2017 年 10 月 ドイツ出張備忘録 1. Weingut Martin M üllen
ヴィノテーク誌からは、年に一度くらいのペースで現地取材のオファーがあった。その際見聞したことは、当然ながら依頼主に原稿という形で報告することが最優先となる。 2017 年 10 月のモーゼル取材もそんなわけで、出張備忘録はごく簡略なものしか残っていない。ここでは必要に応じてそこかしこを補いながら、写真を中心に報告する。
まず、トラーベン・トラーバッハのマーティン・ミュレン醸造所。

100
年くらい前のバスケットプレスを今も愛用している。当主のマーティン・ミュレン氏は、
1991
年に醸造所を設立した。実家も醸造所だが、父の跡を継ぐというかたちではなく、独立しての設立だった。その理由が、バスケットプレスだ。

1983
年に、マーティンの父はそれまで使い続けて来たバスケットプレスをやめて、当時主流になった水平式ニューマチックプレスを導入。シリンダーの内部でゴムの袋がふくらみ、ブドウをシリンダーに押し付けることで果汁が得られる、現在でも一般的な圧搾機だ。しかしマーティンは、バスケットプレスで圧搾した果汁のほうが、ずっと美味しいワインが出来ると確信した。自分が醸造家になるならば、バスケットプレスの伝統を守ることだという使命感を抱いていたのかもしれない。

バスケットプレスは圧搾に約
20
時間かかる。夕方
6
時ころから圧搾を始め、翌日早朝
6
時ころに一度止めて、搾りかすをほぐし、再び圧搾して夕方
4
時ころに終える。ほぼ、丸一日がかりだが、得られる果汁はとても濁りが少ない。葡萄の果皮がフィルターの役目を果たす。とりわけ最後の
1
ℓが貴重で、マーティンは「ワインの魂」と呼んでいる。

約
20
時間かけて圧搾するので、果汁はその段階で適度に酸化されている。果汁に含まれる酸素は酵母の働きを助け、フーダー樽の
10
カ月以上発酵・熟成し、瓶詰前に一度だけ、微量の亜硫酸を加えるが、
2017
年産からは、亜硫酸無添加キュベも醸造している。

2017 年に訪問した当時、ガイゼンハイム大学で学んでいたマーティンの息子ヨナスは、父の跡を継ごうという意欲に満ちていた。昨年からは時々、オンラインで試飲セミナーを親子で主催したりしている。仲の良い親子だ。

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