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この本を手に取りながら、SFを読むのは久しぶりだな、と思った。星新一先生を読み耽っていたの小中の頃から、時代小説、ミステリ、ファンタジー、新書本界隈を渉猟して回る、そんな読書遍歴の合間に、時折古典SFといった感じで、長らく新作SFは読んでなかったな、と。シュレーディンガーの少女 (創元SF文庫) [ 松崎 有理 ]さて、松崎先生によるSF短編集。題名から想像したより、舞台設定はディストピア寄り、なのですが、作者の優しさ故か、多少救いのある世界観。作者曰く、初めて女性主人公で揃えた作品集とのことで、どの女性もいきいきのびのびと活躍している姿が印象に残ります。収録された各作品を見ていきましょう。「65歳デス」題名から察せられるように、65歳で死んでしまう世界を背景に、非合法な職で活躍する老主人公(この世界では「老」と呼ぶ方が良い年齢)と、スラム出身の少女との出会いと継承を描いた物語65歳が上限というシステムが、殺し合いや懸賞金、収容ではなく、病原菌で、というのが、作者の優しさを象徴してるな、と。星新一先生監修の投稿ショートショート集『ショートショートの広場』に、老人狩りの話があって、それくらいの衝撃を覚悟していたので、主人公の仕事も含めて、柔らかい話…まぁ、ラストは少々ハードですけど、「シュレーディンガーの少女」最後に収録されている表題作を先に紹介するのは、上の作品との対比から。打って変わってハードでSFな世界観。なかなかの実験作だと思います。正直、ちゃんと読めている自信がありません(笑)山口雅也先生はパラレル英国を舞台にした「キッド・ピストルズ」シリーズの中で、「シュレディンガーの思考実験は、むしろ小説家に響いた」旨のことを言われていて、この作品もその流れの中に位置付けられるわけです(題名がそもそもですし)無限に分岐する世界の中には、ハッピーエンドも、まったく異なる世界もある、となると、ほぼ同じ登場人物さえ…いや、父と母が、祖父と祖母が、出会う過去すら分岐出来るのですから、この地上が舞台でさえあれば、1つの小説に閉じ込めることが出来てしまいます。「量子自殺」をベースに「ディストピア×ガール」がテーマとのことなので、方向性が暗くハードになるのは否めませんが、多世界解釈を突き詰めるなら、森見登美彦先生の『四畳半神話大系』くらい分かりやすく落とし込んで欲しかったと思います。四畳半神話大系【電子書籍】[ 森見 登美彦 ]「太っていたらだめですか?」太っていることを「悪」とする政府が、BMI値が高い5人の男女を「デスゲーム」のプレイヤーとして選び、その様子を中継する、その悪趣味さに抗議が入って、政府は転覆する、という荒唐無稽なお話。主人公が活躍するクライマックスこそ、格好良くて面白い、なんですが、「大切な人を人質に取られたから」で、いきいきと協力する司会者はじめシェフやスタッフという設定に、違和感ないとは言えないなぁ…これ、小説だから(読む人が限られてるから)成り立っていますけど、これマンガのサイトとかに載ってたら、ツッコみが多過ぎて炎上する気がする…ラストの展開は好きなんですけどね。「異世界数学」”数学が出来ない私が、数学が禁止されている異世界に行ったら、数学の楽しさに気付いて、世界を救いました”という作品。いわゆる異世界転生モノっちゃそうなのですが、短編でスッキリまとまっているのと、ラストの現実世界の展開が、爽やかで気持ち良いのが良いですね。途中、数学の楽しさを伝えるシーン、自力で解の公式の説明を生み出すシーンは、作者の体験なのかもとニヤリとさせられます。「秋刀魚、苦いかしょっぱいか」秋刀魚がいなくなった未来で、秋刀魚を知っている、覚えている人達の力を借りて、フードプリンタで秋刀魚の味の再現をする小学生の話。この作品集の中で、最もSFしていて、未来が描かれているのは、この作品だと思います。個人的には好み。環境問題への警鐘、少女の成長、未来の生活の表現、絵本にも出来そうな良い作品でした。作者さん、本当は「ディストピア」描くの苦手なんじゃないかな…こういう、ハートウォーミングなお話の方が、上手だなと思います。「ペンローズの乙女」南の島への漂着で始まった物語が、もっともっと大きな物語に飲み込まれていく、不思議な読後感のある話です。南の島の物語だけなら冒険譚としてありそうですし、歴史の断片を描くだけなら新書でも書かれていそうです。そこに宇宙の終焉に向けた物語が書かれることで、それぞれの話が絡み合い、嚙み合って、ひとつの物語となります…と言いたいところですが、もう少し関連性があっても良かったのではと思ってしまいます。作者曰く、とても長い時間軸の話を書きたかった、ということで、宇宙の終わりに立ち会う種族という設定が、とてもSFしているなぁ、と思います。太陽がいつか地球を飲み込む、そのことですら怖いのに、その先にある、何もなくなってしまった虚空である宇宙を想像するのは、崖の端から深淵をのぞき込むような怖さがあります。うーん。実は発刊されたのもそれなりに前で(文庫版が出たのが2022年)、たまたま平積みされていて、久々にSF読みたいな、で手に取ったのですけど、そして、星新一先生に慣れている身としては、ファンタジーに寄っていても、別に目くじら立てるわけではないのですけれど、"刺激が強いわりには、物足りなかった"が正直な感想です。なんかもっとこう、面白くなりそうな気はする。とは言え、それでも、作品を創るというのは大変なことですし、描写が読みやすいのも確かです。作者の今後のご活躍を祈念しております。なお、女性の書かれたSFで、最高峰の一つはこれですね。グリーン・レクイエム 新装版 (講談社文庫) [ 新井 素子 ]新井素子先生の傑作。柔らかい筆致にとんでもない展開。今まで考えもしなかったことを突き付けられる衝撃。これを読んで、環境問題についての認識を改めました。おそらく、今読んでも新しい。SFの凄さ、魅力はそういうところにあるのだと思います。
January 27, 2026
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ものごとには多面性があります。同じ体験をしても、同じ本を読んでも、感じること、興味をもつこと、考えることは違うのです。当たり前のことなのですが、自分の考えや記憶が正しいと思い込んでしまうことは、誰しもあることかと思います。三谷幸喜さんのお芝居で、長年連れ添った夫婦が、新婚旅行で見たイベントについて言い合いをするというシーンがありました。「ファイアーダンズだ」「リンボーダンスだ」と言い争って、それぞれ相手に不信感を抱くのですが、お芝居の後半で、これが「ファイアーリンボーダンス」だったことが分かります。さて、この『ぎんなみ商店街の事件簿』、Brother編とSister編に分かれています。扱う事件は同じ、なのですが、解かれる謎も、得られる解決も違います。それぞれの主人公である兄弟と姉妹は、少しずつ関わりあいながら、時には同じ人にお世話になりながら、ぎんなみ商店街を駆け抜けていきます。ぎんなみ商店街の事件簿 Brother編 [ 井上 真偽 ]ぎんなみ商店街の事件簿 Sister編 [ 井上 真偽 ]最初の事件は、とある交通事故にまつわるお話。「桜幽霊とシェパーズ・パイ」「だから都久音は噓をつかない」がその事件にあたります。目撃者だった弟は、何を隠しているのか。姉の同僚は、なぜ事故にあったのか。そして、目撃されたのは何だったのか。次の事件は「宝石泥棒と幸福の王子」「だから都久音は押し付けない」校内で生徒が作った「作品」が壊されてしまいます。その「作品」に使われていた「宝石」は兄弟と因縁があって…限られた人間関係の中で、謎を解くことが果たして幸せにつながるのか…二つの作品が少しクロスオーバーしながら、少しずつ「謎」が解かれていきます。3つ目の事件は「親子喧嘩と注文の多い料理店」「だから都久音は心配しない」「アンケート」という都市伝説が語られ、それに関係しそうな事件が…長男は、長女は、果たして無事なのか。この出来事の裏では何が起こっているのか。これまで出てきた、ぎんなみ商店街の面々も巻き込んで、それぞれの事件が解決する時、これまでばら撒かれていた謎も解かれていきます。既にこのシリーズ、2冊目が出ています。書くのはとても大変だろうなと思いますが、シリーズ化するのはすごいし、さすが井上先生だな、と。白雪姫と五枚の絵 ぎんなみ商店街の事件簿2 [ 井上 真偽 ]文庫化待ち、ではありますが、とても楽しみです。
January 22, 2026
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『同志少女よ、敵を撃て』の解説の中で、映画「スターリングラード」を紹介しました 本とともに〜『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬 | MORITA in Cyberland - 楽天ブログ同志少女よ、敵を撃て (ハヤカワ文庫JA) [ 逢坂 冬馬 ]【中古】 スターリングラード<DTS EDITION>/ジャン=ジャック・アノー(製作、脚本、監督),ジュード・ロウ,ジョセフ・ファインズ,レイチェル・ワイズ,ボブ・ホスキンス,エド・ハリス,ジョン・D.スコフィールド(制作),ジェームズ・ホーナソ連を舞台にした狙撃兵の話、という意味では、響きあう物語なのですが、私がこの本を読みながら思い出していたのは、「ジャーヘッド」でした。ジャーヘッド【Blu-ray】 [ ジェイク・ギレンホール ]舞台は1990年。アメリカとイラクによる「湾岸戦争」が行われる中、スオフォードは過酷な訓練を受けて海兵隊員となり、サウジアラビアへと派遣されます。そこで待っていたのは…「待機」の日々でした。仕事はサウジアラビアの油田警備。「敵」は一向に現れず、磨いた技術も、活かされることなく、さらなる訓練と見回りだけが課せられ…。映画はひたすらその何もない「平和」な生活を描き続けます。一方で待ちに待った「戦争」は過酷なものでした。空爆によって殺された敵兵の死体、アメリカ軍(味方)による誤爆、油田の炎上による黒い雨…。そんな中、ようやくスオフォードに狙撃命令が下ります。管制塔にいる敵の将校に照準を定め、引き金に手をかけ…。この映画の恐ろしいところは、主人公に感情移入しながら見ているうちに、「引き金を引いて欲しい」と思ってしまうようになることです。主人公を戦場に連れて行ってあげて欲しい、主人公に人を殺させてやって欲しい、本来であればモラルから逸脱したそんな感情が、見ているうちに湧いてくるのです。「戦争」というものが、どれほど人に高揚感を与え、自己正当化を伴うものなのか、この映画を観終えて、「引き金を引いて欲しい」と思った自分自身も含めて、そら恐ろしい気分になった映画でした。『同志少女よ、敵を撃て』にも、これに通じるものがあります。主人公に感情移入すればするほど、「私は〇人殺した!」と自慢する彼女の異常さに気付けなくなっていくのです。この小説が良く出来ているのは、彼女や仲間がそういった自慢をする時、必ずたしなめてくれる人が周りにいる、あるいは後悔させる物語が用意されていることです。タイトルが回収されるシーン、漫画ではよく盛り上がる場面として描かれますが、この小説のタイトル回収はとても残酷です。しかも、その後に用意された物語を読むと、本当に撃って良かったのか、読んでいる側が混乱に突き落とされます。また主人公が狙う「敵(かたき)」も、その基準で考えるならば、戦うべき相手だったのか、戦争がなければ、どういう出会いをしていたのか、考えさせられます。もともとは外交官を目指してドイツ語を学んでいた彼女が、「敵を狙撃する」という形でドイツと対峙せざるを得ないという状況は、皮肉以外のなんでもありません。「敵」だから殺して良いのか、「倫理」に反するから殺して良いのか。殺されたそれぞれには、戦争さえなければ、殺されなければ、それぞれの生活が、未来があったはずだと気付いた時、「正義」の在処は行方不明になってしまいます。戦争に行きたい、自分の子供を戦場に行かせたい、そんなことを思うことはない、と言いたいところですが、自分たちの国が戦争に巻き込まれた時、国の空気がそうなっていた時、果たして「良心的徴兵拒否」など出来るのでしょうか。ひとたび戦場に出た時、人を殺さずに帰ってくることは出来るのでしょうか。武道には「鞘の内」という言葉があります。剣を抜く前「鞘の内」にあるうちに、争いを収める、という言葉です。いわば外交、諜報戦がそれにあたるでしょう。様々な国から不協和音が聞こえてくる中、改めて、世界の平和を願いたいものです。
January 21, 2026
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読書とは、真っ暗な部屋に「窓」を穿つ行為なのだと思う。私たちには、「外」のことを知る術はない。読書や出会いによって「窓」を穿ち、そこから見える景色から「外」を想像することで、世界への認識を、自分の視座を、アップデートしていく。良い本は、良い「窓」を開ける。 この本は、私たちに、見たことのない景色を、想像したことのない世界を、見せてくれる。この本は、単なる小説に終わらず、現実とつながって、私たちの心に風を吹かせる。同志少女よ、敵を撃て (ハヤカワ文庫JA) [ 逢坂 冬馬 ]舞台は、第二次世界大戦時代のロシア。モスクワ郊外で平和に暮らしていた少女セラフィマの日常は、大学進学を目前に無残な形で奪われてしまう。ロシア軍の女性兵士イリーナに「戦うのか、死ぬのか」と迫られ、「殺す」ことを選ぶセラフィマ。彼女は「狙撃兵」として、新たな人生を始めることになる。そこで出会う仲間たち。奪う命、奪われる命。激戦地スターリングラードの前線で目の当たりにする、様々な戦下の現実と日常、死。戦いの先に、彼女は何を見るのか。何を望むのか。物語が「現実」とリンクする時、私たちは、語りえぬものについての沈黙と、この本を読んだことで語れる言葉を手に入れることになります。願わくば平和を。殺し、殺されることのない未来を。物語の中で問われる「なぜソ連は女性兵士を戦闘に投入するのか」という問いは、この物語の根幹をなします。残念ながら、この本の中に答えはありませんし、現実の答えがどうあるべきかの答えも、私自身は持ち合わせません。しかし、考えたこともないような問いが、疑問が、視座が、この本を読むほどに生まれてくるのです。「現実」へのリンクは、小説の中の仕掛けだけにとどまりません。作者が「文庫化によせて」で曰く「本作は最悪の形で同時代性を獲得しました」。すなわち、ロシアによるウクライナへの侵攻です。そして、この戦争は、それから4年経つ今でも続いているのです。数字でしか語られない、数字で理解するしかない「死者数」も、双方の兵士だけで100万人を超え(ロシア兵100万人、ウクライナ兵10万人)、民間人の犠牲を含めるとそれ以上に達すると推計されています。 参考:https://www.cnn.co.jp/world/35233851.htmlそんな現実を知りながら、この小説に書かれている残酷な場面に向き合うのは、とてつもなくつらい読書体験です。しかし、それでも、最後まで読み終えた時、今の戦争にも、同様の光があって欲しいと願わずにはいられません。【中古】 スターリングラード<DTS EDITION>/ジャン=ジャック・アノー(製作、脚本、監督),ジュード・ロウ,ジョセフ・ファインズ,レイチェル・ワイズ,ボブ・ホスキンス,エド・ハリス,ジョン・D.スコフィールド(制作),ジェームズ・ホーナ劇場公開当時、「スターリングラード」の映画を観た記憶があります。これも狙撃兵同士の戦いを描いた作品でした。しかし、当時は、スターリングラードの激戦について理解しないままに観ていたので、この本を読んだ後で見ると、おそらくは違う感想もあるのだろうと思います。戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫 社会295) [ スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ ]そして、参考文献にも挙げられ、現実とリンクする「窓」の役割を担っているこの本も、読むべきなのだろうな、と。データベースによると、「五百人以上の従軍女性から聞き取りをおこない戦争の真実を明らかにした、ノーベル文学賞受賞作家のデビュー作」ベラルーシ出身の彼女が、何を聞き、何を書いたのか。戦争という現実のもと、何があったのか。『同志少女よ、敵を撃て』という「窓」からだけでは見られない景色が、そこにはあると思うのです。参考文献からも、綿密で緻密な準備があっての、真摯な作品であることが伝わってきます。だからこそ、戦争という現実の過酷さが、より一層感じられ伝わってくるのです。本屋大賞にはずれなし、とは言え、本当に読むべき価値のある、素晴らしい作品でした。【以下蛇足】この本の作者、逢坂冬馬先生は、先日書いた本とともに〜『文化の脱走兵』奈倉有里 | MORITA in Cyberland - 楽天ブログで紹介した文化の脱走兵 [ 奈倉 有里 ]の作者、奈倉先生とはご兄妹とのことで、お二人の対談集も出ています。文学キョーダイ!!【電子書籍】[ 奈倉有里 ]『同志少女よ、敵を撃て』の中にも、奈倉先生の訳が引用されていたり、監修をされた話が書かれていたり、なるほどなぁ、と思いながら拝見させて頂きました。
January 18, 2026
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昨年末から読んできた、阿津川辰海先生のシリーズ第三作。赤、青、の次は、黄。黄土館の殺人 (講談社タイガ) [ 阿津川 辰海 ]そして、火災、水害、の次は、地震。地震による土砂崩れで、物語は旅館サイドと荒土館サイドに分かれて展開していきます。第一部では、名探偵が『探偵が早すぎる』ばりの察知能力を発揮。準備された殺人計画がことごとくブロックされていくのが面白い。この小気味良くコミカルな第一部から一転、第二部では悪夢のような『館』の物語へと舞台は移ります。名探偵の不在、元探偵の機能不全、跋扈する『仮面の執事』、不協和音を奏でる家族関係、第一作からの物語が通奏低音を響かせる中で起こる、連続殺人。地震で閉じ込められた館の中で、加速する疑心暗鬼。果たして、この館の中で、この状況の中で、生き延びることは出来るのか。誰が生き残るのか。そして、物語が合流する第三部。名探偵が、元探偵が、解くべき謎を解き明かした時、真犯人が、そして、地震の偶然性とシンクロする、「偶然」が生み出したイビツな「物語」が現れます。「館」モノらしい、大掛かりなトリックが、見事な伏線も含めて、格好良く決まっています。また、前作前半、活躍出来なかった「探偵」が、「名探偵」を名乗って活躍するのも気持ち良いですし、「元探偵」が推理を拒否する展開も、良い意味でもどかしく、楽しく読ませて頂きました。欲を言えばというか、個人の好みですが、最後の殺人は、ご都合主義であっても止めて欲しかったな…語り手にそれくらいの「実力」があっても、「名探偵」の格は下がらないので。作者曰く、このシリーズ、「地水火風」「春夏秋冬」になぞらえて4部作として構想されている、とのこと。紅蓮館の殺人 (講談社タイガ) [ 阿津川 辰海 ]蒼海館の殺人 (講談社タイガ) [ 阿津川 辰海 ]となると残りは…。最後の作品も楽しみにしたいと思います。
January 13, 2026
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2025年最後に読んだのが『紅蓮館の殺人』 そして、2026年最初は、この続編『蒼海館の殺人』を読みました。蒼海館の殺人 (講談社タイガ) [ 阿津川 辰海 ]前作で「探偵とは何か」という問いを突きつけられ、学校にすら来られなくなった「探偵」の実家に、様子を見に向かう語り手と友人。父も、母も、叔父も地元の名士であり、さらに警官の兄、モデルの姉がいるという「探偵」の実家は、宮殿のような「館」。「絵に描いたような」家族での集まりに、異分子として入ってしまった語り手と友人、それに加えて「招かれざる」人物を含む三人の来訪者。そこで起こってしまう惨劇に、否応なく巻き込まれてしまう、語り手と友人。自信を失い、家族の前で身動きの取れない「探偵」は、復活出来るのか。そして、犯人にたどり着けるのか。前作では、炎に追われながらのカウントダウンが緊張感を高めていましたが、今作では、台風の接近に伴い、「館までの水位」が不穏な空気をもたらします。謎だけでなく、家族の人間関係まで解き明かし、各人の隠された行動まで見通してなお、たどり着かない真犯人。そして、館の水没の危機から、皆を救うと宣言する「探偵」。こちらの想像の、一歩も二歩も先にある物語に、驚愕させられます。今作も、とても読み応えのある作品でした。さて、次は黄土館の殺人 (講談社タイガ) [ 阿津川 辰海 ] 今シリーズ第1作紅蓮館の殺人 (講談社タイガ) [ 阿津川 辰海 ]で登場した、あの「元探偵」も出てくるようで、これもまた楽しみです。
January 10, 2026
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2026年、明けましておめでとうございます。読書blogみたいになっていますが、今年は映画も見たいし、美術館にも行きたいし、お芝居も見たいし、そのあたり充実させていきたいと思っています。本年もよろしくお願いいたします。
January 1, 2026
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あくまで、2025年に「読んだ」本であって、出た本ではありませんので悪しからず。また、基本文庫派ですので、文庫化されていない作品はよんでいなかったりします。とにもかくにも、今年読んで良かった本としては、まずは、この三冊を挙げたいと思います。『成瀬は天下を取りに行く』『文化の脱走兵』『アリアドネの声』加えて、『黒牢城』『遠巷説百物語』『お梅は呪いたい』あたりも面白かったですね。『成瀬は天下を取りに行く』は、本当に爽快な物語で、読んでいて楽しく、前向きな気持ちにさせてくれる、本当に読んで損なしの作品でした。本とともに~『成瀬は天下を取りにいく』宮島 未奈 | MORITA in Cyberland - 楽天ブログ成瀬は天下を取りにいく (新潮文庫) [ 宮島 未奈 ]『文化の脱走兵』は、打って変わって、ロシア文学者によるエッセイ集。「ロシア」に色眼鏡で臨んでしまう今だからこそ読みたい、心がじんわりと温かくなり、なぜか泣きたいような気分にさせられる、本当に素晴らしいエッセイ集でした。この本に出会えたというだけで、2025年は良い年だった、と言えるくらい。ご一読を、心からお勧めします。本とともに〜『文化の脱走兵』奈倉有里 | MORITA in Cyberland - 楽天ブログ文化の脱走兵 [ 奈倉 有里 ]『アリアドネの声』は井上真偽先生による、脱ミステリなヒューマンドラマ。なのですが、この作品に仕掛けられた大きな「謎」が、解けるとともに私たちの心を溶かしてくれる、ミステリとしても極上の作品です。今年読んでおススメする作品を一作だけ、と言われたら、どのジャンルのファンを問わず、この作品を挙げます。それくらいに圧倒された作品でした。本とともに~『アリアドネの声』井上真偽 | MORITA in Cyberland - 楽天ブログアリアドネの声 (幻冬舎文庫) [ 井上真偽 ]『黒牢城』は、歴史×ミステリ(しかも安楽椅子探偵!)というすごい作品。主役を務めるのが、豪胆で頭の良い荒木村重&囚われの身の黒田官兵衛。この組み合わせだけでも「奇想」なのに、底に流れる「戦(いくさ)」の緊張感、そこで起こる不可解な事件という筋立て、黒田官兵衛の企み、史実という小説より奇な展開、どこから見ても一級品。面白かった、としか言いようがありません。本とともに~『黒牢城』米澤穂信 | MORITA in Cyberland - 楽天ブログ黒牢城 (角川文庫) [ 米澤 穂信 ]『遠巷説百物語』は、京極夏彦先生の「巷説」シリーズの作品。しかも舞台は遠野!面白くないわけがないです。このシリーズ、毎回少しずつ趣向が変わるので、戸惑うことも多いのですが、今回の「枠組み」は非常に分かりやすくてテンポも良く、何より勧善懲悪で(もちろん、事件の結果として、やりきれない、やるせない事象はあるわけですが)、安心して読み進めることが出来ます。シリーズものとは言え、これだけ読んでも十二分に面白い…ってまぁ、たぶん、これを読む人は既に京極ワールドにハマっている人がほとんどだろうとは思うのですが(笑)遠巷説百物語 (角川文庫) [ 京極 夏彦 ]『お梅は呪いたい』シリーズ、最新刊はまだ買ってないので、2026年の紹介になりますが、いやはや、なんともなんとも、もうね、頭をからっぽにして、ただただ面白がれる作品です。このまま落語かコントになりそうな、ひたすら楽しいだけの作品ですし、読書ってエンターテインメントなんですよ、と力強く言うことが出来る作品です。絶対、人にはおススメしません(笑)森見先生以上に、万城目先生以上に、おススメしたくない(笑)いやぁ、面白いなぁ…。お梅は呪いたい (祥伝社文庫) [ 藤崎翔 ]お梅は次こそ呪いたい (祥伝社文庫) [ 藤崎 翔 ]お梅は魔法少女ごと呪いたい (祥伝社文庫) [ 藤崎 翔 ]東野圭吾先生の『ブラックショーマン』も、映画&本ともに良かったですし、ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 (光文社文庫) [ 東野圭吾 ]アニメにもドラマにもなった『天久鷹央』シリーズはじめ、知念実希人先生の本は、どれも大当たりでした。血脈のナイトメア 天久鷹央の事件カルテ (実業之日本社文庫) [ 知念 実希人 ]硝子の塔の殺人 (実業之日本社文庫) [ 知念 実希人 ]スワイプ厳禁 変死した大学生のスマホ [ 知念実希人 ]年末、阿津川辰海先生の本に出会えたのも良かったですね。紅蓮館の殺人 (講談社タイガ) [ 阿津川 辰海 ]蒼海館の殺人 (講談社タイガ) [ 阿津川 辰海 ]黄土館の殺人 (講談社タイガ) [ 阿津川 辰海 ]いやぁ、久々の読書blog再開でしたけど、備忘録代わりになってよいなぁと(笑)来年も楽しい本との出会いを楽しみにしたいと思います。
December 31, 2025
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最近、東大系ミステリがアツい!らしいのですが、とにもかくにも、読んでみました。紅蓮館の殺人 (講談社タイガ) [ 阿津川 辰海 ]探偵vs元探偵に元探偵志望まで加わって、繰り広げられる推理と論理。山火事が館に迫りくる極限の状況下、誰がどんなウソをついていて、誰が味方で、誰が狙われるのか、取るべき手段は何なのか?さらに、現在の事件と交錯する過去の連続殺人事件。こちらの予想を大きく裏切る展開に、最後まで漂う緊張感。謎が解けるのがゴールではなく、生きて脱出するのがゴールだからこそ、謎を解くことのジレンマが生まれてきます。たしかに、読んだことのないミステリでした。探偵と元探偵を出して、それでも地に足のついたストーリーを展開させているのは、すごい技量であり、センスだなと思います。この構造が、「探偵とは何か」に対しての深掘りになっているのも面白い。この次の作品、次の次の作品もまとめて買いましたので、この「物語」がどう展開していくかも楽しみです。いやぁ、面白かった!蒼海館の殺人 (講談社タイガ) [ 阿津川 辰海 ]黄土館の殺人 (講談社タイガ) [ 阿津川 辰海 ]
December 30, 2025
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ソクラテスの「無知の知」という言葉は知っていましたが、深く考えたことはありませんでした。先入観にとらわれた「逆ソクラテス」な先生の価値観を、小学生たちが見事にひっくり返す、表題の作品から始まり、子どもたちが活躍し、少しだけ世界を変えていく、小気味良く鮮やかな小品が5つ並ぶ短編集。逆ソクラテス (集英社文庫(日本)) [ 伊坂 幸太郎 ]美しい伏線、先の読めないストーリー、過去と現在との交錯。どれも小説のお手本のような、伊坂幸太郎先生らしいリズミカルな物語の構成に心地よく翻弄されます。敎育に関わる身として、あるあは親として、耳の痛い部分も多数ある、のはさておき、権威主義や同調圧力と距離を置いている身からすると、それぞれの主人公にエールを贈りたくなります収録作品は下記の5つ。「逆ソクラテス」「スロウではない」「非オプティマス」「アンスポーツマンライク」「逆ワシントン」どの作品も、何をどう語っても、ネタバレになりかねないので、解説のしようがありません。「ソクラテス」は「先入観」、「オプティマス」は「必ずうまくいく」、「ワシントン」は「正直」です。子どもたちの世界にだって、理不尽はあって、もしかすると解決策も、打開策もそこにはあるのかもしれない。その「答え合わせ」は、すぐには出来ないのだけれども。大人目線では、どこかノスタルジックな、それでいて冒険心にあふれた、とても楽しい短編集でした。
December 28, 2025
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良いエッセイとは何だろうと考える。内容、視点、文体、読んで面白く、新しい気付きをもたらしてくれるもの。共感を呼び起こしてくれるもの。理科のエッセイは分かりやすい。専門家として、動物を、金属を、現象を素人にも分かりやすく説明する…書く難易度は別にして、テーマは設定しやすい。しかし、文科系のエッセイは?良く読んでいる作家さんのエッセイは分かりやすい。小説を読むのとは違う楽しみがある。海外生活のエッセイも面白い。新しい気付きをもたらしてくれるから。では、ロシア文学の翻訳者、専門家によるエッセイは?文化の脱走兵 [ 奈倉 有里 ]知らないはずなのに懐かしく、育ってきた環境も違うのに共感できる、素晴らしいエッセイ集でした。ウクライナ戦争という大きな「傷」が、「プーチンのロシア」を際立たせる中で、ロシアに住む人たちは何を思い、何を考えているのか。それをフラットに知ることはとても難しくなっています。翻訳者の仕事は、権力者の「言葉」(とそれをもとにした公式なニュース)を分かりやすく伝えることにとどまらず、市井の声を、文化人の声を、権力に抗う小さな声を、丁寧に掬い取って伝えることも、大きな役割としてあるのだな、と。冒頭の「クルミ世界の住人」で作者は言います。クルミが好き、トマトが好き、バイクが好き、読書が好き、人は「好き」でつながり、分かち合うことが出来るし、そこには人種も国境もない、と。でも、私たちは「国家」という枠組みにとらわれ、そのような色眼鏡で、その国の人々を見てしまいがちです。そんな当たり前のことに気付かされ、読んでいるうちに、何故か涙が出てきました。題名の「文化の脱走兵」は、エセーニンの詩『アンナ・スネーギナ』の一節「僕は国で一番の脱走兵になった」というフレーズから。勇ましい「言葉」が跋扈し、「戦争」がリアルな単語として実感させられる今だからこそ、私たちは「文化の脱走兵」になる勇気を、目指す覚悟を持っていないといけない時代なのかもしれません。全体を通じて、作者の深い教養と知識、そして根にある優しさと強さがにじみ出ていて、読みやすく、思索を深められる、素晴らしい本でした。私自身の「ロシア」にまつわる思い出と言えば、ベルリンの語学学校で知り合ったロシア人のバディム。連絡先を交換したわけではないので、今どうしているのか分からないけれど、もしかすると彼もまた、この情勢下で兵役についているのかもしれません。あるいは、彼に聞けば、ウクライナ侵攻の「正当性」について、教えてもらえるのかもしれません。あるいは、あの時学んだドイツ語を活かして、「脱走兵」になっているのかもしれません。でも、彼がどこで何をしているのだとしても、彼は私たちと何も変わらないただのバディムで、今会っても、きっと彼はSony製品の良さを熱弁してくれる気がするのです。私が語ると、こんな陳腐な話にしかならないですけど、こういう人と人とのつながり、思いがちゃんと言語化されているから、このエッセイは面白いのだと思います。
December 27, 2025
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有栖川有栖先生の作品は、どのシリーズも(ノンシリーズも)魅力的ですが、代表的なシリーズと言われれば、初期から描かれている2大シリーズ、江神二郎 先輩が探偵役を担う「学生アリス」シリーズと、犯罪社会学者 火村英生 先生が活躍する「作家アリス」シリーズになるでしょう。『砂男』は、この2つのシリーズから2つずつ、ノンシリーズの短編2つの計6編からなる短編集。砂男 (文春文庫) [ 有栖川 有栖 ]「女か猫か」☆「推理研VSパズル研」☆「ミステリ作家とその弟子」「海より深い川」★「砂男」★「小さな謎、解きます」☆は「学生アリス」、★は「作家アリス」の作品になります。「女か猫か」☆ちょっと不思議な学生ストーリー。密室で彼の頬に傷をつけたのは、「女か猫か」ラストのライブシーンの描写もかっこよくて、青春群像みたいな作品になっています。「推理研VSパズル研」☆パズル研の出題した論理パズルの問題に挑戦する、推理研の面々。鮮やかに解かれるパズル。推理研の矜持を示す「蛇足」。ミステリとパズルの違い、その張り合いぶりが上質な笑いにつながっています。そうしておきながら、最後の二人の会話で、物語を抒情的に締めるのですから…とても上品な作品です。「ミステリ作家とその弟子」ノンシリーズ作品。「ミステリの創り方」としても勉強になりますし、時刻表ミステリ好きな有栖川先生の「ご意見」が垣間見えるのが面白い。で、これらの要素をあわせて、ちゃんと「小説」に仕立てていますものね…。星新一先生の投稿アンソロジーとかにありそうな、寓話的な作品でした。「海より深い川」★このタイトルのフレーズが、無関係に見えた二つの事件を結びつけていく物語。謎が解けた時に分かる、この言葉の意味が、なんとも切なく人間臭い。有栖川先生の人間観察力というか優しさがにじみ出ている良作です。「砂男」★短編集の表題だけあって、有栖川ミステリな作品。「砂男」に関する都市伝説、死体にふりまかれた砂の謎、建物の周囲にも撒かれる砂…。それぞれの謎を、ひとつずつ解き明かすことで、見えてくる犯人像、そして被害者の姿。動機がね、切ないなぁ…。合理的な理詰め一辺倒ではなく、こういう情緒的な理屈まで推理に組み込まれるのが、有栖川ミステリに惹かれる理由なのかもしれません。「小さな謎、解きます」有栖川先生は、超短編の連作などもいくつか手掛けていらっしゃいます。vodafoneの小説サイトや、新聞向けの作品とかがあったはず。これもJTさんの関連の連作とのことで、それぞれが読みやすく、ちょっと小洒落た雰囲気の、紫煙の似合う作品となっています。有栖川先生のライトなファンとしては、今回も良い読書の時間を与えて頂いて感謝、という気持ちです。ミステリなので、悲しいお話、切ないお話も多くあるのですが、それにもかかわらず読後感が良いことが有栖川ミステリの特長だな、と思います。
November 16, 2025
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とにかく帯がすごい(笑)解説もされている島田荘司先生、さらに綾辻行人先生、有栖川有栖先生、法月綸太郎先生、みんな揃ってベタぼめ。そして、その賛辞を裏切らない、二重三重どころか、十重二十重に張り巡らされた謎と構成に、何度も騙される、幸せなミステリ体験でした。硝子の塔の殺人 (実業之日本社文庫) [ 知念 実希人 ]おそらく、ある程度のミステリファンなら、私と同じく、(全てでなくとも)断片的にはトリックを解けた気になれるところがあるかと思います。しかし、それすら、作者の掌の上。「読者への挑戦」が挿入されてからが、この作品の真骨頂。いや、そもそも、プロローグから魔法はかけられているのです。語り手とともに息を呑みながら、緊張感を味わいながら、進められていく物語に、読者は身を委ねるしかありません。そして、一瞬垣間見える希望すら覆していく、とんでもない展開に、騙されて、騙されて、騙されるしかないのです。まさにミステリの宝石箱であり、吃驚箱。イッキ読み必至の傑作でした。
October 28, 2025
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とんでもないミステリを書かせたら、右に出る者のいない麻耶雄嵩先生。この短編集シリーズも、本格ミステリの枠組みの中で、完全にお遊びなネーミング、ライトな文体と、軽く読みやすいように見せかけて、とんでもない犯人と、秘密を明かせない状況を設定することで、ダークな雰囲気の中、「答え合わせ」が出来ないモヤモヤした感情を抱かせてくれます。学校の名前が、私立ペルム学園。「探偵役」を担う「化石少女」の名前が、神舞まりあ。ネーミングから「遊び」感が伝わってきます。そして「あいにくの雨で」にも通じる、謎に陰謀と権謀術策渦巻く生徒会(笑)麻耶雄嵩先生は、どういう高校時代を過ごされたんだろう…てか、普通の学校の生徒会って、陰謀渦巻いてるのかな…?さておき、もちろん、しっかりとミステリな作品です。化石少女 (徳間文庫) [ 麻耶雄嵩 ]「化石少女」こと、この「名探偵」、勘は鋭く、推理の筋も通っているのですが…様々な理由から、彼女の「名推理」はお蔵入りになってしまうのです。この「真犯人」を糾弾できないという属性は、先生の書かれた「銘探偵メルカトル鮎」や「神様」の対極にあります。それに寄与する「ワトソン」役の「私」の存在も大きいわけですが、この関係性も、先生が様々な「名探偵」―「ワトソン」関係を描いてきたからこそ。カタルシスをもたらしてくれないどころか、モヤモヤがつのる構成も、最後の短編に向けての積み上げなのだな、と。そう考えると納得出来ます。麻耶雄嵩先生らしい、人を喰ったというより、人を喰うポップでダークなミステリ作品でした。化石少女と七つの冒険 (徳間文庫) [ 麻耶雄嵩 ]で、その続編。「後輩」も「探偵」も増えて、物語はさらにパワーアップ…と言いたいところですが、ダークでイビツな部分が加速しています。さすがは麻耶雄嵩先生。ミステリとしても難易度の高い謎が並びますが、前作以上に緊張感が増し、人間関係も複雑になっていることが、さらに問題をこじらせていきます。この物語に「解決」はあるのか。あるいは、「続編」はあるのか。読むほどに深みにはまる、さすがの麻耶雄嵩印作品でした。
October 24, 2025
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JR伊丹駅を降りてすぐ、ちょっとした高台があって、のどかな景色を楽しむことが出来ます。ここが有岡城跡。もとは伊丹城と呼ばれていましたが、織田信長配下の武将、荒木村重が、街をも巻き込んだ大改築を行い、有岡城と名付けました。そう、荒木村重が信長を裏切って籠城戦を行った、その中心地です。三木合戦のさなかの裏切りに、明智光秀や高山右近らも説得に向かいますが、村重が心を翻すことはありませんでした。そんな情勢の中で、村重の説得に向かった黒田官兵衛は、捕らえられ、幽閉されてしまいます。この二人を中心に、物語は展開していきます。黒牢城 (角川文庫) [ 米澤 穂信 ]最初から最後まで、ただならぬ緊張感が漂う作品でした。この独特の緊張感は、常在戦場の状況が背景にあること、そして、何より城主村重と囚われの身である官兵衛の独特の関係性から来ています。軍の士気にも関わりかねない不可解な事件に対し、村重が配下の者を使いながら状況を把握し推理を展開するも、苦悩の末に官兵衛に相談し、「解決」に至る、という一連の流れは、戦況が悪化していく中で、切実さを増していきます。一方で牢に閉じ込められ続けている官兵衛もまた…。村重も、決して「無能な城主」ではなく、真っ当で思慮深い人物として描かれ、時代背景も含めて丁寧に描写されているので、歴史モノとしても読み応えがあります。そして、村重がそんな人物として描かれているからこそ、「牢に閉じ込められた安楽椅子探偵」官兵衛の知恵が輝くのです。これらキャラクターの魅力に加えて、魅力的な謎、合理的な解決、その先への提示。どれをとっても一級品です。あらためて、この作品の受賞歴を見ると、直木賞に加えて、各賞総なめ状態。第166回直木三十五賞受賞第22回本格ミステリ大賞(小説部門)受賞第12回山田風太郎賞受賞「このミステリーがすごい!」2022年版国内編 第1位「週刊文春ミステリーベスト10」2021年国内部門 第1位「ミステリが読みたい!」2022年版国内篇 第1位「本格ミステリ・ベスト10」2022年国内ランキング 第1位(史上初となる4大ミステリランキング制覇)「2021年歴史・時代小説ベスト3」(『週刊朝日』)第1位そりゃ、面白いわな、面白いしな、と思います。さて、この後、織田信長が天下に手をかけながらも命を落とし、秀吉、家康と時代が進むことを我々は知っています。では、その流れの中で、村重はどんな人生を歩むのか、官兵衛の運命はどうなっていくのか。歴史は小説より奇なり。最後まで二人の「運命」から目の離せない、歴史×推理の極上のエンターテインメント小説でした。
October 23, 2025
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古代エジプトという舞台。エジプトの神々が信仰によって力を持つ世界観。ピラミッドという密室で起こる殺人。次々に繰り出される魅力的な謎。いわゆる特殊状況下ミステリではあるのですが、謎解きはとても丁寧で、世界観にハマった後は、とにかく謎の答えを知りたい一心でページをめくりました。2023年の第22回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。ファラオの密室 (宝島社文庫) [ 白川 尚史 ]物語は、主人公が死んで冥界に行くところから始まります。冥界にて、己の心臓を取り返してこいと命じられ、現世に戻った主人公は、限られた時間の中で、自分の命を奪った犯人、そして心臓の行方を捜すべく奔走します。消えたミイラの謎、ファラオによる「宗教改革」の行方、「異教徒」の女の子の運命、主人公に隠された秘密、様々な思惑と謎が絡み合い、訪れる数々の危機。果たして主人公は、「犯人」を見つけ、無事に己の心臓を取り戻すことが出来るのか。そして「女の子」の運命やいかに。この作品の作者の経歴も異色で、話題となりました。東京大学工学部卒業後、2012年に株式会社AppReSearch(現 株式会社PKSHA Technology)を設立し、2020年に取締役を退任。現マネックスグループ取締役兼執行役。才能に満ち溢れているなぁ、としか言いようがありません。とにもかくにも、面白さに脱帽の一冊でした。==========余談ですが、特殊設定ミステリと言えば、世代的にこの作品が思い浮かびます。生ける屍の死(上) (光文社文庫) [ 山口雅也 ]価格:858円(税込、送料無料) (2025/10/22時点)楽天で購入生ける屍の死(下) (光文社文庫) [ 山口雅也 ]価格:858円(税込、送料無料) (2025/10/22時点)楽天で購入「死者が蘇る世界」で人を殺すとはどういうことかという、とんでもない謎をひっさげての名作。久しぶりに読んでみたくなりました。
October 22, 2025
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名作は書き出しから名作なのだと、文庫版の解説を手掛けた森見先生が書かれています。それどころか、名作は題名から名作なのかもしれません。平積みしていた頃から、文庫になるのを楽しみにしていました。そもそも本屋大賞にはずれなし。期待通りなんてありきたりではなく。期待を遥かに超えた面白さでした。成瀬は天下を取りにいく (新潮文庫) [ 宮島 未奈 ]読めばきっと、人の目を気にせず、自分の信じた道をまっすぐに進んでいく成瀬から、目が離せなくなるはず。それにしても、すごい小説。読んで言いたいことが多すぎて、言葉が渋滞してしまいます。何から言えば良いのだろう…?構成の話?様々な人物から語られる「成瀬」の活躍。それぞれのエピソードが絡み合い、つながっていく心地よさ。これぞ構成の妙!東大の話?東大のオープンスクール中に池袋往復するのは、ちょっとさすがにないかなぁ…とかつまらないツッコミをするのは野暮でしょう。それよりも、東大を目指す女の子と、「成瀬」の対比がすごく腑に落ちてしまうのです。登場人物たちの東大合格を祈念したいところです。京大の話?解説の森見登美彦先生も京大卒ですし、万城目学先生も京大、綾辻行人先生や麻耶雄嵩先生も輩出した京都大学に、この宮島未奈先生まで加わって、もしかすると「成瀬」まで加わるかもしれないなんて…。京都大学、おそるべし、です。散髪の話?漫才の話?西武大津店の話?それぞれで延々と話をすることが出来そうです。それなりに知識のある関西人なので、「膳所」を「ぜぜ」と読むことくらいは知っていましたが、西武大津店なんて知らないですし、「うみのこ」も知らない、江州音頭なんて聞いたこともありません。それでも、読み終えて、まるで自分も「成瀬」たちと一緒に「膳所」で過ごしたことがあるような、そんな気分にさせられるのです。そんな「成瀬」が落ち込むとき、私たちは「成瀬」が超人なのではなく、私たちと等身大の人間なのだと気付かされます。それでも、彼女の生き様は、私たちを前向きにさせてくれます。疲れているなら、落ち込んでいるなら、元気が出ないなら。是非、彼女の真っすぐな生きざまに、勇気と元気をもらってください。本当に楽しく素晴らしい作品でした!次作を読むのも楽しみにしています。成瀬は信じた道をいく [ 宮島 未奈 ]成瀬は都を駆け抜ける [ 宮島 未奈 ]
October 19, 2025
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判型の面白さに惹かれて手に取りました。なにせ、スマホを模したサイズ、しかも題名が「スワイプ厳禁」なわけですから。スワイプ厳禁 変死した大学生のスマホ [ 知念実希人 ]知念先生の本、ということで、ミステリとしての安心感もあったのですが…。ミステリ的な仕掛けもあるのですが、結構ホラー寄りのお話でした。この作品だけでも「謎」は残るものの、ホラーとして完結している…でも、これで終わるわけがないのが知念先生。きちんと続きがあるのです。それが『閲覧厳禁』閲覧厳禁 猟奇殺人犯の精神鑑定報告書 [ 知念実希人 ]判型としては文庫より大きいサイズ。『スワイプ厳禁』の謎まで回収しながら、ミステリとしてもっと大きな「仕掛け」が施されています。前作から引き続いて深まっていく謎、冒険によって明かされていく「真実」、その先に待つ「犯人」と「真犯人」。読み終えて、改めて見直した時に、仕掛けの巧妙さにうならされます。両方薄くて読みやすいのも有難い。たまには「スマホ」を離れて、スワイプせずにページをめくる、というのも良いかなと思います。
October 17, 2025
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オリエンド鈍行殺人事件 (ハーパーBOOKS+ ハーパーBOOKS+ HBP7) [ 藤崎 翔 ]何も考えずに、気楽な暇つぶしとして読める、とてもためにならない良い短編集でした。読書はエンターテインメントです。もちろん、ために読む本もありますが、暇な時間を楽しく彩るのというのも読書の大切な効用だと思います。合計10編収録の短編集。「タイムスリップ・リアリティ」「勇者たちのオフ」「君のためなら死ねる」「ファーブル昆虫記を読んで」「オリエンド鈍行殺人事件」〈ショートショート〉「過保護」「猫じゃらしとマイクロチップ」「流れ星」「こっくりさん」「崖」では、〈ショートショート〉以外の作品について触れていきましょう。「タイムスリップ・リアリティ」題名通り、リアリスティックなタイムスリップもの。大人の感性で高校生のノリに直面すると…という思考実験がとても楽しい。タイムスリップの「条件」が提示されていないので、この先の展開、というのもあり得るのかもしれませんが、短編としては、ここで「おしまい」なのが綺麗なオチだなぁと思います。「勇者たちのオフ」楽屋モノ的でややもすれば冗長に感じられる前段から一変、緊張感あふれる中盤、熱くそれでいて冷静で現実的でもある終盤へと、緩急をつけながら話が展開していきます。牧歌的な題名からは想像できないラストにうならされました。「君のためなら死ねる」作中の言葉を借りるなら、徹頭徹尾「キモい」作品。作中人物の思考も嗜好もあまりにも酷く、「キモさ」のオンパレード状態。同情の余地のない作中人物の身に起こるラストは、本人にとって本望と言って良いものなのかどうか…「ファーブル昆虫記を読んで」こんなにも”伏線”について、分かりやすく丁寧に説明してある文章を私は見たことがありません。そしてこの”伏線”が、良い仕事をしてくれるのです。まさに実践。ネタバレになってしまうので、詳しく語れないのが残念です。「オリエンド鈍行殺人事件」本のタイトルにもなったこの作品は、名探偵不在の「オリエンド鈍行」で起こった事件が、様々なハレーションを起こして、次々と(本筋の事件ではなく)乗客それぞれの問題を解決に導いていきます。はたして、そもそもの難題は解決するのか。暗い話やホラーにせず、きれいに着地させるあたり、「お梅ちゃん」シリーズを彷彿とさせます。お梅は呪いたい (祥伝社文庫) [ 藤崎翔 ]お梅は次こそ呪いたい (祥伝社文庫) [ 藤崎 翔 ]どの作品も楽しく時間をつぶさせてくれました。頭を空っぽにして時間を過ごしたい時におススメです。
October 13, 2025
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It's showtime!エンターテインメント全開のミステリ映画でした。かっこ良い福山さんを見る映画…ではあるのですが、福山さんが有村さんに「おじさん」と呼ばれ続けるのが面白い。ストーリーの中で実際に「叔父」ー「姪」関係なので、そう呼ばれるわけですが、この設定のおかげで、妙な恋愛関係的要素がなく、楽しく見ることが出来ました。映画的な演出である、ということは重々承知の上で、ミステリが好きな身としては、気になる点も少々。・お金にうるさい設定の主人公が仕掛ける「ショータイム」が、お金が入ってくるわけでもないのに贅沢すぎる。・「名探偵みなを集めてさてと言い」のシーンで、殺人以外の様々な「秘密」がバラされ過ぎる。・マジシャンとしてのテクニック(素晴らしいのですが)の使われ方が、なんとなく犯罪スレスレ。・結局「メールの件」が解決していないのが気になる。・動機にいまいち納得いかない・ヒロインの気持ちを考えると、探偵助手をしている場合ではないのではと思ってしまう。原作を読むと、これらの点は上手に処理されていて、そんなに違和感ないのですけれど、映像になると…まぁ、映画的な演出として、こうなってしまうのは仕方ないのかな、と納得はするのですけどね。冒頭のマジックシーンとか、時折挿入されるカードの演出とか、アニメのシーンとか、映像ならではで、原作をより魅力的にしてくれていますし、役者さんたちが原作のイメージを上手く落とし込んでくださっています。細かいことは気にせず、福山さんかっこ良かった、役者さんたち上手だった、青春映画のシーンとかとても良かった、という話をするのが良いのでしょうし、別にそれで十分だという気はします。ロケ地が岐阜、ということですが、とても景色が綺麗で、原作にある「名もなき街」だけど、「名声」に頼らなくても良いものはたくさんある、というメッセージとシンクロしているのが、とても良いなと感じましたし、この景色を大画面で見ることが出来たことが、TVスペシャルでなく、映画で見る価値の一つになっていると思います。なお、見終わった後に、思い返すと、音楽が「ガリレオ」で再生されてしまうのですが…(苦笑)さてはて、いろいろ文句言いましたが、楽しい映画でした。次回作にも期待したいなと思います。ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 (光文社文庫) [ 東野圭吾 ]ブラック・ショーマンと覚醒する女たち [ 東野圭吾 ]
October 11, 2025
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福山雅治さん&有村架純さん主演で映画化されて話題の作品。映画化作品は「映画が先か、小説が先か、それが問題」なわけですが、今回は映画が先になりました。ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 (光文社文庫) [ 東野圭吾 ]映画についての評価はさておき、この作品で謎を解くのは「推理する名探偵」ではなく「心理戦を仕掛けるマジシャン」。もちろん、動機の謎や、登場人物の不可解な行動など、張られた伏線が回収されていくのはさすがで、ミステリとして十分に面白いのですが、ラストの謎解きシーンも含めて、「推理」ではなく、会話劇で情報や犯人をあぶり出す形になっているのも、ちょっと変わった形式のミステリとして楽しめます。映画との比較になると…映画の批判に聞こえると不本意なのですが、映画的な演出の結果、ミステリとしてあるいは主人公のキャラの不自然さが目立ってしまっていたので、小説版の方が違和感なく楽しめたなぁ、と。でも、映像演出としては、というお話は映画評の方で。有栖川有栖先生とか、二階堂黎人先生とか、法月綸太郎先生とかの本は、ほぼ全部持っているのですけれど、東野圭吾先生の本は、(好き嫌いではなく、タイミングの問題で)実はあまり持っていないのですよね…。『ナミヤ雑貨店の奇跡』も名作ですけど、いわゆる狭義の「ミステリ」ではないですしね…。ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫) [ 東野 圭吾 ]『ガリレオ』とかは楽しく見ていたのですが、小説は読んでないですしねぇ。ガリレオ Blu-ray BOX【Blu-ray】 [ 福山雅治 ]また時間が出来たら読まなきゃだなぁ…。
October 10, 2025
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もう、これしか言葉が選べません。最高でした。アリアドネの声 (幻冬舎文庫) [ 井上真偽 ]主人公は、災害救助用ドローン「アリアドネ」の操縦士。ミッションは、震災によって、地下に取り残されてしまった三重苦(見えない・聞こえない・喋れない)の女性を救出すること。音声機能も、照明機能も、意味を持たない「暗闇」の中で、彼女をどう救うのか。次々に襲い掛かる困難、想定外の事象、手に汗握る救出ミッションに一気読み必至です。どう困難を解決するかというお話だけでも面白いのに、さすがは井上真偽先生、仕掛けられる「謎」が半端ありません。物語が進むにつれて大きくなる違和感、不信感。そして、それらの「謎」を、小気味よく解決する最後のどんでん返し!面白い、だけではなく、心を揺さぶる極上のエンターテインメント。秋の夜長を彩るにふさわしい、珠玉の一冊です。もちろん、ドラマ化もされた『探偵が早すぎる』もお忘れなく!探偵が早すぎる DVD-BOX [ 滝藤賢一 ]探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ) [ 井上 真偽 ]探偵が早すぎる (下) (講談社タイガ) [ 井上 真偽 ]
October 9, 2025
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2017年最初の展覧会は、天保山で開かれていた『恐竜博2016』へ。数年前に友人宅で子供の持っている「恐竜図鑑」を見せてもらった時、恐竜にはそれなりに詳しかったつもりだったのに、知らない恐竜ばかりでびっくりしたのを覚えています。講談社の動く図鑑MOVE 恐竜 新訂版それもそのはず。2015年だけでも、何十種類もの新種の恐竜が発見され、その中には、今までにない特徴が認められる、あるいは新学説に寄与するような恐竜が含まれているのです。会場内には、今回の目玉である、ティラノサウルス&スピノサウルスの化石はもちろん、赤ちゃん恐竜の化石や福島応援のチンタオサウルス、恐竜化石に触れる企画、復元ムービーなど、盛りだくさん。(恐竜で福島応援のプロジェクトについてはこちら)この展覧会、一部を除いて撮影・拡散可、となっています。これは素晴らしい宣伝だなぁ、と思います。見て、触って得られる実物の迫力は、写真では得られませんから。恐竜に関して、様々な新しい知見を得ることが出来、何より、実物の化石に圧倒されました。そして、島田荘司先生が『アルカトラズ幻想』で提示された「あの仮説」がこういった展覧会で日の目を見る日が来れば、また違った学説の進化を見ることが出来るのにと思ったりしながら、会場を後にしたのでした。アルカトラズ幻想(上) [ 島田荘司 ]アルカトラズ幻想(下) [ 島田荘司 ]========== 『恐竜博2016』 @大阪文化館・天保山 https://www.osaka-c-t.jp/[会期]2016.09/17~2017.01/09 [休館]なし [料金]一般 1,500円 / 大高生 1,000円 / 中学・小学生 800円恐竜博2016公式サイト :http://dino2016.jp/関西テレビ特設サイト :http://www.ktv.jp/event/kyouryu/index.html
January 6, 2017
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バングラディシュでイタリア人や日本人が犠牲になるテロが起こり、フランスのニースで無差別テロが起こるという現実を目の当たりにして、『文明の衝突』を思い出した。あの本が出たのは、私が学生だった20世紀の頃なので、20年くらい前になる。当時から「むしろ、この分析をする、この分析に基づいて政策を立ててることで、対立を煽る」という批判はあったが、9.11が起こり、作者がブッシュ政権のブレインを務めたことで、先見の明があった本として扱われた。文明が衝突するのは歴史の必然なのか、人類の不断の努力によって避けることが出来るのか。生まれてしまった憎悪の連鎖は、断ち切ることが出来るのか。本棚から引っ張り出したのは、加藤陽子先生の『戦争の日本近現代史』と、『文明の衝突』以前に書かれた中島嶺雄先生の『国際関係論』。何故、何があれば人は人を殺せるのか。世界中で奪われている命の重さに、心からの哀悼を捧げつつ、私はその答えを少しでも知りたいと思う。題名は本田勝一氏の本のタイトルから。賛否、言い方はどうあれ、日本も「人を殺せる国へ」向かっている今だからこそ、人を殺す意味を、殺さないための論理を学ぶべき時代だと思う。 『文明の衝突』 『戦争の日本近現代史』
July 16, 2016
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立命館大学茨木キャンパスで藤村正宏さんのお話をお伺いしました。非常に面白くてためになるお話でした。モノではなく、コトを売る、というのはよく聞く話ですが、例が分かりやすかったのが良かったです。snsはお客様を「友達」に出来るツールだ、という視点は、言われればその通りですが、なかったなぁ。「つながり」で売る!7つの法則 [ 藤村正宏 ]
July 9, 2016
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久しぶりの茶会記。加古川青年会議所さんの例会事業の一環という形でお茶を頂いてきました。場所は国宝鶴林寺の一角。この設え自体が、非常に贅沢です。お軸の「滝三千丈」の「滝」の縦の線がすーっと流れて、涼しげ。お花もシンプルに活けられています。お菓子は亀屋さんの「清流」。鮮やかな色の上に鮎の絵が押されていて、また、「清流」の名が加古川に相応しい。大人数で頂戴するにも関わらず、数茶碗ではなく、様々な茶碗で出して頂きました。私が頂いたのはシンプルなお茶椀でしたが、ガラスの茶碗や夏野菜を描いた茶碗もあり、夏らしい設えでした。何より、お茶が甘くてまるく、美味しかったです。お茶から離れて久しくはありますが、落ち着いたら、またお稽古を再開したいものです。
August 18, 2015
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こんな本を読んだ。麻耶雄嵩 『神様ゲーム』島田荘司 『アルカトラズ幻想』 ==========麻耶雄嵩『神様ゲーム』麻耶雄嵩氏の小説を普通の人に勧めることは怖くて出来ませんが、私自身は文庫化された氏の小説は全部読んでいるので、どんな驚きの結末が待っていようと、世界が壊れる気分を味わおうと、覚悟はしていたつもりでしたが、それでも、この小説のラストでは、疑問と混乱の渦に巻き込まれました。「神様」は正しいとするのか、間違いもあると考えるのか、「真実はいつも一つ」なんて無邪気に言える探偵が羨ましい。殺された猫はシュレディンガーを意図しているのか。開けた先に、背徳と混沌が詰まっているという悪夢のびっくり箱。読んで、決して幸せな気分になどさせてはくれませんが、小説を読むという行為だけで、自分の持っている世界観をガラガラと壊してくれる麻耶雄嵩体験は、他の小説では得られない唯一無二のものです。とりあえず、何が間違いかと言えば、この作品が子供向けのミステリーレーベルで刊行されたということ。『神様ゲーム』で初めてこの作者に出会った読者は、どこへ放り出されるのだろうと心配になります。ちなみに、氏の数ある作品の中で勧める本を選ぶなら、ノンシリーズの『螢』か『隻眼の少女』。どちらも、もちろん、幸せな気分なんかにはさせてくれない、その代わりに、世界が崩壊する気分が味わえる、素晴らしい作品です。 『螢』 『隻眼の少女』==========島田荘司『アルカトラズ幻想』解説の伊坂幸太郎氏をして、「僕には書けない」と言わしめる快作。冒頭の酸鼻極まりない残虐な事件の発生から、恐竜の存在についてあっと言わされる「重力論文」、難攻不落のアルカトラズをめぐる脱走劇、そしてファンタジーとしか思えない「パンプキン王国」での生活、何を読んでいたか分からなくなるほど急な展開を見せる物語を、最後のエピローグでまとめ上げる鮮やかな手腕は、さすがの一言。それにしても、どうなんだろう「重力論文」。説得力がありすぎて、古生物学にこのまま一石を投じて欲しい程なのですが。「恐竜」に興味のある人は、この章だけでも読む価値十分あり。かって、松本清張氏や高木彬光氏が、古代史学に投じた一石、いや、哲学者の梅原猛氏の古代史学に対する業績に匹敵するぐらい、あと数年後には、古生物学のスタンダード学説になって、図鑑から何から書き換えてしまう可能性のある「論文」です。「宇宙」に興味がある人も読む価値があります。文字通り、宇宙規模で考えての、地球をはじめとする太陽系各惑星の自転周期の謎について、こんなに分かりやすく語られている本はありません。「人類の進化」に興味がある人も、読むと面白いでしょう。何故、どのような進化があって、哺乳類の中で人間は単独で子供を産むことが難しくなったのか。納得のいく答えがここにはあります。もちろん、他の章もそれぞれ魅力に満ちた展開を見せ、まさに「巻を措く能わず」。とにかく、とんでもない作品であることは間違いなく、これぞエンターテインメント。島田先生の作品力に改めて脱帽させられた読書体験でした。
August 18, 2015
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こんな本を読んだ。いとうせいこう 『想像ラジオ』又吉直樹 『火花』京極夏彦×柳田國男 『遠野物語拾遺 retold』 ==========いとうせいこう『想像ラジオ』前から気になっていた本。死者への弔いの仕方は、国によっても、時代によっても、人によっても全然違いますが、最も重要なポイントは、残された生者がいかに「納得」するか、ということです。この小説は、「小説」という形を借りた、死者への弔い。そして、読むこともまた、弔いに加わることなのだと思います。決して重い小説ではなく、清冽なイメージが貫かれ、読みやすく、読んで心に沁みる、そんな作品。==========又吉直樹『火花』基本、本は文庫化待ちなのですが、父が買ってきたので借りて読みました。「お笑い」という舞台を背景に、理詰めで引っ込み思案な主人公と、所属事務所も違う先輩との関係が描かれた作品。表現も文学的だし、ネットニュースのシーンとか、終盤の漫才のシーン、いわゆる「消えていった芸人」にも光を当てる筆致、最後の花火のシーンと合わせての「生きている限り、バッドエンドはない。」というメッセージなどは、とても良いと思うのですが、期待が大きかった分、少し肩すかしかな、と。「文学的であらねば」という縛りで、面白さを削いでしまっている感じがするのは、まさに作中の主人公のジレンマと同じ。「純文学」の定義が僕には分からないのですけれど、結果面白くなくなるなら、意味なくない?と思うのです。==========京極夏彦×柳田國男 『遠野物語拾遺 retold』京極夏彦×柳田國男 『遠野物語 remix』を読んだのは昨年のこと。前作に引き続き、なかなか原文で読むのがつらい原著を、リミックスし、語りなおすことで、読みやすく「編集」する手腕はさすが。そして、やはり、この物語群も怖さと不思議さに満ちています。ミステリーとは違い、解決なんてない、純粋なる不思議さ、奇妙さ。それは怖さの一方で、なぜか郷愁をかきたてるのです。
August 6, 2015
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それは、20年前の1月17日、僕はちょうど受験生で、センター試験の自己採点が終わった翌日の早朝に起こった。電車が不通で学校が休みになったと聞かされて、皆で観た寮生共同のテレビに映し出されたのは、知っているはずの街の一変した姿。高校生が携帯なんてもたない時代、関西出身の寮生は、家族の安否を確かめるべく、2台しかない寮の公衆電話に列をなしていた…。上手く文章には出来ないけれど、思い出せばきりがなく、また、いろいろ思うことはある。当時、受験生を言い訳に、やらなかったこと、出来なかったこと。切ない、やるせない、言葉に出来ない思いが去来する。あれから20年、今、観光客や震災を知らない若い世代が神戸の街並みを歩いても、震災の傷跡を見つけることは難しいだろう。この月日の間にも、東日本大震災をはじめ、日本の各地で様々な災害があった。あわせて、心から哀悼の意を表すとともに、復旧・復興に尽力されているたくさんの方々に敬意を表したい。痛ましい記憶は消えないかも知れないけれど、願わくば、それぞれの地で、将来を見据えた復興が行われんことを。
January 17, 2015
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あけましておめでとうございます。新年のご挨拶がすっかり遅くなってしまいました。昨年は、FBを始めたり、アメブロを書いたりと、色々な試みを行いましたが、どれも更新に波が…(笑)定期更新を自分に義務付けるようにしなければなりませんね。さて、今年のテーマは「全力疾走(たのしくかけぬける)!」年を取り、環境も変わって、「出来ないこと」も増えましたが、今年は様々な機会を頂いて、「出来ること」を増やす年でもあります。何事にも前向きに取り組んで、自分の「出来てないこと」を克服して、自分自身の成長の機会としていきたいと思います。というわけで、今年もよろしくお願いいたします!
January 7, 2015
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私は、姫路市立美術館友の会の会員で年会費を払っているので、行けば何回でも展覧会を観ることが出来ます。でも、正直、「スズキコージ」さんって言われても名前知らないし、チラシが頭蓋骨をあしらっていて、絵本作家と言われても少し怖い感じもするし、今回はパスでも良いかなぁ、と思っていました。しかし、ボランティアにお伺いした時にちらりと見えた作品のエネルギーに圧倒され、子供を連れて観に行くことを決めました。というか、むしろ、子供に観せたい、と思ったのです。==========展覧会場は、エネルギーと色彩が渦巻く色彩空間と化していました。----------いつもなら通路として使われている廊下も展示に使われ、「ほね・ホネ・がいこつ!」の特大絵本が置いてあったり、表と裏で全く色調の違う顔出しパネルがあったり。すごいぞ!ぼくらのからだシリーズ ほね・ホネ・がいこつ!中川ひろたか/スズキコージ----------会場に入ると、ガラスケース自体が取っ払われ、絵本とその原画が展示されると共に、原色系の色彩で派手に描かれた特大級の絵が所狭しと並べられ、さらにはパティック(インドネシアのろうけつ染め)から、巨大段ボール彫刻、仮面、ペインティングされまくった服、何がなんだか、おもちゃ箱をひっくり返したような、姫路美術館では見たことのない展示空間が広がっていました。とにかく、エネルギーが凄まじい。----------画風が好きだとか、嫌いだとか、そんな「評価」なんてお構いなしに、「絵が好きだ」というほとばしるエネルギーを次々に形にしていったかのような、とにかく、圧倒されること間違いなしの「スズキコージ」ワールドがそこにはありました。 エンソくんきしゃにのる ヤッホー ホイホー やまのディスコ----------本人は「魔法画家」になりたかった、ということだそうですが、確かにこの空間に何かの「魔法」がかかっていることは間違いありません。そして、その「魔法」は、頭でっかちな大人より、子供たちにこそ、ダイレクトにかかるのでしょう。「わけわかんないけど、とにかく楽しい!」そうとしか言いようのない、とんでもない美術展でした。==========『スズキコージの絵本原始力展~聖コージの誘惑~ 』 @姫路市立美術館 http://www.city.himeji.hyogo.jp/art/※インターネット・ミュージアムでも公開! こちらから[会期]2014.06/21~08/31[休館]月曜日[料金]一般 900円/大高生 600円/中学・小学生 100円作者:スズキコージ(公認サイト:http://www.zuking.com/)
August 27, 2014
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中学生の頃、英語の先生から授業中に「好きな画家は?」と聞かれ、絶句したことがあります。本当はエッシャーの名を挙げたかったのですが、いわゆる美術の時間で習う「絵画」とは何か根本的に違う気がしていたので、エッシャーが「画家」かどうか、自信を持てなかったからです。今ならはっきり答えられます。「 好きな画家はエッシャーです」と。エッシャーの描く絵は、いわゆる「騙し絵」的な作品から、肖像画、風景画に至るまで、どれも理性的で精緻、そして何より不思議な魅力に溢れています。「エッシャー100選」展が、明石市立文化博物館で開かれていると聞き、行ってきました。==========導入は、イタリア時代の風景画から。この頃の作品は、「精緻でリアルな風景画」の印象が強いですが、それでも、細かいところまで見る目に、後の作品の片鱗を感じることが出来ます。今回見た中では、ヴァチカンの広場を描いた作品が印象的でした。----------そして、ここから彼の作品は、平面の正則分割、極大極小表現、立体図形の絵画等を経て、不可能立体の絵画へと進んでいくのです。有名な「昼と夜」(左に行くと昼間に黒鳥が、右に行くと夜空に白鳥が飛んでいるように見える作品)、「空と水」(下に行くに従って鳥が魚に変わっていく作品)などが平面の正則分割の作品。これの集大成とも言えるのが「メタモルフォーゼ」。この作品は何度見ても飽きることがありません。有名な「ベルベデーレ(物見の塔)」では、空間のねじれをそれと感じさせずにさらりと描き、「滝」や「上昇と下降」では永久機関とも言うべき無限に続く水の流れ、人の流れを描いて見せます。 「空と水」 「物見の塔」 「滝」(図版は展覧会チラシより引用)やはり、エッシャーの作品は、何度見ても面白い。==========私の好きな作品は、「3つの世界」という池の鯉を描いた作品。この作品では、池に写る立木、池に浮かぶ木葉、池の下にいる鯉が同時に違和感なく描かれています。一見、普通の絵画のように見えます。いや、騙し絵を期待していると、ただの絵画です。しかし、実際は全然違う次元にある「3つの世界」を2次元世界にさらりと落とし込んでしまっている「違和感のなさ」こそが、エッシャーの凄さであり、真骨頂。不思議な造形に慣れてきた時に提示されると、「どこが騙し絵なの?」となります。そこまで含めて、この作品は見事に鑑賞者を「騙す」企みに満ちていると言えます。==========さて、これらのコレクション、ハウステンボス所蔵です。何年も前、Bunkamuraで観た時も、天保山のエッシャー展でも、ハウステンボスから来ていました。ハウステンボス内には「エッシャー館」があり、3D映像でも作品を楽しむことが出来ます。(ハウステンボス内「ミステリアスエッシャー」)----------また、エッシャーの父が建設にかかわった関係から、福井県坂井市三国町の「みくに龍翔館」では展望室内に「トリックアート・ワールド」があり、1993-2001年にかけて行われた「みくにトリックアートコンペ」の入賞作品を見ることが出来るそうです。福田繁雄さんの著書で、いくつか作品が紹介されていますが、これもまた超絶技巧の作品ばかり。世の中に天才ってたくさんいらっしゃるんだなぁ、と思わされます。----------さらには、兵庫県立美術館さんでも2014.10/15-12/28の日程で「だまし絵II」が開かれます。これも楽しみ。(巡回:2014.08/09-10/15@Bunkamura ザ・ミュージアム ・ 2015.01/10-03/22@名古屋市美術館)どれもいつか時間を作って足をのばしたいものです。==========『明石市制95周年記念 夏休み特別展 エッシャー100選 だまし絵の奇才が創る無限の世界』 @明石市立文化博物館 http://www.akashibunpaku.com/[会期]2014.07/19~08/31[休館]会期中無休[料金]一般 1,000円/大高生 700円/中学生以下 無料作者:M.C.エッシャー(公式サイト:http://www.mcescher.com/)
August 23, 2014
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「新宿梁山泊」さんの芝居が面白いと聞いていながら、行きそびれて早幾星霜。当時の座付作家、鄭義信さんの新作のお芝居が神戸で観られると聞き、楽しみにお伺いしました。しかも、このお芝居、兵庫県下12劇団によって構成される兵庫県劇団協議会の45周年記念合同公演。即ち、兵庫県下の精鋭の役者さん達による夢の競演。正に梁山泊!==========舞台は、少しばかり寂れた小さな結婚式場。今日は三組の挙式が予定されています。。しかし、それぞれの家族には、それぞれの「事情」があり…。結婚式という人生の「ハレ」の舞台で交錯する様々な思い。謎の登場人物、物語を盛り上げる音楽隊、真面目ながらも個性的な従業員達。バタバタとお話が同時進行で進んでいく中、題名通り、それぞれの「物語」が「ピビンパ(かき混ぜ)」され、蛍が物語に明かりを灯します。==========笑って、泣けて、感動できる、お芝居の王道のような作品でした。観客も含めて、同時に同じ舞台空間を共有しているからこそ生まれる独特の空気感の中で、生身の役者さん達が、台詞に、動きに、命を吹き込むことで、テレビとも、映画とも違う、お芝居でないと得られない笑いと感動が生まれるのです。==========緩急自在に場の空気を変え、しっかり笑わせ、しっかり泣かせ、かつ、多くの出演者それぞれに、しっかりと存在感を持たせる脚本の妙。この脚本の要請に応え、脚本を活かしきる、役者さん達それぞれの素晴らしい存在感。演技の上手下手を言葉で説明することは難しいのですが、どの方も間違いなく上手い。さらには、自然な形で入る、韓国楽器の生演奏。音楽だけでなく、その演奏技法、演出もエキゾチック。開演前の演奏も素晴らしく、劇中の登場の仕方も面白い。久しぶりに「良いお芝居を観た」という充実感を味わうことが出来ました。==========兵庫県劇団協議会 45周年記念合同公演 『ピビンパ ウェディング』 @神戸アートビレッジセンター (兵庫・神戸)2014/08/07-10 作・演出;鄭義信 出演:兵庫県劇団協議会 所属劇団 劇団員 神戸ドラマ館ボレロ 劇団四紀会 劇団自由人会 劇団神戸自由劇場 劇団ここから 劇団プロデュース・F 神戸ドラマ倶楽部 劇団風斜 劇団どろ 兵庫県立ピッコロ劇団 劇団道化座 神戸職演連 演奏:鄭慎二・閔俊泓
August 10, 2014
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「日本」から連想されるイメージの一つに「侍」があります。西洋のものとは違う兜・甲冑を身に着け、戦場を駆け抜ける「侍」。その兜・甲冑には、不思議で奇妙なものが見受けられることがあります。2014年現在、大河ドラマで放映されている「軍師 黒田官兵衛」の有名な兜にしても、赤い盃を逆さにした不思議な造形ですし、「愛」の漢字をかたどった直江兼続の兜、兎耳型の兜等を思い浮かべる方も多いでしょう。また、甲冑にしても、井伊の赤備えや伊達家の等、大量生産ではない時代に、質・量を揃えるということが、どれ程の贅沢であったことか。戦場で如何に目立つかを基準としたようなその造形。そこにはアート作家の想像力を刺激する何かがあるようで。侍達ノ居ル処。 [ 野口哲哉 ]大山崎山荘美術館で、『野口哲哉の武者分類図鑑』を観てきました。姫路美術館ボランティアの方に「好きだと思うよ」と勧めて頂いて、「確かに面白そうですね」と答えて以来、ずっと気になっていたのです。==========大山崎山荘のガラスケースの中に佇む、甲冑姿の小柄な「武士」達。時に無表情に、時に現代風の顔付で、甲冑を身に纏った姿は、甲冑の格好よさとのギャップで、どこか滑稽さを感じさせてくれます。そして、まるでそのような甲冑が本当にあったかのように騙られる、「偽史」に基づいた造形物達は、面白くて愛おしい。猫に着せるために作られたという甲冑、自転車に乗った武士、空を飛ぶ武士、シャネルのマークをあしらった甲冑を纏う「紗練家」の武士達。単に甲冑のみならず、解説書や当時の絵画まで作り込んで説得力を持たせる技法は、緻密にして周到。何だかワクワクする時間を過ごさせて頂きました。==========一般的には、氏の作品を見て思い浮かべるのは、やはり、同世代の作家、山口晃氏や天明屋尚氏の作品でしょう。少し趣は違いますが、"天才"会田誠氏の作品も近いものがあります。 山口晃作品集 傾奇者 会田誠 天才でごめんなさいしかし、この「偽書」にまつわるディテールの扱い、ないものをあらしめる手腕には、このBlogでも何度か紹介している「クラフトエヴィング商會」さんの作品と、感性の方向性こそ違えど、凝り方に相通じるものを感じました。「クラフトエヴィング商會」さんについては、また頁を改めて。==========まぁ、今回、何が驚きだったかと言えば、偶然、紺洲堂主人さんと、それと知らず同じ日、同じ時間に展覧会場にいたことです。アートの起こす奇跡について、思いをめぐらす一日となりました。==========『野口哲哉の武者分類図鑑』 @大山崎山荘美術館 (京都・大山崎) http://www.asahibeer-oyamazaki.com/index.html[会期]2014.04/19~07/27 [休館]祝日を除く月曜休館[料金]一般:900円 / 高・大学生:500円 / 小・中学生:無料作者:野口哲哉
July 28, 2014
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「夏には怪談」という方もいらっしゃいますが、私自身は「怖い話」って苦手で、絶叫系マシーンには乗れても、お化け屋敷の類にお金を払って入る気はございません。とは言え、怖いもの見たさ、というのはあるわけでございまして。作者がミステリー系だから大丈夫だろうということで、京極夏彦先生の『遠野物語remix』、柳広司先生の『怪談』を購入しました。…怖かった。----------『遠野物語remix』は、柳田國男先生の『遠野物語』を口語体にして、順番を分かりやすく差し替えたという作品なのですが、合理的解決を有さない、不条理で不合理な物語は、日常の中にぽっかり空いた真っ暗な深淵を覗き込むようで、背筋が凍る思いがします。角川ソフィア版には、柳田國男先生の原版も収録。 遠野物語remix 遠野物語remix 付 遠野物語----------一方の『怪談』。 怪談 [ 柳広司 ] 怪談 [ ラフカディオ・ハーン ]こちらは小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)先生の『怪談』を下敷きにして、現代を舞台に、「合理的」な「怪談」が語られる短編集。柳先生の作品は、本当に良く練られているなぁと、いつも感心しますが、今回はこの知性的・理性的な合理性と、それだけでは割り切れない「怖さ」のバランスが素晴らしい。所収の「雪女」や「むじな」を代表として、やはり人間の心の闇が一番怖い、ということを思い起こさせてくれます。==========「日常に潜む不条理の怖さ」という言葉にすると、どちらも同じなのですが、異形の者の怖さを取るか、人間の心の怖さを取るか、いわゆるホラー的な怖さはありませんが、それ以上に怖い両作品でした。
July 3, 2014
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思えば、ディズニーアニメは、ミュージカル映画としての側面を持っているわけで。有名な曲、それと知らずに知っている曲はたくさんあります。「アナと雪の女王」を観ました。(C)2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.映画「アナと雪の女王」この作品情報を楽天エンタメナビで見るディズニー伝統の、と言って良い、ミュージカル映画。----------氷の魔法の力を持つ姉、姉の力を忘れさせられて育った妹。魔法の力を表に出さないため、閉ざされた城の中で二人は成長します。そして、姉の戴冠式の日。久しぶりに開け放たれた城に、期待いっぱいの妹と、不安いっぱいの姉。そんな中、事件は起こり、国は氷に閉ざされてしまうことになります。果たして、二人はこの危機を乗り越えられるのか。----------何と言っても、途中出てくるスーパーキャラクター、雪だるまオラフの存在が素晴らしい。「夏に憧れる雪だるま」という、緊張感あふれるキャラクター設定はさておき、二人の楽しかった思い出の象徴である「雪だるま」が、文字通り、二人の「雪解け」のきっかけを担うという構成はさすがです。----------それに何より、主人公たちのハッピーエンドは疑いませんでしたが、「夏に憧れる雪だるま」の幸せがどう実現されるのか、正直、私にはそれがハラハラドキドキでした。----------前向きで楽しくて、ハッピーエンドが約束されていて、印象に残る素敵な音楽が散りばめられていて、美しい映像を安心のクオリティのCGが彩り、家族で安心して観ることの出来る、素晴らしいファンタジー。楽しませて頂きました。
July 2, 2014
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「奇妙な味」としか表現のしようのない映画でした。絵画的な、どこか懐かしい雰囲気を背景に描かれる、先の読めない緊張感あるストーリー展開。ミニシアター系の映画が好きな方には、たまらない作品です。(C)2013 Twentieth Century Fox映画「グランド・ブダペスト・ホテル」この作品情報を楽天エンタメナビで見る現代。墓地にある作家の碑の前に佇む一人の女性。彼女の手には「グランド・ブダペスト・ホテル」という本が。1980年代。その作家が、テレビカメラに向かって語りかける。「自分は、架空の物語ではなく、語られた物語を書いているのだ」と。1960年代。作家が滞在していた「グランド・ブダペスト・ホテル」に奇妙な客がやってくる。その客と親しくなった作家は、ホテルにまつわる、その男の思い出話を聞くことになる。1930年代。「グランド・ブダペスト・ホテル」は名門ホテルとして、活気に溢れていた。その中心にいるのは伝説のコンシェルジュ、グスタフ・H。----------この2重3重構造の中で、物語が動き始めます。グスタフ・Hが巻き込まれる事件とは。そして、絶体絶命の状況におかれた彼の取る行動とは。----------先の読めない展開に、独特のリズム感のある映像美、緊張感の漂う脚本。何かしらの社会風刺も込められながら、それを嫌味に感じさせず、物語のリフレインが爽やかな余韻を残します。==========ウェス・アンダーソン監督の作品は、これまでも『ライフ・アクアティック』『ダージリン急行』を観ているのですが、どれも不思議な浮遊感とほんわりとした温かさに包まれた作品です。なかなか機会はないですが『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』も観たいですねぇ。 ライフ・アクアティック ダージリン急行 ザ・ロイヤル・テネンバウムズ
July 1, 2014
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「命を大切にしよう」という考え方に反対する人は、ほどんどいないと思います。しかし、この「命」の中身をどう考えるか、どのように大切にするか、というのは人それぞれです。さて、この本の帯には、こう書かれています。「イルカ殺しはかわいそう、でも焼肉もマグロ丼も大好き。 この矛盾、いったいどうしたらいい?」ぼくらはそれでも肉を食う [ ハロルド・A.ハーツォグ ]残念ながら、この本にその「答え」は書かれていません。でも、世の中に様々な考え方があり、それぞれそう思う根拠、背景があることを知ることが出来ます。==========序章で出される「問題」から、とても衝撃的です。曰く「どうせ殺処分されてしまう猫なら、ペットとして飼われているヘビの餌にしても良いのではなかろうか?」この質問自体に対して、ほとんどの方が、不快感を覚えるのではないでしょうか?(特に猫好きの方は、怒りすら覚えられたかと思います。)実際にこういうことが行われている、というわけではありません。作者の主眼は、ではなぜこの不快感が生まれるのか、というところにあります。----------ユダヤ人を虐殺しながら、一方で動物愛護を推進したナチスの話。菜食主義者と健康の話。狩猟と性差の話。闘鶏(残酷としてアメリカでは禁止)の鶏と、食肉となる鶏では、どちらが「幸福」かという話。動物実験のために遺伝子操作されて生まれてくるネズミの話。----------倫理的・文化的な非常に難しい問題を、丁寧かつ出来る限り公正に取り扱うことで、人間と動物の関係性について論じています。----------久しぶりに、知的好奇心を刺激され、自分の頭で考えさせられる、スリリングな読書体験でした。==========ちなみにこの表紙の絵を描かれたのは、ムツゴロウ先生。なかなかに柏書房さん、良い仕事をされてます。
June 19, 2014
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先日、伊勢へ参拝旅行に行ってきました。初日は二見興玉神社に参拝。先日、神社は、自分の私利私欲をお願いするところではなく、他人の幸せを願う場所なのだ、と教わりましたが、あわせて、今の幸せへの感謝を申し述べる場所でもあります。----------なので。これまでの様々な「出会い」に感謝。妻との出会いに感謝。夫婦円満に感謝。素晴らしい子宝を授かったことに感謝。子らの健やかな成長に感謝。----------そして。友人たちの「良縁」を祈願。==========翌日は、伊勢の内宮へ。何より、人の多さにびっくり。前回来たときは、もっと静かで、凛としていて、森閑とした中、神々しさを感じつつ、参拝させて頂いた覚えがあるのですが…。それでも、ほとんどの方が正装され、きちんと鳥居の前で一礼しながら、整然と参拝していく様は、見ていて気持ち良いものがありました。日本国民の総氏神でもある伊勢神宮では、今、こうして、ここにあることに感謝。----------駐車場への帰りは、人通りの多い「おはらい町通り」「おかげ横丁」を避け、五十鈴川沿いをのんびり散策。最初に来た時は、両親に連れられて家族で。次には、小学校の修学旅行で。その次は、大学時代の友人たちと。そして今回は、自分の妻子と。人生の節目節目に、こうして参拝させて頂けるのは、本当に有難いことなのだと思います。さて、次に参拝するのは、いつになるのやら。
March 15, 2014
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3/8は「国際女性デー」です。なんて話をすると、アンチフェミニズムの諸氏から突っ込まれそうですが、日本でこそあまりメジャーではないものの、国連で1975年に定められた、由緒正しい記念日です。と言いつつ、私がこの記念日を知ったのは、ドイツ滞在中。女性にミモザの花を贈ったりする日なんだよ、と教えられました。まぁ、ミモザは花粉症の原因になる場合もあるそうなので、うかつに贈ると、えらいことになりかねませんが。余談ですが、ホワイトデーをこの日にしておけば、国際的にも説明しやすいし、意義深い感じもするし、良かったのではなかろうか、と私は思うのですが…。これだけメジャーになっちゃうと、今更、なんだろうな。
March 8, 2014
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以前、ラジオでこの本が紹介されていて以来、ずっと気になっていました。「OED」すなわち、「Oxford English Dictionary」。wikiより引用すると、「1989年刊行の第二版は、本体20巻 (累計21,730頁) と補遺3巻 (累計1,022頁) から構成され、主要な見出し語数は291,500、定義または図説のある小見出し語やその他の項目を含めると615,100。」という「オックスフォード大学出版局が刊行する最大かつ最高の英語辞典」。この辞書を通じて、「英語の森」に分け入った冒険者の旅の記録が、この本です。そして、僕はOEDを読んだ[ アモン・シェイ ]1,890円私自身、読書は嫌いではありませんが、辞書を「読む」経験をしたことはありませんし、今まで読んできた本を積み重ねても、このページ数に行き着くかどうか。そして、「OED」は、「最大かつ最高」であるが故に、英語圏の人でさえ知らないような単語まで、網羅されているのです。作者の読書の歩みに沿って、「A」から「Z」まで26章のエッセイがあり、これだけでも十分に面白い「冒険記」なのですが、作者が面白く感じた単語の紹介と、作者による単語への突っ込みがあり、それらの言葉から垣間見える昔の風習の紹介、「悪魔の辞典」的な言葉に対する考察、言葉を生み出してきた人間社会に対する皮肉、等々入り混じって、面白い「読み物」になっています。==========ちなみに、この本、出版社が「三省堂」さんというのも気が利いています。日本には、辞書編纂者の方々はもちろん、「辞書を読む」方もたくさんいらっしゃるようで、私も少しだけ、その仲間入りをしたくなりました。読むんだったら何が良いかな?まず三省堂さんの「新明解国語辞典」かしら?新明解国語辞典小型版第7版[山田忠雄]2,940円____新解さんの謎[ 赤瀬川原平 ]540円 ____新解さんの読み方[ 夏石鈴子 ]660円辞書編纂関連の本も話題になりましたね。____舟を編む[ 三浦しをん ]1,575円____辞書を編む[ 飯間浩明 ]840円英語辞書、せっかくならこちらも、三省堂さんの…と思っていましたが、こちらのHP(編纂者:山岸勝栄先生のページ)を拝見して、「スーパー・アンカー英和辞典」を読みたくなりました。スーパー・アンカー英和辞典第4版[ 山岸勝栄 ]3,045円==========本書でも度々言及されていますが、辞書には、編纂者の並々ならぬ熱意と努力が込められているわけで、それを「読む」というのは、「編む」苦労に比べたら、たいしたことはありません。私みたいな凡人読書家は、小説の作家さんや研究者の方々に対しても、そう思うこと多いですけどね。携帯やPCで手軽に意味を調べられ、電子辞書も安価に手に入る時代になりましたが、それでも、紙媒体で辞書に触れられる楽しみを、改めて思い出させてくれ、また、作家や編集者の方々に対する敬意を、改めて呼び覚ましてくれる、そんな一冊でした。
March 7, 2014
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「麦わらの一味と星空の航海へ!」というわけで、まぁ、正直、「コブクロ 流れ星に願いを」の方が見たいなぁ、とか思いつつ、久々のプラネタリウムだったのですが、素直にわかりやすく面白かったです。子供も、ワンピースのストーリーもキャラクターもよく知らないはずなのに惹き込まれていました。----------(以下、ストーリーをご存じない方には意味不明になろうかと思いますが…)「くじら座」から、ラブーンのことに思いを馳せ、「わし座」からハヤブサ→アラバスタでの別れを連想して涙を流し、バラバラになってしまった「アルゴ座」から、ゴーイングメリー号を思い出し、オーロラの立体投影から、チョッパーの引く橇に乗って、Dr.クレハとの別れを回想する。他の小ネタも、笑いと感動を誘ってくれます。----------私自身は、ワンピースにあまり詳しいわけではありませんが、それでも涙腺を刺激される内容でした。ファンの方は、かなり泣けるのではないでしょうか。----------肝心の星の解説も、春の星座から冬の星座まで、ナミとロビンが一通りわかりやすく説明してくれるので、知っているようで知らない星座の世界を知ることが出来て、大満足。===========上映前には、加古川総合文化センター宇宙科学館の方が、加古川の「今」の星空の解説を行ってくれます。正直、知らないこと、忘れてしまっていることでいっぱいで、感心しっぱなしでした。これで、大人400円は安いと思います。===========うーん、88の星座、今からでも覚えられるかなぁ?せっかくだから、英語名でも覚えれたら格好いいなぁ。まぁ、私自身の知的興味はさておき、子供たちが星空に興味を持ってくれたら嬉しいな、とは思います。環境系出身としては、綺麗な空気を守ることへの意識とか、キャンドルナイトへの興味とか持ってくれたら、さらに良いんだけどなぁ(笑)==========「ワンピース・ザ・プラネタリウム」 @加古川総合文化センター http://www.kakogawa-bunka.jp/ ※上映館に関しては、コニカミノルタのこちらのページから確認できます。 兵庫県では、今現在、加古川でしか見られないようですね。[会期]土・日・祝日・冬休み(12/21~1/6)・春休み(3/25~31) 各日11:00~[料金]おとな(高校生以上)400円 / こども(4歳~中学生)100円 作者:コニカミノルタ(http://www.konicaminolta.jp/planetarium/index.html)
February 13, 2014
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先日、雪が降りました。温暖な瀬戸内に生まれ育った身としては、雪が降るとテンションが上がります。ご近所の子供たちもそうだったようで、妻が「雪が降った日は、子供のいる家がすぐ分かる。子供のいる家の前には雪だるまが出来ているから。」と言っていました。さて、雪の日ということで、本棚から引っ張り出してきたのはこの本。雪わたり [ 宮沢賢治 作 ・いもとようこ 絵 ]宮沢賢治さんの書く、日本語の美しさももちろんですが、いもとようこさんの描く、かわいらしいキツネの絵がとても素敵な一冊です。お話自体、教訓めいたことも、難しい話もなく、子供たちがキツネの幻燈会に誘われて、楽しんで帰るというとても素直なストーリー。テキストだけなら、もう少し深く読むことも出来るのでしょうが、いもとようこさんの絵が、楽しい物語の世界に、難しいこと抜きで誘ってくれます。「キックキックトントン キックキックトントン キックキックキックトントントン」「かた雪かんかん、しみ雪しんしん。」なんてリズミカルな文章が、音読していて とても気持ち良く響く、「声に出して読みたい日本語」な一冊でもあります。冬の雪国の大変さに思いを馳せつつ、少し幻想的な物語世界の雪国で楽しんでみるのも良いかもしれません。
February 12, 2014
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久々のお芝居は、日岡神社の参集殿にて。『播磨國風土記』より、景行天皇の話。題して『アユを食べないミカドのお話』。前段が講演会で、『播磨國風土記』の資料を頂いていたので、それと照らし合わせながら拝見したのですが、「原作」に忠実に、かつ大胆にアレンジしてあって、非常に面白く楽しいお芝居でした。正直、高校演劇は、気恥ずかしい気分もあり、あまり観る機会を得ることはなかったのですが、さすが東播磨支部大会最優秀校にして兵庫県大会優良賞受賞校、お客さんを上手に巻き込んでのパフォーマンス、同世代受けしそうなネタ振り、息を合わせてのセリフ回し、人数の多さをうまく生かした構成、難しいセリフも難なくこなし、役者それぞれが生き生きと演技していて、本当に素晴らしいお芝居に仕上がっていました。==========播磨の国に、妻を求めて旅に出る景行天皇。ところが、目指す「印南別嬢」(いなみのわきいらつめ)は、姿を隠してしまいます。彼女を見つけるきっかけとなったのは、彼女の飼っている白犬でした。探すうちに行った景行天皇の行為が、地元の地名の由来となっていきます。出会った二人は結ばれ、幸せな家庭を築きました。時代は流れ、彼女が亡くなった時、日岡の地に墓が作られました。しかし、その身体は川に流されてしまい、櫛箱と肩掛けだけが埋葬されることになったのでした。==========『播磨國風土記』で淡々と語られる「歴史」に光を当てると、こんな面白い物語が立ち上がるのか、と感心しました。----------「印南別嬢」は、『古事記』では「針間之伊那毘能大郎女」「伊那毘能大郎女」、『日本書紀』では「播磨稲日大郎姫」「稲日稚郎姫」と表記され、大碓命(おおうすのみこと)・小碓命(おうすのみこと)の母とされます。小碓命(おうすのみこと)は、後の「日本武尊(ヤマトタケルノミコト)」。日本古代史のスーパーヒーローです。----------日岡神社は、この大碓命・小碓命の双子の出産の際に、天伊佐佐比古命が安産祈願を行ったとされ、安産の神様として、今でも厚い信仰を集めています。==========所縁の地で、それにふさわしい物語を見る。なかなかに素晴らしい体験をさせて頂きました。============東播磨高校演劇部「ヒガハリMAX!」 『播磨國風土記 アユを食べないミカドのお話』 @日岡神社参集殿 (兵庫・加古川)2014/02/02(日) 作;東播磨高校演劇部 演出;東播磨高校演劇部 出演;東播磨高校演劇部東播磨高校演劇部 :http://www.hyogo-c.ed.jp/~higashiharima-hs/club/Drama/Drama.html日岡神社:http://www.hiokajinja.or.jp/
February 4, 2014
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あらためて新年が明けました。私は、数年前から「月と季節の暦」を愛用しているのですが、このいわゆる「月暦(旧暦)」での新年が明けたことになります。----------アジアの各国では、これで新年を祝う国も多く、中華街の「春節祭」はこれにあたります。旧暦の世界では、1~3月が「春」なので、暦の上ではちょうど「春」が始まったわけですね。梅の花もほころび始め、正に「迎春」です。----------さて、今年は「太陽暦」とちょうど一か月違いなので、「月暦(旧暦)」と「太陽暦」の日付が一致します。つまり、今月3日には「三日月」が見えますし、15日には「十五夜」の月が、16日には「十六夜(いざよい)」の月が見えるのです。なかなか古典の世界を実感することって出来ませんが、この機会に、今月は少し古典気分を楽しんでみてはいかがでしょうか。
February 1, 2014
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だそうです。 なるほど、1(アイ)31(サイ)ね。 しばらくセンター試験国語をネタにしたせいで、不倫だ、夫婦喧嘩だ、なんて話題ばかりだったので、ほっとします(笑) え? 愛妻エピソード? のろけ話は長くなるのでやりません(笑) でも、正直、愛妻と恐妻って紙一…何でもありません。ありませんよ。
January 31, 2014
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妻のことは大事だけど、不倫相手に心惹かれる夕霧(夫)。妻は、大きい子を家に残し、小さい子らを連れて実家に帰ります。妻は夫と顔を合わせようとすらしません。==========センター試験の古文は、なかなか難儀なこのシチュエーションの中で、夫婦間のやり取りを、どちらの発言か考えながら訳していく、という問題を問5として出します。----------選択肢を整理すると、このような感じになります。※わかりやすくするために、選択肢にだいぶ手を加えています。==========(1)A:夫「お前は年甲斐がない。多くの子供をなすほど深い仲なのに、少しの出来心くらいで実家に帰るなんて」B:妻「恋のやりとりを楽しいと思っている人間の気が知れない。あなたの心が離れた自分は変わりようもないから何をしようと勝手です。子供たちのことは、後はよろしく」(2)A:夫「子供たちをほったらかしで女御のもとに入り浸るなんて軽率だ。子育ての苦労くらいで実家に帰るなんて無責任だ」B:妻「浮気者との間の子を育てるのは飽き飽きです。子供たちはそちらで世話してください」(3)A:妻「年甲斐もなく、恋にうつつを抜かして、子供たちのことを忘れるなんて親として無責任でしょう」B:夫「私の気持ちはもはやもとに戻りそうにもないが、子供たちだけは見捨てずにいてくれれば嬉しい」(4)B:妻「あなたに愛想をつかされた自分だし、今更性格を直すつもりはない。私のことはともかく、子供たちだけは面倒を見てほしい」C:夫「言いたいことは分かったが、私の名誉も考えてほしいね」(5)B:妻「私に飽きたあなたの気持ちがもとに戻るはずもなく、お好きになさればよいが、子供たちへの責任は負って頂きたい」C:夫「穏やかなお言葉ですね。でも、このままだと、名誉が傷つくのはあなたの方ですよ」==========…怖いよぅ。なんか、どれもトゲトゲしているよぅ。----------(2)は妻が女性のもとに通ってる感じになるので、「?」な会話になっていますが、(1)の男性主義的な発言、(3)の開き直り、(4)(5)の妻に対する挑発…。(5)の「穏やかなお言葉ですね。」とか嫌味発言だし。----------いや、まぁ、浮気の結果、妻が実家に帰って顔も合わせてくれない、というシチュエーションですからね。----------古典の本当の面白さは、こういう男女の機微的な部分にあって、中高生にその面白さを伝えるのは難しい、という話をよく聞きますが、まさか、その部分が(まぁ、もっとハードだったり、あからさまだったりのシーンではないにせよ)センター試験に出るとは。一人で読み解く分には楽しいですけど、このシチュエーションを高校生に説明するのは難しいなぁ(笑)
January 30, 2014
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古典の世界の倫理観は、今とは違うもののはずです。だから、我々の感覚からすると突飛な内容であっても、それがテキストに書いてあったら「正しい」のです。もっと言えば、現代国語でも、感情移入できるかどうかは別問題で、テキスト通りに登場人物の心情を読むことが基本です。さて、前回からの続きで、2013年度センター試験から、古文の問4の選択肢を見ていきましょう。「「雲居雁(くもいのかり)」の夫である「夕霧(ゆうぎり)」は、妻子を愛する実直な人物で知られていたが、別の女性(「落葉宮(おちばのみや)」に心奪われ、落葉宮の意に反して、深い仲となってしまった。以下は、これまでにない夫の振る舞いに衝撃を受けた妻が、子供たちのうち姫君たちと幼い弟妹たちを連れて、実家へ帰る場面から始まる。これを読んで、次の問いに答えよ。」こんなシチュエーションを前提に、夫の心情について選ぶのですが、===========(1)妻をずっと実家に居座らせるわけにもいかず、 一方でおとなしく自宅に戻りそうにもないので、 どうしてこんな女を良いと思ったのかと、 妻をいまいましく思っている。(2)妻には出ていかれ、落葉宮は落葉宮で傷ついているだろうと想像され 心労ばかりがまさるため、 恋のやりとりを楽しいと思っている人間の気が知れないと、 嫌気がさしかけている。(3)眠っている我が子の愛らしさに、 この子を残して家を出ていった妻の苦悩を思いやって心が痛み、 自分はつくづく恋愛には向いていないのだと悟り、 自分の行動を反省している。 (※ 妻が連れて行ったのは小さい子らで、大きい子たちは家に残っています。)(4)落葉宮と深い仲になったものの、 不思議と落葉宮と妻との間で心が揺れ、 妻の乱れる心の内を思うと、気持ちが落ち着かず、 自分の行動を後悔して、死にそうなほど苦悩している。(5)落葉宮を愛していても、妻がいる限り先が見えず、 落葉宮も現状に悩んでいるかと思うと心穏やかではなく、 世間の目も気になって、 妻との生活が嫌になり、別れたいと望んでいる。----------まずからもって、(1)の選択肢。自分が不倫しておいて、「いまいましく思う」ってどうなのよ、って話ですが、世の中、自分勝手な人はこんなことを思ったりしなくはないのでしょう。でも、それを高校生に選ばせるの?って思います。(2)も、「恋のやりとりを楽しいと思っている人間の気が知れない」って、ただの八つ当たりですし、自分が不倫愛にうつつを抜かしておいて、何を言っているんだ、と思います。(3)(4)は、まぁ、身勝手は身勝手ですが、現代でも通じる反省かな、と思います。(5)は、なんか、この先、犯罪小説に発展しそうな展開ですね。答えは、前後の文脈と、傍線部の訳からして、(2)なんですけどね。心労の種を蒔いたのはお前だろ、って話です。==========しかも、この夕霧(夫)、落葉宮は会うことすら拒否していたのに、無理やり押し入って、不倫に及ぶ、という非道っぷり。その後も拒否する落葉宮に、「もう噂になっているから、僕を拒否したら、余計に世間体が悪いよ」と言ってのけます。そんな野郎に「恋のやりとりを楽しいと思っている人間の気が知れない」って言われてもね。===========『源氏物語』を書いた紫式部はもちろん女性ですが、当時の倫理観がどうであったのか、誰にどんな感情移入をしながら書いたのか。また、当時読んでいた女性がどう感じたのか、「このクズ」なのか、「私もこんな人に言い寄られたい」なのか。まぁ、現代の倫理観に照らすのは、古典の理解の仕方としては、良くないこと、なんですけどね。このお話は、問5に続きます。※前回と同じく、わかりやすくするために、選択肢に少し手を加えています。
January 27, 2014
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不倫について、高校生に聞いてみたいと思います。というと、問題がある気がするのですが、それが問題になっているのです。今年のセンター試験の古典は、『源氏物語』より「夕霧の巻」でした。ええ、まぁ、『源氏物語』というチョイスはありだと思うのですけどね。問題文から省略引用します。「雲居雁(くもいのかり)」の夫である「夕霧(ゆうぎり)」は、妻子を愛する実直な人物で知られていたが、別の女性(「落葉宮(おちばのみや)」に心奪われ、落葉宮の意に反して、深い仲となってしまった。以下は、これまでにない夫の振る舞いに衝撃を受けた妻が、子供たちのうち姫君たちと幼い弟妹たちを連れて、実家へ帰る場面から始まる。これを読んで、次の問いに答えよ。」…現代語の説明からなかなか衝撃的ですが、本文も、問題文もすごいことになっています。===========「心苦し」の説明としてふさわしいのは?(1)妻は、子供たちを実家に連れてきたものの、 両親の不和に動揺する子供たちを目にして、 愚かなことをしたと思っている。(2)妻は、我が子を家に置いて出てきてしまったものの、 子ども達が母を恋い慕って泣いていると耳にして、 すまないことをしたと思っている。(3)夫は、妻に取り残されてしまった我が子の、父の姿を見つけて喜んだり、 母を求めて泣いたりする様子に心を痛め、かわいそうだと思っている。(4)夫は、置き去りにされた子たちが、 妻に連れていかれた子たちをうらやんで泣く姿を見て、 我が子の扱いに差をつける妻をひどいと思っている。(5)姫君(子ども)達が、父母の仲違いをどうすることも出来ないまま 母の実家に連れてこられ、 父のもとに残された兄弟たちを気の毒だと思っている。----------正解は(3)なのですが、(4)とか、夫、非道すぎ。(5)では、子供に気を遣わせすぎ。(1)にしても、(2)にしても、妻が責任を感じてる感じ、なんだかなぁ、です。===========この後の問4、問5もなかなかえげつない選択肢が並んでいるわけですが、それはまた明日にでもお話ししましょう。てか、改めて問いたい。高校生にこんな問題出しちゃいますか?
January 23, 2014
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親讓りの国語得意で小供の時から得をして居る。なぜそんな得意だったのかと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。==========理由あって、「国語」を勉強中です。「国語」を教えて欲しい、と言われ、どうすれば良いか思案中なのです。古文や漢文については、教えたこともありますし、説明も出来ますが、現代文は何をどう教えたら良いのか難しい。正直な話、国語は、小学生の時から得意だったので、基本的に勉強したことがないのです。もちろん、漢字や熟語の勉強はしましたし、授業はしっかり聞いていましたが、定期考査で試験勉強をしたことはないですし、大学入試対策も、あまり勉強をした覚えがありません。それでも、センター試験では200点満点中192点。嫌味でも自慢でもなく、本当に得意だったんです。==========しかし、教えるとなると話は別。自分の思考プロセスを説明することは、とても難しいのです。そこで、本屋で各予備校の出している参考書をパラパラ確認してみたのですが…絶句。「本文をよく読みなさい」「前後の文章をしっかりチェック」「段落の前半に下線部があったら後半を、後半に下線部があったら前半を確認」えっと…そこから?てか、その程度の話で良いの?てか、その程度も出来てないってこと?確かに、基本的過ぎて、学校では教えてもらえないのかも知れない。それにしても、お金を取って教えるほどの内容ではないと思ってしまいます。もちろん、実際に受ける授業の内容は、本文に即して、これを実践していくことで読みを深める、というような形式なのでしょう。==========うーん。まぁ、そうやって理解を確認していって、思考プロセスを整理してあげる、という他ないか。できる限り面白い文章を提供して、試験のための勉強にならないように導いていくのが、せめてもの務めでしょう。==========テクニックに走ればつまらない。成績につなげにゃ意味がない。とかく国語は難しい。
January 22, 2014
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