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さてシリーズでお送りしている、緑内障点眼薬の世界。 今日も緑内障治療の第2選択剤である、ベータ遮断薬の世界を見ていきましょう。 3回目となる今回はべトプティック点眼液(一般名 ベタキソロール塩酸塩)です。 私は実はこの緑内障点眼薬の一覧表を見ていてちょっとギョッとしたのですが、それはこのべトプティック点眼液がまだ現役で販売中の薬剤だった、ということでした。なんとなくですが、「ずっと昔に既に販売中止になった。」ものと思っていたのです。 その理由なのですが、このべトプティック点眼液、 点眼するととんでもなくしみる のです。点したら多分全員「クオーッ」ってなると思います。これは大げさじゃないです。自分で何度も過去に実験しましたからね。 つまり、べトプティック点眼液には根本的に「超絶しみるので点しにくい、患者様に嫌がられる。」という大きな欠点があるのです。 ただ、この弱点はメーカーも当然分かっていたので、その後、しみる欠点を改善してよりソフトにした、べトプティックエス(ソフトのエス)が発売されました。 「おぉ、べトプティック、ついに良くなったのか!」と思って喜んで自分で点してみたところ、、、、 これがまたもや強烈にしみる 一品だったのです。個人的にはどこがソフトになったのか全然分かりませんでした。なので、当院ではそもそもこのお薬は採用していません。 ただ、こんなべトプティックにも長所はあります。それは、β1選択性β遮断薬という特徴があり、ベータ遮断薬の中では比較的全身的な副作用が少ないということです。 それにしてもトータルで見ると、他に良いお薬がたくさんある中で、「敢えて」べトプティック点眼液を使う理由はあまりないのではないか?と個人的には考えています。実際の売上高はどのくらいあるのでしょうか?
2019.10.03
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眼科専門医も長年していると、「なんでか分からないけどこういうこと良くあるよな。」っていうものがたくさんあります。 例えば、季節代わりには強膜炎と言う病気が増える印象があります。 これは 赤黒い充血と強い眼の痛みが特徴で、放置して悪化すると目の一部が壊死してしまうこともある怖い病気です。治療には強力なステロイド薬の目薬やどうしても改善しない場合には飲み薬を使います。 さてそんな「眼科専門医あるある」の1つに、「うつ病の患者様には重症のドライアイが多い。」 というものがもう何十年も前からありました。特徴としては、「眼の所見としては必ずしも強くはないのですが、患者様自身の感じる重症度がとにかく高い」ということが挙げられます。 、、、そして時が流れた今、ようやく、 最新の主要文献で、「うつ病の人は、ドライアイの自覚症状がより重症であった。」ということが報告されるようになりました。我々が感じていたことは事実だったということですね。(引用元 眼科学レビュー2023-24 ) そしてここからが面白い所なのですが、うつ病のドライアイ患者様の治療をすると、「うつ病の症状が何故か改善した。」と仰る方がよくいらっしゃるのです。 我々人間は外の世界の情報の80%を視覚=目から得ているという話もあるので、その入り口の状態を改善することにはまだ知られていない様々な効用があるのかもしれないな?と個人的には考えています。人間の体と言うのは不思議ですね。
2026.02.09
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さて当院では日本のトプコン社のOCT(3次元眼底撮影装置)である、 DRI OCT Triton(トリトン)2 を先日四国初導入しました。全国発売が今まさに開始されたばかりの超ホットな新型機となります。 当院では元々トリトン1を2017年に導入していたので、9年ぶりに最新型に買い替えたということになります。 このOCTと言うのは現代の眼科医療においては無くてはならない必須機械であり、日常診療の「大黒柱」とも言える最重要の存在です。買い替えた理由ですが、一番は緑内障と言う病気の検出力が圧倒的に進化したことです。 スキャンエリアが12×9ミリと広くなったことによって、ごく早期の緑内障性変化も見逃すことが無くなりました。デモで機械を持って来て貰って数日で、「これは凄まじい進化だ。新型機だからべらぼうに高価だけど、これは買うしかないな。」と強制的に納得させられた感じでした。 なぜかトプコン社の営業の方はこの「緑内障の検出力の強化」については全然ちっともプレゼンされず違うことばかりアピールされていたのですが、絶対最初にこれをイチオシで言うべきだと思います。というか、自分が営業の立場だったら絶対にそうします。 またそれ以外でも、画像の撮影スピードも凄く早くなりました。これは患者様の検査負担がとても軽くなることに直結します。 当院は「身近でコンビニ的な、気さくな開業医」として、「とにかくお待たせすることなく、スピーディーで快適、そして同時に高品質な医療サービスを提供する」ことを強く意識しており、これからもその目的達成のためにスタッフ一同全力で努力していきます。
2026.03.02
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お料理、特に揚げ物などをしていて天ぷら油が眼に入りかけたことはありませんか?高温の油が眼に入ったらどうなってしまうのかちょっと心配ですよね。 ところが人間というのは良く出来たもので、現実にはなかなか油が眼に入ることはありません。危険を察知して瞬間的に眼を閉じるので、「眼に入った!」と思っても実際はまぶたに油が当たっただけということが多いんですね。 先日もある患者様が「天ぷら作っていたら揚げ油が目に入った。滅茶苦茶痛いので飛んできた」といって来院されました。私が「意外と本当に眼に油が入ることはないんですけどね。良く診せて頂きましょう」と拝見すると、、、、、、 油、本当に眼に入っていました。ちょっと珍しいですね。上の写真で緑色に丸く変色している部分がそうなのですが、高温の油が当たって黒目(角膜)に炎症・点状の細かな密度の高い傷に加えて一部上皮欠損を起こしています。黒目は非常に敏感な部分なので、このくらいの傷でもかなり強い痛みが出ることがあります。 目薬と眼軟膏を処方して本日再診して頂いたのですが、 ほとんど治っていて私もホッとしました。 このくらいの傷だったらすぐ治るには治る訳ですが、かなり強い痛みが出るのは事実なので、皆様も料理中には油が目に入らないように十分注意してくださいね。
2009.10.19
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さて今日は「名薬、ムコスタ点眼液の悲劇」シリーズ最終回です。 この素晴らしい薬効を誇るムコスタ点眼液ですが、実は私自身も毎日寝る前に使用しています。 圧倒的に眼の調子が良くなりますし、 点眼すると目がかすんで見えなくなるのでそのまま良く眠れる という意外な作用もあります。(笑) 「苦い、しみる、かすむ」と3拍子揃った強面のハードボイルドなムコスタ点眼液 ですが、ドライアイ患者様なら一度は挑戦してみるべき素晴らしいポテンシャルを秘めたクスリでもあります。 私は眼科専門医として、この「悲劇の名薬」ムコスタ点眼液をこれからも適切に患者様に処方していきたいと考えています。
2013.03.22
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細菌性の結膜炎などの治療に使う抗菌剤の目薬というものがあります。 この上の写真の参天製薬のクラビット点眼液(ニューキノロン系という系統の抗菌剤)が売上ダントツナンバーワンの代表選手ですが、他にも千寿製薬のガチフロ点眼液 日本アルコン社のベガモックス点眼液 も売上上位に位置しています。 ただ我々の業界ではクラビット点眼液があまりもメジャーな存在であるためでしょうか? ほとんどの目薬はその真似をして ピンク色の外観 をしています。 ところで人間というのは年を取ると目が乾いて常にしょぼしょぼしたり、慢性的にめやにが出たりします。そしてこのクラビット点眼液に代表されるニューキノロン系の点眼剤は「めやに止め」として抜群な効果を発揮するので患者様から、 あのピンクの目薬が欲しい。 と御指名で処方をお願いされることが非常に多くあります。 眼科専門医的には、この手の抗菌剤というのは明白な臨床症状があるときのみにごく短期間に限って使用するものであり、気軽にカジュアルに処方するという類の目薬ではありません。何故かと言うと、 普段から常用していると本当に細菌性の結膜炎になったときに目の中のバイキンが凶暴化・耐性化してしまっていて効かなくなりますし、そもそも健康な状態の眼には全く必要のない ものだからです。 そのため不必要と判断した場合には、「めやにも出ていませんし、目はとても綺麗ですからいりませんよ。」と説明するのですが、 「いや、めやには本当はいっぱい出ます。今、たまたま出ていないだけです。だからピンクのを下さい。」 と頑張られる患者様が多くいらっしゃいます。 押し問答の末になんとか納得して頂いて帰宅された後にも、 「ウチのおばあさんが、先生がピンクの目薬をくれなかったと言って泣いている。どうしても処方して欲しい。」 と電話がかかってきたりすることもありますし、私が断っても、代わりにかかりつけの内科医の先生におねだりしてちゃっかり処方して貰って、秘密で毎日しっかりと点している方もいらっしゃいます。(笑) この クラビット点眼液に代表される抗菌点眼剤に対する患者様の精神的な依存度と言うものは本当に凄い ものがあります。 その理由はやはり、 「点すと目の調子が良くなる」という確かな実感が患者様にある からでしょう。もしかすると、この 魔法のピンクの小瓶 には何か、 我々眼科専門医が未だに気付いていない不思議な力 があるのかもしれないですね。
2015.12.02
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目の中に入った異物や汚れを洗い流すために使う、洗眼薬という市販薬があります。小林製薬の「アイボン」がその代表的な商品です。 私も使ったことがありますが、アイボンで目を洗うとすっきりして気持ちがいいんですね。目にゴミが入ったとき・花粉症で眼が痒くてどうしようもない時などに大変重宝する良い薬だと思います。 ところがこのアイボン、使っているうちにその爽快感・スッキリ感が癖になってしまい、1日に何十回も使用している 「アイボン中毒、略してボン中」 とでも言えるような状態の方がいるんですね。 先日、「目の調子が悪くてアイボンを1日に20~30回くらいしていたのに、治らないので来た」という患者様が来院されました。目を拝見すると、 黒目(角膜)にたくさんの傷(上の写真で水色に濃く染まっている部分)が入ってしまっています。 これはアイボンのしすぎで、ムチン層という黒目の表面を守って涙の状態を安定させる大事な物質が洗い流されてしまったことによるものです。例えて言うなら、 アカスリし過ぎて皮膚がズル剥けて真っ赤っ赤 というような状態ですね。 また、我々の涙には「ばい菌をやっつける天然成分」が元々入っています。アイボンをしすぎるとこの大切な天然成分も流れてしまい、逆にばい菌への抵抗力が減ってしまうこともあるので注意が必要です。 さて、この患者様にはアイボンを中止し点眼薬を処方したところ、1週間後には、 症状はほぼ改善しました。 アイボンは良いお薬ですが、使いすぎるとこのようにかえって逆効果になることもあります。なので、アイボンを使うときには用法・用量(1日3~6回)を必ず守るようにして下さいね。
2010.05.08
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さて今日も「第117回日本眼科学会参戦記」の続きです。 ラウンジの中には新聞や週刊誌がたくさん置いてありました。 そこで週刊誌を手に取ってパラパラと見ていると、 日本サッカー界の至宝、本田圭佑選手がレーシック手術に失敗してしまい、それでワールドカップ予選に欠場することになったのではないか?という気になる記事が出ていました。 この記事だけでははっきりとしたことは分かりませんが、裸眼視力をしっかり出すためにやや過矯正気味に角膜を削りすぎてしまい、それで様々な心身の不調が出ている可能性があるという内容でした。心配ですね。 レーシックは基本的には非常に安全で確実な手術ですが、しばらく前には銀座眼科での集団感染症の発症もありましたし、「レーシック難民」という言葉があるように術後にドライアイ・微細な両眼視機能異常を始めとする様々な多彩な症状に悩まれている患者様が一部にいることも事実です。 ただこの手の週刊誌での「医療バッシング記事」はやや割り引いて読まなければならない場合もあります。というのは、バッシングされるのは美容外科、歯科のインプラント手術、眼科のレーシック手術などの保険の効かない「自由診療」のことが多いのですが、これらの業種は広告宣伝費を多く使うことで知られています。 そして広告代理店はマスコミに医療バッシングの記事が出ると、バッシング先に出かけていって「あなた方のアピール力が足りないからこういう記事が出るんです。もっと広告をする必要があります。」という営業をかけるということがあるんですね。それは巡り巡って広告料の還元と言う形でマスコミを潤すことがあり、マスコミ側にはそういった動機・インセンティブが少なくとも無意識下のレベルで働いている可能性があるということです。全てマスコミの記事と言うのは多面的に深く捉える必要があるんですね。 すいません、少し話が脱線してしまいました。最初の話の続きですが、皆様もレーシック手術を検討されるときには、手術の長所ばかりでなく短所もしっかりと説明してくれる、術前に十分な問診と両眼視機能検査を含む詳細で慎重な検査をしてくれる、また術後のフォローアップ体制がしっかりとしているクリニックを選ぶようにしてくださいね。(続く)
2013.04.11
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今日の日記は眼科専門医向けのやや特殊な内容となっております。ご了承下さい。 さて、この数年のことですが、前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)というおしっこの出方が悪くなる病気で、治療のためにα1遮断剤というお薬を飲んでいる患者様が激増しています。具体的には「ハルナール、フリバス、ユリーフ」などの商品名のものが多いのですが、これらが日本では現在なんと年間で8億個!も処方されています。 泌尿器科の先生にとってはありふれたお薬で、非常にカジュアルに気軽に処方されているのですが、これらの薬を飲んでいると白内障手術時に40%の確率でIFIS(アイフィス:術中虹彩緊張低下症候群)というやっかいな合併症を起こすことが知られています。 これは、お薬の影響で虹彩(茶目)がフニャフニャになってしまい、術中の水の流れでうねったり縮んだりして手術が難しくなることを言うのですが、その症状がシビアな場合には手術の安全性に関わることもあり、我々白内障手術専門医の大きな悩みの種となっています。 これはα1遮断剤が「瞳孔散大筋のブロック」を起こすからなのですが、α1受容体を選択的に活性化させる「フェニレフリン」という薬剤でこのIFISは予防できることが知られるようになってきました。ただし、そのためにはミニムスという使いきりタイプの点眼剤を個人輸入しないといけません。また、一般的な散瞳剤の「ミドリンP」にもフェニレフリンは入っていますが、原液でないと前房(目の中)内濃度が足りないし、そのミドリンPには防腐剤が入っているので原液使用は無理です。 ただ、身近なところで出来る範囲でもこのIFISを予防する手段は色々あります。今日はその対策を個人的メモ書きとしてまとめておきます。 1. そもそも白内障手術前に、α1遮断剤を飲んでいないかをしっかり確認する。割と「そういえば泌尿器科の先生に内服開始を勧められている」ということも多く、その場合は先に手術をさせて貰えば良い。また、現在α1遮断剤を内服中の場合、休薬してもIFIS発症は予防できないというデータが多いが、個人的な臨床体験からは「休薬すると少なくともパワフルなIFISはほとんどない」のも事実であり、症例の難易度によっては可能であれば一時的な休薬をお願いすることも魅力的なオプションだと思う。 2. 実際の手術に際して1番効果があるのはこれ。新品のネオシネジン点眼液(フェニレフリン)を1mlシリンジに吸っておいて、手術の洗眼後に結膜下注射しておく。その量は0.1mlくらい、感覚としては少し結膜が膨れるくらいで十分で、これでIFIS発症率を大幅に減少させることが出来る。 3. 散瞳不良症例はIFIS発症の可能性が高いので、必要に応じてBSS2.5mlにMP1滴入れてそれを前房内投与する。(ただし想定リターンがリスクを上回る場合のみ) 4. それでも無理で術中にパワフルなIFISを起こした場合には、前房形成能の高いヒーロンVを適宜使用する。(ただし個人的にはヒーロンVにはあまり過度な期待を抱かない方が良いと考えている) 以上です。これからもより安全で効果的なIFIS対策を追い求めて行きたいと考えています。
2011.09.25
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さて、「目の周りに塗るだけでそれがじわじわ滲みて目の中のかゆみが取れる」という魔法のような世界初の機序を持った、アレジオン眼瞼クリーム。 こちらが実際の製剤になります。 ノズルがめちゃ細いです。目の周りにちょっとだけ塗るものなので、あまりクリームが多く出過ぎないようにと言う配慮だと思います。日本ナンバーワンの眼科薬メーカーの参天製薬のお薬と言うのは、使いやすいようにいつも隅々まで細やかな配慮がされているんですね。 院長が寝る前に塗ってみました。実際にアレルギー持ちなのですが、次の日の朝の目のかゆみが明らかに少なくなっていました。これはやはり効能が期待できそうです。 このアレジオン眼瞼クリーム、専門的に言うと、瞼(まぶた)の皮膚を通過して目の玉(眼球)と白目(結膜)に届いてかゆみを取ってくれると言うものです。 ただこれを実際に製品化するには極めて高度な製剤技術が必要で、「薬を溶かす技術が世界一」の参天製薬だからこそ実現できた薬だろうと思います。おそらく他の後発メーカーには至難だろうと思いますし、参天製薬のレベルの高さに眼科専門医として改めて感嘆しました。 今のところ、発売は5月下旬と噂されています。実際に世に出る日が楽しみですね。
2024.05.14
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黒目と白目の境目がどんどん白くなってきたのですが大丈夫ですか? と言う質問を患者様から受けることが良くあります。そうですね、大体1ヶ月に数回は聞かれます。今日はこの問題について考えて見ましょう。 まず結論から言うと、これは 老人環(ろうじんかん senile ring) というものです。「お年のせい」ということですね。加齢によって脂質が沈着して黒目の周りが白っぽくなったものですが、通常は視力低下に繋がったりはしないので気にしなくて大丈夫です。 それではこの老人環が一体どのようなものなのかを具体的に一緒に見ておきましょう。 上の写真で水色の矢印で示したのが老人環です。ちょっと分かりにくいので色を塗ってみましょう。 緑色に塗った所が老人環です。黒目(角膜)の隅っこなので視力などには影響はないので心配しなくてもいいんですね。 そしてこの老人環、70歳以上だと大体80%くらいの方に存在します。なので、 目の白髪 くらいに思って頂いて良いと思いますね。
2016.06.21
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さて「ためしてガッテン」で「動体視力改善効果がある」として紹介されたムチン分泌促進薬ですが、現在2種類が発売されています。 まずは先行発売された ジクアス点眼液 についてです。 このジクアス点眼液は画期的な効き目があると同時に、世界一新薬の承認が厳しいと言われるこの日本で、眼科専門の製薬会社の参天製薬が全世界に先駆けて先行発売に成功した薬です。また新薬の開発には製薬会社だけではなく、大学病院を中心とした研究・臨床の協力が不可欠であり、「日本発世界初」の効果抜群な目薬が誕生したと言うこの事実は、日本の眼科医療が総合的に見て世界最高水準であることの何よりの証明となりました。 ちなみに最近ではiPS細胞の臨床応用で加齢性黄班変性症が良くニュースでも取り上げられますが、これも日本の眼科医療が世界トップレベルであることが前提としてあると思います。 少し逸れてしまいましたが話をムチン分泌促進薬に戻します。まずは、ジクアス点眼液発売前夜の状況からです。 ドライアイの画期的新薬、ジクアス点眼液、もうすぐ登場です。 続いて、実際のサンプル品を使って見た時の感想です。 ジクアス点眼液、実際に体験して見ました。 発売後の患者様の感想です。 ドライアイ新薬 ジクアス点眼液、やっぱり大好評です。 発売1ヶ月が経過し、たくさんの患者様に実際に使用して頂いたことによって、ジクアスの長所と短所が見え始めて来た頃の日記です。 ジクアス点眼液発売1ヶ月が経過して思う。 このジクアス点眼液の登場によって日本のドライアイ治療は大きく飛躍しました。それには眼科一筋の頑固な製薬会社の参天製薬の力が何よりも大きかったと思います。参天製薬は薬の成分を溶かして目薬にする技術力が世界一で、それが今回の画期的な新薬発売に繋がったと思っています。私もドライアイ治療医として新薬の恩恵をしっかりと患者様にお届けできるように、参天製薬に負けないくらい日々精進していきたいと考えています。
2012.10.28
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義眼の方の目の中はどうなっているんですか? と言う質問を患者様から頂きました。 義眼は怪我や病気などで眼球を摘出せざるを得なかったり眼球の中身を取る手術をした場合に、 眼球があるように見せるために入れる扁平な楕円形のもの で合成樹脂で作られています。ほとんどは反対側の元気な目に合わせて色や形を整えて1つ1つオーダーメイドで作ります。 それでは実際に見てみましょう。 非常に綺麗に義眼が入っていますね。 これを外すと、、、、、 中は空洞 になっています。この空洞(結膜嚢:けつまくのう)の状態に合わせて1人1人の患者様にぴったりの義眼を作っているので、パッと見では義眼と分からないことも多いくらいなんですね。
2016.07.15
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どうして人間の瞳は丸いのですか? という質問を患者様から戴きました。今日はこの問題について考えて見ましょう。 まずここで言う瞳と言うのは目の真ん中に開いている「瞳孔」のことですね。私達人間は 「外界からの情報の80%を目から手に入れている」 と言われており、その入り口となるとても重要な部分となります。 さてこの瞳孔、我々人間はたまたま丸いわけですが、 実は動物によって異なる のです。! (眼科セカンドオピニオン 銀海舎 P53より引用) 猫が縦型なのは割と皆さんも御存知かと思うのですが、 ヒキガエルはなんとハート型 なんですね。 また我々人間でも、たまにこのハート型の瞳を見ることもあります。 これはある患者様に検査のために散瞳薬という目薬を入れたところなのですが、上方の虹彩(茶目)の一部がその後ろの水晶体とくっついている関係で、偶然「ハート型」になっています。 患者様に「目がハート型になっていますよ。」とこの写真をお見せしたら大変喜んで頂いたのですが、とっても珍しいものが見れて私も嬉しかったです。こういった様々な楽しいことがあるので、私は毎日の外来診療が大好き なんですね。
2016.06.06
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進行すると最後は失明してしまうことのある怖い病気緑内障、治療は主に目薬で眼圧を下げることですが、目薬ではどうしても目標とする眼圧まで下がらない場合に外科的な手術を選択することも当然あります。 手術は、大多数の場合は目の中の水の出口(線維柱帯:せんいちゅうたい)の一部を切り取って眼圧を下げる、「線維柱帯切除術」が行われます。 上の写真で水色の部分の奥に線維柱帯があり、それを切除したことによって房水(ぼうすい)という目の中の水が外に流れ出し、濾過胞(ろかほう)という水ぶくれ(上の写真でblebと書いている所)を目の上の部分に造ることによって眼圧を下げています。 ところがこの緑内障の手術というのは、術後に一定の確率で感染症を起こすことがあるのです。文献によって多少差はありますが、平均で2~3%の頻度でこの濾過胞(=bleb)感染が起こると言われています。 そのため当院でも年に1人くらいはこの濾過胞感染症(=blebitisと言います)の方の治療をすることがあります。つい先日、このblebitisを発症された患者様が来院されたので、それがどのような状態のものなのかを実際に見て頂きましょう。 この患者様は「4、5日前から左目がかゆい、おかしい」と言って来院されたのですが、上の写真で真ん中にある濾過胞が黄白色に混濁し周りも強く充血しています。 この炎症が目の中にまで及ぶと最悪の場合失明してしまうこともあるため、速やかに強力な治療を開始する必要があります。この方に関してはニューキノロン系+セフェム系という2種類の広い範囲のばい菌に効く目薬を1時間ごとに点眼するという治療を開始し、 次の日には症状はかなり改善しましたが、まだ油断できない状態が続いています。 このように緑内障の外科的手術を受けた患者様には、常に術後の感染症発症のリスクが付きまといます。なので、強い目の痛みや充血などを感じたときには、すぐに我々眼科専門医を受診するようにして下さいね。
2010.03.19
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さて、いよいよその発売が迫ってきたドライアイの大型新薬、ムコスタ点眼液ですが、先日ようやくサンプルを戴けたので実際に試してみました。 ユニットドーズ製剤と言って、使いきりタイプの点眼剤です。早速開けてみましょう! おぉ、白色の濁り液です。うーん、これは溶けにくくてお薬の成分を目薬に仕上げるのに苦労したでしょうね。。。大塚製薬の開発者の方、お疲れ様でした。では早速点眼してみます。大型新薬ですので、院長の私はもちろんスタッフの皆も挑戦してくれました。その感想は、、、、 点眼した後、1分くらい目がかすんで見えない。 鼻から口にかけてかなりの苦味が来る。 あたりの、ネガティブな意見が最初に多く出ました。 添付文書にも苦味が多いということは書いてありましたし、ホリエモンではないですが、まあ「想定の範囲内」ですね。(笑) ただ、点眼後しばらく経つと、 なんだか目がスッキリした。 目がしっとりと潤ってきた。 目が暖かい感じで調子が良くなった。 など、やはりムコスタ点眼液のパワーを実感させるポジティブな感想が多く出ました。ムコスタ点眼液は、対照薬となった参天製薬の歴史的名薬の0.1%ヒアレイン点眼液に対して有意差を持ってドライアイ症状を改善するというデータが出ていますし、やはり力はありますね。 私の個人的な感想を言うと、「点眼直後のかすみや苦味は確かに弱点だが、それを上回る効果は間違いなくある! 少なくとも重症のドライアイに苦しむ患者様はトライする価値のある目薬である。」というものでした。 またこのムコスタ点眼液は、先行して発売されている同じ「ムチン産生促進薬」のジクアス点眼液とは作用の仕方が違うとの事なんですね。 添付文書には色々と難しいことが書いてあるのですが、ムコスタ点眼液が実際にどういう理屈で効くのかはまだ分かっていないとの事です。 ただ、ムコスタはジクアスの作用点であるP2Y2受容体には影響を及ぼさないことは分かっており、もしかすると、ジクアス点眼液とこのムコスタ点眼液を併用すると1+1=2のように、ドライアイにもっと効くのではないか?という期待も膨らんでしまいます。 いずれにしても、近い将来のムコスタ点眼液の登場が本当に待ち遠しいですね。
2011.11.09
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しばらく前のことですが、ネット上で面白い記事を見つけました。 詳しくは 元記事 を参照して頂きたいのですが、要点を一言で言うと、 花粉症の人は、花粉症でない人に較べてがんによる死亡率が52%低下していた。 という内容です。 「花粉症などのアレルギー疾患を持っていると、免疫機能が活発になる傾向があり、それが特定の原因による死亡を防ぐのかもしれない。」 という研究者のコメントもありましたが、私はこの記事を読んで、 あっ、これは体感的に間違いないな。 と思いました。 毎日毎日多くの患者様を診察させて頂いている経験から、 花粉症の患者様には全身的な病気が何故か少ない ということを実感していたからです。 そしてこの記事からは2つのことが示唆されると思います。 1. 花粉症の症状が強いことはトータルで見てその患者様の長寿に繋がっている可能性がある。 2. そのため花粉症に対して[過剰で強力な治療]を行って症状を押さえ込むことは、患者様の免疫機構を過度に抑制することになり却って健康を損なうかもしれない。 私はもうずっと以前から、 花粉症の患者様に対して常に「必要最低限」の治療 を心掛けてきました。ほとんどの方は 短期間適切にお薬を使えばすぐに症状が改善するから ですが、今回の記事を見て、よりその方針を徹底して行こうと思いました。
2015.11.03
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今年もかゆいかゆいスギ花粉症の季節が差し迫って参りました。当院でもスギ花粉に敏感すぎる方を中心に既に患者様が急増し始めており、毎日の外来はまさに「春はすぐそこ。」という戦国の様な様相を呈しています。 さて毎年花粉症のシーズンには薬局で目薬や飲み薬を買ったり、それでも収まらなかったら病院に行ってもっと良く効く医療用の薬を貰ったり、という方はたくさんいらっしゃると思うのですが、自分が何に対してアレルギーがあるのかを実際に調べたことがある人って意外と少ないと思います。 今日は、そんな方に1つ提案があります。それは、 指先からほとんど痛みもなくほんのちょっとだけ採血して、20分で結果の分かるアレルギー検査 がありますよ、簡単にアレルギーの原因を調べることが出来ますよ、というお話です。 具体的には、 「イムノキャップ ラピッド 鼻炎・ぜんそくI」 という検査になります。 この簡単な検査で、春のスギ、夏のカモガヤ、秋のブタクサとヨモギという「世界3大花粉症」の原因と、更にプラスしてダニ、ゴキブリ、ネコ、イヌというハウスダスト系のアレルギーの元を一気に全て調べることが出来ます。 検査は先ほど述べた様に指先にパチンと針を突いて、血液をほんの少量戴くだけで終わりです。ほとんど痛みもありませんし、何の苦痛もありません。もちろん皆様に自信をもってお勧めするくらいですので、院長である私自身が実際にその検査をお試しでやっています。ちょっとその結果を見てみましょう。 はい、このように院長である私は、スギが強陽性、ダニも陽性という結果でした。自分は元々重度のスギ花粉症なので、この結果は非常に妥当なものと言えます。 ちなみにこの検査は健康保険が効きます。なので、自分が何のアレルギーなのかを調べたい方は、是非外来で気軽に聞いてみて下さいね。
2019.02.07
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当院では開院以来、怠ることなく常に設備投資を続けています。それは進化の激しい眼科医療の世界では極めて大切なことです。検査機械は新しく更新しなくてもそれなりの診療はもちろん出来るのですが、少しずつ全国標準の眼科医療レベルからは乖離してしまうことになります。 私は八幡浜地域の皆様に常に全国レベルの眼科医療を提供したいと願っており、開院2年目には糖尿病網膜症などの治療で使用する「レーザー光凝固機械」を緑色単色のものから緑色と赤色の2色が打てるもの(赤色は白内障があってレーザーが入りにくい患者様に使用)に買い換えましたし、3年目の今年はこのブログでも以前から紹介しているOCTと言う機械を新規に購入しました。 そして今月に入って、更にまた新たな機械を当院に迎え入れることが出来ました。日本のトーメー社製の光干渉眼軸長測定装置の「OA-1000 Advance」です。 これは白内障手術前の検査に使う機械で、具体的には目の表面から奥までの長さ(眼軸)を正確に測るものです。旧型のOA-1000も以前にデモさせて頂いたことがあったのですが、今回購入したのはその進化版のOA-1000 Advanceです。旧型機に較べると新しい「カタラクトモード」というものが搭載されていて、白内障が進行してしまっている患者様での測定可能率が上がっています。 シンプルで極めて使いやすい機械です。白内障手術前の検査精度が更に上がるものと期待しています。
2011.03.29
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さて、ようやく学会場に到着しました。今回の日記、学会場に着くまでが長かったですね。ただし、この後も激アツな話が続くのでJSCRS参戦記は少しロングシリーズとなる予定です。御了承下さい。 最初に参加したのは、 「全身疾患と白内障手術」というシンポジウムでした。もちろん会場の最前列に座って気合を入れて勉強しました。 この中で勉強になったことを自分用のメモ書きとして下にまとめておきます。一般の方で難しい場合は読み飛ばしてください。 1. アトピー性皮膚炎がある患者様の白内障手術はとにかく要注意。鋸状縁(きょじょうえん:目の奥の網膜の一番隅っこの見えにくい場所)付近の毛様体上皮裂孔や、網膜剥離裂孔を伴っていることが多いので、強膜圧迫による手術中の眼底検査が必要である。 2. 前立腺肥大で排尿障害の治療のためにα1遮断剤というお薬を飲んでいる患者様が激増している。具体的には「ハルナール、フリバス、ユリーフ」などの商品名のものが多い。これらが日本では現在なんと年間で8億個!も処方されている。泌尿器科の先生はカジュアルに気軽に処方するが、これらの薬を飲んでいると白内障手術時に40%の確率でIFIS(アイフィス:術中虹彩緊張低下症候群)というやっかいな合併症を起こす。 これはα1遮断剤が「瞳孔散大筋のブロック」を起こすからだが、α1受容体を選択的に活性化させる「フェニレフリン」という薬剤でこのIFISは予防できる。ただしミニムスという使いきりタイプの点眼剤を個人輸入しないといけない。後、一般的な散瞳剤の「ミドリンP」にもフェニレフリンは入っているが、原液でないと前房内濃度が足りない。ミドリンPには防腐剤が入っているので原液使用は無理。 3. 糖尿病を合併している患者様の白内障手術は非常に多いわけだが、手術前にHbA1C値を3ヶ月で3%以上、つまり1ヶ月で1%以上改善させると、元々中等度以上の非増殖性網膜症では高率に術後に網膜症と黄班浮腫が悪化する(いわゆる糖尿病治療後網膜症)。そのため、内科の先生方に対して我々眼科医側から、「手術のための急速な血糖改善はかえって良くない」ことをしっかりと伝えていく必要がある。 後、糖尿病の基準が11年ぶりに改定されて、「HbA1C6.1%以上」となった。 4. 白内障手術前に抗血栓療法(ワーファリンや、アスピリンなどの抗血小板薬)を一旦中止すべきかどうかということが以前から議論されてきたが、基本的に休薬の必要はない。 (2009年の循環器科の治療ガイドラインにも記載されているとのこと) 白内障術中には0.04%の確率で「駆逐性(くちくせい)出血」という恐ろしい合併症が起こるわけだが、最近は「極小切開なので更に減っているでしょう」と。 「むしろ休薬によって高頻度(1%)の確率で虚血性の恐ろしい脳梗塞や心筋梗塞などのイベントが起こるので、そっちの方が危ない」 とのこと。そのため、「休薬する場合は必ず同意書を戴く必要がある」と。 ちなみに当院では開院時から抗血栓療法薬の休薬はしていません。 非常に勉強になるシンポジウムでした。(続く)
2011.07.06
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さて2010年12月の発売以来、今や日本人の国民病とまで言われる「ドライアイ」の治療を革命的に進歩させた参天製薬の名薬にして、発売7年が経過した今もベストセラー街道をばく進する、ジクアス点眼液。 このジクアス点眼液はその薬理作用上、目の細胞からの水分とムチンという物質の分泌を促進するので、点眼後に涙の量を増やしてくれます。そしてその「うるおい効果」が点眼後約1時間も持続するという、画期的で優れものの目薬です。 その為、「ジクアスが無いともう生活が成り立たない。」と仰られる患者様もたくさんいらっしゃるくらいに大人気のお薬なのですが、ベストセラーで売り上げが多い(2018年3月期で見て、1年間で128億円)が故に、逆にクレームが目立つ点眼薬でもあります。 そしてそのクレームの中で断トツに多いのが、 ジクアスを点眼すると、その後で半透明のネバネバした目やにがたくさん出てきて気持ち悪い というものです。この「ジクアス点眼後に目やにが出る」という患者様からの訴えは非常に多く、私が1週間外来をしていると、最低でも1、2回は聞きます。 これは一体何なのでしょうか? ジクアスの何か危険な副作用なのでしょうか? 今日はこの「ジクアス点眼後の目やに」の正体について、私が眼科専門医として分かりやすく回答しましょう。 先ほども書いたように、ジクアスを点眼すると目の表面からムチンという物質が放出されます。これは納豆の様にネバネバしたものなのですが、この ジクアスの効果で出てきたムチンが、目の表面の常在菌をトラップしてトリモチのように絡めとって「目やに」として出てくる のです。 つまり、 ジクアス点眼後の目やには、お薬が効いている証拠 でもあるということなんですね。 ちなみに、このジクアス点眼後の目やには、無構造でバクテリアなどをトラップしたものであり、炎症細胞はほとんど認められない、いわば無害なものであることが専門的な研究によって既に分かっています。 以上をまとめると、 ジクアス点眼後の目やにに対してはそれほど神経質になる必要はない と思います。ただドライアイ治療ではジクアス以外にも有力な選択肢はたくさんありますので、どうしても不快で気になる場合には違う点眼薬に変えればそれで済む話でもあります。 なので、どうしても気になる方は、是非気軽に次回の外来で私達眼科専門医に相談してくださいね。
2018.06.11
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まだまだ蒸し暑い時期が続きますね。草刈り等の農作業も多く、「目にゴミが入った」などの訴えで受診される患者様が多い季節です。 さて、この目の中なのですが、実に様々な異物が入り込みます。今日はどのようなものが入るのか、いくつかその内の珍しい事例を見て頂きましょう。 ↑ この患者様は以前も紹介したことがありますが、農作業中に田んぼで転んでその時に目にヒルが食い付いてしまいました。非常にすばしっこく逃げるので摘出するのが大変でした。 ↑ この患者様はみかんの摘果作業中に目にゴミが入り「洗っても何してもどうしても取れない」との訴えで受診されました。それもそのはず、蟻が目から振り落とされないように結膜(白目)に足を深く刺してしがみついたまま絶命していました。このありんこも引っぺがすのが大変でした。 ↑ この患者様は、「まぶたの裏で何かがもぞもぞ動いている!」との訴えで来院されました。上まぶたをめくって調べて見ると、ショウジョウバエと思われる2ミリ大の虫が目の中で既に絶命していました。 このように、目の中と言うのは様々な異物が入り込みます。自力ではなかなか取れないもの、取るのが危険なものもあります。ですので、「あれ?何か目にゴミが入ったぞ。」という時には、是非気軽にお近くの眼科専門医を受診するようにしてくださいね。
2012.09.01
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さて2月4日(土)、初日に非常に勉強になったのは「強膜炎の薬物療法」、「強膜炎の外科的治療」という2つのプログラムでした。 強膜というのは、眼球そのものを形作っている丈夫で文字通り「強い膜」で、普段は白い色をしています。そして、この膜に炎症が起きている状態を強膜炎といいます。 症状としては、強い充血と痛みです。強膜炎の充血は比較的深いところで発生してるので、黒っぽい赤色に見えるのが特徴です。充血している部分は押すと痛みを感じます。この「痛い」というのが強膜炎の最大の特色であり、しかもその痛みは患者様によっては「鉛筆を目に刺されたよりも痛い」と言うほど激烈です。具体的に実際の患者様の状態を見て頂きましょう。 この強膜炎はリウマチなどの自分で自分自身を攻撃してしまう自己免疫疾患に合併することが多いですが、色々調べても結局原因が分からないことも良くあります。 そして、これだけ医学が進歩した現在でも治療に難渋することが多く、最悪の場合は強膜が溶けて(壊死して)穴が開いてしまうことさえあるのです。そのためこの強膜炎と言うのは、我々眼科専門医にとってはその知識量・経験・状況判断力・決断力を問われる非常に厳しい病気なのです。 今回のプログラムではこの強膜炎について様々な角度から勉強することが出来ました。 ↑ このように強膜炎の原因疾患というのは無数にあり、それがこの病気の治療を難しくしています。 ↑ そして、上のスライドにあるとおり、「とにかく痛い」こと、これが困るんですね。 ↑ そして、目薬だけであっさり治る症例から、内科的・外科的治療を総動員して何とか治った症例、どうしても治せない症例まで、その予後は本当に千差万別です。 ↑ 治療法は一応のフローチャートはありますが、これがまた一筋縄ではいかないのです。 ↑ これは重症例の写真ですが、激烈な炎症で強膜が溶けてしまい、その奥のぶどう膜という茶色い組織が出てきてしまっています。 ↑ こうなると、強膜パッチ術といって、他の方の献眼された目を持ってきて弱いところに貼るという外科的な治療をするというのが教科書に書いてある定説なのですが、 ↑ うかつにこのパッチ術に手を出すと、パッチをしても次から次へと溶けてしまってまた穴が開き、「合計したら数個分の目をパッチに使ってしまった!」というような凄まじい状況におちいることがあるので、「うかつに外科的治療に踏み切らないことが大切である」ことが解説されました。 重症例の治療法の実際を聞くことが出来て、本当に勉強になりました。(続く)
2012.03.23
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さて日本人では40歳以上の20人に1人(5%)、70歳以上では7人に1人(14%)の有病率ということで、非常にありふれた病気であると同時に、「失明に直結する!」という「とても怖いイメージ」があるために、多くの方から「恐れられている」病気である緑内障。 当ブログでもこれまでに様々な角度から取り上げてきましたが、この緑内障は「超慢性疾患」で進行がとてもゆっくりな病気なので、実際には発病から失明に至るまでには30年以上という時間的な猶予が与えられた、真面目に治療に取り組む患者様にとってはある意味で「優しい病気」でもあります。 そして治療の基本は、眼圧を下げるための点眼治療です。何故かというと、眼圧を下げることによって緑内障の進行を遅らせて目の健康寿命を延ばすことが出来ることは、既に質の高い多くの論文から明らかになっているからです。治療法としては他に手術も色々とありますが、結局はどれも眼圧を下げるためだけの物なので、目薬の治療だけで病気がコントロールできるのであればそれに越したことはありません。何も好き好んで痛い思いをする必要はないですからね。 そして実際全国にはとてもたくさんの緑内障点眼薬を使用していらっしゃる患者様がいます。緑内障は決して「良くなる」ことはない病気なので、世界最高レベルの高齢化がこれからも類を見ないスピードで進展するここ日本では緑内障患者様の数はこれからも増える一方です。もしかすると、このブログに辿り着いた方の中には既に緑内障の治療中の患者様もいるかもしれませんね。 そこで今日はこれまでと視点を変えて、緑内障点眼薬の世界を広く見渡してみることにしましょう。これはとても大切な視点です。何故かというと、この数年緑内障の分野では新薬ラッシュが続き、使えるお薬が爆発的に増え、その結果として以前とは比べ物にならないくらいに処方パターンが増えているからです。 それではまずはその全体像をお示ししましょう。 す、すごい量ですね。20年前には「僅かに数種類」しかなかった緑内障点眼薬は、いつの間にかこのような「爆発的な進化」を遂げているのです。そして私達眼科専門医は、これらの全てのお薬の長所・短所・有効な組合せ方を学び続けながら、毎日の診療に当たっているんですね。(続く)
2019.03.09
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さてシリーズでお送りしている「緑内障点眼薬の世界」。 これまでに現在第一選択薬(ファーストライン)として使用されているプロスタグランジン関連薬 第二選択薬(セカンドライン)として使用されているβ遮断薬 の紹介が終わりました。 そして今回はβ遮断薬と同じく第二選択薬(セカンドライン)としての位置づけとなるアルファ2作動薬のアイファガン点眼液です。 効き方としては、ぶどう膜強膜流出路からの房水排出促進+房水産生抑制の2つの作用となります。 さて私の個人的な考えをここで述べると、現在発売されているあらゆる緑内障点眼薬の中で、 アイファガン点眼液が総合力ナンバーワン と思います。 高い眼圧下降効果(リターン)と少ない副作用(リスク)が両立していて、使えば使うほどに、「アイファガン、ほんとにいい薬だなあ。」という実感がどんどんと高まっているからです。 これまでに紹介したように、緑内障の目薬と言うのはどれもそれなりの欠点があって気難しいものが多いのですが、 アイファガンは非常に点し心地が良く(これ、凄い美点)、更に眼圧も良く下がる(ほぼセカンドラインの チモプトール と同等)のです。なので、患者様に一度処方すると、「先生、今度の目薬、点しやすいし眼圧下がるし、滅茶苦茶いいわあ。」と喜ばれることが多いのです。そして患者様が嬉しいと私達医者も嬉しいのです。何故なら、我々は患者様の「役に立つ」ことが最大の喜びであり、それをモチベーションとして毎日の外来診療を頑張っているからです。 そしてその「突出したガチンコ力の高さ」によって、現在アイファガン点眼液は多くの並みいる競合薬を抑えて緑内障薬売上ランキングのトップ(2018年度売上高136億円)に君臨しています。 尚、このアイファガンについては、当ブログで過去に既に徹底解説しています。未読の方はぜひこの機会に目を通してみて下さい。↓ アイファガン点眼液が、売上1位のベストセラー緑内障点眼薬となりました。 アイファガン点眼液が起こした奇跡 さてそんな無敵のアイファガン点眼液なのですが、ただ1つ心配なことがあります。それは、発売元の千寿製薬が失礼ながら弱小メーカー(2018年3月期の売上高は379億円と製薬会社としては超小粒。)であり、このアイファガンは千寿製薬にとって他に代わるものの無い大エース=屋台骨となっていることです。 そして現在はベストセラー街道を驀進中のアイファガンなのですが、近い将来ついにジェネリック(後発)医薬品が登場します。その時、偉大な孝行息子を失うことになる千寿製薬はどうなってしまうのか、果たして大黒柱が倒れた後にも生き残っていけるのか、それを私は眼科専門医としてとても懸念しています。
2020.03.11
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2012年5月、今から6年前にひっそりと静かに日本国内発売となった緑内障・高眼圧症治療薬のアイファガン点眼液。 このアイファガンは、元々アメリカでは「アルファガンP」という名前であり、1996年の発売以来売上高世界上位のベストセラー薬であり続けている名薬でした。 少し復習をしておくと、この目薬(一般名 ブリモニジン)は「アドレナリンα2作動薬」といって、目の中を流れる房水(ぼうすい)の産生を抑制しつつ流出を促進するという、2つの作用機序を持つ非常に優れた薬剤です。先行して発売されたアメリカではずっと緑内障点眼薬売上ランキングの上位を維持し続けてきたベストセラーであり、我々日本の眼科専門医にとっても長年「喉から手が出るほど」使いたい、欲しいお薬でした。 ただ残念ながらその認可は遅々として進まず、なんと「アメリカから16年遅れ!」でようやく発売となったという、その「ドラッグラグ(海外で使われているくすりが、日本で承認されて使えるようになるまでの時間の差のこと)」の大きさでも話題となりました。 そしてこの2012年にようやく発売となったアイファガンなのですが、 なんと発売から6年が経過した今年2018年になって、多くの屈強な薬剤がひしめき合い、しのぎを削っている緑内障点眼薬の中で、なんと売上1位となった のです。 これはとてつもなく凄いことです。それがどうしてなのかを説明しましょう。1. 現在の緑内障治療においてはいわゆる「標準治療」≒ガイドラインが存在している。そしてその中では、第一選択薬としてプロスタグランジン関連薬(キサラタン、タプロス、トラバタンズなど)を使うことが推奨されており、 アイファガンは「最初に処方されるお薬」ではない。 2. また同時に保険診療上の縛りもあり、アイファガンは「ファーストライン(疾患に対して効果があるとされる複数の治療薬のうち、最初に投与すべきと考えられる治療薬)」として使うことは出来ない。あくまで「セカンドライン」以降の薬と言う位置づけとなっている。つまり、「大きくは売れないことを元々宿命づけられた薬」である。3. 更に悪いことに、発売元の千寿製薬は失礼ながら弱小メーカー(2018年3月期の売上高は379億円。これは製薬メーカーとしてはかなり少ない。)であり、薬の宣伝をする営業マン(MRさん)の数も広告のための予算も非常に少ない。なので「鼻薬を嗅がされた、緑内障学会のとてもエライ先生」が一般眼科医に薬を使うように「啓蒙」し、「応援」してくれることもほぼない。 つまり、 アイファガンが売れたのは、広告や宣伝の力ではなく、薬に本当の実力、「突出したガチンコ力」があったから なのです。でも同時に、千寿製薬には十分なプロモーションのためのお金がありませんでした。なので、アイファガンの良さは静かに口コミレベルで医療現場にじわじわと浸透するしかなかった。その為、2012年の発売からランキング1位となるまでに6年もかかったのです。 そして、資金力のある大手メーカーによる「パワープレイ」が支配的な製薬業界において、発売後6年が経過し更に弱小メーカーからの販売となったお薬が売上ナンバーワンとなるなどということは、医学界の常識では通常ではあり得ない、凄いことなのです。 それでは次回は、なぜアイファガンは数々の不利を乗り越えて売上ナンバーワンとなることが出来たのか? アイファガンのどこがそんなに優れているのか? その、 アイファガンの秘密 に迫っていきましょう。(続く)
2018.05.22
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