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「そろそろ時間、行くぞ!」俺は相棒に声をかけた。「わかりました。」相棒は言われたとおりに、車に乗り込んだ。俺達は鈴木さんの家に向った。一時は危篤状態だった鈴木さんだが、奇跡的に持ち直して自宅に戻ることが出来るようになった。ただ、完治した訳ではなく、いつ容態が急変してもおかしくないそうだ。医学的には、こんな元気な状態は有り得ないそうだ。医者もこれから先、鈴木さんがどうなるか予想が付かないそうだ。相棒が娘だと勘違いし、その相棒が言った「いつまでも一緒だ」と言う言葉で今まで何十年も気に病んで事が解消されたのだろう・・・俺達は、また鈴木さんの介護をする事になったのだが、相棒が実は娘ではなく、更にはロボットだと言う事を感づかれてはいけなかった。もしも、鈴木さんがその事に気づいたら・・・・たぶん、鈴木さんを支えていたツッカエ棒が外れて何が起こるか分からない。最悪、死んでしまうだろう。俺は今まで以上に鈴木さんに対して神経を使う事になった。そんな俺の心配には関係無く、相棒は相変わらず失敗を繰り返していた。その度に俺は相棒がロボットだとバレないかと焦っていた。そんな状況でも、鈴木さんは日に日に元気になり、ある程度は自分の事は自分で出来るようになっていた。やがては相棒の失敗をフォローするくらいに元気になった。そんなある日、会社に鈴木さんが男を連れてやって来た。俺は応接室に呼ばれた。「失礼します。」俺がそう言って部屋に入ると俺の上司と鈴木さん達が何やら真剣に話していた。「まぁそこに座りたまえ。」上司が俺に言った。「何でしょうか?」俺は上司に聞いた。「こちら、鈴木さんのお知り合いの弁護士の浜田さんです。」そう上司が言うと、弁護士は「始めまして。浜田です。」と言って俺に名刺を渡した。「この度、マイコさんを買い取りたいと思いまして。」そう弁護士が言ったので俺は慌てた。そんな事言ったら相棒がロボットだって事が鈴木さんにバレルじゃないか。「な・な・なんの事ですか??」と一生懸命ごまかした。そんな俺に「ありがとうございました。あなたが一生懸命にマイコの正体を隠してくれた事分かってました。」そう鈴木さんが言った。「え?!」俺は言葉が詰まった。「鈴木さんは、マイコさんがロボットだって言う事は分かっています。 その上で、鈴木さんはマイコさんと暮らしたいと願ってらっしゃるんです。」弁護士がそう説明してくれた。それで会社に来たわけか・・・「事情は分かりました。しかしそれは会社に言う話しで私には関係無いと思うのですが・・・」俺はそう言った。「正直マイコは完璧に仕事をこなせるとは思えません。私も今は何とか動けますが、 いつまた動けなくなるか・・・」そう鈴木さんが言うと、すかさず弁護士が「そこであなたに鈴木さんの専属ヘルパーになっていただきたいと言う訳です。 一応、マイコさんフォローも仕事に含まれます。」と付け加えた。「この頼みを引き受けてもらえないだろうか。頼みます。」そう言って鈴木さんは頭を下げた。そうまで言われたら断る訳にはいかない・・・どうなるか分からないが、その仕事を引き受ける事にした。正直に言うと、相棒と鈴木さんがどうなるのか?その結末を見たいと思っていた。
2006.11.27
俺達は病院に到着した。冷静になったのか、俺は少し躊躇していた。ただの介護サービスの人間が担当の危篤状態に来るなんてあまり聞いたことが無い。身内の方に、なんて言って病室に行ったらよいか分からなかった。そんな俺に相棒は容赦なく「鈴木さんのお見舞いに行きましょう。」と言った。グダグダ考えても仕方無い、ここまで来たのだから行くしかない!俺は覚悟を決めて病室に向った。病室に着くと、俺の心配は無駄だった。病室の前には誰も居なかった。入り口には面会謝絶の札がぶら下がっていた。勝手に入るわけもいかず困っていると、運よくナースがやってきた。俺は正直に話し、鈴木さんに会えないかと聞いてみた。そのナースは担当の先生に聞いてくれて、短い時間なら良いと許可をもらえた。俺と相棒は静かに病室に入った。先生とナースも一緒に来てくれた。鈴木さんはベッドに寝ていた。身体には沢山の機械が取り付けてあった。俺は相棒にいつものように手を握ってやるように言った。相棒は言われたとおり、ベッドの脇にしゃがみ込んで鈴木さんの手を握った。俺は先生に小声で聞いた。「身内の方は、いらっしゃらないのですか?」「はい。付き合いが無いとの事で誰も・・・」「そうですか・・・それで鈴木さんの容態は・・・?」そう聞くと先生は首を左右にふった。俺は、ここに来た事を後悔していた。目の前で、鈴木さんが死んでいこうとしてる現実を見なければならなかったからだ。ある意味相棒が羨ましかった。相棒には鈴木さんが死んで悲しいとか言う感情は皆無だろう。俺の、こんなにツライ気持ちなんか分からないだろう・・・・なんで、ここに相棒を連れてきたのだろう??俺も良く分からなくなっていた。相棒に鈴木さんのこんな状態を見せたところで何の意味は無かった。ただの俺の自己満足?そう思ったら、すぐにこの場から逃げたくなった。俺は相棒に帰ろうと言った。すると相棒が「鈴木さんが手を離しませんが、どうしましょうか?」と聞いた。その言葉に一番ビックリしたのは先生だった。先生は慌てて鈴木さんに近寄り、「鈴木さん!聞こえますか?」そう言いながら鈴木さんの身体をチェックした。よく見るとまぶたがピクピク動いていた。そして唇が何かを喋ろうとしていた。「何て言っているんだ・・・?」と俺がつぶやくと、すかさず相棒が「マイコって言ってます。」と冷静に答えた。俺は相棒に「鈴木さんにお父さん!って言ってやれ」と言った。相棒は忠実に行動した。「お父さん!」すると鈴木さんが「マイコ・・・」かすれる様な声で言った。俺はさらに相棒に小声で指示してやった。「お父さん、マイコよ。会いたかったわ。」相棒がそう言うと、鈴木さんは嬉しそうに「帰ってきてくれたんだ・・・」そうつぶやいた。「そうよ!帰ってきたわ。これからもずっと一緒よ!!」相棒がそう言うと「そうか・・・ずっと一緒か・・・そうか・・・」鈴木さんはそうつぶやくと静かに眠るについた。
2006.11.23
介護ロボットが導入されても、俺の負担が軽くなることは無かった。ロボットと言うものは決められた作業はこなせても、臨機応変の行動は出来なかった。相棒もその例に漏れず、言われた事や決められた事はキチンとこなせるが、突発的に起きる出来事には何の役にも立たなかった。介護と言う仕事は、その突発的な出来事の連続だ。だから相棒は失敗の連続だった。俺は、それらの尻拭いに追われていた。俺の仕事は今まで以上に大変になっていた。しかし、不思議な事にお年寄り達には相棒は人気があった。どんなに失敗しても迷惑をかけられてもお年寄り達は相棒に対して本気で怒っていなかった。むしろ相棒が来る事を楽しみにしていた。なぜなのか・・・??俺は、相棒の行動を観察していた。家事や介助が優れているとはお世辞にも言えなかった。むしろ、ダメな部類だと思えた。俺も出来る限りサポートしていたが、手が回らない場合などはお年寄り自身が見かねて自分でやっていたりした。そのたびに俺は謝った。しかし、お年寄りは怒るよりもむしろ嬉しそうに作業をしていた。逆に相棒に作業のやり方や問題点の指摘などを、やはり嬉しそうに教えていた。それに対して相棒も素直に聞いていた。それがまたお年寄り達には嬉しいようだ。思い返すと俺は今までお年寄り達の話しを聞いているようなふりをして聞き流して自分の作業をやっていたのかも知れない。俺はキチンと向き合っていなかったのだろう。相棒はある意味本当の介護サービスをやっていたのかも知れない。少し俺は相棒を見直していた。鈴木さんも相棒が来るのが楽しみにしている一人だった。相棒は、いつものように鈴木さんのベットに近づき手を握って彼の話しを聞いていた。結局は相棒は時間中仕事は何一つせずベットの脇にしゃがみ込んで鈴木さんと話しを聞くだけで終わっていた。俺はその間、一人で作業をこなしていた。だからと言って俺も相棒を怒る気にはなれなかった。相棒が来てから、鈴木さんが明るくなったのは事実だし、俺も鈴木さんの喜ぶ顔が見れるならそれで良いと思っていた。会社には言えない事だが・・・・それでも鈴木さんの具合は決して良くは無かった。明るくなるのとは裏腹に容態はどんどん悪くなっていた。近々、病院に入院しなければならないだろう。だからこそ、出来るだけ鈴木さんが喜んでもらえるようにしてあげたかった。そんな風に思っていたが、予想以上に鈴木さんの具合は悪くなっていたようだ。ある日、鈴木さん宅に向おうと準備していたら、会社に鈴木さんが緊急入院したと連絡が入った。そしてたぶんもう長い事はないだろうと・・・・そんなお年寄り達を何人も見てきた俺だが、鈴木さんがもうダメだと聞いてショックだった。そんな自分にビックリしていた。そんな風に感じた事今まで一度も無かったのに・・・傷つきたくないからお年寄り達と距離を置いていたのかも知れない。「そろそろ鈴木さんの家に向いませんと。」相棒がいつもとかわらず平然と言った。俺は、どう説明してよいか分からず躊躇してしまった。そして軽く息を吸い込んで気持ちを落ち着かせて「鈴木さんは入院したから今日の予定はキャンセルだ。」と相棒に言った。「分かりました。それでは次の方の家に向う準備をします。」と何事も無かったかのように言った。ロボットだから当たり前なのだが、そんな相棒に対してなぜか腹が立ってしまった。鈴木さんはお前のことあんなに慕っていたのに・・・・そんな風に思っている自分に苦笑してしまった。なんだか俺もおかしくなっているようだ。そして、俺は「予定変更。これから鈴木さんの処へ行く。」と相棒に言い放った。相棒を連れて鈴木さんのお見舞いに行こうと思った。なぜそんな行動に出たのか自分でも分からなかった。ただどうしても最後に鈴木さんに相棒を逢わせたくなった。
2006.11.03
俺は鈴木さんを落ち着かせてベットに寝かした。ベットの脇に相棒が付いていた。鈴木さんは相棒の手を握り、嬉しそうに一生懸命に相棒に向って何かを話しかけていた。俺はそっと部屋を出て、会社に連絡を取った。鈴木さんの状況の報告と「マイコ」と言う人と鈴木さんの関係を問い合わせた。しばらくして、会社から連絡が来た。鈴木さんの身内は遠くで暮らしている妹さんだけだった。その妹さんの話しでは、鈴木さんの家族は居ないらしい。20年前に事故で奥さんと娘さんを亡くしていた。それから鈴木さんは一人で暮らしていた。その頃からのめり込む様に仕事に没頭し、貿易関係の会社を設立したそうだ。今はその会社は人に譲り渡しているが、財産はそれなりのあるという話しである。ただその事故以来、人と関わる事を避けて暮らしていたそうだ。だから妹さんも、10年以上鈴木さんとは会っていないとの事だ。で・・・その亡くなった娘さんが「マイコ」と言う名だった。妹さんが唯一持っていたマイコさんの写真の画像データが送られてきた。その画像を見たが、そんなに相棒に似ていなかった。なぜ、鈴木さんは相棒を娘さんと勘違いしたのだろうか?とにかく、そろそろ契約している介護サービスの時間が終わる頃だ。相棒を鈴木さんから解放しなければ・・・「鈴木さん・・・ごめんなさいね。マイコさんそろそろ帰らないといけないんだ。」鈴木さんは悲しいそうな顔をして「帰るのか・・・」とつぶやいた。相棒が「ごめんなさい。仕事をしないといけませんので。」と言った。ナイスタイミングだ。「また、来ますから・・・」俺は満面の笑顔で言った。「そうか・・仕事か・・・それなら仕方ないな。」鈴木さんは納得してくれた。「来週にまた来ます。」相棒が言うと鈴木さんは嬉しそうに「そうか・・来週来てくれるか。」と笑顔になった。「それじゃ失礼しますね。」そう言って俺達は部屋を出た。鈴木さんはしつこい位に手を振っていた。俺は車に戻って、タバコを吸った。「さてさて・・・どうなる事やら・・・」とつぶやくと「どうなるとは何がですか?」と相棒が聞いてきた。お前の問題だよ!と言いたかったが、言ったところで質問攻めにあうのが目に見えていたので「なんでもない・・・」と言った。すると「なんでもないとはどう言う事ですか?」と聞くので「お願いします。黙ってください。」と俺は少しイラついて言った。「わかりました。」そう言って相棒は質問するのをやめた。ため息のように煙を吐いて、吸殻を灰皿に捨てて次の現場に向った。
2006.09.30
「次は鈴木さんか・・・」思わずつぶやいてしまった。それに対して助手席の相棒は返事が無かった、当然、返事が来るとは思ってはいなかったが、なんとなく拍子抜けだった。俺は訪問介護サービスの仕事をしている。そして相棒は人間と言っても疑われないくらい、そっくりな介護ロボットだ。介護サービスの仕事は過酷である。こちらは良かれと思ってやっている事の対して、相手は感謝してくれる事は以外に少なかった。別に感謝されたいと思って、この仕事をやっている訳ではないがやはり言われ無き罵倒をされたりすると、良い気持ちはしない。どんなに酷い事言われても、笑顔を絶やさずに仕事をしなければならない。ストレスはかなり溜まる。何人も同僚だった奴が辞めて行った。だから、いつも人手不足だった。その人手不足解消案として、会社は介護ロボットを導入する事を検討した。第1号のテストケースとして俺の相棒がロボットになった。俺は自分が優秀な社員だとは思っていない。なぜなら、サービスしているお年寄りとは、極力距離を置いて接している。相手の言っている事は殆ど聞かず、契約内容の仕事だけをこなしていた。その為に、売上としては良かった。だから会社としては優秀だと思っているらしいので、今回のテストケースに選ばれたのだろう。ただ、自分の仕事の姿勢は介護サービスとしたらどうなのだろうか?最近、ふとそんな事を考えるようになっていた。「そろそろ鈴木さんのお宅です。」相棒がGPSで位置を確認したようだ。「分かってるよ。」俺は無愛想に答えた。そして車を鈴木さんの駐車場に止めた。鈴木さんは一人暮らしだった。軽い認知症ではあったが、普通接している分には、そんな事感じさせなかった。詳しい事情は分からないが、家族は居ないようだ。俺はいつものように笑顔で「鈴木さん・・・お元気ですか?」仕事モードで挨拶した。鈴木さんは俺の顔を見て、軽く会釈した。「今日は、新しいメンバーを連れてきました。」俺はそう言って相棒を呼んだ。「よろしくお願いいたします。」相棒が挨拶すると「マイコぉ!!」突然、鈴木さんが立ち上がり叫んだ。「帰ってきてくれたんだ。良かった、良かった・・・」鈴木さんは相棒の手を握り泣き出した。俺には何が起きたのか理解できなかった。
2006.09.20
うーんやっと終わった。そんな感じです。この作品については、自分でもどう評価したらよいか悩んでます。これを書くきっかけは、たまたま車でラジオから流れた歌を聴きながらもしも売れっ子の歌手がロボットなら・・・ってシチュエーションだけで書き始めました。だから方向性とかオチとか全然考えてなくてダラダラと書いてました。本当にキャラクターが勝手に話し進めてくれたって感じでしたね。だから、書きながら完成するのか?って思いながら書いてました。本当に完成して良かった!!(笑い)あんまりメリーがロボットである必要性が無い話しになって反省してます。次回作こそは・・・・って同じかな(^^)
2006.09.08
それからは時間との戦いだった。やる事があり過ぎていくら時間があっても足りなかった。そして気がつけば、ライブ当日になっていた。やり残した事は、まだあるが出来る限りの準備はやったつもりだった。後は自分達の力を100%出し切るだけだ。泣いても笑っても幕は開いた。まずはメリーのエネルギッシュなステージで始まった。客席は始まったばかりなのに、もう総立ちになっていた。今更ながらメリーの歌は凄いエネルギーに満ち溢れていると感じた。本当にメリーはロボットなのかと疑いたくなった。私も思わずメリーの歌に酔ってしまった。こんな風にメリーを楽しめたのは始めてだった。気がつくとメリーの歌に合わせてリズムを取っていた。「マリーさん・・そろそろお願いします。」スタッフが出番を告げてきた。いよいよ私のステージだ。不思議と緊張はしていなかった。軽く深呼吸をして、私はステージへ向かった。自分で言うのも変だが、メリーの歌声と私の歌声が合わさって見事なハーモニーを生んだ。観客の声援が心地よかった。今、ステージに立っている自分に感動していた。こうして、私とメリーのステージは、あっという間に過ぎていった。そしてラストナンバーになった。ラストは、メリーと私のディオでバラードを歌う事になっていた。ステージの袖で私とメリーが出待ちをしていた。そこで私は菜緒子を呼んだ。そして「私の歌声の補完をさせる装置を止めてくれる。」と菜緒子に頼んだ。「え?!」菜緒子は私の言った事に吃驚していた。「最後は本当の私の声で歌いたいの。」私は機械で作られた声じゃなく、本当の自分の声で歌いたくなっていた。望む望まないに関わらず、今の私の声はこうなのだから・・・・そんな自分を否定したくなかった。もう・・自分の状況から逃げるのはやめようと思っていた。菜緒子はそんな気持ちを理解してくれたかどうか分からないが「わかったわ。」と一言言って、メリーの発声装置停止させてくれた。そしてラストナンバーを歌う為にメリーと一緒にステージに向かった。ステージの真ん中に立つと、さっきとは違って凄く緊張していた。私はマイクを強く握って「今日はメリー&マリーのライブに来てくれてありがとう!!」そう言った。その声は普段の、かすれた声だった。客席からざわめきが聞こえた。「ごめんなさい。さっきまでの歌声は偽者なの。 私は事故にあって手術の影響で声が出なくなりました。」さらにざわめきが多くなってきた。「ショックだったし自暴自棄にもなりました。 だって大好きな歌が歌えなくなったんだから・・・・ で・・私は私の身代わりにメリーを歌わせました。」今度は逆に客席は静まり返った。私は軽く息を吸って「メリーのステージを見続けていて、私は歌を歌いたかった。 でもこんな声だから無理だとあきらめてました。 そんな私に親友は魔法をかけてくれました。 また元の歌声で歌える魔法を・・・・ありがとう!菜緒子・・・」私はステージの袖に居る菜緒子に向かって言った。菜緒子は少し照れたようだった。「そしてメリーもありがとう!!」そうメリーに言った。しかしメリーは何の反応も示さなかった。「でも・・・魔法は必ず解けてしまうもの。 もう魔法は解けて元の声に戻ってしまいました。 だけど、私は良かったと思ってる。 だって私は今の自分も大好きだから!だから今の私のこの声も好き。 こんな声ですけど、本当の今の私の歌を聴いてください!!」私は客席に向かって頭を下げた。するとバンドが演奏を始めてくれた。菜緒子に感謝し、あの女の子に感謝し、そしてメリーに感謝しながらその気持ちを込めて精一杯歌を歌いました。歌い終わると観客が静まり返っていた。やっぱり・・・こんな声じゃ・・・そう思いかけた瞬間、もの凄い拍手が沸き起こりました。スタンディングオベーションが起きた。私とメリーはその歓声に包まれていた。「良かった!!」「頑張って!!」色んな声援が聞こえてきた。私はこんなにも素晴らしいファンに恵まれていたのかと改めて感じて涙がこぼれてきた。メリーを見ると、彼女も感動しているような気がした。そんな事菜緒子に言ったらバカにされそうだが、そう私は感じた。「メリーやったね!!」そう言ってメリーを抱きしめた。するとメリーは私の方へ倒れてきた。やばっ・・・バッテリー切れだ・・・私は慌ててメリーを抱えてステージを降りた。それから私は・・・と言うか私たちは引っ張りダコになってしまった。結局、私は最後のステージだと思っていたのに、私の歌を希望するファンが殺到した。メリー&マリーのステージをまたやって欲しいと言う要望が多すぎて、やめるにやめられなくなってしまった。もうグダグダと考えることをやめて素直な気持ちで歌を歌っていこうと決めた。そして私たちはステージの準備に追われる日々を過ごすことになった。 Fin
2006.09.08
近すぎて菜緒子の凄さがわからなかった。ある意味天才だと私は思った。なぜなら、菜緒子は見事に私の声の再生に成功させた。ソロで歌うことは出来ないが、メリーとのデュオする事により私の歌声が蘇ることが出来た。メリーの発声装置を改良し、メリー自身の歌声と私の声を補完する音声を同時に発声出来るようにした。今度のステージはメリーをメインで合間に私とメリーのデュオを入れる事にした。そうする事で、少しでもメリーの負担を軽くしようと考えた。そのリハーサルでバタバタしていた。そんな中、菜緒子が不意に「ごめんなさいね・・・」と、すまなそうに言った。「何で謝るのよ・・・ここまで出来たら凄いわよ!」私は本当に感謝していた。まさか本当にステージに立てるようになるとは思わなかった。「だけど・・・」「いいのよ!それよりこんな事は今回限りにするわ。」「え?!」そう・・・私はステージに立つのは今回で最後と考えていた。そして私の身代わりとかじゃなく、メリーを本当の歌姫にしたくなった。本気でプロデューサーの仕事がやりたくなったのだ。どんな形であれ、音楽の仕事が出来るだけで幸せだと思えるようになった。そのケジメとして今回のステージに立つのだと自分で考えていた。「本気でメリーを歌姫にするわ!」「それで良いの?」菜緒子が聞いてきた。「なんで?私の歌に対する想いはメリーが受け継ぐのよ。素晴らしいじゃない」菜緒子は私の顔をじっと見つめて「そう・・あなたがそう決めたのなら私は何も言わないわ。」「菜緒子・・・ありがとうね。」そう言うと菜緒子は少し照れたようだった。しかし、私は本当に感謝していた。何度、感謝の言葉を言っても足りないと思っていた。「スイマセン・・・リハお願いできますか?」スタッフの男の子が声をかけてきた。「わかったわ!今行くね!」そう言って私はステージに向かった。菜緒子はそんな私を嬉しそうに見つめていた。リハーサルはかなり熱が入ってしまった。気がつけばメリーのバッテリーが切れかかっていた。慌てて私は今日のリハーサルを終了させて、メリーを連れて控え室に向かった。菜緒子は控え室で待機していて、すぐにメリーのメンテを始めた。正直、私もかなりバテバテだった。そんな時トントン!ドアーがノックされた。菜緒子は急いでメリーは奥部屋に移した。「どうぞ!」と私は返事をした。ドアーが開くとスタッフの男の子だった。「どうしたの?」私が聞くと、男の子の後ろに誰か立っていた。「すみません。彼女、友達なんですけど、どうしてもプロデューサーに 謝りたいって言うもんで。 自分が聞くって言っても、どうしても直接会いたいってきかないもんで・・」見ると、いつかの女の子だった。「いいわ。ありがとうね。」そう言って女の子を部屋に招きいれた。女の子はか細い声で「あのぉ・・・この間は無神経な事言ってごめんなさい・・」と言って深々と頭を下げた。彼女は彼女なりにこの間の事を気にしていたようだ。「良いのよ・・・気にしてないから。」私はそう言った。「本当にごめんなさい・・・」そう言っても女の子はまだ頭を下げてままだった。「頭を上げて。本当に気にしてないから。それよりもマリーのファンってのは本当なの?」私は、女の子があんまり恐縮しているのでちょっと意地悪な事を言ってみた。「本当です!!マリーさんの歌で私いっぱい元気もらいました。」女の子は必死に答えていた。「でも・・今はメリーのファンなんでしょ?」更に意地悪な事を言った。「それは・・・・」彼女は言葉に詰まってしまった。あまりにも困っているので「冗談よ!ごめんなさいね意地悪して。」「いえ。でも本当にマリーさんの歌、大好きです。 たぶん、メリーさんを好きなのは、なんかマリーさんの歌に似てるんですよね。」「そう・・・全然曲調とか違うと思うけど・・・・」「そう言うことじゃなく・・・なんて言うか・・・ハートが・・・・」私は、そう言われて嬉しくなった。「ありがとう。」そして思わずそう言ってしまった。「そんなお礼なんて・・・・」女の子は照れていた。「でもガッカリしたんじゃない?マリーはこんな声になっちゃったしね。」「そんな事ありません!私、今もマリーさんの歌が聞きたいです。」女の子は真剣に言った。「でも・・・昔みたいな歌声は出ないわよ。」「関係ありません。声がどうだろうとマリーさんの歌が好きなんです!」「・・・・」「ごめんなさい・・・私また気に障ること言いました?」私が黙っているので女の子は怒ったのだと勘違いしてしまった。私は目頭が熱くなっていた。声を出すと涙がこぼれそうだった。こんなに私の歌を好きでいてくれたファンが居たなんて・・・言葉を出すことが出来なくなった。「結構・・・涙もろいのよ・・・」奥から菜緒子が助け舟を出してくれた。「マリーの友人としてお礼を言うわ。ありがとうね。今度のメリーのステージ見に来て。 もしかしたらマリーに逢えるかもよ。」菜緒子はそう言って、女の子にウィンクをした。「え?!あっはい・・・・」女の子は意味を理解したようだった。「それじゃ、これあげるわね。」そう言って菜緒子はライブのチケットを彼女に渡した。「ありがとうございます。絶対に行きます!!それでは失礼します。」そう言って部屋を出て行った。「ありがたいね・・・ファンって・・・」私はつぶやいた。「そうよ!言ったでしょあなたの復活を望んでる人が居るって・・・」「うん。今度のステージは絶対に成功させるわ!!」そして、私は今度のステージである事をやろうと密かに考えていた。本当のマリーを復活させるために・・・・
2006.09.07
それから、何事も無く日々が過ぎていった。私はと言えば、次のステージの準備に追われていた。あれから菜緒子とは会っていなかった。私も、もう一度ステージに立ってみたいとは思う。だけど・・・やはり立つ自信はなかった。そんな事は夢物語だ。とにかく次のステージはメリーに負担をかけないような演出にしようと頭を悩ませていた。今までが、かなり激しいステージだっただけに今更しっとりしたステージには出来ないし、かと言ってステージの時間を短縮する訳にもいかない。完全に煮詰まっていた。菜緒子に相談したかった。しかし、あれから菜緒子と連絡が取れなかった。その日の夜、菜緒子の家を訪ねた。呼び鈴を鳴らしたが反応が無かった。留守なのだろうか・・・??しかし、中から音楽がかすかに聞こえていた。「菜緒子!!居るんでしょ?私よ!開けて!!」私は叫んでみた。そして、ドアーのノブに手をかけた。するとドアーが開いた。どうやらドアーには鍵がかかっていなかったようだ。「無用心ねぇ・・・・」そうつぶやきながら私は部屋の中に入った。中に入ると菜緒子はTVモニターを見ながらキーボードを叩いていた。私が入ってきた事に気づいていないようだった。「何やってのよ!!電話にも出ないで・・・心配したわよ!」そう言うと、やっと気づいたように「あぁ・・・来てたんだ・・・」「来てたんだじゃないわよ!!」そこで初めて私はTVモニターには昔の私のライブが流れていた事に気づいた。「何でこんなモノ見てるのよ!?」そう言うと菜緒子は「あなたがステージに立つための準備・・・」と言った。「まだそんな事言ってるの!無理に決まってるじゃない!!」私は少し腹が立ってきた。「そんな事より今度のメリーのステージの・・・」そう言いかけた私に菜緒子はマイクを向けて「歌って。」唐突に言われたので思わず言葉が詰まってしまった。「データ取るから歌って。」また菜緒子が言った。「だから無理だって言ってるでしょ!!何度言えばわかるの!!」あまりのしつこさに思わず怒鳴ってしまった。「無理じゃなかったら歌ってくれるの・・・」と菜緒子は思わせぶりな言い方をした。何を根拠にそんなこと言い出すのか理解が出来なかった。「これから言うことを聞いてから答え出しても遅くないと思うわよ。」「どういう事?」私が聞くと「あなたの声が出ないのは声帯がうまく機能してないからよね?」「そうよ!」何を今更言うのかと思った。「その為に、元々あった声が出なくなったのよね?」「・・・・」相槌を打つ気にもならなかった。「何で元の声と変わったのかしら?それを考えたら一つの答えを導き出したの。」菜緒子が何を言いたいのか、まだわからなかった。「つまり、声帯が機能しないために出なくなった音の波長を機械で発生させて合成させれば 元の声・・・それが無理でも近い声を再生させようと思って。」「そんな事・・・できるの?」元の声が出せるようになる・・・・まさか・・・そんな夢みたいな事出来る訳ない・・・そう思いながら、期待している自分が居た。「わからないわ。でもやってみる価値はあるんじゃない。」「でも・・・」「あぁじれったいなぁ!歌いたいの歌いたくないの!?どっち?」菜緒子が聞いてきた。私は歌いたいのかしら??その答えは、すでに出ていた。そして私は決心した。「歌いたい!!」「よし!決まり。それじゃデータ取りに協力して。」そう言って菜緒子は私にマイクを渡した。本当に再びステージに立てるのかどうか分からないが、でも歌いたい!って気持ちは固まった。とにかく菜緒子に任せる事にした。しばらく菜緒子の家に泊まり込みをする事にした。もしかしてステージにまた立てるかもしれないと言う夢を見ながら・・・・
2006.09.05
部屋に戻ってメリーの充電を済ませて一息ついた。あの女の子に会ったおかげで、またグダグダと考え始めてしまった。私はメリーに嫉妬しているのだろうか?歌を歌いたいのだろうか?何気なく見た視線の先にマイクが置いてあった。私は近づき思わず手にとってみた。「いよいよマリーの復活?!」不意に後ろから声がした。振り返るとドアーの前に菜緒子が立っていた。「菜緒子・・・」「勝手に上がってきたわよ。」菜緒子は少し酔っているようだった。「また歌えば良いじゃない。」菜緒子が言った。「無理よ・・・こんな声だし・・・・」そう言うと「何言ってるのよ。歌はハートよ!!」そう言って菜緒子は親指で自分の心臓を指差した。「歌えないんじゃなくて、あなたは歌わないよの!! 本当は歌いたいんじゃないの? だからメリーに自分の身代わりさせてるんでしょ。 どんな声だって良いじゃない、その歌いたい気持ちをぶつければ。」「そんな事言ったって・・・・」「少なくともここに一人マリーの復活を望んでる人間がいるのよ!」「菜緒子・・・・」「今度のメリーのライブに、あなた出なさいよ!!」「え?!」あまりの突飛な話しに私は吃驚した。「だけど・・・」「はっきり言うわね。メリーはもうかなりガタガタよ。 だから、たぶん今度のライブは二時間持たないわ。」「それなら、新しい・・・」そう言いかけて「だから、歌姫メリーはこの子だけなのよ!! 例えメリーがロボットだとしても、この子の身代わりなんて世界中どこにも居ないの!! だって、あなたの思いを込めたから歌姫メリーは生まれたの。 あなたの分身じゃないの?メリーは・・・・ だからメリーの歌にみんな感動してるんじゃないの? 単なる音楽データなの?メリーの歌は・・・」そう言われて私は初めてメリーが特別な存在だと気づいた。確かにそうだ・・・私はメリーに私の思いをすべて継ぎこんだ。良い事も悪い事も・・・・メリーはマリーの分身だ。だから愛しているし憎らしくもある。「そうね。メリーはメリー・・・身代わりは居ないのね・・・」「そうよ!」「本当にもう治せないの?」私は菜緒子に聞いた。菜緒子は静かにうなずいた。「そう・・・」「だから・・・分身じゃなくて、あなたがステージに立つのよ!」菜緒子はそう言うが、あの頃のように歌える自信は無かった。「やっぱり無理よ・・・歌えない・・・」「すぐに答えを出す必要は無いわ。まだ次のステージまで時間があるから・・・」そんな事言っても無理なものは無理よ!反論しようとする私を無視して「それじゃ私・・・帰るわ。じゃぁね!!」そう言って菜緒子は部屋を出て行った。まったく・・・・そう思いながらどこかで自分がステージに立っている姿を想像していた。私とメリーのセッション・・・そして気がつくと私はマイクを握っていた。
2006.08.30
ライブに来ているお客さんは誰一人メリーがロボットだとは気づいていなかった。「今日のライブも大成功ですね!」後ろからスタッフが声をかけてきた。「そうね。」私はかすれた声で言った。そう、私の声はハスキーと言うのを通り越して、かすれた声しか出せなくなっていた。手術の影響で声帯自体が麻痺してしまい、私の声は声帯から発しているのではなく吐く息で無理やり声にしているのだ。だからもう歌は歌えなかった。私はメリーに私が出来なかったことをやらせる為に歌を教えたのだろうか??メリーのステージを見ながら、頭の中でいつものエンドレスな問答を始めた。盛大な拍手で我に戻った。どうやらラストナンバーが終わったらしい。ステージの幕が降りた。私は慌ててメリーに近づき、抱えて控え室に戻った。メリーのバッテリーが切れかかっていた。2時間のステージがメリーにとってはギリギリ活動できる時間だった。普通に動いている分には、余裕で4,5時間は稼動できるのだが、ステージではかなり激しいダンスをやらせている為にバッテリーの消費が激しいのだ。控え室に戻ると、菜緒子が待っていた。彼女はメリーのメカニックだった。菜緒子とは昔からの友人だ。そして私が歌を歌っていた頃は私の大事なファンだった。偶然に菜緒子がロボットに詳しいと知れ、このスタッフに迎え入れた。彼女のメンテがなければ歌姫メリーは存在できなかっただろう。「あらら・・・また随分と無茶してくれたわね。」菜緒子が言った。「どこか壊れたの?」私は聞いた。「大丈夫!ちょっとモータが燃えかかっているだけ・・・」そう言いながら菜緒子は作業を始めていた。「モーターが燃える?!大丈夫なの??」私が心配そうに聞くと「ロボットには良くあることよ」と菜緒子は平然と答えた。そしてしばらくすると「よし!これでOK!!」そう言ってメリーの服を調えた。それから菜緒子は椅子に座り缶コーヒーを飲んだ。「で・・・いつまでこんな茶番続ける気?」菜緒子は不意に言った。「え?!」「だから・・・メリーにいつまでこんな事やらせるのかって事・・・」「いつまでって・・・」私は答えに困った。「まだ大丈夫だけど。こんな無理させてたら、そのうちメリー壊れるよ。」「その時は新しいロボット買うよ。」そう言うと同時に菜緒子は怒鳴った。「あんた!!メリーをそんな風に思ってるの!」「え?!」私には菜緒子が何を怒ってるのか分からなかった。菜緒子はそんな私に何か言いかけてやめた。「もういいわ・・・私は帰る。」そう言って部屋を出て行った。私は何がなんだか分からなかった。仕方なく帰り支度をしているとトントン!!ノックされた。私は立ち上がりドアーを開けた。ドアーの前には、高校生くらいの女の子が立っていた。「なにか?」私が聞くと、その女の子は、か細い声で「あの・・・わたし・・・メリーさんのファンでして・・・・」とやっと言った。「ありがとう!でもメリーは今ステージが終わったばかりで休んでるのゴメンナサイネ。」そう私が言うと女の子は「すみません・・・」と本当に申し訳なさそうに言った。「それじゃ、またライブに来てね。」そう言ってドアーを閉めようとすると、女の子は「あのぉ・・・」そう言ったので「なに?」と聞いた。「もしかしてマリーさんじゃありませんか?」私は固まってしまった。マリー・・・それは私のステージの名前。「あぁやっぱりマリーさんだ。私、大ファンだったんです。」私は触れられたくない過去に触れられた気がして「いえ・・・人違いです。それじゃごめんなさいね!!」そう言ってドアーを閉めた。なんだか今日は最悪な日になったようだ。
2006.08.29
今夜もステージは満席だった。歌姫メリーの人気は絶頂だった。私は、その歌姫のマネージャー。いつものようにステージの袖で彼女を見守っていた。彼女の歌に観客達は熱狂していた。約二時間のステージがあっという間の過ぎていき、ラストナンバーになった。ここでいつもバラード。今までのステージが嘘のように静まり返って、皆メリーの歌声に陶酔した。中には泣いているファンも居た。そんなメリーを嬉しく見つめている自分と嫉妬している自分が居た。いつもそうだ。私はメリーを愛しているし憎んでもいる。なぜ・・・・??それは彼女の歌が素晴らし過ぎるからだ。メリーを育てたのは自分だ。初めは、ほんの気まぐれからメリーに歌を教えたのだった。もの覚えの良いメリーはドンドン覚えていき、やがて私が出来なかった事さえ出来るようになった。冗談でインターネット上で彼女の歌を公開してみた。すると口コミでメリーの歌は広まり、やがてライブを開催する事になった。私も面白がってメリーの演出をやり、始めてのライブは大盛況だった。更に人気が高まり、ライブ希望のメールが殺到した。要望どおりライブを開催し、メリーの人気は更に跳ね上がった。こうして歌姫と祭り上げられ、メリーのファン増えていった。今では、CDを出さないかという話しまで出てきた。しかし、メリーと私には大きな秘密があった。それはメリーはロボットだった。少し前、私はマイナーではあったがそれなりにファンもいた歌手だった。ライブの誘いも結構あり歌には自信があった。だけど・・・そんなある日、交通事故に逢い大怪我をしてしまった。命は助かったが、手術の影響で声が出なくなってしまった。あまりのショックに家に引きこもり、家族ともろくに口もきかなかった。誰にも会いたくなかった。そんな私を心配してロボットなら大丈夫だろうと思い私の世話をさせるためにメリーを購入した。はじめはメリーに悪態つき、散々酷い事をした。人間ならとっくに愛想つかしていただろう。しかしメリーはロボットだった。どんなに酷いことをしても、メリーは忠実に仕事をこなすだけだった。そんなメリーになぜ歌を教える気になったのか・・・・未だにその訳は分からなかった。とにかく歌姫メリーの人気は衰えることが無かった。
2006.08.28
なんだかドタバタ状態で話しが進んでしまって、自分でも吃驚でした。はじめはカントリーロボット話しにするつもりだったんですが田中と言う悪役(?)の出現に、ちょっぴりアクション風になりました。でもこの社長と守君のコンビの話しはまた書いてみたいですね。軍事に利用する人達を悪役にする気は無いのですがやはり自分もロボットを兵器にするのには抵抗がありますね。と言いつつ今、格闘競技に出場するロボットを造ってるんだから矛盾してますね・・・・(汗)8月25日に「かわさきロボット競技」に出場するのでそのロボットを今造ってるので今週中は次の話しは書けそうに無いです。書きたいイメージはフツフツとわいて来てるんですが・・・・(笑い)久蔵のイメージは、この「かわさきロボット競技」用のロボットなんです。
2006.08.19
「社長・・・大丈夫なの?」守君は心配そうに聞きました。久蔵に乗り込んだ社長と守君は田中達に追いつくために道無き道を滑り降りていきました。何度もバランスを崩す久蔵に守君はハラハラしていました。守君の質問に答える余裕も無く真剣な表情で社長は久蔵を動かしていました。守君も覚悟を決めて、しっかりとシートにしがみついていました。やがて、林を抜けて道路に飛び出ると目の前を田中達の車が見えました。「よし!追いついた。」社長が言いました。そして「守君、そこのレバー引いてアンカーの発射準備してくれる?」と言いました。守君は言うとおりレバーを引くと目の前のモニターに照準が表示されました。「後ろのトランク狙ってアンカーを打ち込んで。」「了解!」守君は標準を田中達の車に合わせて発射のボタンを押しました。バシュ!!空気圧で飛ばされたアンカーは見事に後ろのトランクに食い込みました。「守君、踏ん張って!!」社長は、そう言うと同時に久蔵を急停車させました。アンカーを打ち込まれた車も急停車し、シートベルとしていなかった田中達はフロントガラスに思い切りぶつかって気を失いました。「やったぁ!!」守君が言いました。久蔵を田中達の車に近づけて、逃げられないようにしっかりと掴みました。しばらくして遠くの方からパトカーのサイレンが聞こえてきました。「後は警察にまかせよう。」社長が作業場を出る時に警察に連絡を入れておいたのでした。「ミッション終了!・・・だね。」守君がニコニコして言いました。「とにかく君が無事で良かった・・・」社長も笑顔で言いました。やがて到着した警官達に田中達は連行されました。一応、社長と守君も事情聴取の為、久蔵に乗って一緒に警察署について行きました。その後また、久蔵の事がマスコミに取り上げられましたがやはり社長は一切の取材を拒否しました。マスコミだけではなく色々な企業から久蔵の問い合わせが来ました。社長は、その一つ一つの問い合わせに対して慎重に対応して、今回みたいな事が二度と起きないように気をつけていました。そして、ある企業が社長の技術力を評価して、ぜひとも自分の企業と共同研究をしてレスキューロボットの開発、製造して欲しいと言う話しがきました。社長も自分なりに色々と調べましたが、本当にレスキューロボットの開発を検討している企業だと分かり、その話しを受ける事にしました。一週間ほど社長はその為の打ち合わせに東京に行ってしまいました。守君は社長の居ない作業場に来ていました。守君なりに今回の話しが良い話しだって理解してました。そして・・・たぶん社長はここから出て行くだろうと思っていました。こんな田舎に居るよりは東京で研究した方が良いに決まっていると・・・守君は久蔵に乗り込んでシートに座ると涙がこぼれてきました。どうしても涙を止める事は出来ませんでした。一週間して社長は戻ってきました。そして作業場の整理を始めました。守君はいつものように作業場にやってきました。「こんにちわぁ!!」守君は元気に挨拶しました。そうしないとまた涙がこぼれそうになりました。作業場を整理している社長を見て、やはり出て行くのだと思いました。「やぁ・・・守君・・・」社長は相変わらず暢気に言いました。「社長・・・やっぱり出て行くの?」守君は恐る恐る聞いた。「出て行く?どこへ??」「だって・・・東京へ行くんでしょ。だから片付けやってるでしょ。」「あぁ、大丈夫。僕は出て行かないよ。」「え?!本当に?」「研究はここで続ける事を条件に今回の話しを決めたんだ。そのかわり・・」「そのかわり?」「その会社から一人研究員が来るのが向こうの条件なんだ。」「そっか・・・良かった!!」「なんだい、僕が出て行くと思ったのか?」「だって・・・その方が・・・こんな田舎に居るより・・・・」「僕はここが好きなんだよ!!そして久蔵の故郷なんだよ!!」「そっか!!社長、僕も勉強してロボット学者になる!!」「それじゃ、守君が僕の後を継いでくれるまでは出て行かないよ!!」「ほんと!?約束だよ!!」「もちろんさ。」こうして社長の会社はこの村に残る事になりました。この後の社長は言うと、相変わらず農機具の修理と簡単な案山子ロボットなんかを作り、その合間に新しい久蔵の開発をしていました。「社長。今度の新しい久蔵は二足歩行ロボットにしてね。」守君も相変わらず作業場に遊びに来ていました。そんなのんびりした状況に、出向してきた研究員はイライラしていました。さてさて、新しい久蔵はいつ完成するのでしょうか?それはまたの機会に・・・ Fin
2006.08.14
その晩、社長の処に守君の家族からまだ帰ってこないと連絡が入りました。すぐに社長は民宿に向かいました。民宿の主人も卓也君の家族もずいぶん前に帰ったと言いました。そんな騒ぎに奥から田中が出て来ました。「社長さん、どうかしました?」田中が聞きました。「すみませんお騒がせして。守君が帰ってないというもので・・・」「それは大変ですね。もしお手伝いできる事がありましたら言って下さいね。」「ありがとうございます。」田中は自分の部屋に戻りました。駐在さんも来て捜査を始めましたが手がかりがつかめず、夜が明けると同時に消防団に山を捜索してもらう事にしました。次の朝早く、消防団は山狩りを始めました。社長も気にはなりましたが、打ち合わせがあるので仕方なく作業場で田中たちを待ちました。田中達と久蔵の仕様について打ち合わせをしていくうちに、社長は違和感を覚えました。田中達が重要視するモノが、どう考えても災害救助に必要無い部分だったからです。話しを続けていくうちに社長は、彼らが久蔵に何を求めているのか見えてきました。それは久蔵を兵器として使いたがっていると言う結論でした。どうやら田中達にだまされたようでした。久蔵を兵器なんかに使われたくない!そう思った社長は「田中さん・・・すみません・・・この話し無かった事にしてもらえませんか。」とこの話しを断りました。突然の社長の発言に田中は戸惑った。「どうしたと言うんですか?お金でしたら御要望の金額をお支払いいたしますから。」「いえ・・・そう事ではなく・・・なんか気乗りしないもので・・・」「そんな・・・」田中は困った顔をしました。「勝手言ってすみません。」社長は深々と頭を下げた。そんな姿に田中とマイクは顔を見合わせて「頭を上げて下さい。分かりましたから。」社長はホッとして「本当に申し訳ありません。」また社長は頭を下げた。すると突然田中が話し始めました。「守君・・・見つかると良いですね・・・・」そう言って田中はタバコに火をつけました。なぜ急に守君の話しをするのか社長は理解できませんでした。「私達なら守君を見つけること出来るかも知れませんよ。」田中は笑顔でそう言った。その言葉の意味を社長すぐに理解しました。「まさか・・・あなた達が・・・」「どうします?あなたの返事ひとつで守君が見つかるかもしれませんよ。」社長に選択の余地はありませんでした。「分かりました。設計図、資料はすべて渡します。だから守君の安全は約束してくれ。」「今あるあの機体もだ・・・」田中は言った。社長は久蔵の起動キーを見せました。「それで守君は何処に居る?」社長は聞きました。田中は外に止めてある車を指差しました。「あんな処に・・・・」社長は田中達に怒りを覚えました。「守君の姿を見せてくれ。そうしたらこれを渡すから!!」社長は言った。「いいだろう・・・」田中はマイクに指示をしました。マイクは車のトランクを開けて中から守君を出しました。猿轡をされロープで縛られた守君を担いで戻ってきました。「さぁその起動キーをこちらに渡してもらおう。」田中は言いました。「守君と交換だ。」社長も負けずに言いました。「分かった。交換だ。」田中は仕方なく言い、そしてマイクに指示しました。マイクは守君を降ろし、猿轡とロープを外しました。「社長・・・」守君はか細い声を出しました。かなり衰弱していました。「守君・・・もう大丈夫だからね。」社長は笑顔で言いました。守君はゆっくりとこちらに歩いてきました。社長もゆっくりと近づき、久蔵の起動キーを高く放りあげました。田中とマイクが起動ーキーの方を向いた瞬間「守君!ふせて!!」社長は叫びました。そして手に持っていたリモコンのスイッチを入れました。すると、作業場にあった案山子ロボットが動き出し、田中とマイクの方を向いてトリモチを発射しました。立っていた田中達が案山子ロボットのセンサーに反応して狙われてしまいました。突然の攻撃にビックリして二人は慌てて表に出ました。更に社長は別のスイッチを入れると外に立っていた案山子ロボットのサイレンが鳴り始めました。田中達は仕方なく車に乗り込み、逃げていきました。社長は守君に駆け寄り声をかけました。「大丈夫かい?」「あいつら悪い奴だよ。久蔵を兵器にする気なんだ。」「わかってるよ。それじゃ悪人退治にいくかい?」「え?」「スーパーロボットは悪い奴らをやっつけるんだろ?」社長が笑顔で言いました。守君も笑顔で「もちろん!久蔵出動だぁ!!」と叫びました。
2006.08.12
卓也君のおばあちゃんは一週間ほどで退院しました。幸い、柱と柱の間の隙間に居た為に大きな怪我もありませんでした。ただ、あのまま閉じ込められていていたら間違いなく凍死していたと医者が言いました。この久蔵の活躍が新聞の地方版に載りました。それを見たTV局が取材を申し込んできました。守君は久蔵がTVに出れると思い大喜びしていました。ところが社長はTV局の取材を断ってしまいました。守君はなんで取材を断ったのか理解できませんでした。そして社長に聞きました。「社長、なんで?TVの取材断ったの??」ところが社長は「あはは・・・」と笑ってごましました。守君は納得が出来ませんでしたが、それ以上聞くことも出来ませんでした。それからしばらくして1通のメールが社長の元に届きました。そのメールには、自分達は海外の戦地で救助活動をおこなっているNPO団体で今回の久蔵の活躍を知り、ぜひとも自分たちにも久蔵を作って欲しいとの事でした。もし良かったら会って話しがしたいと書いてありました。社長は久蔵が人の役に立てる事を喜んでいました。すぐにメールの返事を出しました。そして一週間後に会う約束をしました。それからの一週間、社長は更にもっと久蔵の性能を高めようと研究を続けました。守君も社長の手伝いをしました。久蔵が海外で活躍している姿を思い浮かべ嬉しくなってました。「守君・・僕は嬉しいよ・・・僕の作ったロボットが人の役に立てるなんて・・・」「社長、僕もだよ!!」二人は楽しそうに作業をやっていました。一週間後、作業場にその人達はやってきました。一人は外人で金髪の白人でした。守君もそうですが、村の人達もはじめて見る外人に興味津々でした。作業場には気がつけば人だかりが出来ていました。もう一人は小柄な日本人でした。作業場に入ると、小柄な日本人が自己紹介を始めました。「始めまして。私は田中と言います。彼はマイクです。」そう言うとマイクは「ハジメマシテ。マイクデス。」片言の日本語を言って握手を求めてきました。「はじめまして。よろしくお願い致します。」社長は嬉しそうに握手しました。田中は、そばに居る守君に気づき「ご子息ですか?」と聞いたので社長は「いえ、私の大事なパートナーです。」と答えました。それを聞いて守君は嬉しくなりました。「守と言います。」そう言ってペコリと頭を下げました。それから社長は久蔵について技術的な話しを始めました。守君は殆ど理解できなかったけれど、この打ち合わせに参加できただけで嬉しかったです。特に社長が自分の事をパートナーと言ってくれた事だけで最高の気分になりました。社長はしばらく説明した後、二人を裏の倉庫に連れて行き久蔵を見せました。久蔵を見てマイクは「スバラシィ!!」と大喜びして写真をバチバチ撮りました。田中も一生懸命にノートに何かを書いていました。やがてかなり時間も経ってしまい、夕方になったので続きは明日にしようと言う事になり、田中が近くのホテルを紹介してくれと言いました。しかし、田舎なのでホテルはふもとまで行かないとありませんでした。卓也君の親戚が民宿やっているので、そこを紹介しました。今、ちょうど卓也君一家もそこにお世話になっていました。守君が田中たちの車に乗って民宿まで道案内しました。民宿は昔の家をそのまま使っているので風格がありました。マイクはまた大喜びで「ワンダフル!!」と言って写真を撮りまくりました。守君は来たついでに卓也君の処へ遊びに行きました。そして今日有った事を熱く語りました。そんな事していたのでかなり遅くなってしまいました。焦った守君は慌てて家に帰ることにしました。民宿の玄関を出ようとすると、公衆電話で田中が電話をかけていました。ここは携帯の電波も届かないので、電話は公衆電話使うしかありませんでした。守君は田中に挨拶しようと近づくと田中の声が聞こえてきました。「そうです、あれは使えますよ!!」田中は、かなり興奮して話していた。たぶん久蔵の事言っているんだろうと守君は嬉しくなりました。余計挨拶したくなりました。「更に武装すれば兵器として欲しがる国はいくらでもあります。」武装・・??兵器・・・??予想外の言葉に守君は止まってしまいました。あいつらおかしい・・・守君は田中達に不信感を抱きました。社長に知らせないと・・・そう思って田中に気づかれないように玄関を出ようとして振り返るとマイクが立っていた。「コンバンワ」ニヤニヤしながら片言の日本語を話していた。「こんばんわ。」何食わぬ顔して、行こうとするとマイクは守君の腕を掴んで「ダメダメ・・・イマノハナシキイタデショ?モウカエレナイヨ・・・」そう言った。守君は、絶体絶命だった。社長助けて・・・心の中で叫ぶのが精一杯だった。
2006.08.12
季節は冬になりました。今年は大雪で、毎日除雪車が出動していました。社長も会社の裏の空き地で久蔵の雪上歩行テストを続けていました。やはり雪道の歩行は難しく、かなり頭を悩ませていました。そんなある日、かなりの雪がふりました。あちこちで雪の被害が発生して、村の消防団は大忙しだった。そんなさなか、守君が大慌てで作業場にやってきた。「社長!!大変だぁ!!」コンピューターのモニターとにらめっこしていた社長はのんびりと返事をした。「やぁ守君・・・どうしたんだい?」「卓也君のうちが雪でつぶれちゃったんだよ。」「それは大変だ・・・すぐに駐在さんに連絡しないと・・・」社長は、そう言って受話器を取ろうとすると「ダメだよ!!僕も駐在さん処へすぐに行ったんだけど居ないんだ。」「そうか・・・今日はあちこちで被害が出てるって言ってたっけ・・・」「卓也君のおばあちゃんが逃げ遅れたんだ。まだ家の中に居るんだよ。 早く助けないと死んじゃうよ・・・」最後のほうは涙声になっていた。社長は意を決したように「よし!!久蔵を出動させるか!!」「え?!」「守君も手伝ってくれるかい?」「もちろん!」守君の顔が明るくなった。社長と守君はヘルメットをかぶって久蔵に乗り込んだ。守君は初めて久蔵に乗ったので少しドキドキしていた。そこでハッと気づいた。「社長・・・そう言えば雪道走行のテストはうまくいったの?」「ん?3回に1回は転ぶよ。」社長は平然と言った。「え?!もしかそいたら転ぶかもしれないの?」守君が言うと社長は笑顔で「だから・・・ヘルメットかぶったんだよ。」と言った。守君は久蔵に乗った事を後悔した。それでも、卓也君のおばあちゃんを助けられるのは久蔵だけなのも間違いないです。だから、怖くても我慢することにしました。30分ほどして卓也君の家の前に着きました。卓也君の家の前では卓也君のお父さんが潰れた家の柱を退けようと奮闘していました。しかし、一人の力ではどうする事も出来ず、柱はビクともしなかった。卓也君とお母さんと一生懸命家の中のおばちゃんに呼びかけていました。と、突然現れた久蔵にみんな吃驚しました。社長はマイクのスイッチを入れて言いました。「今、柱を退かしますから離れて下さい。」社長だと分かり、卓也君家族は少し離れました。社長は守君に「守君・・・そこのスイッチ入れてサーモグラフィーを起動して。」と指示しました。守君は言われたとおりスイッチを入れると目の前のモニターが映りました。「赤が温度が高く、青くなるほど温度が低いから・・・」「おばあちゃんの体温は暖かいから赤い部分を探せば良いんだろ?」社長が説明している途中で、守君はすぐ意味に理解していました。「そう言うこと!」そして、社長は慎重に久蔵を操作して雪と潰れた家の柱を退けました。だいぶ、掘り進みましたが、まだおばあちゃんの姿は見えませんでした。「もしかして・・・」社長は最悪の結果を思い始めていました。守君も必死にサーモグラフィーのモニターを見ていました。すると・・・「あっ!赤い反応あった。」守君が叫びました。だいぶ体温が奪われているようですが、それでもまだ赤い部分がありました。「早く!!おばあちゃんを助けてあげて!!」社長は更に慎重に操作して、おばあちゃんを避けるように周りを掘り進みました。やがて、おばあちゃんの着物らしきものが見えてきました。それが見えると同時に、卓也君のお父さんがおばあちゃんに駆けよりました。社長は、また別のスイッチを入れました。すると、久蔵の胸の辺りからカプセル状のモノが出てきました。社長は、またマイクもスイッチを入れて「おばあちゃんをすぐその中に入れてください。」と言いました。卓也君のお父さんは言われたとおり、おばあちゃんをカプセルに入れました。また社長は別なスイッチを入れました。するとカプセルの温度が上がり、おばあちゃんの身体を温めて、凍傷の応急処置をとりあえずおこないました。そしてすぐに救急車を呼びました。しかし、やはり大雪ですぐには来れないとの返事に、仕方なく久蔵でふもとの病院に運ぶことにしました。幸い雪道で転ぶことも無く久蔵は無事おばあちゃんを病院に連れて行けました。久蔵の出現に病院のスタッフは吃驚しましたが、すぐにおばあちゃんの受け入れをしました。とりあえず久蔵の活躍で、おばあちゃんの救出ミッションは終了しました。守君は、久蔵の事を少し見直しました。
2006.08.10
すでに次の話しが始まってしまってますが、今更ながらあとがき書きます。全然、星新一先生の世界とはまったく関係無いモノになってしまいました。人とロボットの物語って話しを書こうって思った時に頭に浮かんだイメージがボッコちゃんだったんです。それほど、この話しについて思い入れは無かったのですがなんか頭から離れず、ボッコちゃんからみの話しを書きたいって思いました。ただ、いつもの事ながら書き始めるとキャラクター達が勝手に暴走しましてこんな話しになるとは思いもよりませんでした。クールビューティーなんか初めは思いつきもしませんでした。彼女は突然生まれたキャラクターですね・・・・それでは、おらが村のスーパーロボットをお楽しみ下さい。この話しもこの後社長と守君が何をしでかすか全然分かりません(笑い)
2006.08.10
しばらくすると、社長が作業場に戻ってきました。「社長、どうせ作るならスーパーロボット作ってよぉ!」守君は社長に言いました。「スーパーロボット?二足歩行ロボットかい?」「そうそう・・・格好良い奴。」「それじゃ聞くけど、巨大な二足歩行ロボットに守君なら何をさせる?「もちろん!悪い奴をやっつけるのさ!!」守君はすぐに答えました。「でも・・悪い奴ってどこにいるの?」社長は、ちょっと意地悪な質問をしました。「それは・・・」守君はちょっと答えに詰まってしまいました。「せっかく作ったロボットだもの、何か役に立つロボットにしないとね。」「それじゃ・・・久蔵は何の役に立つの?」守君は少しすねた感じで聞きました。「だから・・・救助ロボットだって言ったでしょ。」「何を救助するのさ?」守君は聞いた。「例えば地震とか土砂崩れとかの災害の現場の復旧作業に使おうと思ってね。」「でも・・それならショベルカーとかでも良いじゃない・・・」「もう少し研究を重ねて、センサーとか取り付けて瓦礫の下に埋まった人を 見つけられるようにしたり、人が行けないような現場には遠隔操作で 動かせるようにしたり・・・まぁ色々と研究中さ。」「でも・・・やっぱり巨大ロボットは人型だよ!!」まだ守君は納得できないようでした。もっとも社長もいずれはロボットアニメに出てくるような巨大ロボットを作って操縦したいって思っているのだから、守君のそんな気持ちを攻めることは出来ませんでした。「まぁ・・・最終的には人型作ろうとは思ってるけどね・・・」「ホントに?!その時は僕も乗せてくれる?」「もちろん!!」「わーい!!やった!!」「おいおい・・・まだ出来るかどうかも分からないんだから・・・」「絶対に作れるさ!!」そんな守君の言葉に社長はまんざらでもなかったです。ただ・・社長が完成度の高い救助ロボットを作りたい気持ちも嘘ではなくまずは久蔵をもう少し研究を続けようと思ってました。それからしばらく社長は久蔵の研究に没頭しました。時々、村の人に頼まれて久蔵を使って工事現場を手伝ったり、解体工事を手伝ったりしました。そうやってデータを集めていたのでした。そして更に久蔵は改造されて、足場のかなり悪い場所もスムーズに歩けるような多足歩行タイプになりました。ただ・・・相変わらず守君の評判は悪く「社長・・・あれじゃ久蔵は悪者ロボットだよ!!」と言われました。守君にどう言われ様とも社長じゃ更に久蔵を研究し続けました。そして、ある程度納得のいく救助ロボットにすることが出来ました。
2006.08.10
東北地方の小さな村に、小さなロボット製造メーカーがありました。ある日、ひょっこりやってきた男が設立しました。従業員は無く社長一人の本当に小さな会社でした。ロボット製造メーカと言っても実際には農機具の修理や依頼されて簡単な案山子ロボットを作るのが主な仕事でした。村人たちはロボット作っている会社だとは知らず、便利な修理会社だと思っていました。この社長には夢がありました。それは巨大ロボットを作る事です。会社の裏の倉庫では巨大ロボットを作っていました。今作っているロボットは歩行タイプのロボットではなく、払い下げられたショベルカーを改造して作っているキャタピラ走行ロボットでした。アニメのロボットのように二本足で歩かせるのは現時点では難しかったので、第一段階としてキャタピラタイプのロボットを作ることにしました。この会社に頻繁に遊びに来る子供が居ました。小学5年生の守君でした。ロボットを作っている会社だと、偶然知りワクワクしてやってきました。しかし実際にはTVとかで紹介されているヒューマノイドロボットがある訳でもなく農機具を修理していたり、オモチャみたいな案山子を作っているのにがっかりしました。それでも社長がロボットについての面白い話しをしてくれるので守君は学校が終わると作業場に遊びに来るようになりました。その日も守君は、いつものように学校が終わってから遊びに来ました。「こんにちは!!」元気良く作業場に入りましたが、社長は居ませんでした。守君はしばらく案山子ロボットをイタズラしたりしていましたが、飽きてしまい帰ろうかなと思っていたところ突然裏の倉庫の方から轟音が聞こえてきました。守君は急いで作業場を飛び出し、裏の倉庫に向かいました。轟音は倉庫の中から聞こえてきました。やがて倉庫からキャタピラタイプの巨大ロボットが現れました。そのロボットはキャタピラの上に張りぼての身体をつけたようでした。その身体から出ている腕はショベルカーのアームが改造されたモノでした。守君には、お世辞にも格好良いとは思えませんでした。しかし社長は嬉しそうに操縦していました。「社長!!」守君は社長に声をかけました。しかし、轟音にかき消されて社長は気づきませんでした。「おーい!!社長!!」守君は一生懸命手を振って叫びました。社長は守君に気づき、ロボットのエンジンを切って「やぁ・・・守君。どうだ凄いだろ・・・?」社長は自慢気に言いました。「なんなのこれ??」守君は聞きました。「救助ロボ久蔵壱式だよ。」社長は言った。「きゅうぞういちしき??」守君は、あまりのダサいネーミングに目が点になってしまいました。「社長・・・見た目も名前もダサすぎ・・・」そして本音を思わず言ってしまいました。「そうか・・・格好良いと思うけどな・・・・」守君の評価もそれほど気にしていませんでした。そして「久蔵しまって来るから、作業場で待ってて。」そう言って社長は久蔵壱式を操縦して倉庫へ向かいました。守君は言われたとおり作業場で待っていました。
2006.08.08
奥の部屋に入ると、クールビューティーがあけみに羽交い絞めされて動けなくなっていた。「警告!警告!」あけみがエマジェンシーコールを発していた。「セキュリティーモードが発動したんだな。」彼が冷静に言った。俺は部屋を見回すと金庫が空いていた。クールビューティーの手には今日の売り上げの入った袋があった。「畜生!はなせぇ!!」クールビューティーには似つかわしくない発言だった。用はこれが目的だった訳だ。「どうします?彼女警察に引き渡す?」彼が聞いた。「そうすると・・・あなたの友達も・・・・」俺は言った。彼は少し暗い表情になったが「構わないよ!俺はこんな風にロボットに泥を塗るような事をする奴は友達なんかじゃない!!」「わかりました。」そう言って俺は事務的に110番にかけた。15分ほどして警官がやってきた。そしてクールビューティーは連行されていった。その後クールビューティーの供述から佐々木も捕まったと警察から連絡が入った。余罪が何件かあって警察も捜査していたらしい。逮捕に協力した、あけみに感謝状をと言う話しもあったが低調にお断りした。警察が勝手にあけみの事を武術の心得のある女の子と思ったらしい。それからしばらくして彼が店にやってきた。そして「マスタ・・・僕・・・アメリカに行くよ。」その言葉に無表情になってしまい「そうですか・・・」と言う言葉を言うのが精一杯だった。「究極のヒューマノイドロボットを作ろうと思って。」「・・・」俺は何も言わなかった。「でもひとつ気がついたんだ人間に愛されないロボットは駄目だって・・・・ あけみはマスターにも、ここのみんなにも愛されている。 だから、誰もロボットだって気がつかない。すでにこの店にとって大事な仲間なんだよ。 ロボットとか人間とか関係なく・・・・ そんな人間に愛されるロボットをひとつでも多く作ってみたいって思ったんだ。 それが僕の究極のヒューマノイドロボットかな・・・・」俺は彼の熱い思いに、いつまでも子供じみた考えに囚われた自分が恥ずかしくなった。そして気持ちよく彼を送り出してやろうと思った。「頑張って下さい!私はずっとここに居ます。だから疲れた時はいつでも着て下さい。」「もちろん!絶対にここに戻ってきます。」「待ってますから!!」そして俺は店中に響くくらい大きな声で言った。「今日は大サービスです!!このボトルは私のおごりです。皆さん好きなだけ飲んでください!」俺も彼もそして店に居たお客全員が大騒ぎして飲んだ。常連が、あけみにも飲ませたりしたが、あけみが飲んだ分はまたボトルに戻した。そんなバカ騒ぎの宴は朝まで続いた。俺も途中から記憶が無くなった。目が覚めたとき店中のお客がつぶれていた。その客を見下ろしながら、あけみは「大丈夫ですか?」と声をかけていた。あけみは何を考えてるのかな・・・・??ふと俺はそんな事思った。そして凄く幸せな気分になっていた。このまま静かにゆっくりとあけみと一緒に過ごしていきたいと心底思った。 Fin
2006.08.06
クールビューティーと男は彼の隣の席に座った。「久しぶりだなぁ・・・」佐々木と呼ばれた男が言った。「あぁ・・・」彼はそっけなく答えた。「あぁ俺さぁ・・今これやってるんだ・・・」佐々木は、そう言って彼に名刺を渡した。彼は名刺をチラッと見て、続けたクールビューティーを見た。佐々木は、その視線に気づき「そう・・・これがうちの主力製品。」主力製品?って事はクールビューティーはやはりロボット・・・俺がクールービューティーをマジマジと見つめているのに気づいたらしく「ご挨拶が遅れました・・・わたくしこういう者です。」そう言って佐々木は俺にも名刺を渡した。名刺を見ると 暮らしに役立つロボット製造メーカ 株式会社ダビィンチと書いてあった。「マスターも彼女の凄さはご理解頂けたと思います。」佐々木が言った。「セールスのために彼女をうちの店によこしたのですか?」俺は佐々木に聞いた。「はい!誰もロボットだと気づかれなかったと思いますよ。 どうです?お宅のお店にも1台置いてみては・・・・ 良かったら今からレンタルいたしますので使ってみて下さい。 明日、わたくしが引き取りに着ますので、その時気に入らなければ この話しは無かった事いたします。 それだけ、このロボットに私共は自信を持っています。 きっと気に入って頂けると思いますので・・・ マリア・・・すぐにお手伝いしなさい。」佐々木がクールビューティーに命令した。「分かりました。」そう言ってクールビューティーは立ち上がり「マスター・・・何をいたしましょう?」と聞いてきた。丁度その時、奥のテーブル席から注文が入った。「それじゃ・・奥のテーブル席行って注文をとってきて。」俺は指示した。「わかりました。」そう言ってクールビューティーは奥のテーブルに向かった。「それでは私はこれで失礼します。明日のこの時間にまたお伺いいたします。」そう言って佐々木は席を立った。「佐々木・・・」彼が何か言いかけたが「いや・・・またな・・・」そう言った。佐々木はそのまま出て行った。「やはりクールビューティーはロボットでしたね。」俺が彼に言うと「マスター!頼みがあるんだけど」彼は真剣な顔で言った。彼のあまりの真剣な顔に吃驚しながら「なんですか?」と聞いた。「店が終わった後、あのロボット調べさせてくれないか?」それを聞いて、彼はアメリカに行くための勉強でクールビューティーを調べるのだと俺は気づいた。「別に構いませんけど・・・・」少し不服ではあったが、断る理由が見つからなかった。それから彼は真剣にクールビューティーの動きを見続けていた。クールビューティーはと言えば、かなり手際良く仕事をこなしていた。あけみと比べると月とすっぽんである。あけみは、はっきり言うと仕事は半人前以下だった。ただ・・・不思議なことに初めはクールビューティーに興味津々だった常連たちも時間が経つと共にクールビューティーに興味が無くなっていつものように、あけみを口説き始めた。俺は不思議に思い、それとなく常連に聞いてみると、殆どの常連が「だって完璧すぎてロボットみたいなんだもの・・・」と答えた。確かにロボットなんだけど・・・あけみもロボットなのに・・・とちょっと複雑な気分だった。やがて看板をむかえ、店を閉めた。クールビューティーとあけみに奥の部屋へ行くよう命令し、彼女達に仕事終了だと告げ、電源を落とすように命令した。言われたとおり、彼女たちは部屋の隅に並んだ椅子にそれぞれ腰掛けた。俺はその日の売り上げを手早く整理し金庫にしまった。まだ店のカウンターで待っている彼を呼びに行った。まだ彼はカウンターのいつもの席で飲んでいた。「遅くなって、すみませんね」俺がそう言うと「謝るのは僕のほうだよ。わがまま言ってすみませんね。それで・・・」「奥の部屋に居ますよ。」「そうですか・・・あのロボット何かおかしな所ありませんでした?」「おかしな所ですか・・・強いて言うならロボットだってすぐバレました。」「・・・・」彼が何か考え事を始めたので俺は聞いてみた「あのロボットが何か・・・??」「あれ・・・ロボットじゃないですよ。」「え?!」意外な発言に俺は吃驚した。「最初に見た時から違和感があったんです。」「その根拠はなんです?」「まず・・・ロボットっぽ過ぎます。普通ロボットってバレないようにするのが 完璧なヒューマノイドロボットを作る人間の常識です。 それが自信を持ってレンタルさせるロボットがわずか数時間でバレるようじゃ・・・」「それは出来が悪いって事じゃないですか・・・」「それともう一つ、出来が悪い癖に動きのリズムが不規則なんです。 それでいて歩行にしても問題無く動いています。 どうしてもコンピュータ制御だとある程度リズムが単調になるんです。 それがあのロボットなるべく単調にしようとしていて不規則になるんです。 これって人間がロボットの動きを真似するのと同じ現象だと思うんです。」「それじゃ何の為に・・・そんな事・・・」「それは僕にも分からないです。とにかく彼女に聞いてみましょう。」そう言ったと同時に奥から大きな物音がした。俺と彼は急いで奥の部屋に向かった。
2006.08.06
それから彼は以前より頻繁に店に来るようになった。彼はいつもカウンターの一番端っこに座り黙って酒を呑んでいた。店では相変わらず常連たちがあけみ争奪戦を繰り広げていた。そんな光景を彼は面白そうに見つめていた。あけみがロボットだと言う事はまったく誰にもばれなかった。薄暗い店とある意味単調な会話ですむ事が幸いしてるのかもしれない。少々おかしな言動が有っても、みんなはそれをチャーミングに思ってくれた。そんなある日、店に小さな事件が起こった。それは俺の店に凄い美人がふらっと入ってきた。彼女はカウンターの席に座るなり水割りを注文した。そして黙って2杯水割りを飲み干すと手早く勘定をすませて出て行った。たった15分ほどの出来事だったが、店中の注目を集めるのには十分だった。彼女が居なくなった後、常連たちが口々に彼女は何者だろうかと話し始めた。やがて、そんな事も忘れ去られ、またあけみ争奪戦が始まった。しかし事件はこれで終わらなかった。丁度一週間後もまたその美人はやってきた。一週間前と同じように水割り2杯呑んで15分ほどで出て行った。その次の週も、またその次の週も彼女は現れた。俺も彼女に興味があったので、彼女に声をかけてみたが何も答えず水割り2杯呑んで出て行った。まるでロボットのようだった。まさか・・・彼女もロボットなのか?そんな疑問を彼が店にやってきたときに聞いてみようと思った。しかし彼は最近店に現れていなかった。早く彼に会いたかった。店の常連たちも彼女の噂で持ちきりだった。「クールビューティー」とあだ名が付いていた。今の店の注目はあけみより彼女になっていた。彼女が現れてから一ヶ月経った頃、彼が店にやってきた。俺はすぐにクールビューティーの話しをし、彼女がロボットじゃないかと言ってみた。彼は笑いながら「もしロボットならぜひ会ってみたいね。」と言った。なぜと俺が尋ねると「ロボットが一人で街を歩いて店にやってきて酒呑んで勘定払って帰るって事が ロケットが月行って帰ってくるより難しいことなんだよ。」俺は全然意味が理解できなかった。「人間の一般社会は何が起こるか分からないから、それだけ色んな出来事に対応出来る センサーやプログラムが必要なんだよ。」俺は分かった様な分からない様な感じだった。「まぁ・・・とにかく凄いって事」そう言って彼は酒を呑んだ。「そう言えばしばらくご無沙汰でしたけど、どうしたんです?」俺は彼に聞いた。「ちょっとねぇ・・・」そう言って胸ポケットから名刺を出した。目で見ろと合図した。見ると「ホムンクルス」と言う会社名だった。ホムンクルスって確か、あけみを造ったメーカーのはずだけど。「あの騒動がってつぶれかかったけど、アメリカで援助者が現れて何とか持ち直したみたい。 新しいプロジェクト立ち上げるからアメリカに来ないかって昔の仲間から誘われたんだ。 で・・しばらくアメリカ行ってた訳・・」すっかり気にしてなかったが彼はロボット技術者だった。たぶんこうやって誘われるって事は優秀なんだろう。「行くんですか?」俺は聞いた。「どうしようかなぁ・・・」彼は指でグラスの淵をなぞって、のんびりと答えた。もしも彼がアメリカに行ってしまい会えなくなる事を寂しく感じていた。俺は黙って仕事を続けた。しばらく沈黙が続いた。「クールビューティー来ないねぇ・・・」不意に彼が言った。予想外の言葉に俺は呆気に取られた。そして少し俺は腹立たしくなった。俺は彼が居なくなるかもしれないと悩んでいたのに・・・・「今日は来ないんじゃないですか?」俺はぶっきらぼうに言った。心の底から今日はクールビューティーに来て欲しくなかった。そんな俺の願いはむなしく、店のドアーが開いた。クールビューティーだった。いつもと違って今日は男と一緒だった。その男を見て彼は「佐々木・・・」と呟いた。彼の知り合い?って事はやっぱり彼女はロボットだったか?そんな俺の思いとは関係無くクールビューティーと男はゆっくりと彼に近づいていった。
2006.08.05
「君は綺麗だね・・・」「ありがとう」「何時に終わるの」「24時が終業です。」「それじゃぁ・・・終わったら寿司でも食べに行かない?」「ごめんなさい・・・」「予定があるの?」「ごめんなさい・・・」本当にすまなそうに謝るあけみに、お客はこれ以上誘うことは出来なかった。そう言うプログラムを組んでもらったのだが、これがかなり効果的だった。それでもしつこいお客の場合は、あけみから俺に信号が送られ「お客さん・・・勘弁してやってくださいよ。」と俺が助け舟を出す。あけみが焦らしている訳では無いのだが、お客は勝手に焦らされているような気分になって、なんとかあけみのハートを射止めたくて何度も店にやってくるのだ。あけみ目当ての常連さんが増えていった。彼らは、あけみがロボットだと言うことに気づきもしなかった。そんな常連さんの中、あけみに興味を示す訳でもなく ただ寡黙に呑んでいる男が居た。歳は30代後半くらいだろうか。あまりにも、あけみに興味を示さないので逆に俺が彼に興味を持ってしまった。ある日、俺は何気なく彼に声をかけた。「お客さん・・・よくいらっしゃって下さいますよね・・・」不意に声をかけられて吃驚したようだった。「あっごめんなさい。お客さんが他のお客さんみたいに、あけみ目当てじゃないみたいんで ちょっと不思議に思ったものですから、声をかけてみたくなりまして・・・」俺は正直に疑問をぶつけてみた。「不思議ですか?ただお酒を呑みに来るのって・・・・」彼は静かに答えてくれた。「そんな事は無いですけど・・・」「それに・・・」続けて彼は何かを言いかけた。「なんでしょうか?」俺は、その後の言葉が気になり聞いてみた。彼は声を潜めて「彼女・・・ロボットでしょ?」俺は吃驚した。「え?!いやぁ・・・あのぉ・・・」シドロモドロになってしまった。「別に良いんじゃないですか・・・」彼は何事も無かったかのようにグラスを傾けた。俺は何でばれたのか気になり「どうして分かったんですか?何かおかしな所ありました?」彼は、のんびりと答えた。「いや別におかしなトコなんて無いですよ。むしろかなり人間ぽいですよ。」「それじゃ・・なぜ?」「昔・・・あいつの開発に関わってた事ありましたんで・・・」「それで、うちの店に頻繁に来て頂いたんですか?」「そういう訳じゃないんですけど・・・ただ久しぶりに活躍してるあいつを見て 懐かしくなって・・・・って事かな・・・自分でも分かりません。」「すみません。変な事聞きまして。」俺は、マスター失格だなと反省した。お客のプライベートな部分に踏み込むのはご法度だって分かっていたのに・・・そんな俺を彼は逆に気づかってくれて「いやぁ・・・別に良いんですよ・・・気にしてませんから・・・ それよりあんな騒動があってマスターのほうが大変だったんではないですか?」「いえ、別に関係ないですよ。私は彼女がどうしても欲しかったんで・・・ それに彼女の事は誰にも話してませんし、これからも話すつもりは無いです。」「そんなに彼女の事を・・・」俺は少し照れながら「昔・・子供の頃読んだボッコちゃんに影響されましてね・・・」「あの星新一先生の?あぁなるほどね・・・だから・・・」彼は納得したようだった。「それじゃ偉大なる星新一先生に乾杯しませんか?」彼が言った。当然俺は「喜んで!!」と答えお互いにグラスを傾けあった。こうして俺は彼と急速に親しくなった。
2006.08.05
「名前は?」「ボッコちゃん」「歳は?」「まだ若いの。」小学生の頃読んだ・・・たぶん夏休みの感想文の為だったのかその辺りは定かではないが、星新一先生の名作「ボッコちゃん」に物凄く影響を受けた。子供の頃は自分でボッコちゃんみたいなロボットを造るぞぉ!と思っていたがどうにも算数が苦手だった俺は、理数系向きではなかった為その想いはすぐに断念してしまった。やがて、そんな事すら忘れ去られてしまい受験戦争に巻き込まれ気がつけば、在り来たりなサラリーマンになっていた。ボッコちゃんの事なんか、記憶の隅追いやられに思い出す事も無かった。TVでイブ1号の特集を見るまでは・・・・ちょうど同じ頃会社から転勤の辞令が出た。それなりに会社の為に働いてきたつもりだったが、上司に意見しただけで飛ばされる我が身に(それが原因かどうか分からないが・・・・)会社に執着する気が失せてしまった。親戚が古びたバーをやっていたが、たたもうと思っていると言う話を聞き代わりに脱サラしてバーをやろうと思った。同僚に素人が客商売はできないと忠告された。だが俺はそんな言葉に耳を貸す気は無かった。ボッコちゃんに出てくるバーのマスターみたいな生活を送りたくなった。なぜ今更ボッコちゃんなのか自分でも分からなかった。俺はバー始めるにあたって雀の涙の退職金をはたいてイブ1号を買うと決めていた。女性型ロボットが居なければボッコちゃんの世界は再現できない。だからイブ1号は必要だった。以外にと言うか不思議とバーのマスターは俺には合っていたようだ。そんなに儲かりはしなかったが、それなりに喰っていくには困らない程度の利益は出せた。イブが居ることも、それなりに良い結果を生んでいた。もちろん、イブがロボットだと言うことはお客には内緒にしていた。イブ目当てのお客は結構居た。さすがにボッコちゃんと言う名前にするわけにいかず、「あけみ」という名前にしていた。「名前は?」「あけみ」「歳は?」「まだ若いの・・・」そんな会話が飽きもせず毎晩のように繰り返されていた。その会話を聞きながら俺は嬉しくなっていた。自分はボッコちゃんの世界に居る!そう感じられた。
2006.07.31
なんとか、「井に中の家族」を書き上げることが出来ました。この話しは、特にこれと言ってオチとかも考えてなくイメージ的にゴミ捨て場にロボットが捨ててあってそれを男が拾うって言うのが浮かんだんで書いた作品です。だから、ロボットが捨てられる理由付けとして、プロローグを書きました。主人公のシンジのシチュエーションも色々悩みまして。奥さんとは死別パターンで、サトミを奥さんの身代わり的にするってパターンも考えたし、最後は、またサトミを捨てちゃうって言うパターンも考えてました。ただ書いてくうちに、作者の意向とは別にどんどんハッピーエンド(?)的になってきました。まぁ・・・これはこれで、面白かなって思います。昔からそうなんですけど、書いてくうちにキャラクターが勝手に動き出してストーリが思わぬ方向に向かってしまうんです。作家としては三流ですね。(笑い)さてさて・・・第2話はどうなることやら・・・・乞うご期待!!
2006.07.30
それから、しばらく三人の生活が続いた。里美は、何事も無かったかのように過ごしていた。サトミの存在も受け入れたのか、当たり前のように接している。どんなに失敗しても「まったくぅ・・・仕方無いわねぇ・・・」と言って笑ってすませていた。小さな子供に家事を教えるかのように優しく付き合っていた。シンジも相変わらず仕事は忙しかったが、どんなに遅くなっても帰宅するし出来る範囲で手伝うようにしていた。里美と二人の時になぜ出来なかったのか不思議だった。ようは仕事に逃げていたんだと気づいた。このまま、すべてが旨くいっていくかと思っていたある日・・・突然、里美から離婚してくれと言われた。シンジには青天の霹靂だった。何が原因なのか分からなかった。また自分に何か落ち度があったのかと考えたが思いつかなかった。「なんでだよ!」シンジが聞いたが里美はうつむいて泣くだけだった。「たのむ!言ってくれ!!俺が悪いのなら治すから!」シンジは言った。里美は静かに口を開いた。「ずっと・・・具合が悪くて・・・病院に行ったの・・・」「病気か?どこが悪いんだ?」シンジは全然気づかなかった。そんな自分に腹を立てた。「前の話し・・出て行く前の・・・・」そんな事知らなかった・・・シンジは思った。「何で言ってくれなかったんだ?そうすれば・・・」「言おうとおもったわ。だけどあなたは仕事、仕事で全然聞いてくれなかったじゃない!」シンジは返答できなかった。「だから・・・出て行ったのか?」シンジは恐る恐る聞いた。「それもある。けど・・・」里美は口ごもった。「けど、なんだ?」シンジは優しく聞いた。「生理不順があったんで、婦人科で見てもらったの・・・」「それで?」「・・・・排卵機能に異常があって、子供は難しいって・・・」「え?!」シンジは少しショックを受けた。「やっぱりショックよね・・・あなた子供欲しがってたもの・・・」「それは・・・」「だから、あなたと別れるつもりだった。だから出て行ったの。」シンジは、そんな事だったとは全然思いつきもしなかった。自分が仕事ばかりで家庭をおろそかにしたのに腹を立てて出て行ったのだと思っていた。「あの日、正式に離婚の手続きをしようと思って帰ってきたのに・・・」里美は言葉が詰まった。しばらく沈黙が続いた。子供が出来ようが出来まいが里美とは別れたくなかった。それをただ素直に言えば良いのだが・・・・シンジはなんて言って良いのか思いつかなかった。そんな自分が腹立たしかった。そんな沈黙を破ったのはサトミだった。「お茶にしましょうか?」サトミは状況とか考えずに忠実に自分の仕事をこなすだけだった。「一応、出来る限りこの子に家事のやり方を教えたから。」里美は、事務的に言った。「子供だったら・・・」シンジはしぼり出すようにやっと声を出した。「何?」里美が聞いた。「子供だったら居るじゃないか。」シンジは言った。「え?!」里美は理解できずに聞いた。「目の前に出来の悪い娘が・・・」シンジは答えた。「母親が徹底的に教育してもらわないと。」「けど・・・」里美が何か言うとしたが「3人で幸せになろう。」そう言ってシンジは里美を抱きしめた。「うん・・・」里美の頬に涙が流れた。「お茶にしますか?」そんな状況も関係なく、もう一度サトミが聞いた。シンジと里美はそんなサトミに微笑んだ。奇妙な家族が誕生した。人から見れば偽りかもしれないが、当人たちは本当の家族だった。それが偽りか本物かは、当人たちが決めることだった。 Fin
2006.07.29
何とか玄関で里美を捕まえて、強引にリビングのソファーに座らせた。憮然として座っている里美。どう説明しようかと悩んでいるシンジ。居心地の悪い沈黙が続いた。そんな処へ裸のままのサトミが来て「お客様にお茶をお入れしましょうか?」と聞いてきた。更に里美が怒っているのがシンジにも感じられた。タイミングの悪さにシンジは困惑した。サトミは独りで洋服の着替えが出来なかった。だからシンジが着替えさせなければ裸のままなのは当然である。そんな事は里美は理解できるわけも無く、里美の誤解は更に広がった。とにかく今この状況にサトミが居るのは良く無い事だけは分かっているので「サトミ、悪いけど向こうの部屋へ行ってくれないか?」シンジはサトミに言った。「分かりました」そう言ってサトミは隣の部屋へ行った。「サトミって・・・」更に里美の怒りが増していた。「あのさぁ・・・あいつとは何でもないんだよ。」とありきたりのシンジの答えに、ついに里美の怒りは爆発した。「この状況でよくそんな事言えるわね!!もういいわ!!好きにすれば!!」そのまま席を立って出て行きそうな里美を抑えて「落ち着いて俺の話しを聞いてくれ!!まず、あいつは人間じゃないんだ。」その言葉に里美の動きが止まった。「何言ってるのよ・・・」里美は、あまりの馬鹿馬鹿しい言い訳に呆れていた。百聞は一見にしかずと思い、シンジはサトミを呼んだ。裸のサトミを里美の前に立たせた。「落ち着いてこいつを見てくれる。そして触ってみて。」里美は渋々サトミを見て、恐る恐る触ってみた。確かに触り心地に違和感があった。サトミの裸を良く見ると妙に整い過ぎていた。「ロボット・・・・??」里美が呟いた。「そう!ついこの間TVで人間そっくりのロボットの事やってたの覚えてない?」シンジの言葉に里美はイブ1号の騒動を思い出した。「あのイヤラシイロボットなの?!それじゃあなたは・・・・」里美がそう言いかけて慌てて「違うよ!!」今度は違う意味で誤解されたようだ。シンジはゆっくりと丁寧に今までの経緯を話した。「本当に変な事してないの?」里美は悪戯っぽく笑いながら聞いた。「あのねぇ・・・・」シンジは少しムッとした。「冗談よ・・・でもこの状況は誰かに見られたら誤解されるわね」落ち着いてみると、確かに変な状況だった。シンジと里美の間に裸の里美が立っているのは・・・「それじゃサトミに着替えをさせてくるよ」と言って立ち上がろうとすると「やっぱ変態だ・・・」と、からかいながら里美が言った。「あのなぁ・・・」と文句を言おうとすると「私がやるから、あなたは座ってなさい。勝手に私の洋服いじられたくないから」そう言って里美はサトミを連れて部屋を出て行った。シンジは、なんとか誤解が解けてホッと胸をなでおろした。
2006.07.29
サトミとの奇妙な生活は、それなりに楽しかった。なによりも、家に誰かが待っていてくれると言うのが嬉しかった。以前、奥さんと暮らしていた時には、当たり前すぎてそんな風に思ったことなど無かった。ただ、サトミとの生活は快適とは言い難かった。サトミは高機能のロボットとは言え、人間に比べればまだまだ劣るため何をやるにしてもシンジがサポートしなければならなかった。特に家事と言うものは臨機応変な判断が必要になり、工場の単純作業とは違いマニュアルやデータだけでは、こなせない仕事だった。その為、サトミがとんでもない行動をする事が次々と発生した。その度に、シンジが面倒を見る羽目になった。正直に言えば、サトミは家政婦ロボットしては役に立ってはいなかった。それでも、シンジは怒る気にもなれず、むしろサトミの失敗を面白がって見ていた。大きな子供と付き合っている様な気分になっていた。それは、シンジにとって心地よいものだった。そんな楽しい時間がしばらく続いていたある日・・・その日もサトミに庭の水撒きを頼んだのだが、水溜りに足を滑らせて転倒してしまい泥だらけになってしまった。シンジは慌てて助け起こし、急いで風呂場へ連れて行った。そして手際良くサトミの服を脱がせた。最初の頃は、サトミの裸にドキドキしていたが、意識しているのがシンジだけだと気づき、そんな自分が恥ずかしくなった。そのうち、サトミを裸にするのが気にならなくっていた。いつもの様にサトミにシャワーをかけて洗っていた。「あなた、なにやってるの!!」不意に後ろから声が聞こえた。シンジは振り返ると風呂場の入り口に奥さんの里美が立っていた。表情は怒りに満ちていた。「帰ってきたんだ・・・・」シンジはのんびりと言った。なぜ、里美が怒ってるのかシンジはすぐには気づかなかった。あまりにも平然としているシンジに里美はシンジはこの女と楽しく暮らしていると思い「そう言う事なのね。分かったわ・・・好きにすれば。」そう言って里美は出て行こうとした。そこで、シンジは裸で居るサトミに対して里美が勘違いしたと気づき「ちょっと待て!!勘違いするな!!」シンジは慌てて叫んだ。そして風呂場を飛び出して、里美の後を追った。
2006.07.28
イブは目を開けて、ゆっくりと起き上がった。「ユーザー登録をして下さい。」イブが喋った。起動時に所有者の情報をインプットするのである。本来は購入時にメーカが事前に登録してくれるのだが今回はマニュアル登録として会話モードで登録することになった。「武谷シンジだ。」シンジは自分の名前を言った。「名前を登録しました。」イブが答えた。それから、生年月日、血液型、職業、その他諸々100以上の質問に答えた。「データ入力完了。イブに名前をつけますか?」イブが聞いてきた。シンジは考えて「サトミ」と答えた。「了解しました。私はサトミです。」なぜ、奥さんの名前にしたのかシンジ自身も分からなかった。女性の名前がそれしか浮かばなかったのか、それとも・・・・「まず何をしましょうか?」イブ改めサトミが言った。シンジははっとして「え?!あぁ・・・そっか・・・まずは掃除してもらうかな・・・」「申し訳ありませんが、データに無いので、品物の収納場所を教えて下さい。」「え?!あぁ・・・・」部屋に乱雑に置いてある洋服などのモノを何処にしまうかを聞いていたのだ。更に必要か必要じゃないかの選別も教えなければならなかった。結局、シンジはサトミと一緒に掃除する羽目になった。その努力の甲斐もあって、部屋は見違えるほど綺麗になった。シンジは今まで、こんな風に掃除の手伝いなんかしたこと無かった。休みの日なんか、部屋でゴロゴロしていると、奥さんに「少しは手伝ってよ!!」と言われたことが何度もあった。その度に(冗談じゃない!!普段仕事しているんだから休みの日にそんな事出来るか!)と思って、そのままプイと外に出かけたりしていた。「次は何をいたしましょうか?」サトミが聞いてきた。すっかり夜も遅くなってきたので「今日はもう良いよ。俺はもう寝るから」とシンジは答えた。「分かりました。 明日は何時に起床いたしますか?」「そうだな・・・6時に起きるよ」シンジは答えた。「朝食はお作りいたしますか?」「え?!作れるの・・・・」思わずシンジは聞いてしまった。「現在ここにある材料から、トーストが作れます。よろしいですか?」「はい」思わずシンジは答えてしまった。「では、おやすみなさい。私も休息モードにいたします。」そう言って、充填機の上に乗って電源が切れた。なんだか妙な事になったとシンジは思った。そして自分のベットに入って寝た。
2006.07.27
なぜ、イブ1号を持って帰ろうと思ったか、シンジ自身にも分からなかった。家に着いて、簡単な夕食をすませると持って帰ったイブ1号をチェックした。シンジは一応、システム開発の仕事をしているので機械についての知識は多少有った。破損はかなり激しく、完全に治せるか分からなかった。そのまま、捨ててしまおうかとも思ったが、なぜかシンジはこのイブ1号を治したいと強く思った。まずはインターネットでイブの情報を集めて見た。以外に簡単に情報は手に入り、修理方法だけでなく改造方法なんかもホームページ上で紹介されていた。それらをチェックし、必要な部品などをリストアップした。それらの部品をネット上で注文した。その日から、シンジはどんなに遅くなっても家に帰り、イブの修理をしていた。なぜこんなに夢中になっているのかと時々自分を苦笑していたがそれでも夢中で修理をしていた。なんだか家に帰る楽しみが出来たようだった。こんな気持ちは結婚した当初以来だった。いつからその気持ちを忘れてしまったんだろう・・・・・シンジはふとそんな事を考えていた。それでも奥さんを迎えに行く気にはなれなかった。数週間かかって、イブの修理は完了した。シンジはイブを再起動させた。
2006.07.26
シンジは、その日も終電ギリギリで帰路についた。産業機械のシステム開発の仕事をしているので会社に泊まりこむ事もざらだった。家に帰ったところで、誰が待っている訳でもなく、いつもの様にコンビニに寄って、遅い夕食を買って、家に向かった。結婚しているが、仕事に没頭するあまり、家庭の事を疎かにした為、奥さんは実家に帰ってしまった。それから数ヶ月経っていたが、シンジは迎えに行く事もせず仕事に没頭していた。なぜ奥さんが怒ったのか、なぜ実家に帰ったのかが理解できなかった。自分はちゃんと仕事をし、生活費をちゃんと稼いでいるのに・・・・自分は悪くないと思っていた。だから、迎えに行く理由が無かった。これで終わりになっても仕方無いとさえ思っていた。ぼんやり歩いているとゴミ捨て場に妙なモノがあった。じっくり見ると人間の脚のように見えた。「ん?!」近づいて見ると、女性が倒れていた。シンジは吃驚して、抱き起こそうとした。抱えてみて、見た目に比べて妙に重かった。変な話し、触った感じにも違和感があった。落ち着いて観察して見ると、どうやらそれは人形のようだった。それにしても、リアルな人形だとシンジは思った。そこでハッとした。「イブ1号・・・・」シンジは半年くらい前にマスコミで騒がれていた騒動を思い出した。確か、あの騒動の後、不法投棄が問題になっていた。誰かが、イブ1号をここに捨てたようだった。そのまま放置しても良かったが、なぜかシンジはイブ1号を抱えて家に向かった。
2006.07.26
この話しは、フィクションです。分かりきった事でしょうけど(笑い)本編はこれから書くんですけど(まだ内容は考えてないけど・・・・(^^;;;)その背景的な事をチャッチャと書くつもりだったんだけど書いていくうちに、なんか長々と書いてしまいました。ヒューマノイドロボットを造るって事について、ちょっと穿った見方で書いてしまいました。なぜか人間そっくりのロボットって言うと女性型多いんだけど絶対に下品なネタは出るんだよね。良いとか悪いとか品あるとか下品とかは人間が決めることであってロボットはプログラム通りに動いているだけなんだよね。だから、これから書く話しは絶対にロボットが意思を持ったみたいな事は書かないつもりです。さてさて、第1話をお楽しみに・・・・
2006.07.25
その研究員は自分のやった浅はかさを悔やみ、会社を辞めてしまいました。しかし、それは一社員が辞めたことで収まる事ではなくマスコミは更に面白おかしく騒ぎ立てました。その波紋は顧客に広がり、イブ1号を使っていた企業は次々と使用をやめてしまい、使っていたことさえ隠すようになりました。個人で買った人は、家族や友人に変な目で見られ、中には離婚問題や破局を迎えたカップルも居ました。その為、密かに使っていたユーザの中には、周りに知られる前にイブ1号を不法投棄する人も現れました。「ホムンクルス」も社員たちの動揺が広がり退社者が次々と現れました。その為、事実上業務停止状態になってしまいました。数ヶ月が経ち、そんな騒動も時間と共に忘れられてしまいました。イブ1号の存在さえ人々記憶から消えかけていました。それでもイブ1号やロボットと関わっている人は存在してました。人とロボットの物語は、ここから始まります・・・・
2006.07.25
女性型ロボットであるが故に、仕方が無い中傷ですが高精度、高機能のダッチワイフ的な記事が載りました。それだけなら、インターネット上で散々書かれていた話題です。その記事が注目されたのは、「ホムンクルス」ではSEXが出来るロボットが研究開発中だと言う部分です。おまけに研究員のインタビューまで載っていました。事実、「ホムンクルス」ではSEXが出来るロボットの研究は進めれていました。それは、風俗業界からの要望が有ったのも一つの要因ですがその研究チームの責任者は、介護ロボットの能力の一つとして考えて研究していました。あまり、表には出ませんが身障者や高齢者の性欲の問題は昔からありました。それらを解消する方法として、ロボットを使おうと言う試みが提案されました。この問題については、非常にデリケートな問題なので何度も会議が開かれ、審議を繰り返していたところでした。その情報をどこからか聞きつけた記者が、研究員にインタビューを申し出ました。中々決めない会社にイライラしていた研究員は、自分の思いを雑誌に載せてもらうことによって状況が変わるかとインタビューを受けました。しかし、研究員の思いとは別に、面白おかしくSEXが出来るロボットと言う部分だけしか記事になりませんでした。
2006.07.25
イブ1号は、介護の分野で活躍しました。排泄物の処理や入浴などは、人間相手だとプライドが傷つけられたり恥ずかしかったりしますがロボットならば、その辺が軽減されまた、イブ1号ならば見た目は人間そっくりなので機械にやられていると言う感覚も軽減されると言う事で介護関係の企業の注文が殺到しました。また、接客関係の要望も多く人件費が軽減され、なおかつ会社の望んだ通りの人材になると言うことで、こちらの業界からも注文が殺到しました。飲食関係が特に注文が多かったです。それ以外にも自宅のメイドとして高価ではありましたが、一部の好き者が個人の趣味として購入するケースがありました。一年先まで、注文が決まってしまいました。「ホムンクルス」の業績は、凄い勢いで上がっていきました。このまま順風満帆にいくかと思われたある日・・・・ゴシップ誌に「ホムンクルス」の記事が載りました。
2006.07.24
究極のヒューマノイドロボットとは、人間だと言っても疑われないくらいに人間そっくりのロボットです。確かに「ホムンクルス」製のロボットは、業界でも好評ではありますがやはり、見た目はロボットとしか見えませんでした。それが、顧客によっては不満だと言う意見もありました。人間に見えるロボットが求められていました。その関係もあったし、やはり当初の目標が完璧なヒューマノイドロボットの製造だったので、このプロジェクトは会社としてもかなり力が入れました。かなりの予算が組まれ、優秀なスタッフも集められてプロジェクトは進められました。試行錯誤はあったものの、数ヵ月後には、納得のいくロボットが完成しました。女性型ヒューマノイドロボット「イブ1号」は、展示会に出展されました。その完成度の高さに、インターネット上で実はアルバイトの女性がロボットのふりをしていると言う噂まで飛び交っていました。展示会が終了後様々な分野から問い合わせが殺到しました。
2006.07.24
完成された受付ロボット好評でした。二足歩行も出来、AIが搭載されており簡単な会話も出来ました。マスコミなどにも紹介され、この受付ロボットは世間で有名になりました。こうなると、このロボットを欲しがる企業が増えてきて、片手間でロボット製作を造っていけない状況になりました。そこで、製作メンバーは今の会社を辞め、会社をを設立することにしました。ロボット製造メーカ「ホムンクルス」の誕生でした。より人間に近いヒューマノイドロボットの開発を目指して研究を続けました。受付ロボットだけでなく、介護ロボット、更には人間の代わりに軽作業くらいは出来るロボットを目指して開発は進められました。そして、ある年ロボット展示会に出展するために究極のヒューマノイドロボットの開発プロジェクトチームが設立されました。
2006.07.24
最初の競技会から数年経ち、その当時学生だった人も様々な企業に就職していました。元々が技術の有る人達なのので、すぐにそれぞれの企業のノウハウを吸収していて、それらの最先端技術を使って、なおかつコスト無視のロボット開発はどこの研究施設が成し得なったモノが造られようとしていました。唯一問題だったのは資金でした。それぞれの手弁当でやっていましたが、個人の投資には限界がありました。もう少しと言うところまで来て、資金が底をつきました。ここまでかと誰もが思ったときに、有志でヒューマノイドロボットを造っていると言う噂を聞きつけたある企業が資金援助を申し出てきました。その企業は中堅処では有りましたが、なかなかのやり手の社長で儲かりそうだと思う事にはすぐにお金を出す方針でした。フットワークの軽さが売りで、それなりの業績を出していました。この企業は、人間そっくりの受付ロボットを欲していました。資金援助する代わりに、高精度の受付ロボットを造ることが条件でした。ロボットを造る目的が出来たことで、更にロボットの精度が上がりました。一年ほど経って、受付ロボットを完成させました。
2006.07.22
21世紀に入り、ロボットの開発が飛躍的に進ました。それは企業の研究室や大学の研究室がきっかけではありませんでした。子供の頃見たロボットアニメに影響された学生や好き者達が趣味で造っていたロボットを集め、自主的に開催した二足歩行ロボットの競技会がきっかけでした。誰もが無謀だと思っていましたが、以外にも完成度の高いロボット達がエントリーされました。大盛況で幕を閉じた競技会は、次の年もまた次の年も開催されました。年を重ねるごとに、出場するロボット達のレベルは飛躍的に上がってきました。ある日、その競技会の常連達が集まり等身大のヒューマノイドロボットを造ってみないかと言う話しになりました。
2006.07.21
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