大泥棒の路地裏

大泥棒の路地裏

少女の歌 語りだし




 未開の地での狩は今までの狩とは違って新鮮な気持ちであった。それも今回は今まで仲間に囲まれたものと違い人数も少ない。とはいったものの、仲間内でやったクジで外れた『ハズレ組』という奴なのだが、少年と娘は気にせずその場の空気を満喫していた。

 ベースキャンプの張られていない未開の地、この密林では野宿という形になるのだが、二人のハンターは勿論それについても備えはしていたし、問題は特に無かった。ここら一体のモンスターを片付け火も焚いた。生き残りのモンスターも朝までここには近づかないだろう。

 日が昇っているうちは蒸し暑いこの密林も、海の側で夜となると逆に寒いくらいであった。焚き火に体を照らし温めながら、娘は空を見上げどこまでも続く星々の街道を眺めていった。気が抜けるひとときだ。モンスターが襲ってくる心配もなければ、未開の地であるこの場所に賊がいるわけでもない。だがそれなりに警戒は必要であった。いつでも手を伸ばせる位置に武器のボウガンを置き、モンスターハンター特有の竜の鱗や甲殻から作り出した防具も外さずその場で足をたたんで座る。

 戦姫と呼べそうな風貌だが、女性ハンターならこのくらい当たり前。それでも彼女は女を捨てたハンターとは思えないくらい凛とした姿であった。

 少し離れた場所で、ベースキャンプほどとは行かずともそれなりに立派な小さい天幕を張り終えた少年が娘に歩み寄る。

 寒い寒い、と声をこぼして焚き火の前にかがみこみ、冷たい手を照らした。

「ビスケ、テント張り終わったぜ。今のうちに仮眠くらいはとっときな」

「うん、ありがと♪」

 ビスケと言われた娘は笑顔で頷く。少年はビスケと対称になるように焚き火を挟んで座り、尻を柔らかい土に沈めた。

 心配事が少なくとも、油断は出来ない。ここは狩場。いつどこでなにが起きるのかわからないのだ。今回は一人ずつ天幕で仮眠を取り、一人が見張る。これを交代制でやろう、と言い出したのは少年だった。少年は背中に掛けた大きな大剣とも呼べる、反った形の刀身をした武器を下ろして、ビスケを見た。

 一向に立ち上がろうとせず星を眺める彼女の口はうっかり開いている。腕のいい銃士である彼女の弟子も、確かよく同じようなことをしている。もっとも、彼女の弟子は星を見てボーッとするほどロマンチックではないのだが。

 鼻歌まじりで少年は腰のポーチから砥石を取り出し、武器の手入れをしようと準備する。その鼻歌に交えて、ビスケも同じような曲調の鼻歌を優しくそれでいてはっきりと鳴らした。

 二人の鼻歌が混じる。だが少年の鼻歌はどこか音程がずれていて、せっかく綺麗なビスケの鼻歌が台無しになりかけていた。

 一通り曲を終えて、ビスケは申し訳なさそうに苦笑する。

「リズムは申し分ないんだけどねぇ」

 眉を上げて少年は口をへの字に変えた。

「どうせオレぁ音痴ですよーだ」

 よほど自身があったのか少年は本気ですねている。ビスケはそれを見て微笑していた。少年も自分はもうそんな歳でないことは知っている。どこか悔しい気持ちを抑えて、少年は平静を保った。

「なあビスケ」少年の声にはもうすねるとか子供染みた口調なんてなかった。「もう歌はやらないのか?」

 ビスケは何も言わず空を見上げ、少年のこだまする言葉の一部を繰り返してみた。

「“歌”、かぁ・・・」











少女の歌

 モンスターハンター二次創作小説『真夜中突撃団』番外編












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