型をこよなく重んじるも、嵌ることをめっぽう嫌がる作曲家の日記

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2022.05.07
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テーマ: 芸術(12)
カテゴリ: クラシック音楽
木村拓哉さんと工藤静香さんの娘で桐朋学園大学在学中のフルーティスト、
Cocomi(木村心美)さんが題名のない音楽会に出演して話題になっています。
親の七光りでテレビ出演が決まったと噂されていることに記事 ​が出ています。
これだけの前評判が出ること自体、理由はともあれ大成功です。

この記事の中で58年続いている長寿番組という説明の中で、
最初の司会者、現代作曲家の黛敏郎氏の名前がないのはどう考えてもおかしいです。
また、番組の紹介として「本格的なクラシック番組」と書かれていますが、
昨今の番組内容から考えて全く本格的ではなく半分以上が他ジャンルです。


しかし、ここで語られている「親の七光り」について思うことがあります。
社長の子は社長、親族が重役は世の摂理で文句を言うならそちらです。
今回は、七光りで心美さんが出演できたかのような周知自体が問題だと思います。

心美さんの両親から考えるとクラシック関係者でも興味はそそられます。
番組制作側が視聴率を取るためにオファーするのは必然だと思います。
若手フルーティストで彼女よりもっと上手に吹けると言う人がいるでしょう。
しかし、21歳になったばかりの演奏として遜色はありません。

若さを考慮すれば今後の可能性は大きいと感じました。
ただ、視聴率主義のべたな​ 「歌うような音色を生み出せる楽器」 ​などという、
フルートの紹介が演奏動機の前面に出ることはとても素人っぽく映ります。


もう一つ気になるのは番組での紹介の仕方です。誹謗中傷を避けたためか、
両親の名前は出ませんでした。理解できますが周知されるのは時間の問題です。
あとCDのレーベルのデッカ・ゴールドを「名門レーベル」とだけ紹介するのは、
宣伝すべきところあえて言わないことに不自然でおかしいと思いました。

デッカ・ゴールドがニューヨークで日本ではないからかもしれませんが、

このリリースこそが親の七光りと言われても仕方がないかもしれません。
いずれにせよ、心美さんに強力なプロデューサーがいるのは確かなようです。

フルートで歌を歌いたいというのはほぼ全てのフルート奏者の願望でしょうが、
フルートらしいと言えば、細かい音のフレーズやパッセージを踏まえ、
躍動感のある動きの中で個性を表現できます。
長い音を中心とした旋律だけでは原曲の編成のほうが芸術性が高まります。

「音色」についてよく言われますが、楽器そのものや材質による影響が強く、
ある程度の力量があれば優劣や個性を競う対象にはならないと思われます。
その奏者の音色と言っても楽器やリードが変われば変わってしまい、
例えば独特のヴィブラートをかけるなどが比較対象になると思われます。

さて、番組内での演奏について書きます。
共演した中でも、ピアノの金子三勇士さんが何枚も上手で素晴らしかったです。
「Ave Maria」では金子さんの表現が心美さんを追い越す局面がありました。
番組後半はピアノが高木竜馬さんでしたが、ピアノがなぜ2人いたのかは疑問です。

心美さんと高木さんが演奏したのはラフマニノフのヴォカリーズでした。
ラフマニノフと言えば、甘い旋律とロマンチックな和声が印象的ですが、
実は巧みな対位法を駆使をしていて音楽は複雑な構造をしています。
音が多く演奏は易しくないので、よく旋律と和音だけにする編曲が目につきます。

今回のヴォカリーズも中間の複雑な箇所を独自の編曲で装飾されていました。
ラフマニノフが表現した音楽は、日本人がイメージしているようなものではなく、
ロマンチックと言うよりもロシアチックで暗く混濁していたと考えられます。
今回も装飾的な音が増え対位法的な葛藤がなくうわべ上の美しさが際立ちました。

ラフマニノフについてはもっと音楽的な構造を理解したうえで旋律を歌い、
チャラチャラさせないで作曲者の本質を考慮してほしいと思います。
心美さんがこの音楽に共感して演奏しているのは感じ取れますが、
この曲はこんなもんじゃないと感じた声楽家や音楽家もたくさんいたと思われます。





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最終更新日  2022.05.08 11:22:56
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