作って、ばらして、パソコン三昧!気づけば部屋は、「ガラクタ」?だらけ...
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原発事故以来何かと話題になる放射線の影響。最近のネットの議論の1つは、少ない量ならば影響は全くないのか、それとも放射線量に比例して微量でも影響があるのかということだ。前者は、しばしば「しきい値モデル」、後者は「LNTモデル」と呼ばれている。さて、ネットで、しきい値モデルを主張する人のツイッターからたどり着いた電中研の研究報告書を読んでみたら、これが非常に面白い。高自然放射線地域住民の疫学と染色体調査についての最新知見研究の背景にもあるように、「近年の放射線生物学の進展により、低線量・低線量率での放射線影響を、高線量・高線量率から外挿することに疑問が呈されるようになって来た。その一方で、低線量・低線量率において直接調べられた健康影響の知見はまだ少な」く、「人の健康影響に関する直接的な情報源」としての「低線量・低線量率放射線を被曝した集団の疫学に対して注目が集まっている。」研究所が「推進している高自然放射線地域(HBRA)住民調査研究)の「中国に置ける研究成果については、線量評価から細胞遺伝学的研究まで一貫した形でまとめられつつあ」り、その現状の整理が行われた報告書である。示されているデータ群は、疫学データ(発ガンリスク)と染色体異常の発生頻度であり、 平均年間線量は6.37mSvのHBRA地域における集団約12万人、約20年間追跡したデータを、年間線量が約2.6倍低い対照地域(CA)と比較している。(1)放射線に起因する有意な全ガンリスクの増加は認められていない。ただし、食道がんについては、2.6倍の高い発生率を示したが、有意な線量応答関係は見られず、他の要因との関係を調べる必要性がある。(2)不安定型染色体異常頻度は、両地域で年齢と主に増加したが、その上昇率は、HBRA地域の方がCA地域の3倍であり、生涯放射線量に対してしきい値の無い直線的な増加を示した。この不安定型染色体異常頻度は、放射線によって生じた損傷という生物学的影響を検出する目的において、敏感で信頼のおけるバイオマーカである。(3)安定型染色体異常(転座)頻度は、HBRA地域の方が、成人で1割、子どもで2割程度多かったが、有意な差とは言えない。放射線で不安定型と安定型の異常がほぼ同率で起こることは知られているが、他の要因によっても発生する安定型異常の頻度は不安定型の頻度より数倍高くバラツキも多いため、放射線による寄与としては、明確に現れてこない。これは、(1)のガン発生率における観察とも一致している。以上は、報告書で紹介されているデータの分析を、簡潔にまとめた物であるが、これらのことを矛盾の無いように整理すると、以下のようになる。(a)不安定型染色体異常の結果から、それと同等に起こると知られている安定型染色体異常も、放射線量に対してしきい値の無い直線的な関係で起こっている。(b)しかし、安定型染色体異常は、放射線以外の要因によっても起こり、低線量では他の要因の方が大きいために、そのデータのバラツキも大きく、放射線に起因する異常頻度の上昇としては、見つけられない。(c)ガン発生率も、この安定型染色体異常の頻度と同様に他の因子による発生率のバラツキに埋もれてしまうために、放射線に依る上昇という形では現れてこない。つまり、低放射線量のガン発生率への寄与は、(a)から導き出せるように直線的に起こっているが、他の要因に起因するバラツキで見ることができない。ということになり、この報告書は、LNTモデルが、ある生物学的影響に関しては、実証されていることを示したと同時に、それが、観察されないケースがある理由を説明したものとして、非常に意義のある報告書である。ところが、その報告書の最初の概要だけを見ると、何故か、上のデータ読み取りの中の、(1) と(3)しか、取り上げられておらず、結果として、LNTは成り立たないという印象を引き出してしまっている。研究手法をみると、非常にしっかりとした研究をしているという印象で、その点は敬意を表する所であるが、結論の導入過程で主観か、先入観か何かが邪魔をしているようで、自然な結論が導かれていない。研究という業に携わる者の一人としては、大変残念なことである。
2011年05月23日
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