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2020/10/02
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雑誌&WEBマガジン「リカル(LIQUL)」連載
【カクテル・ヒストリア第11回】
バンブーは「日本生まれ」ではなかったのか?



 考案したのは「1890年(明治23年)、その前年に来日していた横浜グランドホテルの支配人・ルイス・エッピンガーで、一足早く誕生した『アドニス』というカクテルのバリエーションとして誕生した」と多くのカクテルブックで紹介されてきた。そしてバンブーは、長年、「日本生まれの国際的なカクテル第1号」という称号を得てきた。

 ところが、である。2018年、日本のフレア・バーテンダーの第一人者でカクテル史の研究家でもある北條智之氏(横浜・バー「ネマニャ」オーナー)によって、衝撃的な新事実が報告された。

 海外で「バンブーは1890年以前に、米国で誕生していたのではないか」という指摘があることを知った北條氏は、米国で1885~1890年頃に発行された新聞紙上で、バンブーのことが何か取り上げられていないかを調べてみた。

 すると、少なくとも3つの新聞で、「1886年には、すでにニューヨークの酒場で流行していた」ことを伝える紙面を見つけたのだ。例えば1886年9月11日付のカンザス州発行の新聞では、「ある新しいドリンクがニューヨークのバールームで流行っている。レシピはシェリー4分の3、ベルモット4分の1というもので、”バンブー”と呼ばれている」と記されていた。

 しかし、実は1890年以前に流通していたベルモットは、ほとんどがスイート・ベルモットである。ドライ・ベルモットがバーで本格的に使われるようになるのは1910年以降。実際、欧米のカクテルブックで「バンブー」が初めて登場するのは、1900年刊の「The Cocktail Book: Sideboard Manual For Gentlemen」だが、そのレシピは当然、スイート・ベルモットを使っている( 写真右 =「バンブー」を考案したと言われるルイス・エッピンガー)。

 一方、バンブーの元になったという「アドニス」は1884年頃に誕生し、まもなく「バンブー」も誕生するが、当時のカクテルブックで、バンブーとアドニスの両方を収録している例を見ると、アドニスは「シェリー3分の1、スイート・ベルモット3分の2、オレンジ・ビターズ1dash」、バンブーは「シェリー3分の2、スイート・ベルモット3分の1、オレンジ・ビターズ1dash」。

 すなわち、誕生当時の「アドニス」と「バンブー」はスイート・ベルモットの割合(分量)だけで区別されたカクテルだったのだ。ちなみに1915年頃までの文献に登場するバンブーは、ほんどがスイート・ベルモットを使っている。

 では、エッピンガー考案説までも否定されてしまうのか。欧米のカクテルブックでドライ・ベルモットを使ったバンブーが初めて登場するのは、現時点で確認できた限りでは、1908年刊の「World Drinks and How To Mix Them」(William Boothby著)で、この本では「バンブーは、横浜グランドホテルのエッピンガーが考案した」と紹介している。

 そして欧米では、1920年頃までは、ドライとスイートそれぞれのベルモットを使う「バンブー」が混在している( 写真左 =創業の頃の横浜グランドホテルの絵葉書)。

 以下は、私の個人的な想像を交えた総括。
 バンブーは、エッピンガーが考案したかはどうかは別にして、1886年の時点ですでに米国の東海岸地域で誕生していた。ただし、当時はスイート・ベルモットを使うバンブーだった。エッピンガーは来日前、サンフランシスコでホテルの支配人やバーテンダーをしていた。そして当時のバンブーのレシピを携え、1889年に日本(横浜)へ赴いた。

 翌1890年、エッピンガーは(横浜で)米国でのバンブーのレシピをアレンジして、ドライ・ベルモットを使うバージョンをつくった(ただし、名前は「バンブー」のまま通した)。そして、そのバンブーがまもなく米国へ伝わって人気を呼び、それまでのスイート・ベルモット・バージョンにとって代わられた。

 結論として、現時点では、ドライ・ベルモットを使う現代の標準的なバンブーが「エッピンガーが横浜で考案した日本生まれのカクテルである」と否定する証拠も見当たらない。そしてもし、エッピンガーが考案者でなくとも、「バンブー」の世界的普及に最も貢献した人物であることは間違いないだろう。

【おことわり】本稿の作成にあたっては、本文中にも登場する北條智之氏に数多くの情報、示唆を頂戴いたしました。心から感謝申し上げます。


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うらんかんろ

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