能登の手染め日記

能登の手染め日記

Jan 23, 2016
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カテゴリ: 絵・美術について
染色生活が長くなったが、実は初めのころ色を使うのは苦手だった。北国の田舎、曇った空の下に生まれ海と山と畑の中に包まれて育った私の色感は、けっして良いものではなかった。環境のせいばかりではなかった、と思うが(^^;

そういうこともあってかどうか?忘れたけど、高校の芸術の授業では書道を選択した(笑)文字や物の姿形には興味があったので多少のデッサン力はあったのだろうけど、色の知識を学ぶこともなく色感も発達しなかったようだ。染色の仕事を選んだのは、もっと色を使いたい、使えるようになりたいと思ったことが大きな理由だった。

だが、染色工房で図案部に配属されデザインガッシュを使って描いた図案は、自分でも「色の使い方が下手くそ!」だと痛感した。実際、けっこう苦しんだ。色にうなされる夢を何度も見た。色彩理論も色の使い方も色彩心理の本も読み漁った。が、そんなことでは、たいして上達などしなかった(--;

03-24shin-2.jpg今から40年前も図案を描いていた

それでも経験を重ねるうちに、なんとか弱点をカバーして仕事をしたが、時代は変わりパソコンの画像ソフトで図案を描くことになった。50歳近くになってパソコンの画像ソフトを学ぶのは難しかった。だがパソコンの色は使いやすかった。クリックひとつで色の選択ができプリントで色の比較が間単になり、自由に選んで使えるようになった。是は嬉しかった!楽しかった!

そして草木染めを行うようになり、今もまた色について学んでいる。染めの講習などで色の歴史を話すことがある。染料の話にも、その元は色の話であり、色に見える源の光の話であったりする。

化学的に合成された顔料や染料が発達する前は、天然の鉱物や土、植物や動物の色素を使っていた。だが、美しい赤や紫は稀少で高価だった。ざっくりとした言い方で、高貴な色というのは手に入りにくい色のことで、高額な色と言える。高額な色は高貴な地位の人しか手に入らなかったのだ(^^;

18世紀初頭から合成顔料が発明される。1704年、プルシャン・ブルーがドイツで製造法を発見されると1780年にはコバルトグリーン、1797年にフランスでクロームが発見され、1817年にカドミウムイエローなど次々と顔料の製造法ができてきた。(1856年にイギリスの科学者ウィリアム・パーキンが紫を製造してから化学合成染料も発達する)

そうしたなかで1824年、絵の具の金属チューブが発明される。それまで室内で天然の顔料が練りこまれて使われていた絵の具が、外に持って出ることができるようになった。これで描くものが変わった!

印象派以後、外の光を描くことができたのはチューブ入り絵の具ができたことが大きい。光によって移り変わる色の魅力を、その場で、その時々に描けることの喜びがあった。

科学的な見方、考え方の発達によって絵の表現が変わったのだ。自然であっても化学であっても、人間の、より美しいものを求める力が、より素晴らしいものを実現してきたといえる。

そして、化学染料であっても天然染料であっても、光によって見える色が、いまだに光によって褪せることに悩ませられるとは、なんとも皮肉な話であることだが(^^;

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