佐藤彰一『歴史探究のヨーロッパ―修道制を駆逐する啓蒙主義―』
~中公新書、 2019
年
『禁欲のヨーロッパ』
『宣教のヨーロッパ』
の時代からを扱いますが、主に歴史叙述や啓蒙主義と修道制の観点から議論が展開されます。
本書の構成は次のとおりです。
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はじめに
第1章 人文主義と宗教論争
第2章 ブールジュ学派の射程―歴史と法学
第3章 サン・モール会の誕生と発展
第4章 ジャン・マビヨンとその時代
第5章 修史事業の展開
第6章 デカルトかライプニッツか
第7章 考証学(エリュデシオン)の挫折
第8章 啓蒙と功利思想の展開と修道制
終章 ヨーロッパ修道制の歴史的意義
あとがき
参考文献
事項索引
人名索引
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まず、「はじめに」では、本書の構成に沿って興味深いエピソードを提示しており、全体の外観がつかめるとともに単純に面白く読むことができました。なにしろ冒頭に置かれているのが、『デカメロン』で有名なボッカチオがある修道院を訪れた際に、貴重な写本がずさんに管理されていることに悔しさを覚えたというエピソードです。一気に引き込まれました。
各章についての詳細なメモは省略しますが、各地の修道院をめぐり、貴重な写本を発見した人々、 300
年にわたり編纂された『アクタ・サンクトールム』(成人祝日=聖人の没日をもとに、月ごとに聖人伝をまとめた集成)、宮松浩憲先生の訳書で日本でも紹介されているジャン・マビヨンについての詳細な情報など、興味深い記述が満載でした。
これまでの4冊に比べると、直接修道院(修道制)にはかかわらない部分もありますが、歴史叙述や啓蒙主義との関係から修道制のあり方をみる、興味深い一冊です。
(2021.03.21)
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