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父は、そっけなく逃げるように電話を切った。
とにかく早々に新潟に帰らなければなるまい。小さい頃から、親にあれこれ口うるさく躾という名の干渉を受けて育ってきた私にとって、親と面倒な事を話合うのは気が重かった。
しかし、避けては通れないしきちんと話せば解ってくれると思っていた。
なんせ、母の思惑も知らないし大体、学生時代から東京に行ってしまった娘がどこの馬の骨だか知らない男と結婚するのではなく、幼馴染と結婚して新潟に帰ろうかなっていうのだから、悪い話ではないはずだ。
20歳も年上でもないし、年下でもない。女でもない。日本人で普通の結婚相手。お互い仕事もしていて借金なしで貯金もある。
大丈夫、大丈夫・・・と帰りの電車の中で自分に勇気を持たせながら帰省した。
家の親は、酒も飲まない・タバコも吸わない。酒は、とっても弱い。夕飯は何を食べたか覚えてないが、私だけいつも通り缶ビールを飲んでいた。
なかなか、本題にならない気まずい感じだったように思うが、だんだん雲行きが怪しくなってきた。もう、よく覚えていないが、公務員でないと仕事がなくなったりして首をつって死んだ人がいる・・だとか、殿が学生時代にバンドやバイクに乗っていて不良だとか・・・。もてるから浮気して苦労するとか、我が儘だから大変だとか。
実際、殿は自分でも「怪物君に似てるな、おれ。」と認める位殿様。ははは。
でも若い私には、俺様でも迷いなくぐいぐい引っ張って行ってくれる殿が頼もしかった。それに、結婚前はアルタ前で二時間待たせても、全然怒らなかったし。
ここで、幼馴染との結婚の悪い面が出た。
地元のうわさ好きの奥様にあれこれ吹き込まれ、喧嘩しただの酒を飲んだだの、あることない事吹き込まれていたのだ。
ただ、有り難かったのは学校の先生が見方についてくれた事。教員のネットワークは凄い。どこまで知り合いなんだ?ってくらいに父は情報収集していて、当時お世話になった先生方が殿をとっても褒めてくれていた。それは、援護射撃となった。
父の攻撃の手が納得がいかないながらも、同業者の褒め言葉で緩む。
が、ここで母が始動した。
「私、嫌だからね!殿のお家は沢山お酒も飲むし、遊び人みたいで苦労する。あなた、やめときなさい。もっと、色々見てからでいいでしょう?まだ、早いわよ。お見合いの話もなくはないし、お父さんみたいな公務員なら仕事もしっかりしているし、幸せになれるから!」
とかなんとか、言い出した。母は声が高い。キーキーと30分以上まくし立てる。
「お母さん、絶対駄目だから。悪いこと言わないから止めときなさい。」
なんでだろう・・・。なんで、社会人で法律上は、勝手に結婚できるのにこんなにキーキー言うのだろう・・。
幼い頃から、何でも親の思い通りにしなければ文句を言われた。早く自活して、自分の人生を自分で生きたかった。やっと、社会人になったのに、まだこの呪縛が続くのか?
なんだか、自分の人生は何なんだろう・・・と思うと悲しくなって、涙が出てきた。
「あら?あなた、酔ったの?」
駄目だこりゃ。と思う。当時、お酒が強かった私は、缶ビールの二本ごときで酔うはずもない。感覚が違う。いつまでも、可愛い子猫ちゃんではないというのに。
「違うよ、結婚くらい自分で決めさせてよ。」
決裂した。