「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
857988
HOME
|
DIARY
|
PROFILE
【フォローする】
【ログイン】
M17星雲の光と影
PR
×
Keyword Search
▼キーワード検索
楽天ブログ内
このブログ内
ウェブサイト
Freepage List
< 新しい記事
新着記事一覧(全371件)
過去の記事 >
2006.01.12
櫟木(くぬぎぎ)に 爪突き立てし 空蝉の
(2)
カテゴリ:
その他
あんまり嫌だったので、いまだに記憶に残っているが、B5のわら半紙を半分に切ったものを配られ、右端に名前と詩のタイトルを書き、短い詩を書いて、先生の短評を受けるのである。詩を作るなどという行為は、歯を磨くとか床掃除をするとかいうこととは根本的に異なるものであり、他人に命令され、定期的に行うという形態にはなじまないものだ。第一、歯を磨けば歯はきれいになり、床を拭けば床はぴかぴかになるが、むりやり詩を書くと、そこにはことばの残骸が残るだけである。前者は世界からゴミを除去するが、後者は世界に新たなゴミを生み出してしまうのである。今考えても不幸な時代だったと思う。
たとえば「雲」というテーマが出される。20分かそこらで詩をひとつひねりださなければならない。なんとか嫌な思いをしないで、この時間を乗り切ることはできないだろうかと考えて、自分なりのパターンを作ることにした。
まず「説明」をする。たとえば、「雲、雲は大きい。雲は白い。それは大きな綿菓子のようだ。」というふうに。
そして、「疑問」を作る。「雲はなぜ空にぽっかりと浮かんでいるのだろう。どこから来て、どこに向かっていくのだろうか」という具合である。
ひとしきりそんなことをだらだらと書いた後に、「しめ」のフレーズが来る。これは決まっている。「~は不思議だ。」で終わるのである。「ほんとうに雲は不思議だ。」という具合に。
ひたすらこの鋳型に様々なテーマを当てはめて、なんとかその場をしのいでいた。女教師も教育的情熱にはあふれていたようだが、注意力にはやや欠落があったようで、私の作品が時には優秀作に選ばれたりしたこともある。しかし、この作業をやればやるほど、詩というものが嫌いになった。詩的なるものに対するやりきれない嫌悪感がこの頃から醸成されはじめたのではないかと思う。不幸な文学的体験である。
さて、時は過ぎ、私は高校生になった。その頃、ぼんやりしていると、なんとも名づけようのない感情や情緒にしばしばとらえられることがあった。おそらくは稚拙ながらも「詩情」というようなものではなかったかと思う。自然の情景や街の風景を眺めていると、こころのなかに淡い水蒸気のようなもやもやしたものが湧き上がり、それをどう始末したらよいのかわからず、その処理に苦労した。
不幸な詩作経験のために、誰かの詩を読むなどということは考えもしなかった。だから、そのような情緒にことばで形を与えるすべを知らず、私は途方にくれていた。
ある秋の日の夕暮れ。私は自宅の裏庭に出た。夕日があたりを照らしていた。裏庭には小屋があった。大きさは三畳間を二つつないだくらいのものだったろうか、父親が自分で作ったものだ。基礎をブロックで固め、その上に板を打ち付け、屋根をつけ、真ん中でしきりをつけて、二つの空間が作られていた。木の表には渋皮色のニスが塗りつけられ、そのニスがあちこちでひび割れていた。一つの空間は自転車置き場となり、もうひとつの空間は大工用具その他の道具置き場となっていた。小屋には二つの扉がつけられていた。父親は大工になるのが夢だったそうで(夢破れて電気関係の設計技師のような仕事をやっていた)、その小屋の造りは半端な大工の仕事よりもよほどしっかりしたものだった。
その小屋の扉に何か小さな虫のようなものがしがみついているのに私は気づいた。なんだろうと思って近づいてみると、それは蝉の抜け殻だった。鈎のように曲がった前足を扉の板にしっかりと食い込ませたまま、褐色の背中が二つに裂け、そこから蝉が飛び立った跡だったのだろう。薄い褐色の抜け殻が折からの風に細かくふるえるように揺れていた。これを「空蝉」というのか、と私はぼんやりと思い、名づけようのない情緒が胸の中に湧き起こってくるのを感じた。これをなんとか形に、ことばにできないものかと私は考えた。この情景を短歌に詠めないものだろうか。
「小屋の扉」では歌にならない。ここでは若干の文学的虚飾は許されるだろう。語呂のいい木の名前をいくつか考えた。そして「櫟木(くぬぎぎ)」というのはどうだろうと思った。
「櫟木に 爪突き立てし 空蝉の 背を吹き抜ける 軽(かろ)き秋風」
これがその時に詠んだ歌である。なぜかいまだに記憶している。その歌をはがきに書いて、高2時代だか高2コースだったか、その時にとっていた学年誌の短歌の欄に投稿した。(昔はみんなこういう雑誌を定期購読していたのだ。今となっては不可思議な民俗的風習に思えるが)選者は木俣修という人で、準特選だか佳作だかはわすれたが、とにかくいくつかの短歌の最初から二番目に掲載され、万年筆か何かを景品としてもらった。高校に行くと、文芸部の女子に入部を勧誘され、走って逃げた。それだけの記憶である。
今日なぜかこの歌を思い出して、口にのせてみた。まあ、嘘はあるけれども前半はそれほどひどくはないようだ。しかし、「背を吹き抜ける 軽(かろ)き秋風」という部分はひどい。定型的で表現が垢にまみれている。第一、空蝉の背中の割れ目から風が吹き抜けるわけがない。「軽(かろ)き秋風」という部分は、この情景を大きく損なってしまっている。これはひどい。あんまりだ。
なんとかならないものかと改作を試みた。
「櫟木に 爪突き立てし 空蝉の」という前半は生かそう。問題はこの後だ。
「背(せな)に残りし 生命の洞(ほら)」くらいだろうか。
「背(せな)に残りし 旅立ちの跡」かな。これはやや理に落ちているか。まだ前のほうがましか。
改作。
背(せな)に残りし 生命(いのち)の祠(ほこら)」
このくらいかな。しかし、幼児期からの情操教育というものに私は断固反対する。詩情を与えようなどという僭越なことを考えるから、こういういびつな失敗作が生まれてしまうのである。幼児教育反対。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
いいね!
0
シェアする
Last updated 2006.01.12 11:34:04
コメント(2)
|
コメントを書く
< 新しい記事
新着記事一覧(全371件)
過去の記事 >
ホーム
フォローする
過去の記事
新しい記事
新着記事
上に戻る
【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね!
--
/
--
次の日記を探す
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
広告を見てポイントを獲得する
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
エラーにより、アクションを達成できませんでした。下記より再度ログインの上、改めてミッションに参加してください。
ログインする
x
X
Calendar
Archives
・2026.08
・2026.07
・2026.06
・2026.05
・2026.04
Comments
和久希世@
Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03)
>「彼はこう言いました。「それもそうだ…
kuro@
Re:「チャンドラーのある」人生(08/18)
新しいお話をお待ちしております。
あああ@
Re:大江健三郎v.s.伊集院光2(03/03)
非常に面白かったです。 背筋がぞわぞわし…
クロキ@
Re:大江健三郎v.s.伊集院光2(03/03)
良いお話しをありがとうございます。 泣き…
М17星雲の光と影@
Re[1]:非ジャーナリスト宣言 朝日新聞(02/01)
まずしい感想をありがとうございました。 …
映画見直してみると@
Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03)
伊集院がトイレでは拳銃を腰にさして準備…
いい話ですね@
Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03)
最近たまたま伊丹作品の「マルタイの女」…
山下陽光@
Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03)
ブログを読んで、 ワクワクがたまらなくな…
ににに@
Re:非ジャーナリスト宣言 朝日新聞(02/01)
文句を言うだけの人っているもんですね ま…
tanabotaturisan@
Re:WILL YOU STILL LOVE ME TOMORROW(07/01)
キャロルキングの訳詩ありがとうございま…
© Rakuten Group, Inc.
X
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Design
a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
楽天ブログ
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
ホーム
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: