やさしい法律・行政手続入門

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2005.11.26
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カテゴリ: 離婚
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Q18.財産分与についてのその他の問題点について

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A18.

財産分与については、いくつか重要な最高裁の判例がありますので紹介したいと思います。

一.財産分与と詐害行為

1.事例

AとBは夫婦であり、5人の子供がいる。Aは家業のクリーニング店を妻Bに任せ、自身は不動産業などの仕事を始めた。

その後AはCと情交関係を結び子供までもうけた。

その後Aの事業は不振に陥り倒産した。

Aは多額の借財を抱えている。

BはAと離婚し5人の子供たちと一緒に家業のクリーニング店で生計を立てていこうと決意した。

そこで、財産分与として、唯一のめぼしい財産である上記クリーニング店の土地建物の登記をAからBに移転した。



(参考)
民法424条1項前段(詐害行為取消権)


債権者は、債務者が債権者を害する事を知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。

2.最判昭和58年12月19日(民集37-10-1532)

「分与者が既に債務超過の状態にあって当該財産分与によって一般債権者に対する共同担保を減少する結果になるとしても、それが民法768条3項の規定の趣旨の反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産分与であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐欺行為として、債権者による取消しの対象となりえないものと解するのが相当である」としました。

二.財産分与と債権者代位権

1.事例

A男は、実家が事業を営むB女の家に婿入りした。

 約7年半後に離婚したが、事業用に取得しB名義になっている不動産の登記が離婚直前にBの母親名義に移されたので、Aは審判に係っている財産分与請求権を被保全債権として移転登記の抹消を求めた。

 認められるか。

(参考)
民法423条1項前段


「債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。」

2.最判昭和55年7月11日(民集34-4-628)

「離婚によって生ずることあるべき財産分与請求権は、一個の私権たる性格を有するものではあるが、協議あるいは審判等によって具体的内容が形成されるまでは、その範囲及び内容が不確定・不明確であるから、かかる財産分与請求権を保全するために債権者代位権を行使することはできないものと解するのが相当である。」

三.財産分与と税

1.事例

 銀行員Aは職場の部下Bと親密な関係になり、妻Cと協議離婚することになった。

 その際AはBとともに裸一貫で出直す決意で自己の特有財産である不動産全部を財産分与としてCに譲渡する旨合意した。

 Aは当初、本件財産分与についてはCに課税されるものと考えていたが、その後、Aに約2億円の譲渡所得税が課税される事を知り、錯誤による無効を主張した。

 認められるだろうか。

2.最判平成元年9月14日(判時1336-93)



3.財産分与に際して分与者に譲渡所得税がかかることには批判があります。しかし、分与者に譲渡所得税が係る点に関しては確定した判例になっています。

4.最判昭和50年5月27日(民集29-5-641)

要旨:

1、譲渡所得に対する課税は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のものである。

2、所得税法三三条一項にいう「資産の譲渡」とは、有償無償を問わず、資産を移転させる一切の行為をいう。

3、財産分与としてされた不動産の譲渡は、譲渡所得課税の対象となる。

4、「財産分与に関し右当事者の協議等が行われてその内容が具体的に確定され、これに従い金銭の支払い、不動産の譲渡等の分与が完了すれば、右財産分与の義務は消滅するが、この分与義務の消滅は、それ自体一つの経済的利益ということができる。



 してみると、本件不動産の譲渡のうち財産分与に係るものが上告人に譲渡所得を生ずるものとして課税の対象となるとした原審の判断は、その結論において正当として是認することができる。」

四.気をつけたい点

このように、財産分与に際して全財産を分与してしまうとその後で、分与者に譲渡所得税が課されますので注意が必要です。

財産分与に関しては、専門家のアドヴァイスを受けたほうが賢明だと思います。

次回は 親権者・監護者 について

・・・つづく











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最終更新日  2005.11.26 17:06:35


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