またのさん、丁寧なコメント有難うございます。長年の経験に裏打ちされた蘊蓄のあるお言葉だと思って、じっくり読みました。

 僕にとっても、河村さんはBARのマナーやイロハを教えてもらった師匠の1人でした。口数は少なかったけれど、態度や眼でおっしゃることは分かりました。こういう厳しいマスターがほんとに少なくなったのは残念です。

 常連客千人にもなると、おそらく名前はすべて覚えておられなかったと思いますが、きっと僕の顔は覚えていてくれたと思います。ほんとに素晴らしい、絵になるマスターでした。

 マナーをまだよく知らない客を育てるような店(マスター)がもっと多くなってほしいし、店(バーテンダー)を育てるような客ももっと増えてほしいです。 (2009/01/26 11:03:14 PM)

Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2009/01/26
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カテゴリ: 今宵も、BARへ…
その9:席でのマナー(2)

◆長居は無用
 BARは長居するものではない。氷が溶けて水っぽくなるほどだらだら飲むのもよくない。2杯、3杯飲み続けて、気が付けばカウンターは満席状態。カウンターの後ろのテーブル席では、カウンターが空くのを待っている客もたくさんいる。でも貴方は、隣客との話がはずんでもう1杯、もう1杯と杯を重ねる。そんな姿は決して美しくはない。

 当然、会話ばかりを続けて1杯だけで長居するのも無作法だ。1杯~2杯で2時間も居座ったり、営業時間が過ぎてまで粘って飲んだりも論外だ。貴方は「嫌われる客」としてリストアップされるだけだ。

 世界中でも日本だけの「チャージ」という不可解な料金システムは好きではないが、地価の高い都会の盛り場では、貴方の席のスペースにも店側に税負担(固定資産税)がある。1杯だけで延々と居座れては店にとってはたまらない。そんな不届きな客が存在するために、「席料」としてチャージがなくならないのなら、やむを得ない。At the Bar9

◆1杯約20分を「目安」に
 昔、とある老舗BARの老バーテンダーに言われた言葉を今も忘れない。「酒場では、無駄口をたたかず、ささっと2杯ほど、酔っぱらわない程度に飲んで、ささっと帰るのが、格好いい酒呑みだ。BARという空間を独占してはいけない。BARで飲む幸せは、1人でも多くの他人と分かち合うべし」と。

 うらんかんろは特別の理由がない限り、1軒のBARでは2杯までとしている。そして1杯を飲むのに約20分余、2杯なら約45分くらい。3杯飲んでも1時間くらいを目安にしている(なお、そのBARのトータルの滞在時間は、次のドリンクを注文するまでの間やバーテンダーがつくる時間もあるので当然、1杯だと約30分、2杯で1時間弱、3杯なら1時間半弱という感じになる)。

 酒場での飲み方でもう肝要なことは、もう一つ。「酔っぱらって他人に迷惑をかけない」ということ。酒場は酒を楽しむところで、酔っぱらうところでない。酔っぱらいは、声が大きくなり、他人にからみ、足元はふらつく。あげくの果てにゲロする輩もいる。そんな酔っぱらいほど醜い、恥ずかしい、迷惑な存在はない。酔っぱらって絡む、ゲロを吐くまで飲むなどは論外だ(どうしても我慢できずにゲロを吐きたければ、便所に行って便器を抱いて吐くべし)。

◆飲んでも飲まれるな


 うらんかんろは、酔っぱらってスツール(背の高い椅子)ごと転倒して後頭部を打ち、救急車で運ばれた客を見たこともある。酔っぱらって他の客に絡んで、注意をした店の人を殴り、警察に連れて行かれた客も知っている。うらんかんろは、そういう客(「客」とも呼ぶ資格もないが)には、軽蔑はしても、決して同情しない。大怪我をして仕事に穴を開けるのも、警察の留置場で一晩過ごすのも、それは自業自得というものだ。

 店や他の客の迷惑を考えてみればいい。想像してみよう。貴方のゲロを掃除する人のことを、救急車を必至で呼ぶ人のことを、床に着いた血を洗う人のことを、壊れた椅子を自腹で修理する店の人の気持ちを…。BARで飲みたければ、想像力の働く大人でありたい。At the Bar10

◆自分の適量を知り、ペース配分を
 うらんかんろも酒を飲み始めた頃、飲み過ぎて少し醜態をさらしたことは何度かあった。そういう姿を翌朝思い出し、自己嫌悪に陥った。しかし、人間は学習しなくてはならない。自分が正常に飲めるペース、限度(アルコール総量は人それぞれで違う)というものを貴方は知っておかねばならない。うらんかんろも学習した。そしてここ20年ほどは、BARで酔いすぎて不覚になったことは、一度もない。

 貴方には、そういう醜い酔っぱらいには決してなってほしくない。自分の適量を知り、ペース配分を考えながら飲み、明日も美味しくお酒が飲めるように、「そろそろ限界かなぁ」と思うちょっと手前でやめておくのが一番だ。酒は、独りで家に帰れる余力を残して楽しむものだ。

 言わずもがなだが、酔ってグラスを倒して割るのも論外だ。どんなに高価なグラスを割ったからと言って、店に1個しかないアンティークのグラスを傷つけたからと言って、グラス代を請求する店はまずないだろう(そんな客に高価なグラスを使ったのは、店側のミスだ)。

 店側は、グラスが割れることも計算して、収支計画を立てている。割られて困るような貴重なグラスは、酔った客には使わない方がいいということを、店側も学ぶだろう。しかしもし仮に、酔って割ったのではなく、単なる過失で割ったとしても、次回その店を訪れる際にはお土産を持って謝りに行くような紳士でありたい。

 かつての老舗BARのマスターやバーテンダーには、マナーに厳しい方が多かった。うらんかんろは、そうした方々から多くを学んだ。そして、いつかそうした方々に誉められるような、いい酒呑みになろうと誓った。貴方もぜひ格好いい、大人の酒呑みになってほしい。

◆お酒は残していけないか
 頼んだお酒は、最後まで(できれば美味しそうに)飲んであげるのが、つくってくれたバーテンダーへの礼儀だ。しかし、どうしても体調が悪くて飲みきれないこともある。そういう時は無理に飲まずに、残していい。無理に飲んで酔い潰れられた方が店には迷惑だ、金を払っているのは自分(客)だから、卑屈になることはまったくない。ただし残して帰る際、「残してすみません、ちょっと飲み過ぎてしまって…」とひとこと言い添えるのが大人のマナーだ。

 うらんかんろも、どうしても飲み干せない場合は、バーテンダーさんに詫びて残すこともある。時には、あまりお勧めはしない方法だが、残りを含めるだけ口に含んでトイレへ行き、洗面所で口から流してしまうこともある(飲んだように体裁を繕うのは、いちおう見栄を張っているから…(笑))。理想を言えば、頼んだお酒は残さないように、体調を考えながらゆっくりとしたペースで飲むのが一番だ。

【その10へ続く】

【おことわり】

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Last updated  2010/08/21 10:08:08 PM
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Re:私的BAR入門講座(9): 席でのマナー(2)/1月26日(月)(01/26)  
またの さん
うらんかんろさん、ご無沙汰しております。

頂いています。完成後にコメントをさせて頂こうと
思っておりましたが、コウベハイボールの河村さん
の名前が出てきましたので自称コウベハイボールの
語り部として何か一言コメントしたくなりピンボケ
かも知れませんが、敢えて書かせて頂きました。

振り返ると河村さんにはバーに関する知識のイロハ
から長年に亘り、ある時は怒られながら、ある時は
無言で態度で示して教わったような気がします。
開店30周年の時の新聞記事には常連客三百余人の
うち2割は開店以来の付き合いとありました。
また閉店時の新聞記事に、河村さんが数えてみたら
常連客が約千人にのぼった。歴史ある店でも常連と
なるとせいぜい三百人とある。数の多さに河村さん
自身が仰天したそうだが、果たして千人もの常連客
の顔を河村さんは覚えていたのだろうか?

コウベハイボール閉店後に私は神戸の初めてのバー
で飲む場合には河村さんを話題にしてハイボールを
注文してその反応でその店の基準を判断していた時
があった。うらんかんろさんのような百戦錬磨とは
違い、私の物差にはコウベハイボールしか無かった
から仕方ない。然し、神戸ではこの法則は通用した
ように思っています。但しことハイボールに関して
の話です。その他の酒のことは難しくて分りません。

今後はこの講座の内容を頭に入れて間違いない良い
客としてバー巡りを楽しみたいと思うが、最早老兵
には近場の馴染みのバーでマスターに嫌われぬよう
気楽に楽しみながら自分の適量と懐具合をわきまえ
エンジョイできれてはよいと思っています。

私的BAR入門講座が完成していない途中であるのに
関わらず、詰らないとを書いて申し訳ありません。
(2009/01/26 08:21:01 PM)

またのさんへ  

Re:私的BAR入門講座(9): 席でのマナー(2)/1月26日(月)(01/26)  
ayakh  さん
うらんかんろさん、毎回興味深く拝読しております。

うらんかんろさんのこの連載を読んで、飲み方を知らない人が少しでも減ることを切に祈りつつ、自分もまた襟を正して「良い客」としてBarに通いたいと思います。
(2009/01/27 05:46:44 PM)

ayakhさんへ  
 ayakhさん、こんばんはー。コメント有難うございます。

>うらんかんろさん、毎回興味深く拝読しております。うらんかんろさんのこの連載を読んで、飲み方を知らない人が少しでも減ることを切に祈りつつ、自分もまた襟を正して「良い客」としてBarに通いたいと思います。

 お誉めの言葉、有難うございます。僕も、この連載がBARでのマナー向上に役立つことを願っています。そして僕自身も、これを書いたことに恥じないように、「良き客」の1人として、BAR文化に貢献していきたいと思います。 (2009/01/28 10:35:54 PM)

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汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。 ▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。
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