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カテゴリ: 1000憶系
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最終更新日  2008年02月15日 07時15分42秒
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魔法使いの弟子40  
(匿名)希望 さん
「旦那がいってたわ。貴方が帰国するって新聞に書いてあったって。」
彼女は目の前にあるホワイトボードに数字を書き足し、素早く後ずさり全体を眺めた。
そして考え込むように首をかしげる。
オレンジと黒のはでな髪飾りが揺れた。

電話の向うの男はなにかを必死で説明していたが半分聞き流しながら彼女は適当に相づちをいれていた。

「で、いつごろ?」
そういうと彼女はこんどは斜め上に滑らかなラインをひいた。
自慢気に男は何かを言っているようだが、彼女はそっけない返事のみしか返さない。
やがて「旦那にいっておく、凱旋祝い家でしようっていうわよあの人のことだから・・・。」彼女、鵯大学教授神宮寺はそういうと、電話の向う、英国在住の生物オタクの言葉を切り、さっき書いた数式に訂正を加えた。

そしてなんどか頷き、適当に会話の相手をしていたが不意に立ち止まって携帯かを睨みつけると言った。
「はあ・・・・鵯大へくるって?!一年の任期?」

気を取りなおし彼女は考え込んだ。
『まあ、ここで国の研究機関に入るなんていきなり言ったら・・・とうとう魂を売り飛ばしたって思うところよ。』
彼女の脳裏には数年前、改ざんされた報告書を睨みつけて体を小刻みに震わせていた親友の姿が浮かんだ。
「でも、日本に一年もいるって・・・なんか変ね。今の貴方の好みからすると欧米の大学か研究機関とかに改めて入ると思ったんだけど・・・ほらシドニーに恩師もいるでしょ?」
神宮寺はくるくると器用にマーカーをまるでバトンのように指で回した。
電話の向うの男の言葉は今一つ歯切れが悪く神宮寺はちょっといらいらしてきた。

「まあ良いわ。じゃあ予定が決ったらまた連絡ちょうだい。取りあえず、大学の近くにいいおでんやがあるのよ、それと焼鳥屋・・・教えてあげる。」
そういうと電話を切って神宮寺はホワイトボードから離れ窓の外を眺めた。
(2008年02月15日 07時57分19秒)

魔法使いの弟子41  
(匿名)希望 さん
大学構内は夜陰に包まれ街燈だけがぽつぽつと浮かんでいる。
霧雨で濡れた道路がところどころで明かりをはじいて光っていた。
数年前、長崎から戻ってきた親友の思い詰めたような表情を改めて思いだした。
あの頃の南原は何かを忘れようとがむしゃらでやや投げやりになっていた。
無愛想で生真面目な生物オタクは妙な生き物に変わっていった・・・いや変わろうともがいていた。
研究は業績を残す為で女性は・・・来るものは拒まず、さる者は追わずといった具合に。
「ま、ようするに投げやりというかやけくそというか・・・そう見えたんだけどね、あの頃。」
タイトスカートからでた形の良い脚を交叉させ彼女は窓にもたれかかった。

あげくに、どう見ても彼と価値観を共有できない元ミス・キャンパスと付合いだし、同時に海外での准教授の席を手に入れ、やがて人もうらやむ成功への道を歩き出した。
「あのパターンは2年以内に79%破綻するっていったら見事に破綻したのよね。破局まで1年と10カ月、見事に私の予言は的中。」
そう言うと神宮寺は離婚直後の南原からの電話を思いだした。
あの時は女心が分かるようで分かってないとんちんかんな彼の言葉を「あんた、全然かわってない・・・女子とまともな会話のできない生物オタクよ。」ばっさりと切って捨てたのだ。

(2008年02月15日 07時57分52秒)

魔法使いの弟子42  
(匿名)希望 さん
「それにしても日本に帰ってくるってことは目を背けてたものを真面目に見ようかって気になったてことよね。」
神宮寺は手に持っていたペンでガラスをこつこつとたたいて考え込んだ。
彼は戻ってきたら99%の確率で長崎に行くに違いない。
それにしても見に行くだけなら日本の大学に所属する必要はない。
海外の研究機関にいてもクラフォード賞とやらをとったなら日本の学会にで特別講演に招聘されたり、非常勤で短期の講義などを依頼される形での帰国は可能なはずだ。

日本は決して研究者にとってよい環境ではない。
日本で活動する場合、特に海外であげた実績は評価されない、いやかえって嫉妬や村意識によって押しつぶされる。
『いったい、何があったのかしら。』

ゆっくりと窓から離れ彼女はもう一度ホワイトボードに向かった。
改めて書きなぐられた数式をながめた。
まもなく彼女の頭の中は美しい素数と曲線で埋め尽くされ、根性なしの親友の面影は消えていった。

****


(2008年02月15日 07時58分05秒)

魔法使いの弟子43  
(匿名)希望 さん
「あの海・・・やっぱり自分の目できちんと見つめるべきなんだ。」
神宮寺への電話をきると孝史はぼそっと言った。
その瞬間、彼女の泣き顔が頭によぎった。
真っすぐで逃げない・・・ごまかしを許さない黒い瞳。

「あの海のことをこのまま放っておくのは良くない・・・そうだ、良くない。逃げるのは・・・できない。」
言い訳のような独り言は白い壁に反射して消えていった。
「吉田教授は気心が知れているから鵯大では自由に出来るから都合が良い・・・あれで吉田教授は友人も多い、あの海のデーターも彼女に頼めば入手しやすい・・ただそれだけだ。ま、吉田教授の下に彼女がいれば、話しをする事もある・・・。」
そういうと孝史はキッチンにむかった。
冷蔵庫からミネラルウオーターをとりだし一気に咽喉を潤した。
そして空になったペットボトルを数メートル先のごみ箱に放り込んだ。
からからと音が響いた。

『いつのまにか自分は逃げていた。気にはなっていたけれど、あの海から逃げようとした。あの頃は・・・・・仕方ないだろう政治家や官僚相手に一大学の助手に何が出来る・・・なにも出来るわけが無い。』
視線を泳がす。
ふと窓に揺れる白いシャツが目に飛び込んできた。
“袖が長い。”と当たり前のことを言って嬉しそうに微笑む彼女の笑顔が浮かんだ。
手を見つめる。
緑のセーターの後ろ姿が脳裏をよぎる。
あの海と彼女が重なった。


(2008年02月15日 07時59分05秒)

魔法使いの弟子44  
(匿名)希望 さん
湿気を含む風とどんよりとした空を背景に揺れるシャツは
妙に清々しく
やたら爽やかだった。
「不似合いなんだよ。」
そういうと彼はオーディオのスイッチをいれた・・・あの曲が流れる。
椅子に体を沈み込ませオッドマンに足を乗せる。

豊かな女性ボーカルが彼を包む。
「もう一度会えたら、とりあえず・・・よりを戻すってのもありだよな。」
あいつも俺のことを嫌いで別れたわけじゃない・・・とことん自分に都合よく考えると孝史は静かに目を閉じた。

(少しは進歩したのかと思ってたけど、結局進歩しないなお前・・・・。)誰かが冷蔵庫の前でつぶやいた。

****
「というわけだ。」
そういうと孝史はゆっくりとグラスを傾けた。
「なんか、マヌケだ。」
「うるさい・・・これが俺達のロマンスのハジマリなんだ。」
最高級のワインに似合わない上下黒いジャージの姿の孝史は自分に前の人影をにらんだ。
その視線の先にはマグカップを抱えた史朗がいた。

孝史は史朗を酒盛り・・・実際は史朗のカップはココアであったが・・・に突き合わせていた。 (2008年02月15日 08時03分56秒)

魔法使いの弟子45  
(匿名)希望 さん
「なにがロマンスなんだよ・・・だから・・・お母さんは、お父さんの“女性関係”を信用できないでいるわけだ・・・。」
7歳の少年は空っぽのワインの瓶を足で転がしながら冷たい視線を父親に注いだ。
ただでさえ不向きな話題であるうえに
父の話は矛盾に満ち且つ“らしくない”程客観性を欠いていた。
正直、史朗に理解できたのは父の女癖の悪さが母を泣かせた事があるという事と父はどうしようもなく母が好きだということだけだった。

「なにいってんだ、俺が日本に彼女を追っかけていかなきゃ、お前だってこの世にはいないんだぞ。」
「・・・・。」
史朗は黙り込んだ。
そう父は淋しがっているのだ・・・それはよく分かる。

周囲の努力のかいあって南原仁子が離婚届を破り捨て家族と伴にシドニーに帰国したのは2週間前。
帰国後ただちに彼女は抱え込みすぎた仕事の整理をはじめた。
が、全ての研究活動を停止させたわけではない。
で・・・明日から彼女はまた短期の出張の予定が入っている。

そして今日はその準備でまだ帰ってきていない。
『普通・・・母さんが出張っていうなら俺とか海音が淋しがって父さんが慰めるってのがスジだよな・・・。』
そう思いながら目をこすった。
留守をする母に“子供たちは俺がついているから大丈夫だよ。多少出張が延びても心配するな。思う存分やってこい。”と自信たっぷりに父が言い放っていたのは今朝の事である。



(2008年02月15日 08時04分53秒)

魔法使いの弟子46  
(匿名)希望 さん
史朗はちらっと壁をみた。
時計はもう10時を回っている。
普段なら9時には必ず寝ている彼にとってこれはなかなか辛い状況だった。
瞼が終演を迎えた舞台の幕のように下がってくる。
海音は“眠いからねる・・。”といって随分前に自分の部屋にさっさと上がってしまった。。

「仁子が遅いから、二本目もあけちまったじゃないか・・・。」
目の前の父は床に胡座を組んでぶつぶつと言いながらワインの空瓶を逆さにしてのぞき込んでいる。
ちょっと荒んだ表情で毛足の緑の長い絨毯にに胡座で座り込んでいる父はまるでまるで山賊のように見えた。
『本当に父さんって“立派な学者”で“政府に影響力を持つ意見を言える人物”なんだろうか・・・。』
人から聞いた話しがこういうときは全部デマに思える。
ぼーっとする頭で父親を眺めていると背後のドアがいきなり開いた。
「ただいま。おそくなってごめんなさい。」
白いコートに身を包んだ仁子が入ってきた。
(2008年02月15日 08時05分27秒)

魔法使いの弟子47  
(匿名)希望 さん


史朗はくっつきそうな瞼を必死で明けて両手を母に差し出した。
にこやかに室内に入ってきた仁子だったが、ふらふらしている息子を見つけ表情を一変させた。
「まさか史朗にお酒飲ませたんじゃないでしょうね。」
史朗は母親の腕に抱き上げられるとそのまま心地よい睡魔に身を任せた。

「酒なんか飲ませてない。こいつのカップの中はノンアルコールだ。」
「子供にこんなに夜更かしさせて。」
「まだ11時だろ。」
「もう11時よ。」
「こいつが付合うっていったんんだ。」
「信じられない・・・史朗のせいにするなんて・・・。可哀想、こんなにふらふらだわ・・・。」
「俺だって可哀想だろ・・・お前の愛が足りなくてふらふらだ。」
「愛?そんな銘柄があったかしら。お酒でふらふらなんでしょう・・・史朗可哀想に・・・。」
頭の上で母と父の口げんかが始まっている。

目を閉じた史朗の頭の上では
不機嫌な母の言葉の揚げ足を取りながらやたら楽しそうにからんでいる父の声が響いていた。
『また平和が戻ってきた・・・。』
そう思って史朗は母親の胸に頬をすり寄せると幸せそうな微笑みを浮べ眠りについた。



* *********

目を開けると夜明け前のブルーグレイの空が見えた。 (2008年02月15日 08時05分45秒)

本日はこれで終了です  
(匿名)希望 さん
青空さま、イリさま、碧さま、Farawayさま、ナナホシさま
お返事できずすいません
先週は腸感冒で体調を崩しておりまして・・・。

実はこの話しは始めと予定がすっかり変わってしまっているので
まだ続く事にしました

切れ目を作る為に史朗に出てもらいましたが
時間帯としてはこの前の話しの「離婚騒動」の時期ばベースになってます

分かりにくいとは思いますがよろしくお願いします (2008年02月15日 08時08分49秒)

良くなられましたか  
青空 さん
体調良くなられましたか。
お話、長引くのは、うれしい限りでっす
どんどん伸びちゃってください。
私は、今から実家の方に行きます。大雪状態心配です (2008年02月15日 09時42分31秒)

無理なさらずに・・・  
北の大地の碧 さん
匿名希望さま
私はお話が読めるだけで幸せなので、どうかお体に無理をかけないで下さいね。返事は気にせず、まずはお体を元に戻して下さい。お大事に。 (2008年02月15日 10時41分21秒)

お大事に  
ゆきみ さん
無理をなさらず、お体お大事にして下さいね。
教授と仁子の口げんかの始まり、このテンポが良いですね。
(2008年02月15日 14時39分29秒)

大丈夫ですか・・・  
ナナホシ さん
(匿名)希望さま。
具合はいかがですか?碧様のおっしゃる通りですよ!
こうしてお話を読ませていただくだけで幸せなものですから(笑)これからも楽しみ、どきどきしながらコメント書いていきますからね・・・(笑)
気になさらずゆっくり治してくださいね。
>愛?そんな銘柄あったかしら。
仁子ナイス切り返しですね~~こんな二人が好きです。
仁子母さんに甘える史朗君もかわいいです(*^_^*)
お話の続きがある・・・う・うれしい!!!
でも、お大事になさってくださいね。 (2008年02月16日 19時17分04秒)

Re:本日はこれで終了です(02/15)  
FarAway さん
体調は戻りましたか? 治り始めが肝心です。
どうぞ無理をなさいませんように。
私、スタートレックのファンなので、時空を越えて行ったり来たりする物語は大好きです。
無理をなさらない程度に、物語の続きをお待ちしています。
(2008年02月16日 19時23分11秒)

お大事に。  
koharu さん
>正直、史朗に理解できたのは父の女癖の悪さが母を泣かせた事があるという事と父はどうしようもなく母が好きだということだけだった。
それは、koharuにも、とってもよくわかったです♪
あと、教授が今でも仁子なしではダメだということも♪

お腹の風邪は辛いですよね。
ゆっくり養生なさってくださいませ。 (2008年02月17日 07時49分50秒)

Re:良くなられましたか(02/15)  
(匿名)希望 さん
青空さん
>体調良くなられましたか。
ご心配おかけしました
>お話、長引くのは、うれしい限りでっす
どうも・・むちゃくちゃ伸びたので当初の予定に使うエピソードを切り取って今回は却下かなとおもっております
そういう端布がじつはいくつか転がってます
機会があればそれはつかえたらいいなあとおもいます
>どんどん伸びちゃってください。
>私は、今から実家の方に行きます。大雪状態心配です
-----
(2008年02月22日 10時08分35秒)

Re:無理なさらずに・・・(02/15)  
(匿名)希望 さん
北の大地の碧さん
ご心配をおかけしました
回復してます
返事はなかなか書けないかもしれませんが魔法使いの弟子はぼちぼち書きたいと思います (2008年02月22日 10時09分32秒)

Re:お大事に(02/15)  
(匿名)希望 さん
ゆきみさん

>無理をなさらず、お体お大事にして下さいね。
ありがとうございます
>教授と仁子の口げんかの始まり、このテンポが良いですね。
ドラマでもそのあたりが大好きでした (2008年02月22日 10時10分02秒)

Re:大丈夫ですか・・・(02/15)  
(匿名)希望 さん
ナナホシさん
ご心配おかけしました
>>愛
ってめいがらのお酒があったら是非購入したいなんて思いつつ書きました
出来れば
「南原酒造」とか「内野酒造」の (2008年02月22日 10時11分22秒)

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