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2003.12.17
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カテゴリ: 日替わり日記
猫4



それは福井の丸岡町が募集した「日本一短い母への手紙」への一遍だ。
ある日、「突然で驚かれるかも知れませんが、一筆啓上に応募した作品のことでお話を伺えないでしょうか」という電話があった。それが伊藤俊也監督だった。監督は福井のご出身だ。
午後3時の約束でOKをすると、時間ピッタリに見えた。福井で作品を読み、その足で4、5時間車を飛ばして来たという。
その時の話しは作品のことより、違う方向に発展していったような気がする。結局、伊藤監督が僕の作品をモチーフとして映画化するということは無くなり、関係もそれきりになると思っていた。
ところが、その伊藤監督から丁寧な手紙を戴いた。自分の手で映画化できなかったけれど、後輩の監督がひきついでやることになったというようなことだった。
僕がどんな返事を書いたのか覚えていないが、お礼に僕の川柳作品集を一冊添えて送った。すると、それにも感想の手紙をくれた。
そんなこともあって、たまさかに手紙の交換がはじまった。
ちょっとエポックとなったのは、伊藤監督作品で東条英機と東京裁判を描いた『プライド』という映画が話題になったときだ。

僕の地元の映画館でも上映されず、僕は東京まで観に行ってきた。どのように東条英機を美化して描いてあるか確かめるつもりで観たのだが、終戦付近の史実に沿って正確に描いたという印象で、内容的に何等言いがかりをつける筋合ではないと思えた。
たとえ東条であろうと、政治から離れての家族の中ではふつうの父であり親であったろう。そうした普通の人間の部分が良くないということなのだろうか。よく、ドラマで犯人をとことん悪人顔で描くことがあるが、あれは疑問だ。たとえ殺人犯であっても、ある人にとってはとても優しい一面をもっていることだってある。優しいから、あるいは弱いから、犯罪を犯してしまうこともあるはずだ。
一国のリーダーとしての東条の過ちは万死に値するものではあるが、私人としての全人格までも否定するべきだろうか、政治家・軍人東条と私人としての東条はわかて考えるべきだと僕も思う。
実はこの頃僕は、中国映画『南京1937』の当地で上映する主催メンバーだった。この映画は南京大虐殺をモチーフに映画化したものだが、これもたぶんかぎりなく史実に近いドラマであろうと思える、戦争の残酷な一面があますところなく描かれて衝撃的な内容であったが、ストーリーとしても優れた映画だった。
ところが、『南京1937』の上映に反対する右翼の映写幕切り裂き事件など、妨害事件があちこちで発生、映画館は上映中止に追い込まれていった。
僕は、このときの左右両派のおとなげなくヒステリックな姿勢に、つくづくうんざりした。映画を観てから気に入らなければ内容を批判すればいいのである。観もしないで、自分の主義とちがうからと妨害するのは、民主主義の否定であり、自分の狭窄さをさらけ出しているにすぎない。
また、かりに偏向映画だから見せないほうがいい、という考え方は、観衆の眼を信頼していない態度で愚弄するものだ。良い、悪いを判断するのは観衆であり、「映画=影響力」と短絡的な人たちよりはずっと賢いはずだ。
こんな意味の内容の手紙は伊藤俊也さんにも送り、僕は『南京1937』を大勢に観てもらう努力をするから、監督は胸を張って『プライド』上映をすすめて欲しい、というように書いて送った。
こんなこともあって、いっそう親密感が増したのかも知れない。

伊藤監督は、『プライド』を補足する形で『偽・日本国』(幻冬舎)という本を書いている。少し中味の濃い内容だが、これを読めば伊藤俊也という人がどんな思想の人かわかる。単純右翼が期待し、単純左翼が排斥するような人物ではないことがよくわかる。

ご子息がこちらに転勤したのをきっかけに、ご夫婦で当地に遊びにみえたこともある。監督としての演技にはかなり厳しく、女優さん泣かせだということを聞くが、普段は偉ぶったところがまったくない。(あたり前かも知れないが)話題も豊富で、きさくな人である。

彼女にとっては『誘拐報道』『白蛇抄』で、歌手から演技派女優へと開眼させてくれた恩人なのだ。それをずっと忘れない彼女も偉い。
会場で、僕は小柳ルミ子さんのすぐ近くにいたので様子を知っているのだが、彼女は遠くにいる伊藤監督の挨拶や話しを、少しも聴きもらすまいとするかのように、テーブルの上の料理や飲み物にもまったく手をつけず、眼で監督の姿を追い、言葉をじっと真剣に聞いていた。
離婚騒動やテレビ上で作られたキャラクターの印象とちがう、「わたしの城下町」の頃の楚々とした純真な部分をいまだにもっているのではないかとさえ、僕には思えた。

と、これを書いているところに電話が鳴った。受話器をとるとなんとその伊藤俊也さんではないか。「先日は遠いところを来て戴いて、とてもうれしかった…」から始まって、会の後のことまでご心配くださっていたようで、何とも恐縮至極。
僕たち夫婦のほうが、珍品貴賓な方々と近くで拝見できたうえ、さまざまな体験をさせて頂いて感謝すべきなのに…。

コーヒー








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Last updated  2003.12.18 18:51:54
コメント(10) | コメントを書く


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Re:南窓を避けて文学愛すなり(12/17)  
イエペ  さん
こんばんわ
「プライド」見たくなりました。
見たいな~と思っていたけれど、今日はmsk222さんの日記を読んで、真剣に見たい!と思いました。
私の家の近くにも、昔、何だか良く分かりませんが(右か左か)国歌をスピーカーからガンガンならしてとおりすぎていく、政治家のまがい物のような人物がいました。
警察とも、またやくざとも仲良く、汚職した政治家をうまく助けたり、味方100人敵100人みたいな爺さんでした。近所ともあって、ご本人からお話を聞いて見ると、愛すべき爺さんでありました。(10年前くらいに他界しましたが・・・)
人は見かけによらないものですよね。
小柳るみ子さんがmsk222さんから見て清楚にみえるのは、それが本当なのだと思います。ブラウン管ごしに見ているものには、分からない世界ですよね。きっと。 (2003.12.17 23:40:22)

Re:南窓を避けて文学愛すなり(12/17)  
志穂音  さん
すごいパーテイに行かれたのですね。
そしてたくさんの人脈をもっておられるのだなあと感心しました。小柳ルミ子さんはわたしの父のいとこが宝塚音楽学校の声楽で彼女を教えたそうです。そして何かのパーテイに父も出席していたところ小柳ルミ子さんも参加していて「先生!」って抱きついていた、あれが小柳ルミ子だったんだなあ~と父が話していたのを聞いたことがあります。mskさんが見られた彼女の姿は作り物ではなかったのでしょうねと思います。
でも何回か実際にテレビというブラウン管で彼女がとった態度は芸能界というところに長年住んでいるとこうなるのか~というような印象をもったこともなきにしもあらず~。そのときの彼女はよほど具合が悪かったのかもしれませんが人間悪い!とわたしは見ました。
でもどんな人間にも真摯なところ、汚いところはつきものだと思うので彼女はものすごく正直に生きている人ではないでしょうか。いい、悪いは別にしてね。
芸能人っていうのはどんな場でも演じている人々です。
父はあの時もものすごく絵になる抱きつき方をしていた~というようなことを話していました。
それもちゃんと計算していたりして。
ううーっ!恐るべし芸能人のもっとも芸能人っぽい彼女だったりするのでは?
天邪鬼なんでいいすぎたかな?ごめんなさいね。 (2003.12.18 09:47:28)

Re:南窓を避けて文学愛すなり(12/17)  
エムツー  さん
「縁」ってスゴイですね。
私も本を読んで会いたくなる作者の方がいますが、「私になんか会ってくれない。。。」と思ったものですが、
なんと私の友人は四国であろうと九州であろうととっととご本人に会いに行き、迷惑だろうがなんだろうが会って来てしまう「人」がいます。
ちなみに女子です。

そんなにすごい監督さんなのに、行動力もすごいけどmsk222さんの文章もスゴイちからがあったのでしょうね。

私も勇気を持って、まずはmsk222さんに会いにいきましょうか?・・・(フフフ)(*^_^*)

(2003.12.18 09:56:43)

Re:南窓を避けて文学愛すなり(12/17)  
唯乃葉羽  さん
>僕は、このときの左右両派のおとなげないヒステリックな姿勢に、つくづくうんざりした。映画を観てから気に入らなければ内容を批判すればいいのである。観もしないで、自分の主義とちがうからと妨害するのは、民主主義の否定であり、自分の狭窄さをさらけ出しているにすぎない。

♪ こんな風な感覚の人が人が増えてくれれば必要でない争い事が減ると思うのですけどねえ。
自分で自分の幅を狭くしちゃうのですよねえ。もったいない。
(2003.12.18 13:31:16)

Re:Re:南窓を避けて文学愛すなり(12/17)  
msk222  さん
イエペさん
>「プライド」見たくなりました。

ビデオにもなっていますから、借りてご覧になってください。もちろん、伊藤監督には「プライド」以外にも良い作品がたくさんありますからお薦めします。

>私の家の近くにも、昔、何だか良く分かりませんが(右か左か)国歌をスピーカーからガンガンならしてとおりすぎていく、政治家のまがい物のような人物がいました。

左ということは絶対にないでしょう。もっとも左右はどこかで共通するともいいますが…。

>小柳るみ子さんがmsk222さんから見て清楚にみえるのは、それが本当なのだと思います。ブラウン管ごしに見ているものには、分からない世界ですよね。きっと。

というのも僕の思いこみかも知れません。でも、真剣に仕事をしている人という印象は間違いないと思います。
(2003.12.18 19:14:53)

Re:Re:南窓を避けて文学愛すなり(12/17)  
msk222  さん
志穂音さん
>小柳ルミ子さんはわたしの父のいとこが宝塚音楽学校の声楽で彼女を教えたそうです。そして何かのパーテイに父も出席していたところ小柳ルミ子さんも参加していて「先生!」って抱きついていた、あれが小柳ルミ子だったんだなあ~と父が話していたのを聞いたことがあります。

そういう縁があったのですか。

>でも何回か実際にテレビというブラウン管で彼女がとった態度は芸能界というところに長年住んでいるとこうなるのか~というような印象をもったこともなきにしもあらず~。

キャラクターを演じているのか、地なのか、僕たちは現象だけみて楽しんでいればいいのだと思います。

>でもどんな人間にも真摯なところ、汚いところはつきものだと思うので彼女はものすごく正直に生きている人ではないでしょうか。いい、悪いは別にしてね。
芸能人っていうのはどんな場でも演じている人々です。

そうでしょうね。僕たちも演じているのかも知れない…。

>父はあの時もものすごく絵になる抱きつき方をしていた~というようなことを話していました。
それもちゃんと計算していたりして。
ううーっ!恐るべし芸能人のもっとも芸能人っぽい彼女だったりするのでは?
天邪鬼なんでいいすぎたかな?ごめんなさいね。
-----
いえいえ、所詮は虚構の世界に住むひとのこと、どのように料理しようと僕ら庶民の勝手だと思いますよ。
(2003.12.18 19:21:20)

Re:Re:南窓を避けて文学愛すなり(12/17)  
msk222  さん
エムツーさん
>「縁」ってスゴイですね。

そうです、なにごとも縁です。

>なんと私の友人は四国であろうと九州であろうととっととご本人に会いに行き、迷惑だろうがなんだろうが会って来てしまう「人」がいます。
ちなみに女子です。

そういう人は運が開ける人でしょうね。

>そんなにすごい監督さんなのに、行動力もすごいけどmsk222さんの文章もスゴイちからがあったのでしょうね。

監督の行動力はすごいけれど、僕のは偶然の産物です。

>私も勇気を持って、まずはmsk222さんに会いにいきましょうか?・・・(フフフ)(*^_^*)

(フフフ)、がついていなければ本気にしたのに…。
そう、こっそり会いに来てください。


-----
(2003.12.18 19:25:53)

Re:Re:南窓を避けて文学愛すなり(12/17)  
msk222  さん
唯乃葉羽さん
>>映画を観てから気に入らなければ内容を批判すればいいのである。観もしないで、自分の主義とちがうからと妨害するのは、民主主義の否定であり、自分の狭窄さをさらけ出しているにすぎない。

>♪ こんな風な感覚の人が人が増えてくれれば必要でない争い事が減ると思うのですけどねえ。
自分で自分の幅を狭くしちゃうのですよねえ。もったいない。

そう、こころを広く、寛容の精神をもっていれば戦争の大部分は無くなるのではないでしょうか。
さだまさしが言っています。「愛すればいい、たやすいはずだ…」って。

(2003.12.18 19:29:13)

Re:南窓を避けて文学愛すなり(12/17)  
唯乃葉羽  さん
msk222さん
と、言いながら、私も一人、読まず嫌いな作家がいます。
筋肉嗜好、鉢巻、腹切り・・・三島由紀夫です。
大好きな感覚の友達が一番好きと言っていたから、きっと好いのでしょうが、本が読みたくなっても他の人の本を読みます。
-----
(2003.12.20 02:01:05)

Re:Re:南窓を避けて文学愛すなり(12/17)  
msk222  さん
唯乃葉羽さん
>私も一人、読まず嫌いな作家がいます。
筋肉嗜好、鉢巻、腹切り・・・三島由紀夫です。
大好きな感覚の友達が一番好きと言っていたから、きっと好いのでしょうが、本が読みたくなっても他の人の本を読みます。
-----
実は、僕も好きなタイプではないけれど三島由紀夫とは何度か同席したことがあります。たいしたことではなかったけれど、いずれ、そのことも書くことでしょう。
(2003.12.20 16:55:33)

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