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地球温暖化の影響で日本の夏は、
こどもたちにとって夏と言えばプールが楽しみの一つであろう。でも今や外に出ることは危険なため、
なんと、気の毒なことだろう。屋外で泳ぐからこその楽しみがあるというのに。
私が小学校に入ったのは五十年以上も昔だが、プールはなかった。
しかし、学校に浮き輪は持っていけない。
多少は泳げるという子たちはスイミングクラブに通っているか、親に泳ぎ方を教わっていて慣れている子たちだ。
「やーい、怖がってらー」
水までかけられる。泣きそうになった。プールなんかできなければ良かったのにと学校を恨んだ。
その年の夏、
行ってみて驚いた。辺り一面、田んぼが広がり、
そんな私を見て兄が、誘ってくれた。
「ただのプールがあるんだぞ」
祖母の自転車に二人乗りをして、でこぼこのあぜ道をガタゴトスピードをあげて走るものだから、転倒した。自分の意思でなくスピードを出され、ひっくり返って痛い思いをするなんてさんざんだ。そんな苦労をして到着したのは確かにプールだった。プールの形をしている。
地元の子たちはそのプールを使わないから管理していなかったのだ
兄は慣れているのでその貯水池みたいなプールですぐに泳ぎ始めた。そして水を怖がる妹が実に面白かったらしい。学校のプールと同じだ。
うわっ、こんな汚い水。きれいな水だって怖いのに、
何度も投げ込まれてもがいているうちに私は気付いた。怖くないではないか。
深緑色の水でも入るとひんやりして気持ちがいい。
数日すると私は自分からどんどんプールに入るようになった。
最初はばた足をしているだけだったが、気付くと私の横では小さなアマガエルがすいすい泳いでいる。カエルと並んで泳いでいると思ったら可笑しくなった。
カエルの真似をして足を広げたり伸ばしたりしてみた。おお、
私がまったく水を怖がらなくなったので兄は苦笑した。
「なんだ、怖がらないのか。つまんねえな」
九月、学校のプールが再開した。
私は堂々と顔を水につけ、
七月に私をからかって水をかけていた男児が兄同様、驚いていた。
「なんで急に泳げるようになったんだ。
だって、私の先生はカエルだもん。私はツンと頭をそびやかし、得意でならなかった。