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昔、私はお客様から相談されたことに対して、一生懸命がんばろうと思ってはいたが、
法律的に危ないと思うところや、めんどくさいと思うことなどは、これはできませんと
拒否していた。
法律的に危ないと思うところをできないというのはむしろ大事なことで
脱税になるかもしれないことを手伝うわけにはいけないので当然のことなのだが、
たとえばちょっと厄介なことをしなきゃならないとか、お客様が困っていることを
頼まれたときなど、「どうせこの安い報酬で難しいことはやってられない。また、深入り
しすぎてもめて、かえって訴えられたりしてもやだな。」などと思い、とにかくお客様と
一線を引くことばかり考えていた。
だからお客様から、「もっと親身になってくれやー。」などと言われたこともあった。
できるできないをはっきりさせるのは大事である。しかし、お客様が試算表や申告書
のことではなく、別のことが原因で本当に困ったときに、めんどくさがったり、断ったり
していたことも正直あった。その大体の原因は、「報酬の割に合わない」と自分が思い込んでいたことであった。
しかしこれはおかしい。報酬の割に合わないなら、「それをするなら特別にこれだけ
かかります。」「この報酬ではできません。」と言えばいいのだ。ところがそれを言えなかった。あるいは、断りたいのに断りきれなくてしぶしぶ引き受けた。ところが報酬はもらえない。結局いやいやながら気が乗らなくやってしまった。これではお客様も喜ぶはずがない。気が乗らないのが伝わるからだ。
なぜ言えなかったのか。お客様を怒らせることが怖かったからだ。怒った結果、「お前の
ところはやめる。」といわれたら売上を減らしてしまうことになる。「どうしよう。」と
思ったからである。
ここで重要なのは、お客様とけんかしたらすべてが終わり。お客様だけではなく、
人とけんかしたらすべてが終わり、と思いがちになってしまうところである。
人間は往々にして表面上の態度と本当の気持ちが逆になることが多いのだ。
(つづく)
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