Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2017/06/13
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 54.マティーニ(Martini)

【現代の標準的なレシピ】 【スタイル】 ステア
 ※誕生当初はスイート・ベルモットを使う甘口レシピが主流でした。ジンとベルモットの比率は時代とともにドライ化の傾向が強まり、かつては3:1~4:1くらいが主流だったのが、今日では、5:1~9:1のようなエクストラ・ドライが好まれるような時代になっています。

◆当初は ジン+スイート・ベルモット
 マティーニは「カクテルの王様(The King Of Cocktails)」と称されるほど有名なカクテルです。しかし、誰がいつごろ考案したかについては、確実な資料はほとんど伝わっておらず、どう発展していったのか(改良されていったか)についても、今日でもなお多くの論争があります。

 「バーテンダーが100人いれば100通りのレシピがある」とも言われるマティーニには、現代でも「絶対的なレシピ」というものは存在しません。いちおう、「NBAバーテンダーズ・バイブル」と「HBAバーテンダーズ・マニュアル」で現代の標準的なレシピを確認しておきますと、レシピは、「ジン(45~50ml)、ドライ・ベルモット(10~15ml)、オレンジ・ビタース1dash、レモンピール、オリーブ(飾り)、ステア・スタイル」となっています(オレンジ・ビターズの代わりにアンゴスチュラ・ビターズを使うレシピも)。

 さて、マティーニの原型となったドリンクとしては、数多くの文献は、1860年代初頭、サンフランシスコのオクシデンタル・ホテル(The Occidental Hotel)のバーで伝説的なバーテンダーだった、ジェリー・トーマス(Jerry Thomas)による「マルチネス(Martinez)・カクテル」を挙げます。このカクテルをベースにして、その後さまざまなバーテンダーが関わり、発展してきたと伝わっています(出典:Wikipedia英語版)。 

 ちなみに、トーマスによる「マルチネス・カクテル」のオリジナル・レシピは、「オールドトム・ジン1pony(30ml)、スイート・ベルモット1Grass(分量不明)、マラスキーノ2dash、シロップ2dash、ビターズ1dash、小さい角氷2個、シェイクしてカクテルグラスに注ぎ、4分の1サイズのレモンスライスを入れて提供する」となっています。

 一方で、原型になったのは「ジン&イット(Gin and It)」というカクテルだという説もあります。ジンとイタリアン(スイート)・ベルモットを使うこのカクテルは、ベルモットにイタリア「マルティーニ(Martini)」社の製品が指定されていたため、この「ジン&イット」から発展したカクテルが「マティーニ」と呼ばれるようになったといいます(出典:http://www.geocities.jp/bargold2004/martini.html)。だが、欧米の文献やWeb専門サイトを見る限り、この説を肯定しているは少数派です。

 誕生当初から20世紀初め頃まで、マティーニはジンとスイート・ベルモットでつくるのが主流(標準的なレシピ)でした。その後、スイートとドライの両方のベルモットを使うレシピが登場し、さらにジンとドライ・ベルモットでのレシピも考案され、現代の標準レシピにつながっていきます(現代では、超ドライ化の流れに従って、ベルモットの割合は減る一方です)。手元にある欧米のカクテルブックを見る限り、ドライ・ベルモットを使うレシピが主流になったのは、1930年代以降のことと思われます。

◆文献初登場は1888年か
 「マティーニ(・カクテル)」の名が初めて活字で登場するのは、国内外の文献では従来しばしば、パリで1904年に出版されたフランク・ニューマン(Frank Newman)著のカクテルブック『アメリカン・バー(American Bar)』、あるいは、米国で1906年に出版されたルイス・マッケンストゥラム(Louis Muckenstrum)著の『ルイスズ・ミクスド・ドリンクス(Louis' Mixed Drinks)』がもっとも早いと紹介されてきました。

 しかし、近年の研究では、米国のバーテンダー、ハリー・ジョンソン(Harry Johnson)が米国で出版した『バーテンダーズ・マニュアル(The Bartender's Manual)』(初版は1882年)の1888年に出た第2版にすでに登場していることが分かっており、これが活字となった初めての文献と言えるでしょう。ジョンソンの本では、「オールドトム・ジンとベルモット(スイートかドライかは不明)各ワイングラス0.5杯、シロップ2~3dash、ボウカーズ・ビター2~3dash、オレンジ・キュラソーまたはアブサン1dashをステア、マラスキーノ・チェリーまたはオリーブを沈めて最後にレモン・ピール」というレシピになっています。

 一方で、ニューマンやマッケンストゥラムの本では、従来のイタリアン・ベルモットを使うスタイルとともに、フレンチ(ドライ)・ベルモットを使う新しい辛口スタイルの「マティーニ・カクテル」が併せてはっきりと紹介されていて、1900年頃には、現在のマティーニに近いものが飲まれていたことが分かります。

 スイート・ベルモットを使うレシピが主流だった時代、ベルモットは「マルティーニ」社の製品を使うことが主流でした。カクテル史に詳しい米国のバーテンダー、ジム・ミーハン氏は「このマルティーニ社のベルモットの評判が、『マティーニ』=綴りは「マルティーニ」と同じ=という名でカクテルが普及・定着していくのに影響を与えたのではないか」と語っています。

 しかしドライ化の流れで、マティーニにはドライ・ベルモットを使うのが主流になってゆくと、同じドライ・ベルモットでも「ノイリー・プラット(Noilly Prat)」社に人気がシフトしていきます(ちなみに、現代のバーでは「ノイリー・プラット」「チンザノ」「マルティーニ」の大手3ブランドがしのぎを削り、「ドラン」「ガンチア」などもよく使われていますが、ノイリー・プラット社は、その後バカルディ・マルティーニ社に買収され、その傘下に入っているのは皮肉なことです)。

 ちなみに意外な事実かもしれませんが、1920年頃までは、マティーニにオリーブを添えるスタイルはほとんどありませんでした。オリーブを添えたマティーニが初めてカクテルブックで確認できるのは、1903年に出たティム・ダリー(Tim Dary)著の「Dary's Bartenders' Encyclopedia」です。オリーブを添える(または沈める)現代レシピが定着してくるのは、米禁酒法が廃止となった1933年以降です。

◆ドライ化への流れをつくったマッケルホーン
 甘口が主流だったマティーニはいつ頃から辛口へ方向転換を始めたのかは、すでに前述のニューマンの本(1904年)やマッケンストゥラムの本(1906年)にその萌芽が見えますが、影響力という意味で言えば、やはり、歴史上重要な三大カクテルブックの一つ、ハリー・マッケルホーン(Harry MacElhone)の「ABC of Mixing Cocktails」(1919年刊)が転換点だったのではないかと思います。

 注目すべきは、マッケルホーンは「マティーニ・カクテル」としては、ドライ・ベルモットを選択していることです。そのレシピは「ジン3分の2、ドライ・ベルモット3分の1、オレンジ(またはアンゴスチュラ)・ビターズ1dash(シェイクしてカクテルグラスに注ぎ、チェリーを飾る)」となっています。当時としてもバー業界やバーテンダーに大きな影響を与えたであろうマッケルホーンの本が「ドライを選択した」ことが、後のドライ(辛口)化への流れをつくったと言えるかもしれません。
 (※ただし、マッケルホーンは「マティーニ・スイート」=ジン3分の1、スイート・ベルモット3分の2、ガムシロップ1dash、飾り=チェリー(シェイク)、「マティーニ・ミディアム」=ジン3分の1、ドライ・ベルモット3分の1、スイート・ベルモット3分の1(シェイク)というレシピも併せて収録しています)。

 マッケルホーンはつくり方も、それまでもあったステア・スタイルではなく、シェイク・スタイルを指定しています。下記にも紹介していますが、「サボイ・カクテルブック」の著者、ハリー・クラドックも同じくシェイクを指定しています。1920〜30年代のカクテルの両巨頭が、ともに「シェイク・スタイル」を選択しているのは、とても興味深いことです。

◆カクテルブックにみるレシピの変遷
 では、1880~1950年代の欧米の主なカクテルブック(「ABC Of …」以外)は「マティーニ」をどう取り扱っていたのか、どういうレシピだったのか、ひと通りみておきましょう。

・「Modern Bartender's Guide」(O.H. バイロン著、1884年刊)米 掲載なし

・「American Bartender」(ウィリアム・T・ブースビー著、1891年刊)米 オールドトム・ジン2分の1、スイート・ベルモット2分の1、アンゴスチュラ・ビターズ4drops、レモンピール(ステア)

・「Modern American Drinks」(ジョージ・J ・カペラー著、1895年刊)米 オールドトム・ジン2分の1、スイート・ベルモット2分の1、オレンジ・ビターズ3dash、レモンピール、マラスキーノ・チェリー=飾り(お好みで)(ステア)

・「Dary's Bartenders' Encyclopedia」(ティム・ダリー著、1903年刊)米 オールドトム・ジン2分の1、ベルモット(スイートかドライか不明)2分の1、オレンジ・ビターズ2dash、オリーブを沈める(ステア)

・「American Bar」(フランク・ニューマン著、1904年刊の第2版、1900年初版には掲載されず)仏 ジン4分の3、ドライ・ベルモット4分の1、アンゴスチュラ・ビターズ(またはオレンジ・ビターズ)3dash、レモン・ピール(ステア)※スイート・ベルモットのマティーニも紹介

・「Louis' Mixed Drinks」(ルイス・マッケンストゥラム著、1906年刊)米 ジン2リキュール・グラス、ドライ・ベルモット1リキュール・グラス、キュラソー1dash、レモン・ピール(ステア)※スイート・ベルモットのマティーニも紹介

・「Bartenders Guide: How To Mix Drinks」(ウェーマン・ブラザース編、1912年刊)米 ジン2分の1、ベルモット(スイートかドライか不明)2分の1、キュラソー(またはアブサン)1dash、ビターズ1~2dash、ガム・シロップ2~3dash、レモンピール(ステア)

・「173 Pre-Prohibition Cocktails)」 & 「The Ideal Bartender」(トム・ブロック著、1917年刊)米 掲載なし

・「Cocktails: How To Mix Them」(ロバート・ヴァーマイヤー著、1922年刊)英
 ドライ・ジン3分の2、スイート・ベルモット3分の1、オレンジ・ビターズ1dash、レモンピール(ステア)

・「The Savoy Cocktail Book」(ハリー・クラドック著、1930年刊)英 
 ドライ=ジン3分の2、ドライ・ベルモット3分の1、ミディアム=ジン2分の1、ドライ・ベルモット4分の1、スイート・ベルモット4分の1、スイート=ジン3分の2、スイート・ベルモット3分の1(いずれもシェイク・スタイル)

・「Cocktails by “Jimmy” late of Ciro's」(1930年刊)米 ジン2分の1、ドライ・ベルモット2分の1、アンゴスチュラ・ビターズ2dash、レモンピール、オリーブとともに

・「The Artistry Of Mixing Drinks」(フランク・マイアー著 1934年刊)仏 ドライ=ジン2分の1、ドライ・ベルモット2分の1、ミディアム=ジン2分の1、ドライ・ベルモット4分の1、スイート・ベルモット4分の1、スイート=ジン2分の1、スイート・ベルモット2分の1(いずれもステア・スタイル)

・「World Drinks and How To Mix Them」(ウィリアム・T・ブースビー著、1934年刊)米 ジン2分の1、ドライ・ベルモット2分の1、オレンジ・ビターズ2dash、レモンピール、オリーブ(ステア)

・「The Official Mixer's Manual」(パトリック・ダフィー著、1934年刊)米 ジン5分の4、ドライ・ベルモット5分の1、レモンピール、オリーブ(ステア)

・「The Old Waldorf-Astoria Bar Book」(A.S.クロケット著 1935年刊)米 
 スタンダード=ジン2分の1、スイート・ベルモット2分の1、オレンジ・ビターズ1dash、レモンピール、オリーブ、ドライ=ジン3分の2、ドライ・ベルモット3分の1、スイート・ベルモット4分の1、レモンピール、オリーブ、ミディアム=ジン3分の2、ドライ・ベルモット6分の1、スイート・ベルモット6分の1、レモピール、オリーブ、スイート=ジン2分の1、スイート・ベルモット2分の1(いずれもステア・スタイル。シェイクも可)

・「Mr Boston Bartender’s Guide」(1935年初版刊)米 
 ドライ=ジン45ml、ドライ・ベルモット23ml、ビターズ1dash、オリーブ、ミディアム=ジン45ml、ドライ・ベルモット15ml、スイート・ベルモット15ml、オレンジ・ビターズ1dash、オリーブ、スイート=ジン45ml、スイート・ベルモット23ml、オレンジ・ビターズ1dash、チェリー(いずれもステア)

・「Café Royal Cocktail Book」(W.J.ターリング著 1937年刊)英 ドライ=ジン2分の1、ドライ・ベルモット2分の1、ミディアム=ジン2分の1、ドライ・ベルモット4分の1、スイート・ベルモット4分の1、スイート=ジン3分の2、スイート・ベルモット3分の1(いずれもシェイク)

・「Trader Vic’s Book of Food and Drink」(ビクター・バージェロン著 1946年刊)米 
 スタンダード1=ジン45ml、ドライ・ベルモット1dash、オリーブ、スタンダード2=ジン45ml、ドライ・ベルモット15ml、オレンジ・ビターズ1dash、オリーブ、ミディアム・ドライ=ジン30ml、ドライ・ベルモット7.5ml、スイート・ベルモット7.5ml、オリーブ(いずれもステア)

・「Esquire Drink Book」(フレデリック・バーミンガム著 1956年刊)米 
 ジン4分の3(または3分2)、ドライ・ベルモット4分1(または3分の1)、オレンジ・ビターズ1dash、レモンピール(ステア)

 余談ですが、マティーニを愛した著名人は枚挙にいとまがありません。有名なところだけでも、元・英首相ウィンストン・チャーチル(超辛口を好み、ベルモットを眺めながら呑んだという逸話も)、俳優クラーク・ゲーブル(ベルモットのコルクでグラスを拭き、冷えたジンを注いで呑んだという逸話が)、俳優ハンフリー・ボガート、元・米大統領フランクリン・ルーズベルト、作家アーネスト・ヘミングウェイ、作家サマセット・モーム、元・米大統領ジョン・F・ケネディ、実業家ジョン・D・ロックフェラー、元・英首相マーガレット・サッチャーほか、数えきれないほどです。

◆日本にも早い時期に伝わる
 さて、日本におけるマティーニの歴史はどうだったかと言えば、欧米とそう大きな時間差はなく伝わっています。確認できる史料によれば、日本で初めて活字でマティーニが紹介されたのは、1905年(明治38年)刊行の「洋酒調合法」(高野新太郎編)ですが、おそらくは日本が開国して外国人居留地が横浜や神戸に誕生して以降、少なくとも1890〜1900年代には外国人向けホテル等では提供されていたのではないかと想像できます。

 この「洋酒調合法」で紹介されたレシピ(本稿末尾)では、ベルモットはドライかスイートかには触れていません。その8年後に刊行された「飲料商報・西洋酒調合法」(伊藤耕之進編)では「ジン3分の2、ドライ・ベルモット3分の1、オレンジ・ビターズ2dash、レモン皮(ピール)」と辛口のレシピでしたが、その後日本で1924年に出版された日本最初期のカクテルブックでは「ベルモットはイタリアン(スイート)ベルモットを使う」と記されており、初期の頃は、ベルモットの選択は依然揺れていたようです。

 ちなみに、日本で「ミスター・マティーニ」とも言われたパレス・ホテルのチーフ・バーテンダー、故・今井清さん(1924~1999)のレシピは、「ジン(銘柄は「ゴードン」)55ml、ドライ・ベルモット15ml、オレンジ・ビターズ1dash、レモンピール、オリーブ(飾り)」でした(※1960年代後半のレシピ。晩年はより辛口へ変化)。

 近年では、銀座「モーリ・バー」毛利隆雄さんのマティーニが有名です。毛利さんと言えば、かつては「ジンはブートルズ」が定番でした。そのレシピは(10年ほど前に出された著書によれば)「ブードルズ・ジン60ml、ドライベルモット2.5ml、オレンジ・ビターズ1dash、レモンピール、オリーブ(飾り)」(超ドライな味わい)でしたが、ブードルズが終売になってしまったため、現在は別のジン(「BBRのNo.3」と「シップスミス」のブレンド)をベースにされているとのことです。

 たかがマティーニ、されどマティーニ。マティーニはこれからもバーのカウンターを挟んで、マスター(バーテンダー)と客側の双方で、さまざまな話題となり、新たな話題や伝説を生み出して行ってくれるでしょう。

【確認できる日本初出資料】 「洋酒調合法」(高野新太郎編、1905年<明治38年>刊)※欧米料理法全書附録という文献。レシピは「オールドトム・ジン2分の1、ベルモット(※ドライかスイートかの言及なし)2分の1、ビターズ2~3dash、ガム・シロップ2dash、オリーブ(またはチェリー)、レモンの皮(ピール)」となっています。

※この項の作成にあたっては、石垣憲一氏の労作(上記)にひとかたならぬお世話になりました。改めて心から感謝申し上げます。



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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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