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2023.10.28
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ジョルジュ・デュビィ(金尾健美訳)『中世ヨーロッパの社会秩序』
~知泉書館、 2023 年~
(Georges Duby, Les trois orders ou l’imaginaire du féodalisme , Paris, 1978)
 著者のジョルジュ・デュビィ (1919-1996) は、フランスの著名な中世史家。
 多くの著作が日本語でも翻訳されていて、本ブログでも次の著作を紹介しています。
・​ ジョルジュ・デュビィ ( 若杉泰子訳 ) 『紀元千年』公論社、 1975
・​ ジョルジュ・デュビー ( 小佐井伸二訳 ) 『ロマネスク芸術の時代』白水社、 1983
・​ ジョルジュ・デュビー ( 篠田勝英訳 ) 『中世の結婚-騎士・女性・司祭-』新評論、 1984
・​ ジョルジュ・デュビー(松村剛訳)『ブーヴィーヌの戦い―中世フランスの事件と伝説―』平凡社、 1992
・​ ジョルジュ・デュビー ( 松村剛訳 ) 『歴史は続く』白水社、 1993
・​ ジョルジュ・デュビィ ( 池田健二・杉崎泰一郎訳 ) 『ヨーロッパの中世 芸術と社会』藤原書店、 1995

 今回紹介する本書についても、原著の英訳版である​ George Duby (Trans. by Arthur Goldhammer), The Three Orders. Feudal Society Imagined, The University of Chicago Press, 1982 ​を本ブログで紹介しています。なにぶん十分に理解できていない部分もあり、この度邦訳が刊行されたことをとにかく嬉しく思います。(邦訳書でも、私の理解力では十分に追いつけず、また体調面などで今回はきちんと読めていないのですが…。)
 前置きが長くなりましたが、本書の構成は次のとおりです。

―――
凡例
序 探求のフィールド
I 啓示
 第1章 最初の言明
 第2章 カンブレのゲラルドゥスと平和
 第3章 ランのアダルベロと王権の使命
 第4章 システム
II
 生成
 第1章 階層制
 第2章 調和
 第3章 序列
 第4章 機能 祈ることと戦うこと
 第5章 三元性
 第6章 天上のモデル
III
 状況
 第1章 政治的危機
 第2章 競合システム
 第3章 封建革命
IV
 消失
 第1章 修道士の時代
 第2章 フルーリ
 第3章 クリュニー
 第4章 新時代
 第5章 修道制の最後の輝き
 第6章 学院の中で
 第7章 君主に仕える
V 再来
 第1章 本当の出発
 第2章 騎士層
 第3章 パリの抵抗
 第4章 封建制の矛盾
 第5章 採用
エピローグ

解説
系図・地図
索引
―――

 先にも書きましたが、せっかく邦訳書を得たにもかかわらず、今回は十分に読み込めていないので、本書の概要は先に掲げた英訳書に関する拙い記事にゆずり、ここでは邦訳書についてのメモをしておきます。
 まず凡例の1番で、「原書は厳密な学術論文ではない」ので、「読みやすさを優先させる」ため、「西洋中世史、教会史の専門用語は可能な限り避け、一般的な表現を用いた」とありますが、ここがまずひっかかりました。本訳書は「知泉学術叢書」の1冊であり、また本論の中にも人名や事項に関する説明のみならず、原文の理解に関する詳細な訳注が膨大に付されていて(もちろんこの訳注は極めてありがたく、本訳書の魅力です)、十分に「学術」的な1冊だと思われます。だとしたら、専門用語についても専門用語として訳出し、詳細な訳注において内容を紹介することで、たとえば西洋中世史を勉強したい学生さんにも、さらに有益な一冊となりえたのではないか、と感じた次第でした。どの訳語が専門的ではないのか、については浅学非才で具体例は挙げられませんが、たとえば、「僧院」 (396 ) という訳語は気になりました。
 また、同じく凡例8番で、人名表記については「聖職者と修道士(修道僧)はラテン語読み」(ここの「修道僧」も気になりますが)とされていて、たとえば「カンブレ司教ゲラルドゥス」のようはまだ気になりませんが、「ヤコブス・ド・ヴィトリ」のようにラテン語とフランス語を組み合わせたような表記はやや違和感がありました(ジャック・ド・ヴィトリとフランス語表記統一かつ一般的な表記とするか、ヴィトリのヤコブスと、これもまた見られうる表記のほうが違和感はなかったように思います)。
 と、いくつか気になった点を挙げましたが、すでにふれたように詳細な訳注は便利ですし、デュビィ独特の、時に小説のような文体を見事に訳されているのは勉強になります。
 訳者解説で、デュビィのフルネーム(ジョルジュ・ミシェル・クロード・アンデレ・デュビィ)が紹介されているのも勉強になりました。デュビィの著作(主に邦訳書)は色々読んできたつもりですが、いわゆるミドルネームにがあるとは存じ上げませんでした。
 また、英訳書を読んだときに分からなかった White Cape について、本訳書では「カプチン騒動」「カプチン派」との訳語が当てられていました。不勉強にして、まだよくわからない運動なので、これからも気にしていきたいと思います。
 あらためて、デュビィの有名にして重要な著作が、このたび日本語で読めるようになったことを嬉しく思います。今後も折を見て勉強していきたい1冊です。

(2023.10.10 読了 )

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Last updated  2023.10.28 19:51:59
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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