2015 12 月 ドイツ出張備忘録 5 Weingut Stephan Steinmetz
ルクセンブルクの醸造所を 2 軒廻った後対岸に渡り、その日最後のドイツ側の醸造所を一軒訪問。午後 4 時で早くも夕闇が迫っていたが、シュテファン・シュタインメッツ醸造所 Weingut Stephan Steinmetz のあるヴェアの町に入ると、いかにもドイツらしい町の様子にほっとした。と言ってもメルヘンチックなハーフティンバーの家並みがある訳ではなく、ごく普通のスレート葺きの住宅が並んでいるだけなのだが、家々の壁や屋根の色、道路標識の言語、道路の舗装の仕方やカーブの曲がり具合、建物と道路との間にある空間などが、全体として馴染み深く感じられた。

シュテファン・シュタインメッツ醸造所は、モーゼル上流の生産者の中でも割と知られた醸造所で、トリーアの百貨店カーシュタットのワイン売り場でも手に入った。目新しかったのは、
2015
年にビオ認証を取得したということ。以前はオーバーモーゼルでは私の知る限りでは一軒、ヴィンシェリンゲンのマンフレッド・ヴェルター醸造所がエコヴィンに加盟していたが、近年はビオを採用する醸造所が次第に増えつつある。その一つであるニッテルのカール・ゾンターク醸造所は、ホスピティエン慈善連合醸造所のアルンスさんの奥さんの実家なのだが、アルンスさんに言わせると「ビオを採用しているのは、ごく一部の醸造所にすぎない。トレンドではない」と言う。
ちなみに、モーゼルにはもう一軒、よく知られたシュタインメッツ醸造所がある。中流のヴェーレンにあるギュンター・シュタインメッツで、こちらの現当主の名前がシュテファンといい、モーゼル上流にある今回訪れた醸造所の当主と同じ名前だ。ただ、ヴェーレンのシュテファンはStefanで、上流のシュテファンはStephanと、綴りが違う。ちょっとだけややこしい。
それはともかく、上流のシュタインメッツでは 2007 年に正式にビオを採用。農薬の使用は健康に害を与えることを、父の代から既に認識はしていたそうだ。シュテファンが醸造所を継いでから試行錯誤を重ね、ようやく認証にこぎつけた。
醸造所の現オーナー、シュテファン・シュタインメッツが父から醸造所を継いだのは、 1993 年頃の 22 歳の時だ。 17 歳の時に醸造所を継ぐ決心をしたが、畜産と醸造を営んでいた父は息子の将来を案じたという。何しろエルプリングは高く売れない。勢い量をつくってしまうので、水っぽい安ワインというネガティヴなイメージがある。フレッシュな酸味と軽さから、スパークリングの原料としてはその価値は認められていたものの、大量量産されるゼクトの原料としてはリースリングほどの値では売れなかった。シュテファンが醸造所を継ぐとともに事業を醸造一本に絞り、エルプリングの他にヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダーの辛口に主力を移した。最初の頃は父が醸造していた甘口を欲しがる顧客もいたが、そのうち高品質な辛口の生産者として定評を得ていった。
現在、貝殻石灰質土壌の畑で栽培するのはエルプリング、ヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、オクセロワとシュペートブルグンダーで、リースリングは栽培していない。スティルワインの他に、エルプリングのクレマン、シュペートブルグンダーのブラン・ド・ノアールとヴァイスブルグンダーをブレンドしたクレマン・ブリュット『リエゾン』と、シュペートブルグンダーのクレマン・ロゼ・ブリュットを醸造している。
現地小売価格はスティルワインが
5
~
7.60Euro
、クレマンが
9.50
~
12.50Euro
。ヘクタールあたりの収穫量は約
60
~
65hl
。とてもクリーンかつアロマティックで、リンゴや洋なしのフレッシュな果実の香るストレートで親しみやすい辛口だった。
試飲した大きな納屋のような空間の片隅にはパンやピザを焼く石窯があり、パチパチと燃える薪のはぜる音がずっと聞こえていた。 6, 7
歳くらいだろうか、我々を到着時に自ら握手で出迎えた息子さんが時折顔を出しては、何か手伝うことはないかと父親に聞いていた。幼いながらも次の世代の主であることを自覚しているようでもあり、ほほえましく、頼もしかった。
(つづく)
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