17. Weingut van Volxem
ファルケンシュタイナーホーフを後にした我々は、ファン・フォルクセン醸造所に向かった。毎年 8
月最後の週末に新酒試飲会が開催されており、訪問予約をとろうとしたところ、ちょうどその週末だから時間は決めずに気楽に来てほしい、とのことだった。
試飲会は相変わらず大勢の人であふれていて、その混雑ぶりは全く変わっていない。人混みをぬうようにして挨拶してまわるオーナーのローマン・ニエヴォドニツァンスキー氏や醸造責任者のドミニク・フェルク氏、ゲストで出展しているルクセンブルクのアビ・デュール氏、それに醸造所の従業員達にも何人か見覚えのある人がいて、なつかしかった。
この新酒試飲会には 2001
年、つまりローマンがゲルノート・コルマン氏と一緒に醸造所を立ち上げた最初のワインの時から来ている。まだ学生だった今の奥さんも会場でローマンに寄り添っていて、あの時は参加者のためにスープを作ったのだけれど、何かの事情で出すのをやめたい、と言っていた気がする。初々しい二人だった。
2004
年の新酒試飲会にはフェルク氏が初めてテーブルの後ろに立ってサーブしていて、研修生からフェルク氏がいかに仕事熱心かを聞かされた。試飲会がとても混雑するようになったのはその年あたりだったか。手酌は出来なくなって、グラスに注がれる量も、舌の上で転がすことがかろうじてできるくらいに減った。その翌年くらいからは招待状が必要になり、入手も年を追うごとに難しくなって行ったが、私は毎年どうにかこうにか、潜り込むことに成功していた。
ファン・フォルクセンの 2014 年産はおおむね申し分ない。ほっそりとしてエレガントで、酸に切れがあってミネラル感に富んでいる。とても上質なザールのリースリングだ。ただ、アルテ・レーベンとシャルツホーフベルガーは若干表情に乏しい気がしたが、おそらく瓶詰めして間もない為だろう。 2009 リースリング・ゼクト・ブリュットは芳醇で鮮烈。これほどインパクトのあるゼクトは他にない。
この試飲会だけを見れば、醸造所は何も変わっていないように見える。しかし醸造所全体では、醸造施設をザール川の対岸にある丘の上に新築し、オックフェン村のガイスベルク 14ha
をマルクス・モリトールと一緒に開墾している。ガイスベルクは 1900
年頃に競売会で高値をつけていたグラン・クリュだが、いつしか忘れられ、うちすてられていた幻の銘醸畑だ。その畑の古酒を内輪で集まって試飲して、そのポテンシャルに感動し、 50
人あまりもいた地権者を一人一人説得して購入したという。 2016
年春に苗木を植えるそうだから、リリースはまだ先のことだ。早くて 2019
年だろうか。( 2021
年 1
月現在未リリース)
ファン・フォルクセンを一通り試飲した後、我々は一度ザールのワイン祭りに参加している他の醸造所を訪れ、その後夕方に再び戻ってきた。人々はあらかた立ち去り、アビ・デュール氏のシャトー・パークを落ち着いて試飲することが出来た。リースリングやピノ・グリ、ミュラー・トゥルガウといったドイツワインでもなじみのある品種を使っているが、スタイル的には明らかにフランス的な趣がある。モーゼル川上流のグレーヴェンマッハー村にあるのだが、職人的な手作り感のあるワインで、濃厚でしっとりとして、複雑で落ち着いている。
すっかり満足して会場を去ろうとしたとき、ちょうど従業員一同で記念撮影をしているところだった。みんなの笑顔がすばらしい。私も一枚撮らせてもらった。出来ることなら、来年もまた訪れたいものだ。
(つづく)
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