりはそこそこ常識があるとは自分でも思っている。だから、なおさら僕がしっかりしないといけない。
アニスターは誓った。フレイドを支えるのは、僕の仕事だ。僕が選ばれた理由だ。
馬車を走らせて六日と半日、辺りは白以外の色を見つけるのも難しくなっており、どこもかしこも冷たい風が吹いている。初めて来る場所で道に迷うが、まあ道なりに進めばつくのだし心配はいらないだろう。
正面には二つの山が見えていた。白い雪に覆われた目的地の〈雪山〉が。あれが今回、小さい栗色頭の相棒と新しい赤頭の相棒が依頼を受ける場所だ。
御者は馬に鞭を打ち、馬車を急がせた。
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