Marianne G. Briscoe and Barbara H. Jaye, Artes Praedicandi and
Artes Orandi, Brepols, 1992, 120p.
マリアンヌ・G・ブリスコ、バーバラ・H・ジェイ『「説教術書」「祈祷術書」』(西欧中世史料類型第 61
分冊)
A- VI
.B.4、A- VI
.D.4
A.文献史料
.宗教・道徳生活の史料
B.説教活動|D.霊的史料
4.説教術書|4.信仰に関する概論、「祈りについて」
* * *
久々にレオポール・ジェニコが創刊した叢書『西欧中世史料類型』からの紹介です。今回紹介する第 61
分冊は、「説教術書」と「祈祷術書」(後者は定訳がないと思われます)の2つの史料を扱います。
本書の構成は次のとおりです。(拙訳)
―――
前書き
第1部 説教術書(マリアンヌ・G・ブリスコ)
第1章 ジャンルの定義
第2章 ジャンルの発展
第3章 批判の規則
第4章 影響
第5章 校訂版
第6章 歴史的価値
第2部 祈祷術書(バーバラ・H・ジェイ)
第1章 ジャンルの定義
第2章 ジャンルの発展
第3章 「祈祷術書」の批判的評価
第4章 校訂版と現代語訳
第5章 歴史的価値
―――
第1部第1章は、「説教術書」の定義を、『ヘレンニウス修辞学』の「術 ars
」の定義を援用しながら、「説教執筆と伝達を教えるもの」としたうえで、最初の包括的な説教手引きであるアラン・ド・リール『説教術大全』の概要をやや詳細に見た後、ドミニコ会士アンベール・ド・ロマン『説教師の教育について』を紹介します。
第2章はアランから始まり、オーヴェルニュのギョーム、伝ボナヴェントゥラ、ウェールズのジョンなど、主要な説教術書を通史的に見ていきます。
第3章はまず、主題、副主題、主題の区分といった当時 (13
世紀頃から )
の説教の構造を概観した後、著者の同定が困難な場合が多いこと、写本には装飾が少ないこと、詞華集など他のジャンルとの関係などを論じ、最後に未解決の問題を提起します。
第4章はアランなどの影響力を、第5章は校訂版などを紹介し、第6章は、「説教術書」が説教の実践を十全に研究するための重要な史料であることなどを指摘します。
第2部はほとんど研究されていない「祈祷術書」(訳語は拙訳。私が読んできた邦語文献でこの訳語を見た覚えがなく…)について論じます。そもそも ars orandi
という言葉は中世になく、その他の ars
との類似から用いられる研究用語とのこと。定義として、祈り方を論じるだけでなく、祈りを自覚的な言語的戦略を必要とする体系的な活動として扱う書物とされます。
第2章は通史的に「祈祷術書」と考えられる書物を紹介します。サン=ヴィクトルのフーゴーによる『祈りの方法について』は、邦語文献ではたとえば ジャン=クロード・シュミット『中世の身ぶり』
でも紹介されています。
第3章は、著者、言語、聴衆、他のジャンル(特に「説教術書」)との関係などについて触れます。
第4章は校訂版の紹介、1ページのみの第5章は、「祈祷術書」が大学の興隆と密接な関係があること、民衆の信心の歴史と関係があることを指摘します。
だいぶ前に目を通しておきながら、記事を書いていなかったことなどから、この度ざっと再読。私の研究関心からは第1部が重要ですが、未解決の論点をいろいろと提示している点が興味深かったです。
(2021.07.01 読了 )
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