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カテゴリ: 音楽
今年の紅白歌合戦の大トリはさだまさしだ。

いまでこそ紅白は色々な趣向をこらしているが、一昔前は一人2分半という制限時間があった。そのため皆1番しか歌わなかったのである。

このルールを最初に破ったのはさだまさしである。「関白宣言」で出場するときに、曲の構成上、一番だけ聴かせてもしょうがないからフルコーラスを歌わせてくれるならという条件を出し、NHKもそれを飲んだ。私は当時初めて「関白宣言」を紅白でフルコーラス聴いていい曲だなあと思ったものだ。

当時、フォーク歌手はテレビに出なかった。テレビでは自分たちのメッセージが伝わらないというのがその理由だったらしい。

しかしさだはテレビに出た。しかも紅白という一曲勝負の場に出た。しかも他のフォーク歌手からも叩かれた。関白宣言の翌年は「防人の詩」で出た。坂元昭二とギター2本の伴奏でフルコーラス歌った。これも紅白の歴史上初めてではないか。

テレビに出ないといった歌手達のほとんどはただのポーズだった。自分の信者の前で歌は歌えても、不特定多数の前で一曲限りで勝負をするということからは逃げた。

テレビではコンセントレーションがどうのと言うが、歌手は皆その状況で勝負をしているのである。これはただの甘えではないのか。

あれだけ突っ張っていた吉田拓郎はKINKIキッズとだらだらテレビに出ていた。なんじゃそりゃと思ったものだ。私は拓郎の全盛期は知らないので私の知る吉田拓郎はオーラの出ていないやる気のないただのおじさんである。

さだは歌を歌い続けた。映画制作の借金が理由であるが、3000回のコンサートを重ねた。すごい記録である。アリスが再結成して3曲連続で歌うだけでガッツポーズを取っている有様であるが、さだはその間も年間100回のコンサートをしてきたのである。



さて紅白のトリでさだまさしが歌う歌は『広島の空』という。知名度はまったくない。アルバムに収録された曲である。

さだはもう20年間、広島の原爆の日に、長崎で無料コンサートを開いている。二十歳の人間が四十歳になる間ずっとこれをやり続けた。何と骨のある男だろうか。硬派な男だと思う。

そのコンサートを開く年月の中でこの『広島の空』は生まれた。

この曲をぜひ聴いていただきたい。歴史に残すべき曲である。誰にも書けない曲である。

広島の空

 その日の朝が来ると 僕はまずカーテンを開き
 既に焼けつくような陽射しを 部屋に迎える
 港を行き交う船と 手前を横切る路面電車
 稲佐山の向こうの入道雲と 抜けるような青空

 In August nine 1945 この町が燃え尽きたあの日
 叔母は舞い降りる悪魔の姿を見ていた

 やはり振り返ったら 稲佐の山が見えた

   もううらんでいないと彼女は言った
   武器だけを憎んでも仕方がないと
   むしろ悪魔を産み出す自分の
   心をうらむべきだから どうか

   広島の空に向かって 唄おうと
   決めたのは その時だった


 今年のその日の朝も 僕はまずカーテンを開き
 コーヒーカップ片手に 晴れた空を見上げ乍ら
 観光客に混じって 同じ傷口をみつめた
 あの日のヒロシマの蒼い蒼い空を思い出していた

 In August six 1945 あの町が燃え尽きたその日
 彼は仲間たちと蝉を追いかけていた
 ふいに裏山の向こうが 光ったかと思うと
 すぐに生温かい風が 彼を追いかけてきた

   蝉は鳴き続けていたと彼は言った
   あんな日に蝉はまだ鳴き続けていたと
   短い生命 惜しむように
   惜しむように鳴き続けていたと どうか
   くり返さないで くり返さないで
   広島の空に向かって 唄ってる
   広島の空も 晴れているだろうか

   くり返さないで くり返さないで
   広島の空に向かって 唄ってる
   広島の空も 晴れているだろうか

どうだろうか。長崎出身の彼だからこそ歌える歌である。



 ふいに裏山の向こうが 光ったかと思うと
 すぐに生温かい風が 彼を追いかけてきた

   蝉は鳴き続けていたと彼は言った
   あんな日に蝉はまだ鳴き続けていたと


こんなリアルな描写は貴重である。これを歌に昇華したさだはやはり天才である。

さだは古い世代と新しい世代をぎりぎり何とかつなぎ止められる世代の人間である。

この曲が日本全国注目の中流されることには意味がある。変節せず、辛抱強く歌い続けたさだだからこその骨太のメッセージである。愛国がブームになりかけているが、日本を愛し続けてきたさだのメッセージをぜひ聴いていただきたい。






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Last updated  December 24, 2005 12:22:22 PM
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