人とロボットの物語

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毘夷零

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2006.08.29
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カテゴリ: 歌姫
ライブに来ているお客さんは誰一人メリーがロボットだとは気づいていなかった。

後ろからスタッフが声をかけてきた。
「そうね。」
私はかすれた声で言った。
そう、私の声はハスキーと言うのを通り越して、かすれた声しか出せなくなっていた。
手術の影響で声帯自体が麻痺してしまい、私の声は声帯から発しているのではなく
吐く息で無理やり声にしているのだ。
だからもう歌は歌えなかった。

メリーのステージを見ながら、頭の中でいつものエンドレスな問答を始めた。
盛大な拍手で我に戻った。
どうやらラストナンバーが終わったらしい。
ステージの幕が降りた。
私は慌ててメリーに近づき、抱えて控え室に戻った。
メリーのバッテリーが切れかかっていた。
2時間のステージがメリーにとってはギリギリ活動できる時間だった。
普通に動いている分には、余裕で4,5時間は稼動できるのだが、ステージでは
かなり激しいダンスをやらせている為にバッテリーの消費が激しいのだ。

控え室に戻ると、菜緒子が待っていた。
彼女はメリーのメカニックだった。

そして私が歌を歌っていた頃は私の大事なファンだった。
偶然に菜緒子がロボットに詳しいと知れ、このスタッフに迎え入れた。
彼女のメンテがなければ歌姫メリーは存在できなかっただろう。
「あらら・・・また随分と無茶してくれたわね。」
菜緒子が言った。

私は聞いた。
「大丈夫!ちょっとモータが燃えかかっているだけ・・・」
そう言いながら菜緒子は作業を始めていた。
「モーターが燃える?!大丈夫なの??」
私が心配そうに聞くと
「ロボットには良くあることよ」
と菜緒子は平然と答えた。
そしてしばらくすると
「よし!これでOK!!」
そう言ってメリーの服を調えた。
それから菜緒子は椅子に座り缶コーヒーを飲んだ。
「で・・・いつまでこんな茶番続ける気?」
菜緒子は不意に言った。
「え?!」
「だから・・・メリーにいつまでこんな事やらせるのかって事・・・」
「いつまでって・・・」
私は答えに困った。
「まだ大丈夫だけど。こんな無理させてたら、そのうちメリー壊れるよ。」
「その時は新しいロボット買うよ。」
そう言うと同時に菜緒子は怒鳴った。
「あんた!!メリーをそんな風に思ってるの!」
「え?!」
私には菜緒子が何を怒ってるのか分からなかった。
菜緒子はそんな私に何か言いかけてやめた。
「もういいわ・・・私は帰る。」
そう言って部屋を出て行った。
私は何がなんだか分からなかった。
仕方なく帰り支度をしていると
トントン!!
ノックされた。
私は立ち上がりドアーを開けた。
ドアーの前には、高校生くらいの女の子が立っていた。
「なにか?」
私が聞くと、その女の子は、か細い声で
「あの・・・わたし・・・メリーさんのファンでして・・・・」
とやっと言った。
「ありがとう!でもメリーは今ステージが終わったばかりで休んでるのゴメンナサイネ。」
そう私が言うと女の子は
「すみません・・・」
と本当に申し訳なさそうに言った。
「それじゃ、またライブに来てね。」
そう言ってドアーを閉めようとすると、女の子は
「あのぉ・・・」
そう言ったので
「なに?」
と聞いた。
「もしかしてマリーさんじゃありませんか?」
私は固まってしまった。
マリー・・・それは私のステージの名前。
「あぁやっぱりマリーさんだ。私、大ファンだったんです。」
私は触れられたくない過去に触れられた気がして
「いえ・・・人違いです。それじゃごめんなさいね!!」
そう言ってドアーを閉めた。

なんだか今日は最悪な日になったようだ。






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Last updated  2006.08.29 15:49:25
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