むらきぃの司法試験受験勉強記

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2019.03.01
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カテゴリ: 過去問の教材

平成24年短答式試験問題[公法系科目]〔第17問〕

ア.「板まんだら」事件判決(最三小判昭和56年4月7日)は,宗教上の教義や信仰に関わる紛争について裁判所は厳に中立を保つべきであるとして,これらの事項が訴訟の前提問題に含まれている場合には,当該訴訟は法律上の争訟に当たらないとしたものである。

【解説】

正しい

宗教上の教義や信仰にかかわる紛争についての司法権の中立性からくるその限界について判示した板まんだら事件判決(最三小判昭和56年4月7日民集35巻3号443頁、判時1001号9頁、判タ441号59頁、憲法百選Ⅱ203事件)の判旨そのままであって、正しい。したがって、正解は選択肢1である。


この解説は,法務省から正解が発表されているにもかかわらず,本肢の正誤さえも間違えています。

最判昭和56・4・7民集35巻3号443頁 ​(板まんだら事件)は,

「本件訴訟は、具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の形式をとつており、その結果信仰の対象の価値又は宗教上の教義に関する判断は請求の当否を決するについての前提問題であるにとどまるものとされてはいるが、本件訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものと認められ、また、記録にあらわれた本件訴訟の経過に徴すると、本件訴訟の争点及び当事者の主張立証も右の判断に関するものがその核心となつていると認められることからすれば、結局本件訴訟は、その実質において法令の適用による終局的な解決の不可能なものであつて、裁判所法三条にいう法律上の争訟にあたらないものといわなければならない。」

と判示しています。

すなわち,宗教上の事項が請求の当否を決するのに不可欠の争点となっており,紛争の核心をなしている場合には,形の上では法律上の紛争ではあっても,裁判所が法令の適用により終局的に解決することができないものとして,訴えを却下すべきであるとしているのです(魚住庸夫・最判解民事篇平成元年度286頁以下参照)。

そして,同判決には,上記判示部分を含めた判決文のどこにも本肢にいう「宗教上の教義や信仰に関わる紛争について裁判所は厳に中立を保つべきである」とする判示は見当たりません。

したがって,​ 板まんだら事件判決 ​が判示していない内容を同判決が判示しているとする本肢は誤っていることになります。

板まんだら事件判決 ​の「判旨そのまま」であるとする上記解説も明らかに誤っています。

この点,​ 最判平成元・9・8民集43巻8号889頁 ​(蓮華寺事件)は,以下のように判示しています。

宗教団体における宗教上の教義、信仰に関する事項については、憲法上国の干渉からの自由が保障されているのであるから、これらの事項については、裁判所は、その自由に介入すべきではなく、一切の審判権を有しないとともに、これらの事項にかかわる紛議については厳に中立を保つべきである ことは、憲法二〇条のほか、宗教法人法一条二項、八五条の規定の趣旨に鑑み明らかなところである(最高裁昭和五二年(オ)第一七七号同五五年四月一〇日第一小法廷判決・裁判集民事一二九号四三九頁、前記昭和五六年四月七日第三小法廷判決参照)。 かかる見地からすると、特定人についての宗教法人の代表役員等の地位の存否を審理判断する前提として、その者の宗教団体上の地位の存否を審理判断しなければならない場合において、 その地位の選任、剥奪に関する手続上の準則で宗教上の教義、信仰に関する事項に何らかかわりを有しないものに従ってその選任、剥奪がなされたかどうかのみを審理判断すれば足りるときには、裁判所は右の地位の存否の審理判断をすることができるが、 右の手続上の準則に従って選任、剥奪がなされたかどうかにとどまらず、宗教上の教義、信仰に関する事項をも審理判断しなければならないときには、裁判所は、かかる事項について一切の審判権を有しない以上、右の地位の存否の審理判断をすることができないものといわなければならない (前記昭和五五年四月一〇日第一小法廷判決参照)。 したがってまた、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であっても、宗教団体内部においてされた懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となっており、その効力の有無が当事者間の紛争の本質的争点をなすとともに、それが宗教上の教義、信仰の内容に深くかかわっているため、右教義、信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず、しかも、その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠のものである場合には、右訴訟は、その実質において法令の適用による終局的解決に適しないものとして、裁判所法三条にいう『法律上の争訟』に当たらないというべきである (前記昭和五六年四月七日第三小法廷判決参照)。」

つまり,本肢は,​ 蓮華寺事件判決 ​が判示している内容を​ 板まんだら事件判決 ​が判示していると言っているのです。


板まんだら事件判決 ​の判示事項ではなく​ 蓮華寺事件判決 ​の判示事項であるとまで明確に言及している解説は1つもありませんでした。

しかしながら,上記解説は,そもそも本肢の正誤さえも間違えており,さらにその間違えた正誤の解答に従って解説しているので,当然ながら解説の内容も誤っています。

これは,現役の法科大学院の実務家教員による解説としては,あまりにいい加減すぎるのではないでしょうか。

ちなみに,本問の解説の執筆者は,本問について以下のようにコメントしています。

出題判例の何れも、司法権に関する最高裁判決の基本的なものであって、判例百選等の学習によって習得すべきである。



本肢の内容が​ 蓮華寺事件判決 ​の判示事項であるとの指摘までは求めませんが,せめて,​ 板まんだら事件判決 ​の判決文に照らして本肢のどの部分が誤っているのかくらいは的確に示してもらいたいところです。


それでは。





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Last updated  2019.03.01 08:00:18
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