田中およよNo2の「なんだかなー」日記

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2006年12月10日
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カテゴリ: ほどよく
「ポルノ小説やないか!」

「ノルウェイの森」 を初めて読んだ感想だ。
当時の私はこの小説を何度も読み返すなんて、思いもしなかった。

blogを書いてきて、一回はなにかの小説について深く、書いてみようとした。
そしたら、なぜかやっぱり「ノルウェイの森」しか思い浮かばなかった。
世界は広く、もっと、素晴らしい小説もある。
好み、と言えばそうなのだろう。

どんな、書き方しようかなって考えた。
ただ、何度かやろうとしたけど、頭から感想を書いても上手く行きそうになかった。

登場人物を一人、一人と取り上げて、私の中での具体的なイメージを取り上げようとして、登場人物の勝手な配役を書いた。
さらりと書くつもりが、予想以上に長くなったし、力も入れざる得なかった。
だからといって素晴らしいエントリーになったかは、僕が判断できることではない。

ふと、気がついた。
以前に僕はこの小説は人が 自殺しすぎる って書いた。
それに、主人公の ワタナベ は無責任な人間に見えた。
よっぽど、 永沢さん のほうが立派だったし、なにより、堂々としていた。

でも、人物について書いていくうちに少し考え方が変わってきた。


ミドリ しかいないんじゃないだろうかって。
本当に現実をヴィヴィットに生きているのは彼女だけだろう。

勿論、冒頭のシーンですでにワタナベが37歳であるように、生き続けている。
でも、もしかして、彼はどこかの地点で命を絶つ可能性もあったように、思う。
辛うじてミドリに繋がれていただけなのだ。


永沢さんも死なないかもしれない。
でも、彼は生きているというより、生きるべき義務を果たしているだけのような気がする。
行動規範規範の虜になっているというか。
だけども、一歩間違えれば、例えば行動規範を失えば、永沢さんだってペキンと、むしろ鮮やかに割れてしまいそうな気もするのだ。

自ら死を選んでいたかもしれない、不完全な登場人物ばかりがでてきている。

きっと、それの不完全さがこの小説の傷であるし、同時に私をひきつけてしまうんじゃないかと思う。

私も不完全だから。
どこかに、病を抱えている。
誠実に嘘をつかずに生きても、誰かを傷つけてしまうし、ましてや、私は嘘だってついてしまう。
登場人物の数々の傷さえも、私はあたかも私の傷のように感じてしまうことがある。

多くの素晴らしい小説に感動や、感心を私はしている。
作品の出来、不出来でいうとそれらの作品は「ノルウェイの森」を遥かに超えている。
だけど、「ノルウェイの森」ほど、共感をした小説はない。
単なる感情移入じゃない。
腹も立つこともあるけど、しばらくすると、あの人物に腹を立てたのは私にもそんな部分があるのかなって、気がつく。
そして、私みたいな人がいるって、感じる。
だから、長きに渡って特別な小説になったんだ。
私にとってはということだけど。

死ぬまでに、私はこの小説を何度読み返すのかな。
ちょっとづつ、共感の方向が変わってくるのだろうな。

だって、はじめに読んだころは、 直子 って美しくて、素敵で憧れがあった。
ワタナベって卑怯だなって思っていた。
何度か読む内に、私は間違いなくミドリに魅かれる。
こんなパワーが欲しいなって。
ワタナベはものすごく頑張ったんだって、仕方なかったのかなって感じる。
きっと、私の人生も「どこでもない場所」から離れつつあるのだろう。
講談社文庫 下巻 262頁)

それでも、特別な小説であることはかわらないんだろう。

まだ上手くは言えないけど、この小説は本当のことを書いているような気がする。
政治的に正しいとか、文学的に素晴らしいとかじゃない。
正しさとか、素晴らしさっていうのは理想的といえばいいけど、ある種の嘘に満ちている。
この小説が訴えるのはそんな地点ではない。
不完全で、どうしようもない人間が揃う中で、人が一人生きて、恋をしたり、誠実だけど傷つけたり、傷ついたりして、自分自身のどうしようもなさを抱えながら、やがて死ぬこと。
実は我々の人生の本当のコトのように思う。
丁寧に、美しく、丹念に書いているのではないだろうか。
たまたま、その描写がポルノ小説のようであったとしたり、女性が掌で男性を慰める行為をとても美しく書いていたりはしても。

さらに、作者の小説の系列をからすると、この小説を書いたのは凄く勇気があるなって、思う。
この直前の小説は 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」 という、谷崎潤一郎賞の審査員もねじ伏せたまごうとこなき傑作であるのだ。
その小説の模倣に走らず、別のアプローチで次に長編小説を出版するというのは相当な勇気だ。
結果的には大ベストセラーになった。
春樹さんからすれば自分はベストを尽くしただけだ、って呟くだけだろうけど。

機会があれば、「ノルウェイの森」については別のアプローチをするかもしれない。
例えば、古井由吉氏の 「杳子」 と比較したり、村上春樹さんのほかの小説や短編と比べたりね。

ただ、ちょっと、この一文をもって、ひとまず、私はノルウェイの深い森と、平原にぱっくりと開いている井戸から出ることにしよう。

「文章という不完全な容器に盛ることができるのは不完全な記憶や不完全な想いでしかないのだ」
講談社文庫 上巻 20頁 )

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最終更新日  2006年12月16日 01時37分00秒
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Re:ノルウェイの森 特別な小説であること(12/10)  
なるほどなるほど。そういう私的な小説の捉え方もありですね~。僕もこの小説は何回読み直したか分からないけど、毎回違った印象を受けます。

大輔パパ8004さん、Re[1]:ノルウェイの森 特別な小説であること(12/10)  
大輔パパ8004さん、こんばんは

>毎回違った印象を受けます。

*きっと、特別な小説なんだと、思いますよ。
そういう小説ってとても、珍しいです。
(2006年12月11日 22時19分40秒)

Re:ノルウェイの森 特別な小説であること(12/10)  
Lois Lucca  さん
私も何回か読み返して。。それから一度捨ててそれから英文で書かれたものを買い直して。そして埃をかぶったまま本棚に置いてあります。

直子が自殺しなければ。やはり読み返す力をもたなかったと思います。。

それから。。彼は、どうもサリンジャーに影響されているような気がしてならないと最近気づきました。

(2006年12月13日 08時22分06秒)

Lois Luccaさん、Re[1]:ノルウェイの森 特別な小説であること(12/10)  
Lois Luccaさん、こんばんは

>私も何回か読み返して。。それから一度捨ててそれから英文で書かれたものを買い直して。そして埃をかぶったまま本棚に置いてあります。

*僕も英語はホコリをかぶっています。

>直子が自殺しなければ。やはり読み返す力をもたなかったと思います。。
*そうしないと、ワタナベもどこにも進めないでしょうし。
小説的にも仕方ないし、その地点まで書かないといけなかったのでしょう。

>それから。。彼は、どうもサリンジャーに影響されているような気がしてならないと最近気づきました。

*すいません。
サリンジャー、読んだ記憶しかないのです…
(2006年12月14日 01時10分05秒)

Re:ノルウェイの森 特別な小説であること(12/10)  
カメリア さん
>「ポルノ小説やないか!」初めて読んだ感想だ。

今更ですが言われてみればそういうシーン多いですね。初めて読んだのは中3頃ですがサラサラと読むタイプなせいか意識せずに読んでました。冬山遭難時に裸で抱き合うと温かいからという感覚か、それ以外に方法が見つからず行った儀式という捉え方だったかな。はっきりとは思い出せないけどセクシャルな印象は感じていなかった。喪失感にばかり注目していたせいかも。

他の作家の作品はどこが好きとかどんな作品かそれなりに言葉にできるけど、村上作品・特にノルウェイは言葉にしづらいですよね、でもあえてこれを選んだのですね。

私の本棚を占める割合が一番多いかもしれないほどなのに、一体村上作品の何に惹かれて読んでいるのか自分でも不明です。ただただ惹かれて読んでしまう、本当に珍しい作家と作品ですね。配役面白かったです。 (2006年12月18日 18時16分59秒)

カメリアさん、Re[1]:ノルウェイの森 特別な小説であること(12/10)  
カメリアさん、こんばんは

>冬山遭難時に裸で抱き合うと温かいからという感覚か、それ以外に方法が見つからず行った儀式という捉え方だったかな。

*この言葉、すごくツボを得ています。
ナルホドって、思いました。
正しいとかではなくって、そうせざる得なかったってのが、とても切実ですよね。

>他の作家の作品はどこが好きとかどんな作品かそれなりに言葉にできるけど、村上作品・特にノルウェイは言葉にしづらいですよね、でもあえてこれを選んだのですね。

*これしか思い浮かばなかった(苦笑)。

>私の本棚を占める割合が一番多いかもしれないほどなのに、一体村上作品の何に惹かれて読んでいるのか自分でも不明です。ただただ惹かれて読んでしまう、本当に珍しい作家と作品ですね。

*村上春樹さんは文字で書かないことを描くのが凄いと思います。
当初は「羊男」とか「鼠」とか「TVピープル」とか、はてまた「めくらやなぎ」とか、記号化された名前を与えて描こうとしていましたが、最近は文字で書けないことに、仮に物語を付託して描くのが凄いです。

「ねじまき鳥」の要領の悪い虐殺なんて、その際たる例です。

>配役面白かったです。
*ありがとうございます。
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(2006年12月19日 01時23分51秒)

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