星とカワセミ好きのブログ

2024.06.01
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カテゴリ: 本、雑誌、記録
2022年6月19日(日)付、朝日新聞朝刊の「GLOBE」に、ロシア軍事研究者の小泉悠(こいずみゆう)さんの紹介があり、内容が興味深かったのでファイルに保管しています。


小泉とロシアの接点をたどると、不思議な縁が浮かぶ。父方の祖父はシベリヤ抑留の経験者だった。祖父は帰国後、千葉県柏市の米軍基地(現・海上自衛隊下総航空基地)で軍属の職を得て、一家は基地にほど近い松戸市に居を構えた。古い住宅街と団地、梨畑が混在する土地で、小泉は児童書の挿絵を描くイラストレーターの母と、中学の社会科教員の父のもとに生まれた。2歳下にはホルン奏者になった妹がいる。
基地は自衛隊のP3C哨戒機の乗組員養成所で、いつも頭上にはP3Cが飛んでいた。ロシアと米軍と自衛隊。小泉の進む道は、このころすでに作られていたかに見える。
幼いころから集団生活が苦手で、教師嫌い。学校から帰ると寝込むほどだった。P3Cのエンジン音に耳を澄ませて授業をやりすごすうち、音だけで機種が分かるようになった。
居場所は近所の図書館とプラモデル屋だった。市民センターの図書館で片っ端から本を読み、中でも軍事本や戦記ものに夢中になった。プラモデル屋に軍艦を見せに行くと、基地の自衛隊員らが「ここは違っているよ」と構造を教えてくれた。中学・高校は「先生が放っておいてくれるから」と美術部に入り、油絵でロケットを描いていた。
「かっこいい」だけだった戦闘機や軍艦に意味を持たせてくれたのは、中学のとき出会った軍事評論家・江畑謙介の本だ。戦闘機がどう使われ、どんな政治的な意味を持つのか。断片的な情報をつないで全体像を描く面白さを教えられた。やがて関心は日本の軍事だけでなく、外国の軍隊、ロシア軍へと広がっていく。

「軍事オタク」へとまっしぐらの息子を複雑な思いで見ていたのは両親だ。二人とも反核・反戦運動に熱心で、母親は毎夏、市民センターの2階で有志と原爆展を開いていたほどだ。ところが、階下の図書館では、息子が軍事本を読みあさり軍艦のプラモデルを作って自衛隊員と遊んでいる。「両親とはさんざんもめました」。だが、両親との確執は、いまに至る小泉の素地を作ることになる。意見の違う相手といかに対話し、納得してもらうのか。

ロシアの軍事研究をしたいと漠然と思いながら早稲田大学に進学し、修士課程に進んだ。だが、軍事の細部から大きな図を描くのが得意な小泉にとって、国際関係論に必須の国際秩序論や法哲学などは興味の対象外だった。論文は評価されず、研究者の道はあきらめた。仕方なく就職活動を始めたものの、ことごとく不採用。ようやく電機メーカーで営業の仕事を得たが、上司から連日ミスを叱責され、1年で辞めた。「僕は何をやってもだめ。できることはもう何も残っていない」。絶望感だけが深まった。

定職はなくなったが、軍事雑誌向けの原稿を書くことは楽しかった。「物書きは天職だ」と確信したが、これで食べていけるとも思えなかった。
ある日、元ウズベキスタン大使の河東哲夫から突然電話がかかってきた。「一度会わないか」。河東は外務省を辞めて評論家として活動していたが、小泉が軍事雑誌に書くものを読んでいた。「事実関係を丹念に拾い出すだけでなく、それが意味することを概念化する力があった。他の書き手とはちょっと違っていたんです」。
都内のホテルで食事をしながら「大学ではアカデミックな研究ができなかった」と打ち明けた小泉に、河東は言った。「アカデミックでない研究をやればいいじゃないか」
2009年、河東の推薦で外務省国際情報統括官組織の専門分析員になった。ロシアの軍事関係の分析レポートを書くと周囲に褒められ、少しずつ自信が付いた。その後、若手研究者をロシアに送る交流事業に応募し、同年12月、モスクワへ。ロシア軍の基地を見学し、ロシア政府・軍関係者、研究者など多くの知己を得た。

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2022年6月19日(日)付、朝日新聞朝刊の「GLOBE」。
ロシア軍事研究者の小泉悠(こいずみゆう)さんの紹介





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私の本棚にある、小泉悠さんの本です。

↓ ロシア点描 まちかどから見えるプーチン帝国の素顔/小泉悠/PHP研究所







↓ ウクライナ戦争/小泉悠/ちくま新書/筑摩書房



↓ 終わらない戦争/小泉悠/文春新書/文藝春秋



↓ オホーツク核要塞/小泉悠/朝日新書/朝日新聞出版





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最終更新日  2024.06.13 12:30:14
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