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毘夷零

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2006.11.03
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カテゴリ: 機械仕掛けの天使
介護ロボットが導入されても、俺の負担が軽くなることは無かった。

相棒もその例に漏れず、言われた事や決められた事はキチンとこなせるが、突発的に起きる出来事には何の役にも立たなかった。
介護と言う仕事は、その突発的な出来事の連続だ。
だから相棒は失敗の連続だった。
俺は、それらの尻拭いに追われていた。
俺の仕事は今まで以上に大変になっていた。
しかし、不思議な事にお年寄り達には相棒は人気があった。
どんなに失敗しても迷惑をかけられてもお年寄り達は相棒に対して本気で怒っていなかった。

なぜなのか・・・??
俺は、相棒の行動を観察していた。
家事や介助が優れているとはお世辞にも言えなかった。
むしろ、ダメな部類だと思えた。
俺も出来る限りサポートしていたが、手が回らない場合などはお年寄り自身が見かねて自分でやっていたりした。
そのたびに俺は謝った。
しかし、お年寄りは怒るよりもむしろ嬉しそうに作業をしていた。
逆に相棒に作業のやり方や問題点の指摘などを、やはり嬉しそうに教えていた。
それに対して相棒も素直に聞いていた。
それがまたお年寄り達には嬉しいようだ。

思い返すと俺は今までお年寄り達の話しを聞いているようなふりをして聞き流して自分の作業をやっていたのかも知れない。

相棒はある意味本当の介護サービスをやっていたのかも知れない。
少し俺は相棒を見直していた。

鈴木さんも相棒が来るのが楽しみにしている一人だった。
相棒は、いつものように鈴木さんのベットに近づき手を握って彼の話しを聞いていた。
結局は相棒は時間中仕事は何一つせずベットの脇にしゃがみ込んで鈴木さんと話しを聞くだけで終わっていた。

だからと言って俺も相棒を怒る気にはなれなかった。
相棒が来てから、鈴木さんが明るくなったのは事実だし、俺も鈴木さんの喜ぶ顔が見れるならそれで良いと思っていた。
会社には言えない事だが・・・・

それでも鈴木さんの具合は決して良くは無かった。
明るくなるのとは裏腹に容態はどんどん悪くなっていた。
近々、病院に入院しなければならないだろう。
だからこそ、出来るだけ鈴木さんが喜んでもらえるようにしてあげたかった。

そんな風に思っていたが、予想以上に鈴木さんの具合は悪くなっていたようだ。
ある日、鈴木さん宅に向おうと準備していたら、会社に鈴木さんが緊急入院したと連絡が入った。
そしてたぶんもう長い事はないだろうと・・・・
そんなお年寄り達を何人も見てきた俺だが、鈴木さんがもうダメだと聞いてショックだった。
そんな自分にビックリしていた。
そんな風に感じた事今まで一度も無かったのに・・・
傷つきたくないからお年寄り達と距離を置いていたのかも知れない。
「そろそろ鈴木さんの家に向いませんと。」
相棒がいつもとかわらず平然と言った。
俺は、どう説明してよいか分からず躊躇してしまった。
そして軽く息を吸い込んで気持ちを落ち着かせて
「鈴木さんは入院したから今日の予定はキャンセルだ。」
と相棒に言った。
「分かりました。それでは次の方の家に向う準備をします。」
と何事も無かったかのように言った。
ロボットだから当たり前なのだが、そんな相棒に対してなぜか腹が立ってしまった。
鈴木さんはお前のことあんなに慕っていたのに・・・・
そんな風に思っている自分に苦笑してしまった。
なんだか俺もおかしくなっているようだ。
そして、俺は
「予定変更。これから鈴木さんの処へ行く。」
と相棒に言い放った。
相棒を連れて鈴木さんのお見舞いに行こうと思った。

なぜそんな行動に出たのか自分でも分からなかった。
ただどうしても最後に鈴木さんに相棒を逢わせたくなった。








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Last updated  2006.11.03 15:08:50
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