全111件 (111件中 1-50件目)
前回までのあらすじ 程なくしてママがパートから帰ってきた。「ただいま」「ヤバ、もうこんな時間。お米研いでないよ」 夏休み中、ママより早く帰宅した日は、夕飯のお米は私が研いで炊飯器にセットする約束だ。なのに今日は、おっさんと話していてすっかり忘れていた。「藍香、帰ってるんでしょー」「はーい、ママ、お帰りー。今、行くからー」 私は焦って立ち上がり、おっさんに向かって言った。「ちょっと着替えるから、あっち向いてて」「はいはい。ガキの着替えなんぞ興味ないがな。まぁ、ワシは紳士だし、エチケットはよう心得とる」 おっさんはくるりと背を向けた。私は急いで制服を脱ぐと、素早くTシャツと短パンに着替えた。「もう、ええか?」「うん」「ほな、行こか」 のっそりとおっさんが立ち上がった。「え、どこに?」「決まっとるやないか、おかんのとこ行くんやろ?」「何で? ついて来なくていいし」「どうせ、お前のおかんにも、ワシは見えへんのやからええやろ」「そういう問題じゃなくて、何て言うか、付いて来る理由もないわけだから、もう付いて来ないで欲しいの」 おっさんは眉間に皺を寄せて険しい顔をした。「それはちゃうで。理由がないわけやない。どんなことにも必ず理由があるんや。ただそれが何なのか、今は分からないだけのこっちゃ」「はい、はい、分かった、分かった。じゃ、ここでその理由考えといて」 私のおざなりな返事におっさんは不服そうではあったけれど、「うーむ」とだけ返事をしてまたベッドに座り込んだ。良かった、ここは素直に言うことを聞いてくれて。「じゃ、そういうことで」 おっさんがまた何か言い出さないうちに、さっさと部屋を出た。 今日は部活が長引いてさっき帰ってきたばかりだと、ママに嘘の言い訳をして、早速お米を研ぎ、一緒に夕飯の支度を始めた。パパは飲み会で遅くなるというので、そのままママと二人で出来立ての夕飯を食べた。 おっさんのこと、ママに話そうか迷ったけれど、余計な心配をかけたくないので黙っておくことにした。ママにもおっさんが見えればいいけれど、もし見えなかったら私がおかしなこと言い出したとか、変なものが見えているらしいとか、心配するに決まっているもの。 正直、私自身も自分が大丈夫なのか自信はなかった。こうしておっさんから離れてみると、やっぱり私がおかしいのかなと思ったりする。大好きな茄子と豚肉の味噌炒めを食べながらも気はそぞろだった。「そう言えば、野々口さんとこの翔太君」 ふいにママの口から出たその名前に、ギクッとした。「今日ね、ウチの店の前通ったんだけど、可愛い女の子と一緒だった。あの子、翔太君の彼女なの?」「さぁ・・・知らないけど」 彼女だよ、とは言えなかった。ママが翔太に彼女がいることを、翔太のママに告げ口したら困る。翔太のママも知っているならいいけれど、もし知らなかったらバラしたのは私だってことになってしまう。 それも心配だったけれど、その子は彼女だよって、私が言えないのはそれだけではなかった。そう言ってしまえば私もそれを認めたことになってしまうから。 焼きもちなんかじゃない。でも何か面白くない。「明るい感じの子で、二人とも楽しそうだった」 何気ないママの言葉で、胸の中に真っ黒なもやもやが広がっていく。「へー、そうなんだ。ご馳走様。お風呂入るね」 できるだけ関心なさそうな顔をして、食卓を後にした。 (続く) ※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。都市伝説的なものをヒントにしてはいますが、それらとも関係ありません。ちなみに私は小さいおっさんなんて見たことないし、実際にいるともいないとも思っていません。更新情報は 楽天プロフィール・ぽあんかれ Amebaなう・ぽあんかれ Twitter・ぽあんかれ @poincare_tweet ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ご訪問、ありがとうございました^^映画はDVDレンタルかWOWOW等で週3本くらい観ますといってもゆったり座って観ることはなくてほとんど洗濯物畳みながらとか、食器を洗いながら。なのでちょっとずつ観ては、続きはまた家事するときにといった感じwなかなか進みませんwww映画は好きですが、映画館で観ることはほとんどありません。だって、映画って何気にお高いんだものwあっても1年に1~2回くらいかな?家族や友人がどうしても観たいから行こう!とならないと家計を預かる主婦としてはなかなかね~ (^^;)息子と息子の友だちが観たいと言った「宇宙兄弟」に保護者として付いて行ったのが、映画館で一番最近観たものかなー月面での「日の出」ならぬ「地球の出」のシーンがきれいだったなー 本当はあの大きなスクリーンで映画観たいです。でも、映画って何気にお高いんだものww自分が観たいものは「レンタルになってからでいいやー」ってなる。そんなことを言ってたら地元にある唯一のシネ・コンの閉館が決定!そこがなくなると車で1~2時間かかるところまで行かなきゃシネ・コンはない! ><;マジかよー!!!!!って、思ってたら、閉館したシネ・コンを居抜きで買ってくれるところがあって2か月くらいしたらその会社の経営で再びシネ・コンとして営業することに!やったーーーーー!!!!!って、思ったけど・・・そこにもそんなには行かないよなーだって、映画って何気にお高いんだものwwwそれではまた次回、お時間がありましたら、お付き合いくださいね。(*^^)v 1日1回、世界の自然と子どもたちのために m(__)m 上のバナークリック → 協賛スポンサークリック → 世界の子供や自然を守る活動に1円募金 相当気ままなひとりごとブログ ※一部リンクは携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~Copyright (c) 2007 - 2013 “fragments”All rights reserved.
October 18, 2013
コメント(11)
前回までのあらすじ なんとかしておっさんの正体を知りたい。私はちょっとムキになっていた。「見たままで言うと、あなたは人間ではなくて、人間よりも小さくて、おっさんで、緑色のジャージを着ていて、頭は少し禿げていて」 そこまで言うとおっさんは急に顔色を変えて怒鳴った。「禿げとりゃせんわいっ。こういうヘアスタイルや、ぼけぇっ」 あ、そこ、触れられたくないんだ。「そういうヘアスタイルだとしても、私は私の見たままを言っただけだよ」「ふんっ、見た目で判断するやつは嫌いじゃ」 変なの。言っていること矛盾してない? 難解で厄介な性格。 だけど髪の毛が薄いのを禿げではないと言い張るなんて、人間のおっさんそのものみたいでなんか笑える。「ふふ」「お、お前、やっと笑ったな」 おっさんもニカッと歯を見せて笑った。「まぁな、要は何でもええっちゅう話や。禿げではないけどな。お前がワシを見て、妖怪でも幽霊でも宇宙人でも、これやと思うモンがあればそれでええねん。実際、そのどれでもあって、どれでもないけどな。ワシが何者かなんて、ワシに聞かんで、お前自身で決めろ。あ、ちょっと待て。妖精ちゅうんもあったな。よし、それにしとこ。ワシの繊細なキラキラしたとこなんかは、人間が考える妖精のイメージにかなり近いモンがあるやろ」「は?」 それって、見たまんまからはどんどんかけ離れていくような気がする。だいたい私に決めろって言ったくせに、勝手に妖精にしとこうなんてどういうこと? 呆気にとられている私をよそに、おっさんは続けた。「せや、せや、妖精や。あ、イケメン俳優とかイケメンサッカー選手もええな。お前の思う通りでええ。お前が『これだ』と決めればそれがワシや」「じゃあ、イケメン俳優とかサッカー選手とかはないでしょ」 おっさんは不満そうだった。「何や、それなら国民的イケメンアイドルってか」「いや、職業もだけど、イケメンっていうのが」「ないっちゅうんか?」 おっさんは急にしょぼんとしてしまった。妖精というセンは妥協できないこともないけれど、私的に、ううん一般的にもイケメンは有りえない。「とにかく、私の幻覚ではないってことは確かだよね」「いや、お前が幻覚だと思えば、ワシはお前の幻覚や。さっきから何度も言うてるやないか」「でも人間じゃないし、禿げてもいない?」「そうや」「だけど私があなたを『人間だ』と思えば人間でもいいんじゃないの?」「だから、さっきも言うたがワシと人間じゃサイズが全然ちゃうやろっ。だいたいお前自身が、ワシは人間以外のモンやと思っとるやないか」「それはそうなんだけど・・・」 うー、分んない。ちょっと面倒になってきた。 おっさんの正体を探るのは諦めて、他の質問をすることにした。「じゃあ妖精ってことにしといて、何で私に付いて来たの?」「それなんやけどな」 おっさんは腕組みをして目を細め、重々しく話し出した。「ワシにもさっぱり分からんのや。お前は何でだと思う?」「はぁ? 何言ってるの?」 いつの間にか、日が暮れる時刻になっていた。レースのカーテン越しに窓から差し込む西日が、部屋の中をほんのりとオレンジ色に染めていく。おっさんの影がベッドの上に細長く伸びる。私たちは互いにきょとんとしたまま、茫然と相手を見つめていた。 (続く) ※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。更新情報は 楽天プロフィール・ぽあんかれ Amebaなう・ぽあんかれ Twitter・ぽあんかれ @poincare_tweet ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ご訪問、ありがとうございました^^「小さいおじさん」に関する都市伝説的な話は色々あると前回も書かせていただきましたがじゃあ、私自身はと言うと小さいおじさんなんて見たことありません。「絶対にいる」とも「絶対にいない」とも思いません。いるかもしれないなぁ~ いるなら見てみたいなぁ~でも実際に目の前にしたら怖いだろうなぁ~いなきゃ困るってものでもないし、いなくていっかぁ~と、かなりいい加減なスタンスです。(^^;)ところで私、今週はブログを2回更新できました。私的にはかなりの快挙来週もぼちぼち頑張るぞ!^^それではまた次回、お時間がありましたら、お付き合いくださいね。(*^^)v 1日1回、世界の自然と子どもたちのために m(__)m 上のバナークリック → 協賛スポンサークリック → 世界の子供や自然を守る活動に1円募金 相当気ままなひとりごとブログ ※一部リンクは携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~Copyright (c) 2007 - 2013 “fragments”All rights reserved.
October 12, 2013
コメント(6)
前回までのあらすじ おっさんが鞄に入っていた理由は分かったけれど、どうして私に付いて来たのかもよく分からないし、おっさんが何者なのかについては、見ての通りこういうモンやと言われても皆目見当がつかない。「だからね、見ての通りってのが訳分んないんだけど。とどのつまりあなたは何?」「だからこういうモンや言うてるやないかっ」 おっさんは少しキレ気味だった。「こういうモンって言われても・・・人間じゃないよね?」「当たり前や、どこをどう見たらワシが人間に見えるんや。お前、大丈夫か?見た目は人間に似とるか知らんが、サイズが全然ちゃうやろ」「じゃあ、妖怪? それとも宇宙人?」 するとおっさんは呆れた顔でこう言った。「出たー、人間の分類グセ。お前らは何かつーとすーぐ分類したがる」「分類? そんなんじゃなくて、私はあなたが何者なのか知りたいだけなの」「だから、こういうモンや言うてるやないか」 埒が明かない押し問答に、私も少しイラついてきた。おっさんが何者なのかハッキリしないことに腹が立つ。というか、あれ? 最初はおっさんが不気味で怖かったのに、今はその気持ちが薄れている。いつの間にか、何者か知りたい好奇心の方が恐怖に勝ってしまったらしい。「だからー、こういうモンじゃなくて、私は人間、じゃあ、あなたは何?ってこと」「それを分類つーんじゃ、ボケェ。じゃあ、お前に聞くけどな、アフリカのサバンナでライオンがゾウを見たとしよう。ライオンは『自分はライオンだが、あれはゾウだ』とか思うか?」「え、思うんじゃ・・・ない?」 突拍子もない問い掛けに戸惑う私に、おっさんは間髪入れずに突っ込んだ。「アホかぁ、思うわけないやろ。ライオンの頭ん中に『ゾウ』なんて単語あるか? そんなん、ないで。言っとくが、『エレファント』もないし、哺乳類だ、草食動物だなんて分類もない。ライオンは見たまんま、あれはあれだと判断するだけや。いちいち見たモンを言葉に変換して分類したりせぇへん。お前らだけや、これはライオン、あっちはゾウ、ここは日本で、アフリカはよその国とか言うやつはな。だいたい人間ちゅうんは、この星に勝手に線引いて切り刻んで、土地や海に名前つけるだけならまだしも、ここは俺のとこだとか、欲しいから戦って奪うとか金と交換だとか訳分らん。全部、誰のモンでもない。陸も海もただそこにあるっていうだけのモンやろが。それが見たまんまゆうこっちゃ。なんや、話がずれてしもうたが、要はいちいち名前つけて分類せんでええねん。見たまんまを受け入れろっちゅう話や。お前らは目に見えんモンも信じようとせんし、見えとっても自分の知識で判断できんモンは信じようとせん。悪い癖や。ワシはワシ。ワシは見たまんま、こういうモンどすぅえぇ」 おっさんは思い切り語尾を伸ばしながら、人の神経を逆撫でするような甘えた声で言った。 私はおっさんが何を言っているのか良く分からず、ますますムッとした。 (続く) ※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。更新情報は 楽天プロフィール・ぽあんかれ Amebaなう・ぽあんかれ Twitter・ぽあんかれ @poincare_tweet ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ご訪問、ありがとうございました^^珍しく、今回はちょっと早めのブログ更新できました~wそれはともかく、横浜生まれの横浜育ち、基本的には標準語の私。^^おっさんの関西弁もどきに、妙な所があってもどうかご勘弁くださいませ。あ、今は私、愛媛に住んでいるので伊予弁が混ざることもあろうかと。^^;物語に出てくるおっさんは、関西出身ではなく各地を旅してさすらううちに大阪の水が合ったのか居心地よくてしばらく大阪に居付いていたという設定。なので今後行った先の言葉があれこれ混ざることもあるでしょう。(なんて都合のいい設定!笑)緑のおっさん=尼崎のゆるキャラ ちっちゃいおっさん(※尼崎市非公認)というイメージの方もいるようですが、それも「アリ」、そうでなくても「よし」です。「小さいおじさん」等で検索すると、都市伝説的なものを始め様々な情報がヒットしますがそれらは私が書く「おっさん」でもあり、そうでもなかったりwwみなさんも自由に発想してください。それぞれのイメージする「おっさん」をお楽しみいただければ幸いですそれではまた次回、お時間がありましたら、お付き合いくださいね。(*^^)v 1日1回、世界の自然と子どもたちのために m(__)m 上のバナークリック → 協賛スポンサークリック → 世界の子供や自然を守る活動に1円募金 相当気ままなひとりごとブログ ※一部リンクは携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~Copyright (c) 2007 - 2013 “fragments”All rights reserved.
October 7, 2013
コメント(7)
前回までのあらすじ 図書館からの帰り、私は小さなおっさんのことばかり考えていた。 ひょっとしてあのおっさんは、リモコンか何かで動くかなり精巧な人形で、声は誰かがマイクを使っておっさんの体内にあるスピーカーから出していたとか。もしかしたら他の人にも見えていたのに、みんな見えていないふりをしていたのかも。でも、何のために? あ、私を騙すドッキリ企画? 麻美あたりが考えそうなことじゃない? 人形は美術部の優月ちゃんが作って、ロボットオタクの神永君があれこれ仕込んで。緑色のジャージは洋服作りが趣味の美涼が担当。もしそれが本当なら、あの人形、かなりの出来栄えだったよ。上出来。 そんなことをあれこれ考えていたら、何だかちょっと楽しくなってきた。 でもこの空想は、すぐに打ち砕かれた。「ただいまー」 ママはパートからまだ帰っていないのか、玄関には鍵がかかっていた。 鍵を開けて中に入ると、閉めきった家の中は蒸し風呂状態だった。「うー、暑っ」 自分の部屋に入り、すぐに窓を開けようとして持っていた鞄をポンとベッドに投げた、その時だった。「痛ぁ、何さらすねん、このボケェー」 鞄が喋った・・・訳ではない。鞄の中から怒鳴り声がした。聞き覚えのある声、さっきのおっさんだ。「全く、近頃のガキは何考えとんねん」 おっさんはぷりぷり怒っているようだった。「いや、あ、あの、まさか鞄の中になんて・・・」「何や、お前、言い訳でもする気か。張り倒したろかっ。それより早くここから出さんかいっ。わたたたた、危ないのぉっ、ワシを殺す気かっ」 倒れた鞄を起こした拍子に、鞄の中身の何かがおっさんを直撃したらしい。鞄を開けると、おっさんは真っ赤な顔をして出てきた。「乱暴なやっちゃなぁ。ちと丁寧に扱えやっ。物はもっと大事にせえ」 どう見ても上手に出来た人形ではない。幻覚とか錯覚でもないと思う。 今、確かにここに居る。私はおっさんを凝視した。「何やその目は。そんなにワシが怪しいか」「怪しいっていうか、何者? なんで私の鞄の中にいたの?」 おっさんは頭をぽりぽり掻きながら、面倒くさそうな顔で言った。「何者って言われてもなー、こういうモンや。見ての通りや。で、なんでお前の鞄の中に居たかっちゅうと、バスん中でな、気持ち良うなってきてうとうとしてきたからや」「何でうとうとしてきたら、鞄に入るの?」「分からんやっちゃなぁ。あのな、あのまま寝てもうたら、お前、自分がバス降りるときにどうやってワシを起こすんや。他の奴にはワシの姿は見えんのやから、ここで降りるよとか言うて声かけるわけいかんやろ。しかも誰かがワシの寝ているところへドカンと座ったらどうするんや。ワシ、ペチャンコかいな。はい、寝たままお陀仏ぅーちゅうわけにはいかんやろが。だからお前の鞄に入ったちゅう訳や。これならお前がどこでバスを降りようと、ワシは安全に寝たまま移動できるやろ? 我ながら賢い選択や」 おっさんはドヤ顔で、ふふんっと鼻を鳴らした。 (続く) ※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。更新情報は 楽天プロフィール・ぽあんかれ Amebaなう・ぽあんかれ Twitter・ぽあんかれ @poincare_tweet ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ご訪問、ありがとうございました^^今回はブログやtwitterで交流させていただいている島田妙子さんの本を紹介します。【送料無料】e love smile(memory.1) [ 島田妙子 ]【送料無料】e love smile(memory.2) [ 島田妙子 ]島田さんは子供の頃、継母と実父から虐待を受けていました。この本には島田さんの辛い実体験が綴られています。辛い日々を過ごしてきたにも関わらず、島田さんは今、継母も実父も恨まず、出会う人々、日々の出来事に感謝して生きています。虐待をしてしまう大人はその人自身も苦しみを抱えているだから子どもたちを守るために、まず大人の心を救おうと各地で幸縁(講演のこと)活動や執筆活動をされています。大人も子どもも、いい愛の笑顔になることが島田さんの願いです。島田さんの優しさと明るさとユーモアと逞しさに満ちた文章が読む者の心をフォローしてくれて、辛くなるだけの内容ではありません。機会があったら、ぜひ読んでみてください。島田妙子さんのブログはこちら くるくるミラクル 幸せくるくるそれではまた次回、お時間がありましたら、お付き合いくださいね。(*^^)v1日1回、世界の自然と子どもたちのために m(__)m 上のバナークリック → 協賛スポンサークリック → 世界の子供や自然を守る活動に1円募金 相当気ままなひとりごとブログ ※一部リンクは携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~Copyright (c) 2007 - 2013 “fragments”All rights reserved.
October 4, 2013
コメント(10)
前回までのあらすじはこちら おっさんはしばらく一人で喋っていた。「しっかしあれだのー、こうも毎日暑いとたまらんなぁ」とか、「エアコンちゅうのは涼しくてええのぉ。ここならよく眠れそうや」とか。 他の人にはおっさんの声は聞こえていないから、私が一緒になって会話するわけにはいかなかった。もっとも最初から相手にする気はなかったけれど。何者なのか正体は気になるけれど、気味が悪くて関わりたくないという気持ちの方が強かった。 なるべくおっさんから気を逸らしていたくて、窓の外に目を向けた。ほの暗いバスの窓ガラスから見る景色は、建物の壁やアスファルトの照り返しが強調されて、何もかもがギラギラと際立って見えた。「ん?」 しばらくして、おっさんの声がしていないことに気が付いた。隣の席を見ても、おっさんの姿がない。慌てて辺りを見回してみたが、どこにもいない。 消えた? それとも初めからいなかった? やっぱり私の幻覚だろうか。幻覚でなければ、妖怪、幽霊、宇宙人・・・。ダメだ、分っかんない。分かるはずがない。何だったのだろう。不安とも恐怖とも言いようのないザラザラしたものが私の胸をざわつかせた。 バスを降りたら翔太に電話しよう・・・と思った途端、いらないことを思い出してしまった。翔太は今頃、彼女と一緒にいるのだ。そんなところへ電話なんてできない。電話して、彼女と一緒だから後にしてって言われても、話し中で繋がらなくても、電池切れとか電源が入っていないとか、電波の届かないところにいるってアナウンスされても、仮にメールやLINEにしたところで、すぐに返事が来なければ、すぐに返事が来たとしても素っ気なかったら・・・どれもこれも私をいっそう空しくさせそうな気がした。 さっきおっさんは「失恋したか」って言ったけれど、そうじゃない。翔太に対する気持ちは恋ではない。私たちは仲の良い幼馴染、それだけ。ただそれだけだけど、その関係が崩れていきそうで嫌だった。寂しかった。怖かった。 でももっと嫌なのは、こんなことに落ち込んでいる自分だった。翔太が悪い訳でも、彼女が悪い訳でもないのに、翔太のことも彼女ことも恨んでしまいそうな自分。ダメだ、自己嫌悪。 翔太のことは考えないようにしよう。 こうなりゃ気を紛らわすためにも、徹底的にさっきの小さいおっさんの正体を追及してやる。だいたいおっさんは、自分のことを「追い追い話す」って言ってなかったっけ? それなのに、どこへ消えたの?「市立図書館前、市立図書館前。お降りの際はお忘れ物のないようご注意ください」 家に一番近いバス停まではあと二つあるけれど、私はそこでバスを降りて図書館に向かった。「パソコン、借りていいですか?」「ではこちらの用紙にご記入ください」 ネットで調べれば、同じような体験をした人の書き込みもあるかもしれないし、きっと何か分かるに違いない。私は貸出カウンターで手続きをして、館内にあるパソコンの前に座った。パソコンの電源を入れると、静まり返った館内にブゥンをいう機械音が小さく響いた。 早速、検索してみようと思ったが、何て検索すればいいのか分からない。仕方がないので素直に「小さいおじさん」と入力してみた。 すると驚いたことに「小さいおじさん」に関する情報は、ネット上に溢れていた。どうやら都市伝説になっているらしい。何人ものタレントや有名人が見たとか、ストラップが発売されているとか。 じゃあ本当に存在しているの? 見ると幸せになるとも書かれているけれど、そうなの? さらに混乱してきた頭で先を読む。『何らかの未確認生物の可能性はあるが、実際には肉体および精神的な疲労などを原因とする幻覚と指摘されている。』 ああ、やっぱり。やっぱりそうだよね。 他のサイトにもだいたい同じようなことが書いてあった。かなり胡散臭いものもあったけれど、中には私が見たのと同じ「緑色のジャージ」を着ていたというものもあって驚いた。会ったことも見たこともない人が、自分と同じような幻覚を見たという奇跡的な偶然の一致。こんなことってあるの? あれは本当に幻覚? あんなにリアルに動いて、喋っていたのに。 幻覚と決めつけて、安心しようとしている自分と、幻覚ではない証拠が見つからずにがっかりしている自分、その両方が私の中で混在していた。 (続く) ※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。ご訪問、ありがとうございました 9月22日、サザンの宮城LiveをWOWOWの完全生中継で堪能しました~小学生の頃からファンだったサザンやっぱいいサイコーその後は「半沢直樹」の最終回見た人いますか?あれってどうなんでしょう、あの終わり方。あれは間違いなく「半沢直樹 2」への布石・・・(-_-;)それはそうと、半沢の切り札、黄門様の印籠、毎回出し方が似てるな~と思っていたのは私だけでしょうか?それでは、また次回お時間がありましたら、お付き合いくださいね。(*^^)v 1日1回、世界の自然と子どもたちのために m(__)m 上のバナークリック → 協賛スポンサークリック → 世界の子供や自然を守る活動に1円募金更新情報は 楽天プロフィール・ぽあんかれAmebaなう・ぽあんかれTwitter・ぽあんかれ @poincare_tweet 相当気ままなひとりごとブログ※一部リンクは携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。Copyright (c) 2007 - 2013 “fragments”All rights reserved.
September 22, 2013
コメント(13)
前回までのあらすじはこちら 「ひっ」 思わず体がのけ反る。さっき声をかけてくれたおばさんは、それを見逃さなかった。「あなた、本当に大丈夫?」「あ、あの」 助けを乞うような気持ちでおばさんに顔を向けると、「あのな、騒がん方がええ。お前のためや。騒ぐとややこしいことになるで」 おっさんがドスのきいた低い声で言った。「お前にはワシが見えとるらしいが、このおばはんには見えてない。恐らく、このバスの中で、ワシの姿が見えとるのはお前だけや」 確かに、おっさんがここにいるのに、ここで喋っているのに、おばさんの心配そうな視線は、真っ直ぐ私に向けられている。 他の誰にも見えていない、二十センチくらいの小さなおっさん。って、え、何? 何なの? これは・・・夢? 幻覚? それとも心霊的な何かとか、妖怪の類? 頭の中は相当パニクっていた。「あの、ちょっとお聞きしますが」 引きつった顔でどうにか絞り出した声はか細く、妙にうわずってしまった。「何?」 おばさんが身を乗り出してくる。「えっと、ここに、私の隣の席に、何かいませんか?」「ちっ」 おっさんは面倒くさそうな顔で舌打ちをした。「そこに何かいたの? 何もいないようだけど」 おばさんは、私の隣の席を覗き込んだ。「せやから言うたやろ。ワシのこと言うても無駄や。このおばはんには、見えてないんやって」 おっさんは吐き捨てるようにそう言った。「さぁ、どするんや。ここにダンデイな小さな男性がいます、とでも言うてみぃ。人間は目に見えんもんはなかなか信じようとせんからな。お前、気味悪いやっちゃなぁとか思われるだけや。かかかか」 面白そうに笑うおっさんは、見た目、決してダンディではなかった。いや、そんなことはこの際どうでもいい。おばさんにはおっさんの姿が見えていないだけではなく、声も聞こえないらしい。「しっかしおばはんには見えてないとは言え、こうもジロジロ視線を向けられるちゅうのも気色のええもんやないなぁ。おい、お前、大丈夫や言うとき。さっき虫がいたような気がしたんですけどぉ、とか何とか言うて適当に誤魔化しておけ。言うとくけど、ワシ、怪しいもんやないで。結構、ええ奴やで」 どうしたらいいのか、頭の中も気持ちも全く整理がつかない。でも見ず知らずの私を心配してくれているこの親切なおばさんに何か言わなきゃ、このまま心配させたままじゃ申し訳ない。それにこれ以上おばさんに何か聞かれても、私にも訳が分からないのだから答えようもない。「はよう、せえや。おばはん、椅子の下まで覗いてはるぞ」 もうどうしたらいいのか自分の頭では考えられなかった私は、とりあえずおっさんの言った通りにすることにした。「あのぉ、さっき、ここに虫か何かいたように見えて、それで、あの、びっくりしたんですけど、よく見たら何もいないみたいだし、きっと、影か何かを見間違えたんだと思います。すみません」「そやそや、その調子や。おばはん、探すの諦めたみたいやな」 おばさんはゆっくりと顔をあげた。「だから、あの、もう大丈夫です。あ、あと、ちょっと寝不足なんで、顔色が悪いのは多分そのせいなので、大丈夫です」 親切なおばさんに嘘をついてしまって、なんだか心苦しかった。「そう? 何かを見間違えたのかしらね。でもあなた、本当に顔色良くないから、今日は早目に休んでね」「はい。あ、ありがとうございます」 おばさんはにっこり笑って、何事もなかったように前に向き直った。「優しいおばはんやなぁ。お前も見習え」 三つ目のバス停で、そのおばさんは私に軽く会釈をしてバスを降りた。さっきまでおばさんがいた席にサラリーマン風の男の人が座ったが、やっぱりおっさんには全く気が付かない様子で、すぐに鞄から取り出した本を読み始めた。いくつかのバス停で数人の乗客がおっさんのそばを行き来したが、誰一人として緑色のジャージを着た小さなおっさんの存在に気付く人はいなかった。「そう怖がらんでもええがな。さっきも言うたが、ワシは怪しいもんやない。詳しいことは、まぁ、おいおい話したるわ」 その姿が見えているのも、声が聞こえているのも、私だけだった。 (続く)※この作品はフィクションです。 登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。ご訪問、ありがとうございました バンザーイ!! \(^o^)/ 祝・連載2回目!!どうにか無事2回目もUPできましたwwwでもなかなか話が進まんなぁ…(^^;)先週の1回目をUPして以降、初めましての方や、「poincare」以来ずーっと交流のある方とまた繋がりが持てたこと、心から感謝していますみなさん、ありがとうございます。しっかしながら、やっと子どもたちの夏休みが終わりましたが、運動会やら修学旅行の説明会やら、秋は学校関係が忙しい。><;今は次の日曜日、息子の中学の運動会が延期にならずに無事、実施されて終わることを祈るばかり。順延でまた翌日も朝早くからお弁当作りは何としても避けたいどうか雨にならず、かと言って暑くなり過ぎませんように時間がありましたら、また次回、お付き合いくださいね。(*^^)v 1日1回、世界の自然と子どもたちのために m(__)m 上のバナークリック → 協賛スポンサークリック → 世界の子供や自然を守る活動に1円募金更新情報は 楽天プロフィール・ぽあんかれAmebaなう・ぽあんかれTwitter・ぽあんかれ @poincare_tweet 相当気ままなひとりごとブログ※一部リンクは携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。Copyright (c) 2007 - 2013 “fragments”All rights reserved.
September 13, 2013
コメント(9)
八月の空は青く、マンションの向こうに見えている入道雲は眩しいほどに白い。公園の木々は鬱蒼と生い茂り、濃い影をアスファルトの道路に落とす。 人も車もほとんど通らない坂の途中。耳をつんざくような無数の蝉の鳴き声は、まるで意識をはるかかなたへ沈めてしまう呪文。気が遠くなりそうだ。 バスはまだ来ない。 早く来てくれないと、泣いてしまいそうだった。 昨日まで部活の後、いつも一緒に帰っていた翔太は、今日からは彼女と一緒に、わざわざ彼女の家の方を回って帰る。好きな子がいるなんて一言も言ってなかったのに。急に彼女ができたなんて。ズルイ。 翔太とは家が近所で幼稚園からずっと一緒だった。二人とも中学で吹奏楽部に入って、県内ではトップクラスのブラスバンド部がある高校を、一緒に目指して受験して、入学して、入部して、今日まで毎日楽しくやってきたのに。 バカだなぁ、私。そんな日々がずっと続くと思っていた。そりゃあ、付き合っていたわけでもないし、お互い好きだとか意識していたわけでもない。 でも、何て言うか、私たちは特別な関係だった。相手の気質とか好みとかよく理解し合っていて、二人だけの共通の思い出とかも多くて、他の人が簡単には割り込めないような特別な関係。少なくとも私はそう思っていた。 けれど翔太の彼女は、そんな私たちの間にするりと入り込み、いとも簡単に翔太を連れ去った。 一人でバスを待つ時間は、いつもよりずっと長く感じる。公園の蝉がこんなにやかましく鳴き立てていることにも、今日初めて気が付いた。「なんや、半べそかいてるんか? さてはねえちゃん、失恋したか?」「は?」 ふいに話しかけられて声のした方を見る。男の人、結構なおじさんの声だった。でも誰もいない。空耳? 注意深く耳を澄ましてみても、相変わらず蝉がシャーシャーとうるさいだけだった。待ち侘びるバスの近付く音すら聞こえない。 今のは幻聴? だとしたら私、熱中症かも。慌てて鞄の中からスポーツドリンクの入った水筒を取り出し、ゴクゴク飲んだ。「はー」 冷たさが胸の奥まで浸み込んでいく。ため息とともに肩の力が抜けた。抜けるような空の青さが、かえって辛い。「元気出せや。男はなんぼでもいるやろ。ねえちゃんさえ、選り好みせんかったら、速攻ゲットや」 また聞こえた。かなりハッキリと。いくら辺りを見回しても、私の他には人っ子一人いない。ぞわっと鳥肌が立った、その時だった。「こっちや、こっち。とは言うものの、あんたには見えんだろうけどな」 かっかっかっ、とバス停のベンチの下から高笑いが聞こえてきた。慌ててベンチの下を覗き込むと、いた、おっさんが。それも身の丈二十センチくらいの、とても小さなおっさんが、上下緑色のジャージ姿で立っている。 今度は幻覚? だとしたら私、かなり重症な熱中症? やばくない? 鼓動が半端ない速さで、体の中から私を叩く。小さいおっさんは真顔で私を見ている。無数の蝉がその鳴き声に、自身の運命を託して大気を震わす。気が遠のいていきそうだった。 バスが来た。私は何が起きているのか理解できないまま、乗車口に駆け込んだ。崩れ込むように座席に座り、窓からもう一度、ベンチの下を確かめようとしたけれど、角度が悪くて覗くことはできなかった。「ドアがぁ閉まりまーす」 バスが走り出す。引き返してもう一度確かめたいような、怖いような。何だったの? あれはいったい。「あなた、大丈夫? 顔色悪いし、寒いの? 震えているみたいだけど」 通路を挟んだ席に座っているおばさんが、声をかけてくれた。「あ、はい、大丈夫です。ありがとうございます」 それだけ言うのが精一杯だった。 翔太に彼女ができたのもショックだったし、連日の猛暑だし、きっと疲れているせいだ。そうそうゆうべ夜更かしして、寝不足ってのもある。そう自分に言い聞かせていたとき、何かが視界の隅で動いた。 それは平然と私の隣に座った、というか跳び乗った。髪の薄い、緑色のジャージを着た小さなおっさん。さっきベンチの下で見た、おっさんだった。 (続く)※この作品はフィクションです。 登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。ご訪問、ありがとうございました 時間がかかりましたが、ようやく復帰連載1回目までこぎつけました。(^^;)途中まで書いていた「ユークリッドの平行線」は先日書いたように、休止します。もっと寝かせて、熟成させてから、最初から書き直そうと思います。今回は女子高生と不思議なおっさんの物語。設定はフィクションですが、この数年間、私が体験したこと感じたこと考えたことを織り込みながら人と人の間(ま)をテーマに表現していきたいと思います。今度は最後まで書き上げられるように、気楽に温かく見守っていただければ幸いです時間がありましたら、またお付き合いくださいね。(*^^)v 世界の自然と子どもたちのために m(__)m 更新情報は 楽天プロフィール・ぽあんかれAmebaなう・ぽあんかれTwitter・ぽあんかれ @poincare_tweet 相当気ままなひとりごとブログ※一部リンクは携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。Copyright (c) 2007 - 2013 “fragments”All rights reserved.
September 6, 2013
コメント(12)
随分長い間、ブログをお休みしていました。この間、何度も復帰しようと準備しつつ、そのたびに色々あって、何度も何度も挫折しましたけれど細々ではありますが、どうにかこうにか準備して今度こそ再開を迎えるところまでこぎつけました以前、途中まで書いていた「ユークリッドの平行線」ではなく新しい物を連載していこうと思っています。「ユークリッド」は実際に私が体験したことを物語として書いていましたがまだまだ私の中で物語としての熟成が足りず、どうも体験レポート的な感じになってしまったため、私の中でしっかり温めて、いつか形にしたいと思います。今週の金曜日の夜、新連載をUPする予定です相変わらず拙い物語ではありますが、ご覧いただけたら嬉しいです。ご意見・ご感想・読み逃げ、大歓迎です(*^^)vブログの更新情報もTwitterブログパーツご訪問、ありがとうございました ご協力お願いします。m(__)m 別館・気ままなひとりごとブログ※一部リンクは携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。Copyright (c) 2007 - 2013 “fragments”All rights reserved.
September 4, 2013
コメント(2)
どこかで誰かが 今朝目覚めたとき私は気持ちのいいシーツの上にいました夏の暑い夜でも心地よく眠れる接触冷感で吸湿速乾の淡いブルーのシーツの上で気持ちよく目覚めましたどこかの誰かが開発してそれを誰かが製品にして写真に撮った人がいてそれを原稿と一緒に受け取った人がどこかの誰かが考案してどこかの誰かが作った部品をどこかの誰かが組み立ててできた印刷機で誰かが印刷したものを誰かがカタログにしてそれを誰かが私の家に配送してそれを見て「これ、いいな」と思った私が誰かが更新した通販サイトで申し込んで旦那が稼いでくれたお金で買ったシーツです起きてから私は家族の朝食を作りましたガス屋さんが供給してくれるガスで卵を焼き家電メーカーで働く誰かが作った炊飯器で電気屋さんが供給してくれる電気で市の水道局が供給してくれる水を浄水器メーカーの誰かが作った浄水器で浄水にして農家の人が作ったお米を炊きました誰かが育てた大豆 誰かが作った塩それを誰かが使って作った味噌を使って誰かが作った鍋に水道局と浄水器メーカーの人のおかげで美味しくなった水を入れてガス屋さんのガスで沸かして誰かが採ったワカメで味噌汁も作ったし誰かが育てた梨を誰かが作った包丁とまな板で切ってむいて誰かが作ったお皿に入れて誰かが作ったテーブルに並べましたそしてたくさんの誰かさん達のおかげで出来た朝食を食べて夫も子どもも 今日も元気に出かけましたそれから私は誰かが育てて誰かが商品にした紅茶を淹れ誰かが採って 誰かが瓶に入れて誰かがお店に運んで 誰かが売っていたハチミツをほんの少し入れてそれを飲みながら誰かが作って 家電量販店に誰かが運んで誰かがおすすめとして売ってくれたテレビで誰かが撮影 誰かが編集誰かが電波に乗せたニュースで自分の頑張りを多くの人が支えてくれたという金メダルを取った選手の笑顔を見て私も笑顔になりました誰かが作ったパソコンそれを考えこの世に誕生させてくれた人誰でも使いやすいように改良してくれた人その部品を作った人その人達が働くのを支えた人その人達の生活に必要な物を作った人 売った人たくさんの誰かさん達そのおかげで私は友人からのメールに笑いましたネットにアップされたステキな写真に感動しおもしろい話につい吹き出し子どもへの虐待を無くそうと積極的に活動する人のブログに突然子供を奪われてしまった人のために自分の時間を費やして親身になって頑張る人のブログにネットで私に出会ったことを喜んでくれた人に出会い 励まされ 元気になって嬉しくなって喜べるのですお隣の家の赤ちゃんが可愛くて近所の庭の花がとてもきれいで「おはようございます」と笑顔で言われて掃除機が掃除を楽にしてくれてお店にステキな絵が飾ってあって心地よい音楽が流れていてタウン紙で見たお店のランチが美味しくて子ども達がテレビを観てゲラゲラ笑ってそうやって今日も明日も明後日もたくさんの誰かの生活が私を支え 楽しませてくれるのです今朝私が作った朝食を食べいってらっしゃいと送り出した夫が誰かの家を修繕し 大家さんや住人の方の希望に少しでも応えられたら私の子ども達が今日も友達と楽しい時間を過ごしその友達がそれぞれの家に帰って今日あった楽しい話を笑顔で家族に話しそれを聞いたその子達の家族が一日の疲れを癒し愉快な気持ちになれたらそんなふうに私の生活もどこかで誰かを少しでも支えられたらいいな見えないけれどみんなどこかで繋がっていてたくさんのどこかの誰かの生活がどこかでたくさんの誰かの支えになっている今日も明日も明後日も ずっと 写真は誰かが考案して 誰かが作って誰かが店頭に運んで並べて売っていたデジカメで、私が撮った写真。つーか、長々と誰か、誰かってしつこい?!自分で読み返していて面倒になった。笑ちゃんと最後まで読んでくれた方、ありがとうございます。m(__)m twitterそこそこつぶやいてますよ♪ Twitterブログパーツ ぽあんかれ (*^^)v Copyright (c) 2007 - 2012 "fragments""poincare ~ポアンカレ~" All rights reserved.
August 9, 2012
コメント(5)
s-hoshino.com こどもたちの未来のために 大きなおひさまが西の空をゆっくりと降りていくたしかな温もりは今日を生きた証かがやきながら明日へと向かうときひとの心にその優しさはろうそくの灯のようにそっと寄り添う さあ ZEROから一緒にまずは初めの一歩こどもたちの未来のためにどんなに小さなことでももう少しだけでもいいからたくさん集まれば大きな力になると信じてちいさな名もなき花がのはらを埋め尽くして咲くように未来にたくさんの優しさが花開くようにらくに行くとは思っていないけれどいま始めなきゃ いま進まなきゃのぞみという名の種を持って生きるたくさんの人たちとともにめが出るその日を迎えるためににじを架けよう みんなに みんなでリアルの世界でお引越ししました。 引っ越してから2ヶ月くらい経つのですが...なんでまだ段ボールの山が片付かないんだろう?...片付けないからだよね。f(^^;)ぼちぼち片付けながら、ブログ復帰の予定ですが「ユークリッドの平行線」の続きをそのまま書くのもなぁ...当時、ただ過去を振り返ってまとめてただけなので実は「poincare」のときと違って書いていてもあまり面白くなかった生意気ながら、どうも「小説書いてる」って気にならなかった。(^^;)いずれにしても「ユークリッド...」は書きたいテーマだから最初から書き直して連載するかあるいはこの3年間、温めてきたものであらたに連載始めるか、ただいまあれこれ検討中。でも、ホント、いい加減、復帰しないと~ネット復帰はちょろちょろしてるんだけどねアメブロでは、下記のグルっぽに参加しました。 子どもたちの未来を大切にするための会 [Amebaグルっぽ ]原発はやっぱり無くしていきたいです。(-_-)/ おーい!止めたいママアクション☆大飯原発再稼働とめてください!twitterそこそこつぶやいてますよ♪ Twitterブログパーツ ぽあんかれ (*^^)vCopyright (c) 2007 - 2012 “fragments”“poincare ~ポアンカレ~” All rights reserved.
June 22, 2012
コメント(9)
小説・詩 Photo by (c)Tomo.Yun緑色の太陽君にも届くはずさ奇跡を起こす光が目を閉じて暖かな香りに顔を向けてみて何も心配しなくていい何も考えなくていいただ暖かな香りで胸を満たせればほらもう感じられる夕闇に力を振り絞って輝くグリーンフラッシュ今、君とともにまだまだ忙しい日が続いていますが、なんとなく終わりが見え始めたというか、少しは余裕みたいなものができてきたような(^^)で、ぼちぼち始動かな~ということでとりあえずtwitter始めようかと@poincare_tweetよかったらフォローしてください ぽあんかれ (*^^)vCopyright (c) 2007 - 2012 “fragments”“poincare ~ポアンカレ~” All rights reserved. ※迷惑コメント対策で「http:」を禁止ワードに設定しました。 URLをご記入の際には「http:」とご記入にならないよう、お願い致します。
February 29, 2012
コメント(5)
小説・詩ふんわりと優しい風は今こそしっかりと踏ん張ってまだ大地は冷たいけれどやがて命目覚める春が来る凍えてしまうような嘆きも降り積もる悲しみもいつか姿を変える日が来る忘れないで 顔を上げて一緒にやるから 徐々にでもいいからもう少しだけ頑張って花びらいっぱいに陽光を受けて甘い香りを放つ日に向けて寒空にかじかんだ蕾は今を耐えて膨らみ始める春はまた来る 花がまた咲くふんわりと優しい風はもうあなたに向かって吹き始めている今、辛く苦しい中を頑張っておられる全ての人に安らかで穏やかな日々が訪れることを心からお祈り致します一緒に頑張りましょうえっと…お久しぶりです。大変ご無沙汰しております。一年以上ほったらかしにしちゃってます…(-_-;)ほったらかしになっているにも関わらず、コメントやメッセージをくださった皆さん、ありがとうございます! 心からお礼申し上げます子供の学校の役員を引き受けて、三年目に突入します。どうせやらなきゃならないなら、どんなことも楽しもうと思い二年間自分なりに頑張ってみました。二年目には一年目には見えていなかったことも色々考えるようになって、それにともなって忙しさも加速…それでも昨年の秋には一段落つくかな~と思っていたのが甘かった!(>_
March 26, 2011
コメント(11)
愛媛に引っ越してからも横浜へは何度も帰省しているが、乗り換えのため横浜駅で降りると育樹は私の腕にしがみついてきた。 いくつも並んだ改札口から次々に吐き出される人々は、広い地下道を埋め尽くし、洪水のようにうねりを上げて絶え間なく流れて行く。 その様子に育樹はいつも怖気づいていた。 愛媛でも中心部の松山ならそれなりに人も多いが、さすがにここまでの人ごみはそうはないし、ましてや今住んでいる町では大きなお祭りでもない限り、これほど大勢の人々を一度に目にする機会はなかった。 流れにさらわれて迷子にならないように、顔を強張らせてしがみついてくる育樹とは反対に、私はこの光景を見ると、横浜に帰ってきたことを実感してどこかほっとしていた。 濁流のような人ごみの中に一旦身を投じてしまうと、まるで水を得た魚。行き交う人々の間に生ずる僅かな隙間をするりと抜けて、自分の行きたい方向へ縦横無尽に突き進む。それは何とも言えず心地良かった。 こういうのも「郷愁」と言うのであろうかと、ふと可笑しな気持ちになる。 石川啄木の短歌に「ふるさとの訛りなつかし停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく」というものがある。啄木に遠く離れた故郷を思い出させたのは、人ごみではなく、そこに混じっている同郷の人の訛りであった。同郷の人の訛りを頼りに啄木は故郷の緑豊かな山々や、そこを吹く澄んだ風や小川のせせらぎなどに想いを馳せていたのであろう。 それこそが私が思い描く「郷愁」というイメージだった。だからこんなごちゃごちゃした人ごみに懐かしさを覚えてしまう自分が、どこか不健全な気がしてならなかった。 けれどさすがに今回は違っていた。 帰省の理由が理由だっただけに、人ごみに紛れても少しも気持ちが高揚してこない。それどころか、かえって気がめいってきた。 一刻も早く母や父の病院に行かなければならないと思う反面、足取りは重く、駅構内に溢れる人波を煩わしいとさえ感じていた。 同じものを目にしても、その時の心のあり方で随分感じ方が変わるものだ。「ここで切符買うからね」「まだ電車乗るの?」「あと一つだけ。二十分くらい乗ったらお終いだから」 後になってみれば、この前日からの出来事など、これから直面することに比べたらたいしたことではなかった。 だがあの時は、いっぱいいっぱいになっていた。どうしてあんなに気に病んでしまったのだろう。 結局のところ私は現状を把握はできていても、それを受け入れることができていなかった。 毎朝、家族を「いってらっしゃい」と見送り、家事の他は友達とお茶をしたり、自分の趣味を楽しむだけの日々に、急に空から巨大な氷柱が降ってきてどすんと突き刺さったような気分だった。 恐らく孝之も私と同じだったのではないだろうか。 孝之には昨夜もう一度電話して私と育樹が横浜に行くことを伝えた。夜になっても孝之の興奮した状態は治まっていなかった。異常なほどの饒舌さは、昼間電話した時と変わっていなかった。「明日はね、病院の、デイがある日なの。デイ・ケア。分かるよね? 朝早いんだ。六時には家を出るから」「そんなに早く行くの?」「うん。いつも、そう。あのね、七時過ぎちゃうと、朝は、ほら、通勤ラッシュが始まるでしょ。僕ね、あれが嫌いなの。だからその前に、電車が空いているうちに行きたいから。それに、始まるまで、だいぶ時間があるけど、他の人もね、結構早く来て、缶ジュース飲んだり、煙草吸ったりしてる」 孝之がデイ・ケアに通う病院までは、電車と徒歩で合計一時間程かかる。午前九時から始まるデイ・ケアに間に合うように行くには、七時・八時台の通勤ラッシュを避けると、そのくらい早い時間に出なければならない。「それで帰ってくるのは何時頃?」「帰ってくるのはね、夕方。だいたいいつも、四時か五時ごろ。お昼も、デイで食べるから。だから明日は、家に誰もいないし、鍵がかかってるけど。僕の鍵は自分で持ってる。お母さんね、お母さんの鍵、病院に持って行ったみたいなんだ。どこにもないの。僕の鍵、どこかに置いて行こうか?」「ううん、いいよ。着いたらそのままお母さんの病院に行くつもりだから、その時お母さんに聞いて、もし鍵を持っているようなら借りて行くし、なくてもその後、お父さんの病院に寄ってから行くから、多分家に着くのは五時過ぎになると思う」「分かった。僕も、なるべく早く帰るようにするから、明日は。ご飯はどうする? 炊いておこうか? ああ、でも、僕、明日は朝早いから炊けないや。保温にしておくとね、電気代がかかるでしょ。だから、いつもスイッチ切っちゃうんだよね。お母さんがそうしてるから。ご飯が炊けたらね、スイッチ切っちゃうの。朝、炊いてもいいんだけど、そうするとね、スイッチ切らなきゃいけなくなるでしょ? だけどね炊けるのを、待っていたら、デイの日だから、遅くなると困るんだ」 途切れ途切れの短い言葉が孝之の口から、数珠つなぎになってぽろぽろ続いた。それはまるで心に溜まった何かを、必死に押し出しているかのようにも思えた。だから出来るだけ口を挟まず、ただ耳を傾けて孝之の言葉が終わるのを待った。言葉の深くに横たわる孝之の心の音を漏らさないように、慎重に、私の心の内に響かせるように、受話器から聞こえる声に耳を澄ました。 そうやって孝之の心に突き刺さった氷柱の大きさを、なんとか知ろうと必死になっていた。(つづく)※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。ご訪問、ありがとうございました よかったら、応援を♪^^ 本編の補足 精神科デイケアとは|介護ことば辞典[介護110番]より今回も、本のご紹介 ■丹羽晃成さんの本『「テル」という生き方』■丹羽晃成 著税込価格:1,470円 出版社/発売元:文芸社自分を取り巻く環境をバネに、恩師や仲間との絆を大切に夢を実現させていく「テル」の軌跡を描く自伝小説。「ひまわりの喫茶店」のCHAKO♪さんの旦那様丹羽晃成さんの作品です。私も拝見させていただきました♪何かと自分の境遇のせいにしたり、そのことで愚痴ってばかりの方もいますが、幸せになるにはそんなこと言ってる場合じゃないし、自分の境遇なんて、さほど関係ないんですよね。なんてことを思いながら読ませていただきました。^^お求めは、クロネコヤマトブックサービスまたは、楽天ブックス・最寄の書店でさて、ちょっと前の話ですが、1/9(土)に放送されたNHKの「追跡! A to Z なぜ繰り返される ペットの悲劇」皆様はどう思われましたか?私は放送前に取材協力した方の書いたものを拝見する機会があったのですが…ドイツでの取り組みは、日本もそうすべきと思いましたが、「どうして猫の里親詐欺が起きたのか、 どんなふうに解決していったのかの話は?」と不完全燃焼。この番組に協力した方の思い、猫の里親詐欺を繰り返した男性とのやりとり 等当日放送されなかった様々な事実。リンクを交えて私の思ったことを別館にまとめました。良かったらご覧ください。NHK「追跡!A to Z なぜ繰り返される ペットの悲劇」1月9日 放送今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)v別館・気ままな日常ブログ※一部リンクは携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。Copyright (c) 2007 - 2009 “fragments”All rights reserved. ※迷惑コメント対策で「http:」を禁止ワードに設定しました。 URLをご記入の際には「http:」とご記入にならないよう、お願い致します。※基本的にいただいたコメントに対するお返事は、ブログやホームページをお持ちの方で 私がURLの分かる方は、お邪魔してお返事させていただいてます。 ブログやホームページをお持ちでない方、またはURLの明記は避けたい方のみ 私のブログ内のコメント欄でお返事させていただきますので、 お手数ですが後日お返事を見に来ていただけると嬉しいです。^^ 尚、こちらからの訪問・お返事は遅れることが多いのでご了承ください。
January 26, 2010
コメント(135)
夜になって帰宅した夫と話し合い、育樹は私が連れて行くことにした。 ちょうどいい機会だから最近気になっている様子についても、育樹が生まれてすぐ入院した横浜の病院で診てもらえばいいだろうということになった。もし向こうで時間的な余裕があればの話だが。 一週間も学校を休ませるのはどうかと思ったが、体調が心配だったし、授業に遅れてもまだ一年生だからそれ程難しい内容ではないので、後から追いつけるだろうと判断した。 だが、豊樹はそういうわけにはいかない。四年生の三学期に一週間も学校を休ませていては後から授業に追い付くのが大変になるだろう。だいたい豊樹本人には、一週間も学校を休む理由なんて何もないのだから。「えー、育樹だけ行くん? 俺も行きたいのに」 豊樹は思い切り不満そうな顔をしたが、すぐにこう言った。「でも横浜行ったら、みんなと遊べなくなるんかぁ。月曜日にデュエルの大会もやらんといかんし。俺、責任者だからなぁ」 デュエルというのは豊樹の友達の間で流行っているカードゲームのことで、企画から準備まで全て子供だけで進めた仲間内だけの大会が、来週開かれる予定だった。豊樹はその大会の言い出しっぺとして、大会委員長になっていた。 本物そっくりの賞状を作ったり、一人一個ずつ使わなくなったオモチャを持ち寄って入れた福袋もどきを優勝者への副賞にしたり、ここ数日はその準備に明け暮れている。 とは言え、本当は一緒に行きたいに違いない。夏休みに帰省した後、「次はいつ行くの? 秋? 冬?」としつこいくらいに言っていたのは豊樹だったのだから。「そうだよ、大会委員長がいなかったら、デュエルの大会もカッコつかないじゃない。それに今回は横浜に遊びに行く訳じゃないんだから」「うん、分かった。でも次に行くときは連れて行ってよ」 こういう時の豊樹は聞き分けが良かった。 生まれてから一歳になるまで育樹は入退院を繰り返していた。そのため豊樹は一番我が儘が言いたい時期から、たくさんの我慢を強いられてきた。 生まれてすぐに育樹が入院した病院は両親以外は病室に入れなかったため、豊樹を一緒に連れて行くわけにはいかず、いつも親戚に預かってもらっていた。病院には毎日通っていたので、私も豊樹といられる時間が限られる上に、家にいる時は家事に追われ遊んでやる暇もなかった。 それでも子供ながらに大変な状況を分かっていたのか、怒って駄々をこねたり大泣きして私を困らせることはしなかった。 そんな状況に慣れてしまったのかもしれない。寂しいと思う反面、そういう時に親を困らせてはいけないということを、豊樹はいつの間にか会得してしまったようだった。 大人を気遣い「俺なら大丈夫」と笑う豊樹が頼もしくもあり、親としては辛くもあった。子供の心はいつだって、いじらしくて愛おしい。「しばらく離れ離れになっちゃうんだから、今日は一緒に寝ようねー」 その日の夜、私はそう言って豊樹の布団の隣に自分の布団を敷いた。豊樹は「えー、しょうがないなぁ。別にいいけど」とまるで駄々っ子を迎えるような顔をして、少し照れながら笑っていた。 次の日の朝、夫と豊樹を送り出した後、子供たちが通う小学校に電話した。 育樹の担任に事情を話し、一週間ほど育樹を休ませることを告げた。豊樹の担任には昨夜手紙を書いて、今朝豊樹に持たせた。手紙には私が横浜に行くこととその間に何かあった場合の連絡先として私と夫の携帯の番号と、学校から帰宅し夫が仕事から帰ってくるまでの間、豊樹の世話をしてくれることになった親戚の電話番号を書いておいた。 その後、私は朝食の後片付けや今日の分の洗濯など、出かける前にできるだけのことはやっておこうと忙しく動いた。そんな私とは対照的に、今日からしばらく学校へ行かなくて済む育樹は、横浜に持っていくオモチャやマンガを楽しそうに選んでいた。 旅行気分で楽しんでくれるのはいいけれど、実家と二つの病院を行き来するだけの一週間、ずっと機嫌よく過ごしてくれるだろうか。いつもの遊び友達とも会えず、行く所も静かに大人しくしていなければならない病院ばかりで面白くはないだろう。 二階のベランダから見える空は、晴れて青く澄み渡っていた。空気が乾燥していて洗濯物が良く乾きそうな天気だったが、夫は今日も何時に帰宅できるか分からなかったので、洗濯物は部屋の中に干しておいた。「育樹、そろそろ出かけるよ。準備はいい?」 洗濯物を干し終えて下に降りると、育樹はリュックいっぱいにお気に入りのオモチャやマンガ、お菓子などを詰めていた。「ほら、こっちにはちゃんとゴミ袋も入れたし、ティッシュとハンカチも入れとるけん。予備のゴミ袋もあるし」 得意げにそう言う育樹は、リュックを背負いお茶を入れた水筒を首からかけて、まるで遠足にでも行くかのようだった。「遠足に行くみたいだね。でも遊びに行くんじゃないんだよ。じいじとばあばのお世話をしに行くんだからね」「分かっとるって」 無邪気な笑顔は、雑多とした不安を抱いていた私の気持ちを和ませるに十分だった。(つづく)※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。ご訪問、ありがとうございました よかったら、応援を♪^^ 本編の補足 「じいじ」「ばあば」という呼び方について※読まなくても大丈夫です。ご興味のある方のみどうぞ。さて、お礼と本のご紹介■ボーダーコリーの『パンチ』ちゃん見つかりました!!■情報提供・ブログへの転載など、ご協力ありがとうございました!良かった~※詳細は 「MARONEE&HARUSAME」ところてん6161さんのブログで■大西隆博さんの本のご紹介■以前、ご紹介した「太陽の欠片 月の雫」(文芸社)の著者大西隆博さんの新しい本が1/20に出版されます。発行:アニカ 定価:1,680円(税込)ISBN978-4-901964-17-3 C0037いじめがなくならない学校、なくせない先生へ。大西先生があちこちの学校で実施した対策や子どもたちにかけた言葉などのアドバイスが満載です。すべてのいじめをなくしいじめの起こらないクラスを作ってきた実績にまさる説得力はありません。どうぞ、お役立てください。いじめをなくしてください。詳細版元ドットコムにて予約受付中。書店発売日は2010年01月20日です。大西隆博さんのブログ「太陽の欠片 月の雫 大西たかひろのブログ」大西さんは現在教師をおやめになり、政治の方面から子供たちをとりまく環境を良くしていこうと活動を始められました。(楽天でのHNはzero0923さん)今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)v近況諸々 そこそこ更新中。最近、俳句にハマってます^^※一部リンクは携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。Copyright (c) 2007 - 2009 “fragments”All rights reserved. ※迷惑コメント対策で「http:」を禁止ワードに設定しました。 URLをご記入の際には「http:」とご記入にならないよう、お願い致します。※基本的にいただいたコメントに対するお返事は、ブログやホームページをお持ちの方で 私がURLの分かる方は、お邪魔してお返事させていただいてます。 ブログやホームページをお持ちでない方、またはURLの明記は避けたい方のみ 私のブログ内のコメント欄でお返事させていただきますので、 お手数ですが後日お返事を見に来ていただけると嬉しいです。^^ 尚、こちらからの訪問・お返事は遅れることが多いのでご了承ください。
January 16, 2010
コメント(48)
父に宛てたメールを何とか送信して、ほっと一息ついた時に育樹が帰ってきた。「ただいまぁ」 春になれば二年生になると言うのに、育樹は同学年の子供たちと比べて背が低く痩せていて、いつまでたってもやたらとランドセルが大きく見える。「お帰りぃ」 あどけない眼差しに答えながら、はっとした。そうだ、ここにもう一人、病人がいるのを忘れていた。「おやつは?」「手を洗ってからね」「はぁい」 育樹は生まれつき「肺動脈狭窄症」という疾患を抱えていた。肺動脈の一部が狭くなっているため、右心室から肺に送られる血液の通りが悪い。不幸中の幸いで、心音に多少雑音が混じるものの軽症だったので、普段の生活には何の制限もなかった。通院の必要もなく、年一回の定期検診を受ける程度。成長していく過程で血管が太くなるか、あるいは現状維持のままであれば問題はない。だが万が一、心臓の負担が大きくなるようなことがあれば血管の拡張手術をしなければならなかった。 病気と直接関係があるかどうか分からないけれど、育樹について気になっていることがあった。 今日は元気そうに帰ってきたが、ここのところ学校で何をしたというのでもないのに、たまに酷く疲れて帰ってくることがあった。起きているのもままならない様子で、くたっと部屋で横になったかと思うとそのまま何時間も熟睡してしまう。おやつどころか夕飯にも起きてこないことがあった。 もともと同年代の子供たちと比べて疲れやすいところがあったし、熟睡した後はいつも元気になっていたのであまり気にはしていなかった。だが育樹と同じような症状の子が、病院で調べてもらったら大変な病気だったという話を最近ママ友から聞いて、少し心配になっていた。 「肺動脈狭窄症」は重症になると、心不全を起こして、運動時の息切れや動悸、胸痛などがあると聞く。もしかしたら育樹の疲れも病気に関係があるかもしれない。ちょうど来週、年に一回の定期検診があるのでその時に聞いてみようと思っていた。 私が横浜へ行くとなると定期検診は先延ばしせざるを得ない。病院で診てもらわないまま、育樹を愛媛に置いて行ってしまって大丈夫だろうか。夫も一年で一番仕事が忙しい時期で帰りも遅く、車で片道一時間以上離れた松山まで行くことも多い。私の留守中に育樹の身体に何かあったら? それが学校にいる時や友達と遊んでいる時ならまだしも、今日みたいに兄の豊樹よりも一足早く帰宅して、一人きりの時だったら大変だ。 そうかと言って、何事もなければ元気な育樹を一週間も学校を休ませて連れていくというのもどうなのだろう? 手を洗いに行く育樹の背中を見ながら、私もおやつの用意をするためにキッチンに立った。プリンに添えるリンゴを切っていたら、携帯のメール受信音が鳴った。「育樹、リビングのテーブルの上にある携帯持ってきてくれる?」 メールの差出人は高校からの友人の藤崎美津子、件名は「訃報」だった。 慌ててメールを開いて言葉を失った。『突然ですが、今朝、まどかのお父様がお亡くなりになったそうです。』 まどかのお父さんのことを、懐かしく思い出していたのはついさっきのことだったのに。 あまりのタイミングにただ驚くしかなかった。 メールにはまどかのお父さんは昨年の夏に体調を悪くして、昔働いていた瀬賀浦中央病院に入院していたと書かれていた。つまり父と同じ病院ではないか。 そう言えばこの半年間、一、二回ほど簡単なメールのやり取りをしたくらいで、まどかとはほとんど連絡を取っていなかった。まどかは仕事もしていたし、家や子供のこと、お父さんの看病などでそれどころではなかったのだろう。 それにしても寝耳に水だった。父や母からも、病院でまどかに会ったという話は聞いたことがなかった。大きな病院なので、恐らく別々の入院棟にいたのであろう。 だとしても、年明けに入院した父とまどかのお父さんは、この数週間は同じ病院にいたということになる。偶然と言えばそれまでだが、何とも奇妙な感じが拭えなかった。『お香典は個人ではなく、友人一同という形でしたいと思います。麻実は遠方だから来られないと思うので、差し支えなければこちらで麻実の分を立て替えておきます。金額は後でまた連絡するね。』 メールにはそう書いてあった。 愛媛と横浜、普段ならそうさせてもらったかもしれない。だが、まどかのお父さんにはお世話になったし、最後のお見送りくらいしてあげたい。そして今回はそれが許される状況だった。偶然にも横浜に行く予定なのだから。「ねぇ、ねぇ、おやつ、まだぁ?」 先程からキッチンのテーブルに着いて、大人しく待っていた育樹の前にプリンのお皿を置いて、すぐに美津子に返信した。『実家の両親が二人とも入院していて横浜に行く予定なので、行ければお通夜か告別式に行きたいと思います。詳しい日程が分かったら教えてください。それと私の分のお香典もそのときに渡したいけど、美津子に渡せばいいの?』 美津子からの返信もすぐに来た。『了解しました。詳しい日程は分かり次第、すぐ連絡するね。それとお香典の件は私がまとめさせてもらうので、私にお願いします。』 一度しか着ないだろうけれど、喪服も持っていかないとな。そう思ってこの日の夜、キャリーバッグに喪服を入れた。まさか横浜にいる間にこの喪服に二度も袖を通すことになるとは、この時は夢にも思っていなかった。(つづく)※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。いつも見に来てくださる方も、今日初めてお越しいただいた方も、ご訪問、ありがとうございました よかったら、応援お願いします!^^ 年末年始にご挨拶をいただきながら、まだぽあんかれからの挨拶がない!どうなっとるんじゃいっ!!とおっしゃる方…、申し訳ありません少しずつしか訪問できず、順次回らせていただいてます。もう少し時間がかかるかと思いますが、ご了承ください。m(__)mさてさて、なんとか更新完了。f^^;友人のお父さんが亡くなったという知らせこのタイミングで受けたのはフィクションではありません。突然の訃報にも驚きましたが、たまたま父の入院先のホームページを開いて、そこで働いていた友人のお父さんのことを懐かしく思い出していた矢先のことでした。たまたま両親が同時に入院し、実家に戻ることになったので友人のお父さんのお通夜に行くことができて、そのために持って行った喪服を、今度は父の葬儀で着ることに…偶然だったのか、必然だったのか、まるでご都合主義の物語やドラマみたいな、ご都合主義の現実?事実は小説より奇なり…ですね。さて今回、補足をアメブロの「Monologue」に設けています。補足は読まないと本編が分からないというわけではないので、時間と興味のある方だけどうぞ。^^ 本編・補足「息子の病気について」それとにほんブログ村のランキングについて、何やら色々と情報が飛び交っていることを受けて、と、いつかどこかで書こうと思っていた私の気紛れで自分勝手なブログ訪問のスタイルについて、これもアメブロの方でまとめたので良かったらご覧ください。 「私からのブログ訪問・ランキングの応援について」ここにも少し書いておきますが、今後もランキングサイトに参加中のブログにお邪魔した際は、これまで同様、応援させていただきますが、コメント内に「ぽち♪」と書くのは止めました。「ぽち♪」と書いてなくても応援していますので、ご了承くださいね。^^迷い犬ボーダーコリーの『パンチ』ちゃん 2才 メス1/9 富士山スカイライン 西臼塚付近で行方不明詳細は「MARONEE&HARUSAME」ところてん6161さん今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)v徒然なるまま…※一部リンク先は携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。Copyright (c) 2007 - 2009 “fragments”All rights reserved. ※迷惑コメント対策で「http:」を禁止ワードに設定しました。 URLをご記入の際には「http:」とご記入にならないよう、お願い致します。※基本的にいただいたコメントに対するお返事は、ブログやホームページをお持ちの方で 私がURLの分かる方は、お邪魔してお返事させていただいてます。 ブログやホームページをお持ちでない方、またはURLの明記は避けたい方のみ 私のブログ内のコメント欄でお返事させていただきますので、 お手数ですが後日お返事を見に来ていただけると嬉しいです。^^ 尚、こちらからの訪問・お返事は遅れることが多いのでご了承ください。
January 9, 2010
コメント(31)
小説・詩beautiful winter ~ Do not lose ~会ったこともなければ 声を聞いたことすらない本当の名前も知らないし 住所も電話番号もメールアドレスだって知らないブログでの交流しかない あなたと私けれどいつだって 私の心の中には心穏やかな日々を取り戻そうと 今を闘うあなたがいる冷たい空気に浸された 白い世界であなたの息づかいは温かくきらきら きらきら 静かに輝きあなたから生まれた言葉は 澄んだ結晶を形作るこれからも そうでしょう?今を生きるあなたの心に 震えるような喜びが明日を生きるあなたの未来に 夢に見た小さな幸せが絶え間なく押し寄せる「時」がきっと来る美しい冬の始まりに 私の願いは必ず叶うphoto by 「こもれ日cafe」 葵(aoi) ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○よかったら、応援を…^^ いつもご訪問してくださる皆様も、今日、初めてご訪問くださった方々も、ありがとうございます取り急ぎ、ちょっとお知らせ12月23日、読売新聞と朝日新聞から合計1万枚の折込広告が、配布されます。それまでで構いませんので、転載できる方は上記画像を保存の上、ブログなどに掲載のご協力をお願いします。特に東京の台東区・荒川区、その近辺にお住まいの方、またはお知り合いがいらっしゃる方はよろしくお願いいたします。ワンちゃんが無事でありますように…情報元ブログ: *゜+hime&wan+゜* さん 心の雫 さん Akira's mind さんさてさて、「ユークリッドの平行線」更新が滞ってます。見れば分かるし、いつものことですが…^^;何とか年内にあと1回は更新したい…と思っています。更新していないにも関わらず、アクセス記録を見たらこの週末・週明けには結構なアクセスがあり、いつもならこのタイミングで更新しているので様子を見にきてくださっているのかと、勝手に思い込んで勝手に恐縮しています。笑今回もお知らせ記事のみUPしようかと思ったのですが、こんな詩モドキを書いてみたので載せることにしました。何が言いたいのか全く伝わらないかと思いますが、詩というより、“ひとりごと”なので「ふ~ん」って思って通り過ぎてください。^^;私にはこの“ことばたち”を どうしてもUPしなきゃならない理由があって…。私事ですので、ごめんなさい。理由はお聞きにならないでください。連載中の作品の間にお知らせ記事を挟むのに抵抗があって、いつもはコメントもご遠慮いただいて削除していましたが、今回は本編とは違いますが、一応私にとっては作品なので、削除するつもりはないのでコメントもです!^^本当はお知らせ記事などを含め、普段思っていることや感じたことなども書いてみようかと別ブログを立ち上げるべく動いてもいるのですが、ここだけでも思うように更新できないのに、はたしてブログ二つの管理なんかできるのかな…という不安ももしもう一つのブログが形になるようでしたら、こちらでお知らせいたしますが、当分は「準備中」ということでご了承ください。結果、「やっぱり止めました」になる可能性が限りなく“大”ですが。(-_-;)さてさて、もう目の前にクリスマス、そして大晦日。何かと忙しいこの時期ですが、楽しいイベントも盛りだくさん♪お体には十分お気をつけて、元気にお過ごしくださいね。では、頑張って「ユークリッドの平行線」続きを書きます~今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)vCopyright (c) 2007 - 2009 “fragments”“poincare ~ポアンカレ~” All rights reserved. ※迷惑コメント対策で「http:」を禁止ワードに設定しました。 URLをご記入の際には「http:」とご記入にならないよう、お願い致します。※基本的にいただいたコメントに対するお返事は、 サイトをお持ちの方で私がURLの分かる方は、お邪魔してお返事させていただいてます。 サイトの運営をされていない方、URLの明記は避けたい方のみ 私のブログ内のコメント欄でお返事させていただきますので、 お手数ですが後日お返事を見に来ていただけると嬉しいです。^^
December 21, 2009
コメント(42)
ようやく落ち着きを取り戻し、病院のホームページから父へのメールを入力しようとした途端、指先はキーボードに軽く触れたまま止まってしまった。 父に何と書けばよいのだろう。 メールフォームに入力する適切な言葉が見つからず、ただパソコンのディスプレイを眺めていた。陽が陰り始めた部屋の中は薄暗く、画面の中央に浮かんだ真っ白な空欄がやけに眩しい。 立ち上がって灯りをつけると、部屋は瞬く間に蛍光灯の光で満ちた。 おかげで画面に向けて一点に集中していた視線はぐんと広がりを得たけれど、父への言葉を探す思考までもが拡大したわけではなかった。 この空欄を埋めるのは、母の病状、孝之の様子、私も横浜に行く準備をしていること、それから「心配しなくていいからね」の一言。そんなことは分かっている。分かってはいるけれど、それが書けない。父を安心させ喜ばせるような言葉が、どうしても書けない。「なるべく早く行くようにするから、お父さんは安心して治療に専念してね」「お母さんも孝之もなんとか頑張っているし、私も横浜に行くから、お父さんも心配しないで頑張って」 言葉だけならいくらでも出てくる。だけど気持ちが伴わない。 照れくさい? そんなものじゃない。 父を安心させなくてはという意識はあるものの、それはどこか義務感でしかなく、父を喜ばせるような言葉を綴るのにひどく抵抗があった。 だいたい子供の頃から、父が好きではなかった。はっきり言えば大嫌いだった。 短気で、いつもイライラして怒鳴り散らかしていた父。休日と言えばパチンコと競馬で、家族をどこかに連れて行ってくれるなんてこともなかった。その上働くことが大嫌いで、母を困らせてばかりいた。父は配管工という職人で、昔は個人で雇われて働いていたので、仕事をした分しか収入は得られなかった。それなのに父は何かと理由を練り上げて、すぐに仕事を休もうとした。母はそんな父の機嫌をとって、なだめすかして現場に向かわせるのに必死だった。 そんな父のことを慕うことなどできるはずがなく、思春期を迎えた女の子が父親を鬱陶しいと思い始めるよりもだいぶ前から、私は父に嫌悪感を抱いていた。 よそのお父さんはみんな、優しくて包容力があって、教養もあって物静かな人に見えていた。どうしてウチの父だけがこんなふうなのだろう。ずっとそう思っていた。 そんな父がひどく上機嫌になる時があった。私が学校で学級委員に選ばれたり、成績表の評価が良かったりすると、父は顔をほころばせ、無邪気に喜んだ。 そういう父を見て、嬉しくなるどころか私は腹が立ってならなかった。「すごいじゃないか、麻実は」 そう言われるたびに思った。お父さんを喜ばせるために頑張っている訳じゃない、と。私は私のために頑張っているのだから、そんな笑顔するな、誇らしげにしないで、お父さんはお父さんでもっと頑張ったら? それを口にしたことは一度もなかったけれど、鬱陶しそうな顔はしたつもりだった。それすら父には全く通じていなかったみたいだけれど。 父を厭わしく思うようになった原因はもう一つあった。 小学一年生の私が腎臓病ネフローゼ症候群で入院していた一年間、父が病院に顔を見せたのはほんの二、三回だけだった。 入院中、父に会いたいなどと思ったこともなかったので、会いに来ないからといって何も感じなかったし、どうして来ないのか考えたこともなかった。寂しいどころか、怒鳴り散らかす大声のない病院で、かえって伸び伸びと過ごしていた。 しかし一年後、退院して久しぶりに会う父に、どんな態度で接すればいいのか私は分からなくなっていた。なんて声をかければいいのか、何を話したらいいのか戸惑った。父を避けるようになったのは、この頃からだった。 あの時と同じだ。初対面のような気恥かしさと、居心地の悪さ。 メールフォームに何を書き込んでも、気持ちが乗らない。 高校・短大と、私は次第に部活や友達と過ごす時間が多くなり、働き始めてからはますます父と話す機会は減っていった。関わる時間が少なくなった分、父に対する嫌悪感も次第に薄れていった。だんだん忘れていったというか、どうでもよくなっていた。 成人して父のことを許容できるようになったわけではなく、ただ一定の距離を保つことを覚えたに過ぎない。 父に対して鬱陶しい顔を作るようなことはしなくなったけれど、結婚して独立したことだし、この距離は今後も縮まることはないだろうと、縮めたところで何がどうなる訳でもないと思っていた。 私と父は永遠に交わることのない二本の直線のまま。 それでいいと思っていたのに…。 パソコンを前にしていくら考えていたって、にわかに父を気遣う優しい娘になんかになれっこなかった。 父に何かあったら大変だという心配は、父自身のことよりも母や弟、そして私自身が困ると案じているに過ぎなかった。 何もかも父のせいにして、ずっと父と向き合うことを避けてきた。そのつけがいっぺんに回ってきたような、何とも言えない苦さ。 だけど今更どうしようもなかった。 気持ちが込められないまま、まさかそれが父への最後の手紙になるなんてことは露知らず、社交辞令のような言葉を並べてなんとかメールを送信した。 淀んでしまった感情を押し流そうともせずに見て見ぬふりをしてきた私に、この日ついに痺れを切らした神様が風を起こしたのかもしれない。(つづく)※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。いつも見に来てくださる方も、今日初めてお越しいただいた方も、ご訪問、ありがとうございました よかったら、応援お願いします!^^ 大幅に更新が遅れました。m(__)mそして悟りました“もう年末だな~”と。f^^;何かとバタバタしているしこれから年末年始にかけての更新は週末更新にこだわらず、書けたとき更新でまいります。って、それっていつものことじゃん、とか言わないの、ってか言わせな~いどうでもいい独り言ですが、キャバ嬢芸人・姫ちゃん、最近目力が宿ってきたような? あの力もやる気もない目が好きだったのに。^^;正月明けくらいまではそんな感じでいこうかと思いますので、どうかよろしくお願いしますね。引き続き お知らせを以下ゆーみん55さんのブログ「我が家のにゃんこ日記」からのコピペです-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*多くの方に見ていただきたいと思いますので可能な方は文章を、コピーペーストして転記していただけたらうれしいです ↓ ↓ ↓ 『日本にアニマルポリスを誕生させよう!』からの情報です。以下転載 -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*この夏から、大阪市在住のAさんが、里親詐欺犯を追っていました。きっかけはAさんが保護した一匹の仔猫です。足をケガしていた仔猫は、せっかく保護されたのに力尽きて、虹の橋に旅立ってしまいました。この仔猫を捨てたのが、ネットで里親募集されているところから次々と仔猫を譲り受け、リードで繋いでお散歩と称し外を連れ回し公園の滑り台を滑らせ、無理矢理リードを引き寄せたりとても、楽しくお散歩とは言い難い行為を続け仔猫が大きくなったり、懐かないからと捨て、人に譲り渡し果ては、踏みつぶして殺したりと、とても猫好きは思えない事を続けています。そこで、Aさんは里親詐欺犯のブログを全てチェックし、猫の出入りを記録し、捨てたと思われる場所へ毎晩出向き、時間を掛けて詐欺犯が捨てた猫たちを保護していました。警察に行っても相手にされなかったそうです。そのような時に賛同者の方の活動で、NHKが取材することになり、この里親詐欺犯の家にいた猫たちを、すべて救出することに成功するまでの様子を撮影できたそうです。この件ついての番組が、放送されます。-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*以上がゆーみん55さんのブログ「我が家のにゃんこ日記」からのコピペです。放送は 2010年1月9日午後10時~ です。この問題に関心を持たれる方が周りにいらっしゃいましたら、ぜひお伝えくださいね。今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)v※一部リンク先は携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。Copyright (c) 2007 - 2009 “fragments”All rights reserved. ※迷惑コメント対策で「http:」を禁止ワードに設定しました。 URLをご記入の際には「http:」とご記入にならないよう、お願い致します。※基本的にいただいたコメントに対するお返事は、 サイトをお持ちの方で私がURLの分かる方は、お邪魔してお返事させていただいてます。 サイトの運営をされていない方、URLの明記は避けたい方のみ 私のブログ内のコメント欄でお返事させていただきますので、 お手数ですが後日お返事を見に来ていただけると嬉しいです。^^
December 9, 2009
コメント(58)
冬の太陽は午後になると、あっと言う間に力を失う。お昼前にはのどかな陽射しが庭の片隅にある花壇の土を温めていたけれど、早くも西に傾き始めた太陽は既に色褪せ、隣の家の枯れ枝の隙間からうっすらとその残影を覗かせていた。 あと三十分もすれば子供たちが学校から帰ってくる。それまでに出来ることは、なるべく片付けておきたかった。 夫には落ち着いて話したかったので、帰宅してから話すことにした。仕事が繁忙期に入り、夜も十時を回ってからの帰宅が多かったので、「話したいことがあるので、今日はなるべく早く帰ってきて」とだけメールで送った。 ついさっきまでは「今から横浜へ行きます」とメールに書いて送りたいくらいだった。でもなるべくなら母が退院するまで、少なくとも退院の目途がつくまでは向こうにいたい。そうなると一週間程度は帰ってこられないだろう。父も母も危篤だと言う訳でもないので、何もかもほったらかしにしてすぐに行くよりは、食事や洗濯、子供たちのことをどうするのか、ある程度整理してから出発した方が、少しでも長く余裕を持って向こうに滞在できるだろうと考えた。 それまでの頼みの綱になってくれそうな時雄おじさんにも、再び電話をかけてみたが今度も繋がらなかった。 孝之にも母の容態を知らせてあげたかった。だが、母が家にいる時には自分から電話を取ることなど決してしない彼にとって、何度も電話がかかってくることは、それだけで恐ろしく気が重くなるだろう。夜にはもう一度様子を窺いたかったので、孝之への連絡は夜までしないことにした。 先程電話をくれた瀬賀浦中央病院の看護師長さんにも連絡をして、母の容態を父に伝えてもらおうと思ったのだが、またしてもダイヤルしようとした指が宙に迷った。 病院の電話番号を聞いていなかった。電話機もかなり長いこと使っている古いものなので、着信履歴の表示機能なども付いていなかった。 電話番号はまたインターネットで調べればすぐ分かるだろうけれど、父が入院している病棟名とか、電話をくれた看護師長さんの名前とか、確かに聞いた覚えのあることですら、何一つ頭に残っていなかった。普段だったらそういうことは、必ずメモしておくのに。 とりあえず電話番号だけでもと思い、再びブラウザを開いた。 病院のホームページに辿り着くと、そこには青空に定規を当ててカッターナイフで切り取ったような、真っ白で四角い外来棟の写真があった。 この病院には、私自身も子供の頃から何度もお世話になってきた。 小学校一年生のときに腎臓病ネフローゼ症候群という、腎臓病の中でも特に厄介だと言われる病気になり、一年近くこの病院に入院していた。退院後も小学校を卒業する頃まで、ずっと通院していた。中学生になってからはネフローゼに関しては通う必要もなくなったが、大きな総合病院だったので何かあるたびにここを訪れていた。OLになりたてだった頃に手に湿疹が広がり、ここの皮膚科にしばらく通院したこともあった。 それから私自身がこの病院にかかったことはなかったけれど、すぐ近くには短大の時からずっと仲良くしている友人の家があるので、病院の前はちょくちょく通っていた。五年前に父が肺ガンの手術をしたのもこの病院で、その時はまだ幼かった子供たちを友人宅で預かってもらって父のお見舞いに行ったこともあったっけ。 次々と色々なことが思い浮かぶ中で、ふと中学・高校と一緒だったまどかのお父さんのことを思い出した。院内処方が当たり前だった当時、この病院の薬剤師をしていたまどかのお父さんに、薬局の窓口で何度か顔を合わせたことがある。「麻美ちゃんも、すっかり大人になったねぇ」「ふふ、おじさんもお元気そうですね。まどかも元気にやっていますか?」「あいつは相変わらずだよ。また今度、うちに遊びに来なさい」 おじさんは白衣に似合う上品な笑顔で、いつも穏やかに心安く話しかけてくれた。 気性が荒くて、夏場はシャツ一枚、冬は安っぽいジャージの上にどてらを羽織って、「水戸黄門」を見てゲラゲラ大笑いしているか、夕飯のおかずのことで母を怒鳴りつけている私の父とは大違い。こんなお父さんだったらよかったのにと、羨ましく思っていた。 おじさんは元気だろうか。 この時は何も知らずに、ただ懐かしく思い出していた。「そう言えば、まどかともしばらく連絡とってないな。今回は帰省しても父と母の両方の病院に通わなきゃならないし、孝之の世話もあるからゆっくり会う時間もないだろうな」 そんなことしか考えていなかった。 ユークリッド幾何学についてネットで調べなくとも、既に私の周りでいくつもの平行線が交わっていることなんて、これっぽっちも感じてはいなかった。 病院の電話番号を探して画面をスクロールしていくと、サイドメニューの一番下に「お見舞いのメール」という項目があることに気が付いた。 クリックすると、「入院している患者さまへのお見舞いのメールをお取次ぎ致します」と書かれたページにジャンプした。いくつか注意事項が書かれているその下にメールフォームがあり、ここにメールの内容を入力して送信すると、病院でプリントアウトして宛先の患者に渡してくれるらしい。 こんなサービスがあるなんて今まで聞いたこともなくて、驚きながらもとても心強い味方を得たような気分になった。 これなら間に人が入らないから、父に私の言葉をダイレクトに伝えることができる。 パソコンも携帯電話も持とうともしない父だったから、メールなんて初めてのことだし、父宛の手紙などもこれまでただの一度も書いたことがなかった。 そしてこのホームページから送ったメールは、父に宛てた最初で最後の手紙になった。(つづく)※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。いつも見に来てくださる方も、今日初めてお越しいただいた方も、ご訪問、ありがとうございました よかったら、応援お願いします!^^ 今週も遅くなりましたが、なんとか更新できました。^^;ところで本文中の「どてら」って、みなさん分かるかな?「半纏(はんてん)」や「丹前(たんぜん)」のことなんですけど…「?」な方は こちら をどうぞ。さて、ちょっと前にitchannさんのブログで拝見したのですが、これ → アクセス解析ツールなんですが、この中の「忍者効果測定」と言うのを使うと、ランキングのバナーを何時何分何秒にクリックしていただいたのかが分かります。楽天以外の方でコメントを残されていない方は、どのくらいランキングの応援をしてくれているのかちょっと気になっていた私は早速TRY♪楽天のアクセス記録の足跡とに記録された、ランキングバナーがクリックされた時間を比較することで、楽天以外の方でコメントを残されていない方でも、ランキングバナーをクリックしていただいたのかどうかが、だいたい分かりますちょっと前からこのブログでも導入中♪ではありますが…なかなか足跡の時間とクリックされた時間の比較をやっている暇がないのが実情で…いつか、そのうち、多分、きっと、チェックするんじゃないかな?って、既にヒトゴトみたくなっちゃってます。^^;あ、itchannさんも書かれてましがた、私も皆さんからいただくランキングのクリックについて、懐疑心とか持っているワケではありません。ただ単に、他に応援のクリックってあるのかな…と、一度調べてみたいな~と、単純に思っただけですので、そのあたり変なふうにとらえないでくださいね。^^興味をもたれた方は、itchannさんのブログのこちらの記事をご覧ください。今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)v※一部リンク先は携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。Copyright (c) 2007 - 2009 “fragments”All rights reserved. ※迷惑コメント対策で「http:」を禁止ワードに設定しました。 URLをご記入の際には「http:」とご記入にならないよう、お願い致します。※基本的にいただいたコメントに対するお返事は、 サイトをお持ちの方で私がURLの分かる方は、お邪魔してお返事させていただいてます。 サイトの運営をされていない方、URLの明記は避けたい方のみ 私のブログ内のコメント欄でお返事させていただきますので、 お手数ですが後日お返事を見に来ていただけると嬉しいです。^^
November 28, 2009
コメント(46)
腹痛で救急車を呼んだと聞いて母の身体に何が起きたのか、思いつく事が二つあった。一つは腸の癒着で、もう一つは数年前に患った大腸ガンの再発。 腸の癒着は、これまでにも何度か起きていた。母は若い頃に盲腸の手術を受けたのだが、その時の処置が適切ではなかったのか、それ以来、腸が癒着しやすくなって何度か病院に通ったことがある。腸と腸の一部分がペタリと貼り付いてはがれなくなり、動くたびに貼り付いた部分が引っ張り合うので相当苦しいらしい。 今回も腸の癒着ではないかと思っていたけれど、これまで突然救急車で運ばれて緊急入院なんてことはなかったし、それがただ事ではない気がして、ガンの再発の可能性を否定し切れなかった。悪戯に不安がっていても良くないと思いつつ、だからと言って考えないようにしようとすればするほど、胸の中に冷たい墨汁のような不安がぼたりぼたりと重く垂れて広がっていった。「詳しいことはこちらに来られてから、担当の医師が直接ご説明しますので、今日は簡単にお話しますね」 電話で対応してくれた看護師は、そう前置きをしてから慎重に話し始めた。 予想通り、母は腸の癒着を起こしていた。もう少し詳しく検査する必要はあるが、現段階では緊急で手術をするほどではなさそうなので、点滴や薬で経過観察中らしい。 大腸ガンではなく、癒着も手術を要するような緊急の状態ではないということが分かって、それだけでもほっとした。「入院は長くなりそうですか?」「それも担当医に聞いてみないと分かりませんが、それほど長くはならないかと。順調にいけば恐らく一週間から十日くらいだと思いますが…」 電話はこちらから質問したことに、看護師が答えるという形だった。病院の方から進んで説明してくれるわけではなかったので、今一つ分かりにくくて物足りなかった。何を聞いても歯切れが悪く、消極的だった。 にも関わらず、この電話でのやり取りで不安になったり、イライラしたりすることはなかった。「ご連絡を待っていたんですよ」とか、「一刻も早く来てください」と言われることも考えていたので、そう言われずに済んで安心した。もしそんなことを言われていたら、焦った気持ちが心臓をノックしまくって鼓動を打つ暇も与えなかったかもしれない。 大変な状況であることに少しも変わりはなかったが、最初にあまりに慌て過ぎたような気がしてきた。 父が大騒ぎするからだ。確かに自分が動けないのでは、事実確認のしようがないから心配なのは分かるけれど。 いつだって母の方が冷静というか、「何とかなるでしょ」という感じだった。 もちろん今回は腹痛がひどくて苦しくて連絡どころじゃないのだろうけれど、だからと言って焦って病院の人に身内への電話を頼んだりしない。緊急でないのなら、容態が落ち着いてから連絡すればいいだろう、あるいは孝之がそのうち連絡するだろう、そんなふうに考えている気がする。 母がそんなだから父が慌てるのだ。そして父がこんなだから母は心配させるくらいならと知らせない方がいいと思うのだ。父の狼狽ぶり、母の変に沈着な態度、それがそれぞれの病院の応対に比例しているようだった。 父と母はいつもこんなふうにちぐはぐなところがある。 私は何だか、両親にしてやられたような気分になってきた。「母が自分で電話をかけるのは、当分は無理でしょうか?」「そうですね、いつ頃ならとハッキリは言えませんが、もう少し容態が落ち着いてからでないと…」 自分のことを連絡するのは後回しで構わないと思っていても、孝之や父がどうしているのかはさすがの母も心配しているだろう。それだけでも何とか母に伝えたかった。「電話が無理なら、私が書いたものをファックスでそちらの病院に送らせてもらって、それを母に渡してもらうということは頼めますか?」「そうですね。遠方にお住まいなので、こちらに来られるまでは特別に」 父の入院先からの電話を切る時よりは、落ち着いて電話を切った。それからすぐに母へのメッセージを書いた。「谷山幸枝様お母さんが救急車で運ばれて入院していると、瀬賀浦中央病院の看護師長さんから連絡がありました。孝之が電話で知らせたそうです。大丈夫? 苦しかったよね…。釜谷総合病院の看護師さんから、今のお母さんの状態はだいたい聞きました。できるだけ早く、私もそちらに行くので、心配しないでいいからね。お父さんも、孝之も大丈夫です。先程、孝之には電話しました。そちらに行くまでは、孝之にはちょくちょく電話して様子を聞くようにします。だから安心してね。無理せず、ゆっくり身体を休めるようにして、治療に専念してください。 高井麻実」 追伸に「こういう時は病院の人にでも頼んで、私にも早目に連絡ください」と書こうかと思ったが、それでは母を責めているみたいなので止めておいた。(つづく)※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。いつも見に来てくださる方も、今日初めてお越しいただいた方も、ご訪問、ありがとうございました よかったら、応援お願いします!^^ 大変遅くなりましたが、やっと更新です。^^色々と励ましのコメント、メッセージ、ありがとうございました!順番にお返事いたしますので、お待ちくださいね。さて、とうとう小4の息子のクラスが新型インフルエンザで学級閉鎖となりました。ウチの息子は元気です。元気なのはいいとして…明日から予定では一週間、元気なまま自宅待機。例え元気であっても外出禁止。元気なものどうしであってもお友達との行き来も禁止学校から課題は出ているものの、すぐ終わるだろうし、最初の1~2日はテレビ観たり、本を読んだり、ゲームをしたりして楽しむでしょうけれど、そんなのすぐ飽きるに決まってる。(>_<;)すぐに退屈して元気を持て余すに違いない~~~なので、今週は一緒にお昼ご飯作ったり、一緒に部屋の掃除や模様替えでもしたり、何かで一緒に遊んだりしながら過ごすことにします。みなさまのところへの訪問・応援くらいはできると思いますが、今週末(11/21)は続きの更新をお休みさせていただきますので、ご了承くださいませ。m(__)m本当は今回UPした分ももうちょっと練り直したいのですが、それも無理っぽいのでとりあえずUPしました。後日ちょこちょこ修正すっかな~。^^;急に寒くなりました。みなさまも体調を崩さぬよう、お気をつけくださいね。今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)v※一部リンク先は携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。Copyright (c) 2007 - 2009 “fragments”All rights reserved. ※迷惑コメント対策で「http:」を禁止ワードに設定しました。 URLをご記入の際には「http:」とご記入にならないよう、お願い致します。※基本的にいただいたコメントに対するお返事は、 サイトをお持ちの方で私がURLの分かる方は、お邪魔してお返事させていただいてます。 サイトの運営をされていない方、URLの明記は避けたい方のみ 私のブログ内のコメント欄でお返事させていただきますので、 お手数ですが後日お返事を見に来ていただけると嬉しいです。^^
November 17, 2009
コメント(60)
十五年前、孝之は精神分裂症と診断された。今で言う「統合失調症」だ。発症してからは積極的な感情の流れが滞り、無気力なまま毎日を引き摺って生きているように見えた。 それでも普段は特に問題なく生活していたが、こんなふうに平穏な日常が壊れるようなことがあると、それがきっかけになって様々な症状が現れてくる。 疲れがたまってくると、先ずスムーズな受け答えができなくなった。言おうとしている言葉がどんどん自分の中に沈んでしまい、それを探してどこまでも追いかけていく。そうなると周りの全てが邪魔になるのか、孝之は両目を閉じて外界の音も光も全て遮断して、見失った言葉を見付け出すまで深く深く潜ってしまう。それは時間もエネルギーもひどく消耗する大変な作業だった。 それがたびたび続くようになると目付きがどんよりと曇り、急に攻撃的になった。暴れたり大声を出したり、ひと所にはいられなくなって家を出たり入ったり、無意味に何度も繰り返した。 そうならないために、今の孝之は殻に閉じ籠る必要があった。落ち着いている時の孝之は、殻の中から身体の半分だけを出して、そこから周りの様子を窺っているようだった。決して殻から抜け出そうとはせず、何か怖いことがあればすぐに殻を閉じて籠ってしまう。けれど籠りっきりという訳ではなく、時間が経って落ち着けば、また殻から半身だけ出してじっと周りの様子を窺い始める。 母が救急車で運ばれるという騒ぎも、突然の入院も、孝之をこの殻から無理やり引っ張り出したようなものだった。電話での様子も無口になるどころか、饒舌でひどく興奮していた。 もし行けるようなら今の母の様子を見てきてもらいたかったが、孝之に動いてもらうのは到底無理な話だった。 でもどうすればいいのか。母の容態が気がかりだったが、それを知るための手立てが思い付かない。 時雄おじさんが何か動いてくれているかもしれないと、おじさんの家に電話をかけたが繋がらなかった。 病院に直接電話したら教えてくれるだろうか? 個人情報保護のこのご時世に、入院患者の容態を電話一本で教えてもらうのは難しそうな気がした。娘だと言っても、怪しまれるのがオチかもしれない。 不安は色々あったが、迷っていても仕方ない。意を決して受話器をあげてからはたと気付いた。病院の電話番号が分からない…。 タウンページも、当然我が家にあるのは愛媛版。横浜の病院は調べようがない。そうだ、番号案内は? 番号案内にかければきっと教えてくれる。でも番号案内って何番だった? それこそタウンページに載っているかもしれないと電話台に移した視線の端に、つけっ放しになっているパソコンが映った。「そうだ、ネットで検索すればいいんだ」 もうユークリッド幾何学どころではない。平行線が交わろうがどうしようが、どうでもよくなっていた。読みかけていたユークリッド幾何学のページを閉じて、すぐに母のいる病院を検索した。「鎌谷総合病院…ここだ」 病院のホームページを見付けて、すぐに電話をかけた。 母が昨夜救急車で運ばれて入院したこと、父も別の病院に入院中でとても心配していること、私には弟がいるが弟は心の病を抱えていて母のためにあまり動けないこと、私自身は愛媛に住んでいてすぐに駆け付けられないこと、親戚にも連絡がとれなくて困っていることなどを必死に訴えた。「ちょっとお待ちくださいね」 電話の向こうの看護師は、困惑気味に電話を保留にした。看護師長や医師と相談しているのだろうか。私は少しの間、受話器から聞こえてくる保留のメロディに耳を傾けていた。 しばらくしてメロディがプツッと止まり、先程の看護師が電話に出た。「愛媛に住んでいる娘さん、ということで間違いありませんね?」「はい、そうです」「念のため、生年月日をお伺いしてもいいですか?」 看護師は私の生年月日を確認し、続けて母の生年月日も尋ねてきた。「本来はこうして電話でお伝えすることはできないのですが、ご事情がご事情ですし。ご本人にも確認しましたので、話せる範囲でということで構いませんね?」「はい、それで結構です」 有難かった。全面的な協力を得られたわけではなかったが、それでも駄目もとでかけた電話だったのでそれで十分だった。(つづく)※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。いつも見に来てくださる方も、今日初めてお越しいただいた方も、ご訪問、ありがとうございました よかったら、応援お願いします!^^ 早くも11月ですね。連載も5回目となりましたが、このまま順調に週一ペースで更新したとして、年内はあと7回。7回のうちあと何回ちゃんと更新できるかなぁ~^^;これまでにいただいたコメントやメールを拝見していると、皆さんそれぞれに色々ご経験されているんだな…と。「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもんだと思います。私もこの物語に書いている出来事の後、以前とは違った自分を見つけることができました。これからも色々な波が押し寄せてくると思いますが、どんな大波にも飲みこまれることがないように、踏ん張れる力をしっかり蓄えておきたいと思うようになりました。くじけたり、凹んだり、時には怒ったり、泣いたりしながら、それでも踏ん張れる力。自分だけではなく、家族や友人といった周りからもらえる力もきっと大きいことと思います。こうして私が小説もどきを楽しんで書けるのも、これを読んでくださる皆さんからいただくパワーのおかげ人って、いいな、すごいなぁ~と思う今日この頃です。と、何だかほんわかまとめたところで、お詫びです更新のお知らせやいただいたメールへのお返事、コメントやご訪問のお礼などかなり遅れ気味になってます。(>_
November 7, 2009
コメント(54)
電話を切ってからも、しばらく何もできなかった。 横浜の親戚に連絡をとる、母の入院先の病院に電話をかける、弟に電話して様子を知る、夫に知らせて相談する、横浜に行く手配をする…。やるべき事があれこれと浮かんできて、優先順位がつけられずにいた。これではいつまで経っても行動に移せない。 とりあえず落ち着かなくちゃ、そう思ってパソコンの横に置いてあったマグカップを手に取った。ココアがまだ三分の一程残っている。先ずこれを飲もう。ゆっくりと一口飲んで、「ふう」とため息をついたら少しは落ち着くかもしれない。そう思って口をつけたはずだった。 それなのに私は、カップに残っていたぬるいココアを一気に飲んでしまった。飲んでしまってから自分でも驚いた。何だか思考と身体が同じ所にはなく、バラバラになった気がした。 こんな時は頭で考えていては駄目だ。じっとしていても始まらない。動かなくちゃ、動けば何かしら風が吹く。 今思えば、風が吹き始めたらもう止めることはできないと、私はどこかで感じていたのかもしれない。何かしなければという思いと、逃げたいという思い。その二つがそれぞれ右と左から同等の力で引っ張り合い、私を動けなくしていた。 動揺する自分を「抑えて」というよりは「無視して」、最初に弟の孝之に電話をかけた。 プルルルルル、プルルルル…、コールを一回、二回と数える。どうして出ないの? 外出中、それとも電話に出られる状態じゃない? 回数が増していくにつれて不安が募る。 だいたい孝之からの連絡が何もないというのは、彼がどうしていいのか分からず、取り乱している証拠かもしれない。 早く電話に出て、そう強く願った瞬間、孝之が電話に出た。「はい、谷山です」「孝之?」「姉ちゃん?」 思っていたより力のある声が返ってきた。「今さっき瀬賀浦病院から電話あって、お母さんが入院したって聞いたんだけど」「あぁ、あのね、昨日の夜、お母さんがさ、お腹が痛いって言って、救急車を呼んでさ、それでね、それで…」 孝之は少し興奮気味だった。「それで入院することになって、落ち着いたら電話するからって言っててさ、僕も家に帰ったんだけど、まだ電話がなくてさ、それで今日お母さんは、瀬賀浦には行かれないからさ、僕がお父さんに電話したの」「お父さんとは直接話したの?」「いや、それがね、お父さんに取り次ぎはできないって言われてさ、病院の人に、お父さんに伝えてくださいって、頼んだ」 ショックで口も聞けなくなっているのではないかと心配したが、孝之は予想に反して饒舌になっていた。それはそれでとても気が張っているのが伝わってきて怖かった。張りつめた心はあとほんの少し何かが触れただけで、パシッと音を立てて粉々に砕け散ってしまいそうだった。「あとさ、さっき時雄おじさんから、電話があった」「おじさん、何て言っていた?」「お父さんの病院からね、電話があったって。大丈夫かって聞かれたから、大丈夫だって言った」 瀬賀浦中央病院の看護師長さんは、横浜に住む母の弟にも電話をかけてくれたらしい。恐らく、父が頼んだのであろう。あちこち電話をかけさせるなんて、父は余程心配しているに違いない。普段は大風呂敷を広げるようなことばかり言っているくせに、いざとなるとノミの心臓なんだから。きっと看護師長さんも、見るに見かねて電話してくれたのだろう。 自分の狼狽ぶりは棚に上げてそう思った。そう思ったら、本当にさっきまでの狼狽が私から離れて棚に上がったみたいに、少しだけ落ち着いてきた。時雄おじさんが、この緊急事態を知ってくれたということも、私の気持ちを軽くした。 自分がしっかりしなければいけない。やっと自覚できた。「孝之も大変だけど、ちゃんとご飯食べるんだよ。コンビニやスーパーでおにぎりとかお弁当買って、あ、あと野菜不足にならないように、きゅうりとかトマトとか、そうそう野菜ジュースだっていいんだから。それから出かける時と寝る時は戸締りと火の後始末には十分気をつけて。それから…」 まるで子供にでも言い聞かせているようだった。結婚してから弟のことは両親に任せきりで、たまに実家に遊びに行った時に話す程度になっていた私は、弟がどの程度一人でできるのか見当もつかなかった。「うん、分かっている。大丈夫」 孝之の気が緩んだ時が怖かったが、気が張っている間は何とか大丈夫。その間に一刻も早く実家に帰らなければならない。「できるだけ早く、そっちに行けるようにするからね。何かあったら電話して」 そう言って、受話器を置いた。(つづく)※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。読んでくださり、ありがとうございました!!ランキングに参加しています。よかったら、応援を^^ 先週は何かと忙しくて、皆様のところへもほとんどお伺いすることができなくてすみません更新のお知らせもかなり遅くなったり、できなかったりで…とにかく更新することを第一目標としていますので、何卒ご了承くださいませ。m(__)mでもできるだけを作って皆様のところにお邪魔できるよう頑張ります。…というか、ホントはものすご~くお邪魔したいんです。^^;ブログって書くのも楽しいけれど、読むのも面白くってん~、頑張って作らねば~さてさて、この話、どこまでが実話というコメントやメールをいくつかいただいたのですが、今のところ人名や病院名の他はほぼ実話です。心配してくださった方もいらっしゃいまして、その優しさに心から感謝…でも私にとっては何とか乗り越えた過去の話なのでご安心を。^^当時は辛くて苦しくて、神様から罰を受けた気分でしたが、今となってはとても貴重な日々。神様からの贈り物だったと思っています。ウチの息子のお気に入りの本、「雨の日も、晴れ男」に「神様は人を不幸にも幸福にもしない。ただ出来事を起こすだけ」といった内容のことが書かれています。ホントにそうだと思います。私にもただ出来事が起きただけ。それをどう受け止めるかで、幸か不幸か違ってくる…。今だからこそ、そう言えるようになったんですけどね。^^;そんなふうに思えるようになった“今”に感謝です■□■ 10年前に別れた恋人との同居から始まる物語 ■□■「poincare ~ポアンカレ~」はこちらから↓ 今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)v※一部リンク先は携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。Copyright (c) 2007 - 2009 “fragments”All rights reserved. ※迷惑コメント対策で「http:」を禁止ワードに設定しました。 URLをご記入の際には「http:」とご記入にならないよう、お願い致します。※基本的にいただいたコメントに対するお返事は、 サイトをお持ちの方で私がURLの分かる方は、お邪魔してお返事させていただいてます。 サイトの運営をされていない方、URLの明記は避けたい方のみ 私のブログ内のコメント欄でお返事させていただきますので、 お手数ですが後日お返事を見に来ていただけると嬉しいです。^^
October 31, 2009
コメント(44)
「高井さんのお宅ですか?」 受話器から聞こえてきたのは、聞き覚えのない女性の声だった。「はい、そうですが…」 振り込め詐欺じゃないにしても、また子供の塾や通信学習の勧誘か、化粧品や下着のセールスの電話、多分そんなところだろうと思って、少しうんざりした。でもそのいずれでもなく、電話は思いもよらぬところからかけられていた。「失礼ですが高井麻実さんですね? 突然の電話ですみません。私、お父様の谷山輝義さんが入院している瀬賀浦中央病院、第二病棟の看護師長で荒木と申します」 女性らしいとても柔らかな声だったが、何があっても芯がぶれるようなことのない、凛とした雰囲気が受話器から伝わってきた。 けれどそう名乗られた途端、私の方はかなり大きく動揺した。父に何かあったのか? だとしてもなぜ付き添っているはずの母からではなく、遠く離れた愛媛で暮らす私のところに病院から電話が? 難解なユークリッド幾何学と温かいココアがもたらしたまどろみは一気に吹き飛び、急に目覚めたシナプスが頭の中でスパークした。 父は五年前に肺ガンの手術をした。その後は何事もなく順調な生活を送っていたが、今年になって正月明けに体調を崩し、病院に行ってみたところ肺に影があると言われて入院した。肺ガンの再発だった。 母からその話を聞いた時はかなり驚いたが、母は普段の他愛ないおしゃべりと同じトーンで話していた。「たいしたことはないのよ。影はかなり小さいし、治療のために毎日病院通いするのは面倒だってお父さんが言うから入院にすることになったようなもので、何の心配もいらないからね。慌てて飛んで来るような状態ではないから。ただ入院したことは、麻実にも知らせておこうと思って」「ふうん、そうかぁ。子供たちの学校のこともあるし、すぐにじゃなくていいのなら、時期をみてそのうち一度顔を見に行くよ」「気の弱いお父さんのことだから、お見舞いなんかに来られたら、俺もいよいよ駄目なのか、とか余計な心配するだろうから来なくったっていいわよ。春休みになる頃には元気になっているだろうから、その頃みんなで遊びにおいで」 母にそう言われて、かなり気楽に構えていた。つい先日も母と電話で話したばかりで、その時も特に問題はないと言っていたのに。 困惑する私に、予想だにしてなかったことが告げられた。「お母さまが入院されたのをご存じですか?」 耳を疑った。母が入院? それは青天の霹靂だった。 昨夜遅く母は自宅で倒れ、父が入院している病院とは別の病院に救急車で運ばれ、そのまま入院しているというのだ。 もしや…と、不安で胸がいっぱいになる。母も四年前に大腸ガンを患い、手術をしている。どうか再発ではありませんようにと、願わずにはいられなかった。「お母様の病状について、こちらでは詳しいことは分かりません。お父様もとても心配されています。それとご自宅に一人でいらっしゃる高井さんの弟さんのことも、とても心配されていて…」 混乱する頭に追い打ちをかけるように衝撃が走る。そうだ孝之は? 孝之も相当なショックを受けているはず。弟の孝之は長いこと心の病を患っている。この数年間にあった両親の入院や手術も、孝之には耐えがたい重圧となり、そのたびに調子を悪くしていた。なのに、また。それも今度は二人とも同時に入院してしまうなんて…。 頭の中でシナプスが激しく火花を散らし、私の頭はショートした。 何があったのか事実は分かったものの、それでもなお、今何が起きているのかを把握しきれない。「ご連絡、ありがとうございました」 それだけ言うのが精一杯で、茫然と電話を切った。 近ければ今すぐ駆け付けられるのに。そうしたいのに横浜と愛媛では簡単にはどうにもならない距離がある。それでも心だけは先に横浜に飛んでしまって、抜け殻のような空っぽの身体だけが、遠く離れた愛媛で思考を空回りさせていた。まず何からしなくちゃいけない? 焦る気持ちに急かし立てられて、鼓動がどんどん早くなった。(つづく)※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。読んでくださり、ありがとうございました!!ランキングに参加しています。よかったら、応援を^^ 2/24に更新の予定でしたが遅れました!連載スタートしたばかりで私らしい…と言えばそれまでですが^^;週末覗きにきてくださった方、ごめんなさいちょっと? かなり? 内容が重くなってきました。全体的に重い物語ですが、今回あたりは一つ目のハードルかな?これからいくつか重いハードル越えが待ってます。こういうの苦手~な方は遠慮なくお逃げくださいませ。^^;ところで先日、美味しいお酒造りに日々励んでいる酒蔵天領誉さんの10.22のブログでインターネットの百科事典「Wikipedia」に365日の日付の項目があることを知りましたで、自分の誕生日のページを見ていたところ、年バレネタですが… 私と同じ年・同じ日に生まれた数学者にグリゴリー・ペレルマンという方がいらっしゃるのですが、この方こそ、私が「poiincare」を書くきっかけとなった「ポアンカレ予想」を解決した方なんですまさか同い年、同じ誕生日だったとは…かたや数学者として「ポアンカレ予想」を解決しかたやブローガーとしてブログ小説「poincare」を書いてその功績は雲泥の差どころじゃなく、果てしなく大きく違いますが、なんだか他人のような気がしません。^m^;この偶然に気が付くきっかけを作ってくださった 酒蔵天領誉さんに感謝「Wikipedia」でご自分の誕生日のページをまだ見たことのない方は一度覗いてみては?^^ 「Wikipedia」の365日はこちらから ■□■ 10年前に別れた恋人との同居から始まる物語 ■□■「poincare ~ポアンカレ~」はこちらから↓ 今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)v※一部リンク先は携帯からはご覧になれませんので、ご了承ください。Copyright (c) 2007 - 2009 “fragments”All rights reserved. ※迷惑コメント対策で「http:」を禁止ワードに設定しました。 URLをご記入の際には「http:」とご記入にならないよう、お願い致します。※基本的にいただいたコメントに対するお返事は、 サイトをお持ちの方で私がURLの分かる方は、お邪魔してお返事させていただいてます。 サイトの運営をされていない方、URLの明記は避けたい方のみ 私のブログ内のコメント欄でお返事させていただきますので、 お手数ですが後日お返事を見に来ていただけると嬉しいです。^^
October 26, 2009
コメント(35)
二年前の一月も終わりに近い頃。子供部屋の掃除をしていたら、息子の机の下からくしゃくしゃになった紙が出てきた。広げてみると、それは冬休みの宿題の算数のプリントだった。既に学校で答え合わせもしたようで、自分で丸を付けたのか、解答欄を囲む赤丸は先生のシュッと勢いのある丸ではなく、くるりとしたどこか微笑ましい丸だった。 その微笑ましい丸で囲まれた解答欄の中に、息子の字で「平行」と書かれているところがあった。「どこまで伸ばしても交わらない、二本の直線の関係をなんといいますか?」 問題を読んだ途端、自分が小学生だった頃のある日の授業が、鮮やかな映像を伴って蘇ってきた。「だからね、平行に並んだ直線どうしは、どこまで延長しても決して交わることはないの」 算数の時間、平行な直線について勉強していた時のことだった。 当時担任だった尾関先生は一通り説明を終えた後、黒板を背にして独り言のようにぽつりと言った。「でもね、ユークリッド幾何学の中では交わることがあるんだけどね」 それは何かの呪文みたいだった。先生の言葉は凄いスピードで私の耳に飛び込み、まっしぐらに頭のてっぺんまで駆け上がるとばちんと破裂した。 先生はそれについて何の説明もしなかった。言った後、少し遠くを見つめた気がしたが、すぐに普段と変わらぬ様子で授業を続けた。 質問する子もいなかった。聞いていなかった子も多いと思う。聞いていた子も耳慣れない難解な言葉に、自分とは無関係な世界だということだけは感じて聞き流したのだろう。 授業は何事もなかったかのように続いた。 けれど私は、授業どころではなくなっていた。 ちょっと待って。今のは何だったの? そう思った私は慌てて算数のノートの隅に「ユークリッドきか学の中では平行線も交わることがある」とメモをした。「幾何」という漢字が分からなかったから「きか」と平仮名で書いた。小学生の私たちには関係なさそうな話だけど、大学生くらいかな? 私も「ユークリッドきか学」を学ぶ日が来るのだろう。その時になれば「尾関先生の言っていたことは、こういうことだったのか」と解るに違いない。無邪気な私は何年か先の未来にほんの少し憧れを抱いて、ドキドキしながらメモした言葉を眺めていた。 けれど尾関先生が言ったことを理解する日は、いつまでたっても来なかった。ユークリッド幾何学どころか、高校の基礎解析や代数・幾何の段階で、私はあっと言う間について行けなくなった。数学のテストは毎回あっ晴れなほど見事に玉砕。理数系の大学は、選択肢の一つにすら成りえなかった。「そうだ、ネットで調べてみよう」 息子の算数のプリントを眺めながら、インターネットで「ユークリッド幾何学」を検索することを思いつき、掃除を終えてココアをいれてから私はパソコンを開いた。 「ユークリッド幾何学」で検索したページには、確かに「平行」という言葉が出てきた。けれどいくら読んでもそこに書かれていることは私には難解で、一つも解らない。しかも「ユークリッド幾何学」に対し「非ユークリッド幾何学」なんていうものまで出てきて、何が何だかさっぱり理解できなかった。 当たり前か。いくら大人になっていようが、数学に別れを告げてから何十年と、数学とは全く縁のない生活をしてきたのだから。アラフォーの私に今更理解できることではなかった。 唯一分かったことと言えば、これから先も私とユークリッド幾何学は、決して交わることなく、永遠に「平行」な関係を保つのだろうということだけだった。 あの時、尾関先生は小学生相手に、なぜあんなことを呟いたのか? そもそも先生の言ったことを、私がそのまま正しく記憶しているのかどうかも怪しい気がしてきた。私の聞き間違い? でも先生があんなことを言わなければ、「ユークリッド幾何学」なんて言葉を私が知る機会なんて他にはなかった。平行線が交わるとはどういうことだろう? 「交わる」と言っても、それは私が知っている「交わる」という概念とはまた別のものなのだろうか? 穏やかな冬の平日。ヒーターに暖められた部屋で眺めるパソコンの画面。難解な説明文や温かいココアの甘さが、私の眠気を誘い始めた。 うつらうつらしそうになったその時、電話が鳴った。 それが始まりの合図だった。私を待ち受けていた大きな罰。 罰と言うよりは、贈り物だったのかもしれない。神様からの「罰」と言う名のとてつもなく深い「贈り物」。 ユークリッド幾何学同様、決して交わることなく、永遠に平行を保つだけだと思っていた父と私の関係が、この時大きくうねり始めていた。(つづく)※この作品はフィクションです。登場人物や団体等、実在するものとは一切関係はありません。読んでくださり、ありがとうございました!!ランキングに参加しています。よかったら、応援お願いします^^ 前回もたくさんのご訪問やコメント、ありがとうございました!久しぶりということもあって、不安を抱えたままスタートしましたが、「poincare」の時からお付き合いのある方との再会、そして新しい方との出会いもあって、本当に幸せなスタートをきることができました。みなさまに心からお礼申し上げます。(^O^)/さてさて前回の物語のタイトル「poincare(ポアンカレ)」も数学者のお名前からいただいたでしたが、今回の「ユークリッド」も数学者のお名前だったりします。そして前回同様、物語は数学とは全く無関係です。^^;今回の場面は、ほぼ実話です。先生が言った言葉を正しく私が覚えているのかどうか怪しいですが、先生は確かに「ユークリッド幾何学」という言葉を使い、遠くを見ました。先生がなんであんなこと言ったのか、それはどういうことなのか、今も謎は謎のままです。(+_+)それでは皆様、風邪をひきやすい季節になりました。インフルエンザも流行っているところがあるようですし、お互い体調には気をつけましょう!^^■□■ 10年前に別れた恋人との同居から始まる物語 ■□■「poincare ~ポアンカレ~」はこちらから↓ 今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)vCopyright (c) 2007 - 2009 “fragments”All rights reserved. ※迷惑コメント対策で「http:」を禁止ワードに設定しました。 URLをご記入の際には「http:」とご記入にならないよう、お願い致します。※基本的にいただいたコメントに対するお返事は、 サイトをお持ちの方で私がURLの分かる方は、お邪魔してお返事させていただいてます。 サイトの運営をされていない方、URLの明記は避けたい方のみ 私のブログ内のコメント欄でお返事させていただきますので、 お手数ですが後日お返事を見に来ていただけると嬉しいです。^^
October 17, 2009
コメント(49)
バス停のそばにあるコンビニの角を曲がると、そこから先は商店街になっている。実家まであと少し。実家は商店街の中にある路地を右に折れてすぐのところにある。 車が二台すれ違うのもやっとの狭い通りで、電柱などにぶら下げられた花の飾りが、ずっと奥の方まで続いていた。いつ飾りつけられたのかも分からない。もうだいぶ前からあるような気もする。ポリエステル製の花飾りはところどころちぎれて、派手な原色の赤や青はすっかり色褪せていた。 昔はこの小さな商店街に八百屋だって魚屋だって二軒ずつあって、毎日たくさんのお客で賑わっていた。肉屋だって繁盛していた。その他に野菜も魚も肉も扱うスーパーもあったけれど、そこだっていつもお客が絶えなかった。 遠くからも買い物に来る人がたくさんいて、夕方の買い物客で一番賑わう時間帯は、車を通行止めにして歩行者天国にしていたほどだった。 けれどそこで暮らしている人たちが年老いてゆくのと一緒に、商店街もまた年をとった。少し離れたところに次々とできた大型スーパーに勢いを奪われ、ぽつりぽつりと店を閉めるところもあったし、商売替えをするところもあった。残った店も繁盛しているとは言い難く、言い方は悪いがいつ潰れてもおかしくないようなところばかりだった。 少し前までは、再生しようとする様々な試みもあった。商店街のスタンプをためると割引してもらえたり、買い物の金額によって福引の抽選券がもらえたり。それでも流れを変えることはできなかった。 今は停滞に近い状態でゆっくりと沈んでいくのを、諦めに似た境地で眺めている、そんな雰囲気だった。それは悲しんでいるとか、嘆いている感じではなく、縁側でぼんやり庭を眺めながら、お茶をすすっているお年寄りみたいな感じだった。商店街が寂れてしまったことは決して喜ばしいことではないけれど、なんていうか、無理に頑張らないであるがままを受け入れた感じがして、私にはちょっと心地良かった。 でもそんなふうに呑気なことが言えるのは、私や実家が商売する側ではないからだよなぁ。ここで商売している人たちにとっては死活問題だもの。 そんなことを考えながら歩いていたら、ふわりとコーヒーの香りが鼻をかすめた。商店街の中ほどにカフェができていた。つい最近オープンしたばかりのようで、店の前に置かれた白い胡蝶蘭には開店を祝う紅白のリボンが結ばれていた。ガラス張りのこぢんまりとした店内には、二人分のティーセットを置いたらいっぱいになってしまいそうな小さなテーブルが二つだけ。「小さくてもいいから、いつか自分の店を持つのが夢だったんです」 そんなマスターの声が聞こえてきそうな店だった。 それにしてもここは以前、できたてほかほかがウリの弁当屋だった場所で、弁当屋に変わる前は八百屋だった。隣の和菓子屋もとうの昔に店をたたみ、何年もの間シャッターが下りたままになっている。 大きなお世話だろうけど、「どうしてこんな場所でカフェを?」と思わずにはいられなかった。胡蝶蘭の清らかなまでの白さも、ガラス越しの光がゆるく反射する新しいテーブルも、ほんの少し周りの景色から浮いていた。 けれどこの商店街が忘れられていく中にあって、それでもまだ新しい風がこの町に吹こうとしているかのようで、ほのかに漂ってくるコーヒーのいい香りが、あるがままを受け入れようとする町の空気と溶け合い、これから先何年もかけてゆっくりとここの香りになってくれたらいいなとも思った。 ふと父のことを思い出した。コーヒーなんてしゃれたものを好むような人じゃなかった。熱いお茶に甘いあんこがたっぷりのお饅頭、そういう人だった。 向かう実家に父はもういない。父は二年前の冬に他界した。 父が亡くなったことも、この町の空気にすっかり溶けてなじんでいた。それは潤いに満ちた少し冷たい靄のようになって、いつも私の隙間に入り込んでくる。そんな気がした。(つづく)読んでくださり、ありがとうございました!!小説としてまたランキングに参加しました。よかったら、応援してください^^ すっかりご無沙汰しています。m(__)mそれなのに、ちょこちょこ足跡を残してくださるみなさん、本当にありがとうございますこちらからもう長いことお伺いしていないにも関わらず、コメントや足跡を残してくださる方がいてくださることがものすご~く励みになっています。夏に色々と凹むことがあって、もやもやしたままPTAが多忙となる九月を迎え、物を書くということに精神的にも時間的にも集中できない日々を送っていました。相変わらず忙しいことに変わりはないのですが、色々と凹んだことは、今では私の中で消化され、なんとか時間のやり繰りをして、ようやく1回目をUPするところまでこぎつけました。^^;週一ペースで週末更新を目指そうと思っていますが、相変わらず書くペースは遅いし、毎日バタバタしてるしまたしてもかなり不規則な更新になりそうなので、どうぞご了承ください。m(__)mこの物語は私の実体験をベースとしたフィクションです。結婚して子供もいる一人の女性が、生前はどうしても好きになれなかった実の父の死を通して気付かされたことを綴っていきます。「poincare」のような続きが気になるような展開やスピードは多分ないと思いますし、内容的にも面白いとは言い難いかな…それでももしお付き合いくださるという奇特な方がいてくだされば身に余る光栄ですそんな方、いてくれるかな…いてくれるといいな…一人くらい誰かいてぇぇぇぇぇ~~~~~人(´д`;)かなり不安なスタートですが、初心にかえって頑張りたいと思います。■□■ 10年前に別れた恋人との同居から始まる物語 ■□■「poincare ~ポアンカレ~」はこちらから↓ 今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)vCopyright (c) 2007 - 2009 “fragments”All rights reserved. ※迷惑コメント対策で「http:」を禁止ワードに設定しました。 URLをご記入の際には「http:」とご記入にならないよう、お願い致します。※基本的にいただいたコメントに対するお返事は、 サイトをお持ちの方で私がURLの分かる方は、お邪魔してお返事させていただいてます。 サイトの運営をされていない方、URLの明記は避けたい方のみ 私のブログ内のコメント欄でお返事させていただきますので、 お手数ですが後日お返事を見に来ていただけると嬉しいです。^^
October 10, 2009
コメント(40)
今回初めて、二日続けての更新&一日に二度の更新をしています。 よろしければ、次の二つの記事もどうぞ。 と言いたいとこどですが、どちらもグダグダな長文です。^^; <前半>はともかく、この記事は<後半の続き>なので、 お時間の許される方は<後半>だけでも目を通していただいてから、 この記事を読んでくださると分かり易いかと…。 暑中お見舞い申し上げます♪(*^^)v <前半> updated:7/21 暑中お見舞い申し上げます♪(*^^)v <後半> updated:7/22 どれも、これも、長くてスミマセン 読んでいただきたいというより、自分で書きとめておきたいことを書いているので、 「ゲゲッ!長過ぎっ!!」と思われる方は、気にせず全部スルーしちゃってくださいね。 さて、後半の続きです。 百人一首の中で、私のお気に入りの歌に紀友則が詠んだこういう歌があります。 久方のひかりのどけき春の日にしづ心なく花のちるらむ 意味は 「日の光がやわらかにふりそそぐ今日――風もなく穏やかなこの春の日にあって、 落ち着いた心なしに、どうして桜の花が散ってゆくのだろう。」 (「やまとうた」さんからの引用です) というようなことらしいです。 私は桜の花の散り際の潔さが大好きなんですが、確かに桜の花の終わりって、 春の終わりと重なって、感慨深いものがありますよね。 だけど、そこに無常を感じ、切ない気持を抱くのは、人であって桜じゃない。 桜は「よっしゃあ、今年も盛大に散ってやろうじゃないか!」とか 「心を乱すような、切ない記憶を蘇らせるような、そんな散り方を演出するぞ」とか、 全く思っていないわけで…。 気持ちが乱れ、揺れ動くのは、この世から去りゆく者を見ている側。 桜が「しづ心なく」ではなく、桜は何も思わず、ただその時期を迎えるだけ。 むしろ「しづ心で」去っていくだけ。 人の命もそれと同じで、ただその時期を迎えて静かにふっと消えてしまう。 もちろん、去る方も、見送る方も、「死」を「しづ心」で受け入れるなんて、 そう簡単にできることではなく、私も父の死は今でも心のどこかで納得できていない。 けれどそんな人の感情とは無関係に、命はその時を迎えると、はらはらと散ってしまう…。 そうそうORANGE RANGEの「花」の中にも、そういうフレーズがあったっけ。 花びらのように散ってゆく事 この世界で全て受け入れてゆこう (花 ORANGE RANGE 歌詞情報 - goo 音楽) 受け入れられない、けれど、受け入れていくしかない感情なんですよね。 話変わりますが、ウチの息子が小学校一年生の時に、 仲の良かった同級生が交通事故で帰らぬ人となりました。 当時流行っていて、その子が大好きだった曲。それがこの「花」 告別式で小さな棺が運ばれて行く時に流れていたこの曲、 その中でその子の名前を泣き叫ぶお母さん…。 あれから5年の歳月が過ぎましたが、今でもこの曲聴くと涙が溢れてきます。 こうやって書きながらも…(T_T) その時が来たら、花びらのように散ってゆく私たち。 だからこそ、生きている間は精一杯、誰かの心を癒せるような花を咲かせたい。 そんなふうに思っています。 たった七歳でこの世を去ってしまった息子の同級生。 その散り方は、ある日突然、むしり取られてしまったかのような悲しいものでしたが、 それでも彼は、たくさんの人の心を癒す花を、たくさん、たくさん咲かせました。 ご両親の心に、お姉ちゃんの心に、おじさん、おばさん、いとこの心に、 たくさんのお友達、幼稚園や保育園の先生の心に、 近所の方の心に、彼と出会った全ての人の心に。 「poincare」を読んでくださった方は、覚えてますか? 「poincare」の最後に登場した花“ミムラス” 花言葉は「笑顔を見せて」 私はこの花の名前を思い出すたびに、 サマーズの三村さんが「三村っす!」って言ってるところをついつい想像してしまいます。 で、笑顔になれたりするんです。…笑顔って言うか、失笑?(⌒ー⌒;)ノ この夏、暑さに負けないで、 皆さんもステキな笑顔を、たくさん咲かせてくださいね♪(*^^)v 本文の中でご本人に確認なしで、ハンドルネームからブログ等に 勝手にリンクさせてもらってる箇所があります。 事後報告させていただこうと思ってますが、間に合わなかった場合、 もし差支えがある場合はリンクを外しますので、 コメントでもメールでもご一報ください。 多分、今後もそんなことがあると思いますので、あらかじめご了承くださいませ。^^; ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○良かったら、ついでにぽちっと…励みになります^^ またしても独りよがりな私のつぶやきにお付き合いくださいまして、ありがとうございました。ってか、言いたいことちゃんと書けてるのかどーか、自分でもよく分からない…。文章、ダラダラ長いし、テーマもなんか重いし。^^;あ、父の死にかなりの影響を受けた私ですが、ぶっちゃけ生前の父は大嫌いでした。そんな大嫌いだった父と過ごした最後の一ヶ月間の物語タイトルもまだ未定ですが、ちょっとずつ書き始めました。秋にはUPできるかな…?さて次回は、行方不明のミシシッピアカミミガメの運命やいかに …ぢゃ、ないよ(>v<;)ノ゛次回は未定。何しろ今週末、小学生何十人だか引き連れて1つイベントが。そして来週からしばらくは、横浜へ。入院中の母の世話に、実家やお墓の掃除などなど。そう言えば昔「などなど」の意で、「etc(エトセトラ)」って書いたけど、今じゃ「ETC」と言えば自動車の「ノンストップ自動料金収受システム」のことですね~。って話、前にも書いたっけ?しばらくはまた、更新する時間もあまりなさそうな気がしますが、もし空き時間が作れたら、ちょこっと更新しようかと思います。携帯からの更新になるかな?だとしたら、多分、長文にはならないかと。^^;それでは皆様、お体に気をつけて、元気な夏をお楽しみください!(*^^)v ■□■ 10年前に別れた恋人との同居から始まる物語 ■□■「poincare ~ポアンカレ~」はこちらから↓ 今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)v
July 22, 2009
コメント(88)
さて、昨日の前半に引き続き、後半です。^^ 7/22の午前中にはUPの予定でしたが、午後になっちゃいました。(>_
July 21, 2009
コメント(2)
先月「ただいま…かな?^^;」というタイトルで記事を書き、 「だいぶ落ち着いてきました。」なんて書きましたが、 七月に入って、また大忙しな私です。(>_
July 21, 2009
コメント(7)
ブログの更新も、みなさまのところへの訪問も、すっかりサボっていた私でしたが、 前回の更新にも、温かいコメントをいただき、感激してます いつの間にかこのブログは、私にとって たまにしか顔を出せなくても、“いつも温かく迎えてもらえる場所” “いつでも帰れる場所”になっていたんだなぁ~と そんな気持ちになりました。 さてさて今回から、やっと、次の物語を書くにあたっての自分の気持ち、 というか、書こうとしていることかな? そんなようなことを少し書いておきたいと思います。 「poincare」の時は、どんな話か全く説明もせずに書いてましたが、 今回はちょっと説明してから書いてみようかな~なんて思ってます。 で、今回は第一段。 だいぶ前の話で恐縮ですが、「poincare」終了後、詩を書いていたときに 月読つきよみさんからいただいたコメントで、気が付いたことがありました。 4/16の 「ミツバチはどこ?」という詩にいただいたコメントなんですが、 そのままここにコピペします。 詩の具体的感想は 私も他の方の詩を読んで気がつかされますが 「息絶えました」「枯れました」「消えました」 とても悲しくて強い言葉ですよね。 自然破壊のひどさを伝えたいからだと思いますが 私の個人的な意見としてはせめて最後にでも救いがあればよかったなと思います。 否定的な言葉ばかりの詩は読んだ後悲しくなってしまったままなのですね。 このコメントを読んだ時に、あっって思ったんです。 ご存じの方も多いと思うのですが、月読つきよみさんは、 とても女性らしい詩、母性に溢れた詩を書かれる方で、 彼女のブログのトップページには 「読まれた方が 幸せな気持ちになれたらいいな。」という 優しい言葉が添えられています。月読さん、勝手に拝借させていただきました~ とても女性らしい優しさが、彼女の詩にも溢れていると思うんです。 で、私はと言うと。 いつも読んでくださっている方には申し訳ないのですが、 ぶっちゃけ、そういうことをあまり考えられないみたいで…。(>_
June 29, 2009
コメント(47)
梅雨入りしたとは言え、こちらはカラカラのカラ梅雨 一部では取水制限や夜間時間断水も始まり、水不足が心配です。(-_-;) みなさんのところでは、いかがでしょうか? 前日記に書いた通り、あまりにも色々あった5月がやっと終わり、 今月に入ってPTA役員の集まりも週1~2程度になり、だいぶ落ち着きました。 前日記にはたくさんの温かいコメントやメールをいただき、ありがとうございました なかなかブログまでは手が回らず、すっかり放置ブログと化していましたが、 ぼちぼち再開できそうです。^^; 本当は色々思っていることを覚え書き程度に書きとめながら、 次の小説の流れだけでも、だ~っと書いてまとめようとおもっていたのに、 なぁ~んもできてない(>_
June 19, 2009
コメント(41)
ご無沙汰しっぱなしです(>__
May 23, 2009
コメント(45)
だいぶご無沙汰しています。f(^^;) 前回の「母がくれたこんぺいとう」にも沢山のコメント、ありがとうございました 風邪気味だった私を気遣かっていただき、ありがとうございました またご無沙汰しているにも関わらず、 毎日ランキングの応援に来てくださる方、心から感謝致しています 皆様は楽しい連休をお過ごしになれましたか? 我が家では、前回書いた息子の「お手伝い」は翌日には更にパワーアップして、 食器洗いはもちろんのこと、食事の準備の手伝いも、 洗濯も乾いた洗濯物を畳むのも片付けるのも、何から何まで大活躍(^O)=3 と、言うのも、前回のブログをアップした翌日、私は発熱でダウン~(+_+) これでは旅行が中止になるかも… そう悟った息子、頑張りました!笑 お陰ですっかり…とまではいきませんでしたが、 かなり回復することが出来て、本調子ではなかったものの 息子の頑張に応えなくては とGWは旅行へGO=3=3=3 (一部の方にはお伝えしましたが、旅行に行ってしまえば、 私も完全に家事をしなくていいので、その方がラクかな~と思って。^^;) 旅行中は楽しく過ごさせていただきました~ (旅行記を書くつもりはないので、「行って来ました」と言うご報告だけ…^w^;) で、元気に帰って来ましたが…翌日、息子たちが、そしてさらにその次の日の夜中に私が… 「流行性嘔吐下痢」に 先週はGW明けに兄弟揃って欠席。で、そのまま週末となりました。(-_-;) 今日5/11(月)は息子(兄・小6)は元気に登校、私もすっかり回復 若干1名・息子(弟・小4)だけが、日曜の昼間はすっかり回復したように見えたのですが、 夜になってまた発熱と下痢が復活してしまい、今日も学校はお休み。 でも回復に向かっているようです。明日は学校行けるかな?^^ GWは“寝正月ならぬ、寝ゴールデンウィーク”と書いてた方もいましたが^^; 後半は“寝込みゴールデンウィーク”となってしまった我が家 旦那は7・8日は仕事に行きましたので、私と二人の息子とゴロゴロと お布団でテレビ観たり、お昼寝したり、楽しくおしゃべりしてる最中に、 “あぁ~、ちょっと待って お腹痛い!トイレ~ε=ε=ヘ(;`O´)ノ ” (お食事中の方、ごめんなさいm(__)m) なんて感じで具合が悪いながら、その状況を楽しんでしまいました。^^;○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○ そんな中、この先ブログでどんな物語を書いていこうか…なんてことも考えたり。 ちょっと前までは「poincare」のスピンオフみたいな感じの物語を考えていて、 「くるみ」あたりを絡めて書こうと思っていたのですが、最近思い付いたばかりの話で まだ骨格もできていない感じなので、もう少し温めてからにしました。 本当は次に書くときには明るい話を…と思っていたのですが…ごめんなさいm(__)m 以前からいつか書こうと思っていたことがあって、次はそれを書くことにしました。 「poincare」を書く思ったきっかけとなった出来事。 私の実父の病気と死についてです。 物語のトーンは暗くならないように書くつもりではありますが、 悲しいシーンはやはり避けては通れないので、一概に「読んで~!」とは言えないかな…(^_^;) もし興味のある方がいらっしゃいましたら、 「poincare」の時のようにお気軽にお付き合いくださると嬉しいです。 連載を始める前に、こんな感じでちょっと思ったこと、感じたこと、どうでもいいことなど、 今のうちに徒然っておこうかな~と思います。 「poincare」のラストについても、ちょっと書いておきたいな~と思うし。 とりあえず詩のUPは一時中止。あと何回か、こんな感じでいきますね。 読むのが面倒な長文かもしれませんが…^^; 自分自身の考えをまとめて、覚書のようにしておきたいだけなので お時間のある方のみ、お時間があるときにご覧ください。 あ、そうそう今日の写真、旅行に出るとき、ここを通りました。 しまなみ海道・生口島の橋の上です。写真の撮影は私じゃありません~ いつもお世話になってるフリー画像のダウンロードサイド「photolibrary」さんからの いただきものです。念のため。^^ ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○よかったら、ぽちっとランキングにご協力を…^^ 多忙中につき、しばらくお邪魔できない日が続くと思います。今月は地域・学校・親戚…と関わらなきゃいけない行事が目白押しの上、実家の母が入院したので横浜にも行ってきます。時間ができたときに少しずつ、順次お邪魔させていただきますので、どうぞご了承ください。m(__)m ■□■ 10年前に別れた恋人との同居から始まる物語 ■□■「poincare ~ポアンカレ~」はこちらから↓ 今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)v
May 11, 2009
コメント(31)
小説・詩母がくれたこんぺいとう口に含んだこんぺいとうがカシャりと音を立てて崩れてゆく切ない程甘く溶けて流れる想い出幼い日の陽だまり 母の匂い叱られた日もあればぶつかり合って泣いた日もいっそ嫌いになれれば楽なのにと拒絶した日々もあるのに今なお求めている 母の眼差し母もまだ若かったのだと 振り返る年になってやっと気が付けたことがある有りのままの私を受け入れて欲しくてずっともがいてきたけれどそれは私だけではなく お母さん あなたもきっと同じだった刺々しい鎧も 溶けてしまえば幼い日の陽だまり 母がくれたこんぺいとう優しい陽射しの記憶の中でいつまでも豊かに甘い 母との絆 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○よかったら、ぽちっとランキングにご協力を…^^ 4月の大仕事が終わって、今は5月の大仕事のための準備に追われています。 そんな中、今朝から喉が痛くて、頭もぼ~っとしてます 風邪、ひいちゃったかな…GWは旅行の予定もあるのに~(>_
April 30, 2009
コメント(31)
小説・詩つよし君へびっくりしちゃったよ。だって「公然わいせつで逮捕」なんて。最初、何かの番宣だと思って、まさか本当に逮捕されてるなんて思わなくて。ニュース番組で報道されているのを見て、「やらせ」じゃないんだ、本当なんだと驚いた。情けないことしちゃったね。今頃は相当落ち込んでいるんだろうな。さっきあなたが移送されるところをテレビで見たよ。青白い顔をして悲しそうで。まだ酔いが残ってるって言ってたから、身体も相当しんどいのだろうけれど、きっとしでかしてしまったことの重大さに、今になって押し潰されているんじゃないかな。優しくて、まじめ。こつこつと努力家で、清潔。そんなイメージが先行してるから、テレビではきっとしばらくはあなたとは会えないね。慎吾君に「酔っぱらうと訳分らなくなる」って、言われてたじゃない。木村君に「二日酔いでステージに立つな」って、叱られたって言ってたじゃない。笑い話で済んでるうちはいいけれど、いつか大事にならなきゃいいけどって、ちょっと心配でもあった。飲まなきゃやっていられない、大きなストレスがあったのかもしれないけれど、今度こそ、もう懲りなきゃダメだよ。しばらくは仕事のできない、暗いトンネルのような時間が続くね。きっと辛くて耐えがたいことだと思うけれど、飲み過ぎてしまうあなたへのお灸だと思って、「チョンシン チャリセヨ!」(しっかりして)飲酒運転で誰かの命を奪ってしまう。そんなことになるよりは、まだ良かったんだと思う。気持ちが落ち着くまでは時間がかかるだろうけれど、今はゆっくり身体を休めて、泣くんだったら、思い切り泣くだけ泣いて、しっかり気持ち立て直して。芸能界に復帰云々は別にしても、また一から頑張れる、そんなあなたをずっと待っているからね。※「チョンシン チャリセヨ!」 韓国語で「きちんとしろ」「しっかりして」の意味 「チョンシン」は「精神」 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○よかったら、ぽちっとランキングにご協力を…^^ 忙しさのピークは過ぎ、今週は少し落ち着いてきました。 落ち着いてきたところで、ブログの更新しようと思っていたら… 「草なぎ剛 公然わいせつで逮捕」に衝撃を受け、 他に今回UPしようと準備していたものがあったのですが、 このようなものを書いてしまいました 何しろ私はSMAPファンで、特に草なぎ君がお気に入り。 って、言うと男友達には「ああ、彼、いいよね」って言ってもらえるんだけど、 女友達からは大抵「えー、何でぇ~?」って言われます。^^; もう慣れっこだから全然構わないんだけど。 どうも「男性として好き」というより、「人間として好き」なんです。草なぎ君が。 それも彼のイメージになっちゃってる、 「優しい」とか「まじめで努力家」とかそういう部分よりも、 何となく情けないというか、子供じみてるところだったり、 自制できなさそうな弱さだったり、 そういう青臭ささとか不器用さみたいなところが、特に好きだったりします。 確かにね、SMAPで一番カッコいいのは誰? って聞かれたら、私も「木村拓哉君」って言いますよ。 ライブでの彼のカッコいい姿には、普通にドキドキします でもね、どーも私はドキドキだけじゃ物足りなくて、 テレビのMCとか全然向いてないのに、総合司会とかやらされてて、 冷汗かきながら危なっかしい仕事をしてる、そんな草なぎ君を観てる時の、 ハラハラドキドキな感じがいいんです。 今回の事件。最初はびっくりしちゃったけど、 「あ~あ、とうとうこうなっちゃったか…」というのが、正直な感想です。 もともとの好きな理由が「カッコいいから」ではないので、 がっかり…でもないし。あれ? これって草なぎ君的に嬉しくは…ないね。^^; ひょっとすると、「女」というより「母親」的な気持ちに近いのかも? 私ががっかりしてなくても、世間的にはかなりのダメージだし、 社会的制裁は相当なものがあるんだろうな。 いずれにしても人として、これに懲りて、しっかり立ち直ってくれることを祈ります。 ところで相変わらず、皆様へのご訪問、応援、 パッタリと滞っていてごめんなさい! 少しずつ回り始めていますので、お待ちくださいね…m(__)m そうそう前回いただいたコメントに「最近ミツバチ見かけない」という方がいて、 実際にミツバチは減少してるんだな…と実感。 ミツバチだけじゃなく、失われているものが他にもたくさんありますね…。 だからさぁ、酔っ払って裸になって世間を騒がせてる場合じゃないよぉ~!(>_
April 23, 2009
コメント(28)
小説・詩ミツバチはどこ?迷子になったミツバチが あちらこちらでダンスを踊るぐるぐる踊れど分からないおうちはどこ?迷子になったミツバチは やがてミンナ息絶えましたミツバチの消えた花畑 あちらこちらで花が咲くいくら待とうと種はできないミツバチはどこ?受粉されない花々は 種子を残さず枯れました少なくなった植物を求めて 草食獣がさまよい歩く草原や森はどこ?餌にありつけないものたちは 徐々に姿を消しました残った草食獣たちを探して 肉食獣が匂いを追う獲物はどこ?探し疲れたその果てに 餓えた瞳を閉じましたそれを横目で見ていながら 食い止めることをしなかった愚かで哀れな生き物たちが 口々に騒ぐ日が来るでしょう「パンに塗るハチミツやバターはどこ?」「ジャムもないの?」「パンに挟む果物や野菜、卵やハムは?」「パンを焼く小麦粉までも?」「空気までもが薄くなった気がするのはどうしてなの?」やがて愚かな生き物も 一人残らず消えるでしょう迷子になったミツバチが 命をかけてダンスを踊るそれは花畑の場所を 仲間に示すダンスではなくむしろ愚かな生き物たちへの 最後通告の「SOS」 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○よかったら、ぽちっとランキングにご協力を…^^ 世界中でミツバチが急激に減少しているというニュースがテレビ等で伝えられていますが、ご覧になりましたか?例えばこちらとかこちらなど。またミツバチのダンスについてはこちらをどうぞ原因は、寄生ダニや農薬、ウイルス説など様々で、まだ断定されてはいないようですが、何かがハチの帰巣本能を狂わせていると考えられています。携帯電話電磁波説というものあるそうです。そもそも私がこの詩を書くきっかけとなったのはブログ友だちの「ミツバチ減少」という日記でした。(リンクの許可をいただいたので、4/18リンクをここに追加します)ここで最初に携帯電話電磁波説を知ったのですが、私が見たいくつかのテレビのニュースでは、携帯電話電磁波説は挙げられていませんでした。で、ふと思っちゃったりしたんですが…携帯電話関連の企業がテレビのスポンサーになっているから?「テレビゲームや小型ゲーム機によるゲーム脳はもっと問題視されるべきなのに、それを報道することでスポンサーが離れてしまうと困るからほとんどのメディアで報道されない」以前、そんな話を聞いたことがあります。真偽のほどは分かりませんが…(-_-;)いずれにしても地球を取り巻く環境に、また大きな変化が生じているのは事実です。さて、私、ここのところ大忙しです三月の年度末の忙しさを遥かに超えてます。楽天にログインしたの、何日ぶりだろう…?(T-T)みなさまへのご訪問、応援、パッタリと滞っていてごめんなさい!少しずつでも回れる時にお邪魔させていただきますね。多分、この忙しさは今週でピークを越えると思うのですが、5月末までは何だかんだと大忙しのようです。ただでさえ文章書くのに時間がかかる私こんな状態なので、しばらくは長文書くのは諦めました。ブログで詩を書いたのがきっかけになって、今は発想が多少“詩的モード”になっているようで、家事をしているとき、移動中、買い物中、子供のサッカーの応援中、PTA役員の会議中 コラコラ…^^;ふとした時に言葉やフレーズが浮かんできたりしているので、それを元にしばらくは散文、散文詩的なものをUPしていこうかと。そこでブログのタイトルを変更しました。「fragments」 “断片”という意味です。思い付いた言葉、フレーズをここに書きためておくという意味でつけました。また人気ブログランキングのカテゴリーも「小説」では変だし、「詩」というほど詩ばかりを次々に書けるとも思えないので、とりあえず「人文」の中の「全般・その他」に変更します。ファイブブログランキングとコンテンツバンクのカテゴリーはそこまで細かくないので変更なしです。当分はこんな感じでいくと思いますので、どうぞよろしくお願いします。皆様も何かと慌ただしい時期だと思いますが、体調にお気をつけて、楽しいGW目指して頑張りましょう♪^0^■□■ 10年前に別れた恋人との同居から始まる物語 ■□■「poincare ~ポアンカレ~」はこちらから↓ 今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)v
April 16, 2009
コメント(44)
小説・詩Franjipani(フランジィパニ)さぁ 飛ぼう纏わりつく柵(しがらみ)を すっぽり脱いで隠しごとを許さない 太陽の下へ眩しいほどの青空に吹く 気ままな風を心の中まで取り込んで余計なことは考えずゆったりと流れる一日に浄化していく自分を味わうさぁ 飛ぼう私らしく 恋をしよう誰もがトモダチになれる街で元気なタマシイを取り戻そう陽気な笑いが 腹の底から湧き上がってくるように美味しいものを たらふく食べて甘い香りのする花を 髪にひとつ飾ったらきっと叫ばずにはいられないさぁ 愛を込めて世界中の生きとし生けるものたちにテリマカシィ ありがとう! ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○よかったら、ぽちっとランキングにご協力を…^^ 前回、詩をUPしたときに、もう当分詩は書かないだろうな~、何も思いつかないし、なんて思っていたのですが、今回またまた書いてしまいました。^^;何を書くにせよ、明るいものをと思っていましたが、いつも仲良くしていただいている、美冬2717さんの「春の歌」に刺激され、「こんなキラキラした詩が書きたい~」という思いが募り、さらに、この前までバリへ行っていたsaya sayaさんの日記を読んだら、キラキラ感がどんどん膨らんでいって、自分がバリへ行ったかのような、浮かれ気分で書いちゃいましたタイトルの「Franjipani(フランジィパニ)」はsaya sayaさんのブログのタイトルにもなっている花の名前。別名「プルメリア(Plumeria)」の方が一般的でしょうか?また詩の最後にある「テリマカシィ(Terima Kasih)」はバリで使われているインドネシア語で「ありがとう」の意味だそうです。さて、息子たちの小学校の春休みもやっと終わります。これで少しは落ち着きますが、今年度から小学校の役員です。今月は何かと忙しそうです。(>_
April 7, 2009
コメント(44)
小説・詩天国へ 遠く離れても「もしもし?」「久しぶりー」「そっちはどう? 元気にしてる?」「うん、私は元気だよ」そんな何でもない、空気みたいな会話。もうできなくなっちゃったね。「おかけになった番号は電波の届かないところにあるか…」もう繋がることのない携帯電話。あなたがいる場所は、永遠に圏外。もう一度、元気な声が聞きたい。ただそれだけのことが叶わない。でも、私の想いは届くかもしれない。天国にいるあなたが寂しくないように、ここにいる私自身が寂しくないように。声には出さずとも、胸の奥で、繰り返し、繰り返し、「もしもし?」「久しぶりー」「そっちはどう? 元気にしてる?」「うん、私は元気だよ」「またいつか会おうね」「遠く離れても、ずっとずっと友達だよ」 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○ぽちっとランキングにご協力を^^ 哀しい連載小説が終わって、哀しい短編書いてみたと思ったら、今度は哀しい詩でごめんなさい以前、一度だけ、詩や小説の投稿サイトに詩を投稿したことがあるのですが、そこで色々アドバイスしていただいたことを踏まえて、書き直した詩です。月読つきよみさん、その節はお世話になりました~♪高校一年生くらいまでは、よく詩を書いたりもしていましたが、いつの間にか全く書かなくなり、最近になっていくつかの詩のブログにお邪魔するようになって、自分でも書いてみたくなったのですが、いざ書こうとしたら何一つ浮かばず…(>_Copyright (c) 2007 - 2008 “poincare ~ポアンカレ~” All rights reserved. ※迷惑コメント対策で「http:」を禁止ワードに設定しました。 URLをご記入の際には「http:」とご記入にならないよう、お願い致します。※基本的にいただいたコメントに対するお返事は、 サイトをお持ちの方で私がURLの分かる方は、お邪魔してお返事させていただいてます。 サイトの運営をされていない方、URLの明記は避けたい方のみ 私のブログ内のコメント欄でお返事させていただきますので、 お手数ですが後日お返事を見に来ていただけると嬉しいです。^^
April 2, 2009
コメント(37)
エッセイ・小説・詩その日、一匹の仔猫が鳴いていた。そう言えば…とふと気が付く。お昼ご飯の時も、子供がお昼寝を始めた頃にも、ずっと鳴いていたような気がする。どうしてすぐ仔猫だと思ったのか。それは間違いなく「お母さん」を呼んでいる声だったから。猫語が分かるわけじゃない。でも母猫を呼ぶ声に間違いないと思った。自分も母親になったばかりだったからだろうか。なぜか直観的にそう確信した。どこで鳴いているのだろう? 声は割と近くから聞こえる。窓の外を覗くと、仔猫はアパートの隣にある大家さんの家の庭にいた。大家さんは留守なのか、そうじゃなければ、とっくに仔猫を追い払っていると思う。大家さんは犬も猫も大嫌いだった。特に野良猫は、大事に育てている草花におしっこをかけてダメにするし、庭に糞をしていくのが我慢ならないみたいだった。西の空がオレンジに染まる夕暮れになっても、まだ仔猫は鳴いていた。同じ場所で何時間も、「お母さん」を呼び続けていた。出掛けていた大家さんが帰ってくると、大家さんは仔猫を追い払おうとして、怖い顔で仔猫に近付いた。けれど仔猫は大家さんを見ても逃げるどころか、もっと甘えた声を出した。大家さんは足を上げて仔猫を蹴るような素振りをした。動物はあまり好きではない大家さんだったけれど、心根は優しい人だったから、決して本気で蹴ったりはしない。あくまで蹴る真似だけだった。そのせいか仔猫は不思議そうな顔をするだけで、逃げようとはしなかった。それで大家さんは庭の倉庫から、竹箒を取り出してきて高く振り上げると、今度はバサッと仔猫の前に振り下ろした。それでも仔猫はきょとんとしていた。大家さんは顔をしかめて、竹箒の先で仔猫を突いた。さすがにきっとちくちくして痛かったに違いない。仔猫は少し後ずさりして、パッとどこかへ行ってしまった。夜になってテレビを見ながら、旦那の帰りを待っていると、また仔猫の鳴き声が…。昼間聞いたときより、もっと大きく、ハッキリと。ものすごく近くにいる…。カーテンを開けたら、仔猫と目が合った。窓のすぐ外に鉢植えの花が飾れるように、窓の高さに合わせたフラワースタンドを置いていた。仔猫はその上の空いている小さなスペースに座って、明らかに窓に向かって鳴いていた。この時もう一つ、直観した。この仔猫は飼い猫だったんだ。人に慣れているから、大家さんを見てもすぐには逃げなかったし、人がいるって知ってるから、明かりのついた家の窓に向かって鳴いていた。鳴いていたというより、呼んでいたんだ。いくら呼んでもお母さんが来ないから、人間に助けてもらおうと思って。この仔猫は、人間は優しいとしか思っていない。つい最近、ひょっとしたら今日の昼間、捨てられた?迷子になったという線もあるけれど、それは考えにくかった。近所で猫を飼ってる家もないし、どこかで仔猫が生まれた話も聞かないし。数年前、この近所で野良猫に餌をあげてた人がいて、大家さんだけではなく、この辺一帯の人たちが糞尿の被害にあってから、猫嫌いの人が多いって聞いたことがある。もしかしたら、夕方大家さんに追い払われた後、どこかの家の前で鳴いていたのかもしれない。そこでも追い払われて、逃げているうちにまたここへ戻ってきたのかもしれない。けれどこのアパートではペットは禁止。ごめんね、お前を入れてあげることはできないの。お腹もすいているだろうし、そんなに鳴き続けていたら、きっと喉も乾いている。でも大家さんに見つかったら。野良猫の世話はしないでくれって叱られるに違いない。どうにもできなくて、さっとカーテンを閉める。それでもずっと仔猫は鳴き続けた。どうしよう。ウチで捨てたんじゃないかとか近所の人に疑われそう。お願いだからどこかへ行って。仕方なく、今度は窓を開けて、追い払おうとすると、仔猫は当たり前のように部屋に入ろうとした。違うの、そうじゃないの、「あっち行って」思わず大きな声が出て、ベビーベッドの上で機嫌良く遊んでいた子供が泣きだした。慌てて仔猫を手で押しやり、勢いよく窓を閉めた。どうして? どうして入れてくれないの? 哀しそうな仔猫の声が響いている。それを聞いて大家さんが玄関から飛び出して来て、また仔猫を追い払った。それからしばらくは仔猫の姿は見なかったけれど。数日後、ベビーカーに子供を乗せて散歩に出ると、仔猫はアパートから少し離れたところにある公園のベンチの下にいた。相変わらず、親猫を呼んでいるような声だった。でもその声は弱々しく、身体もガリガリに痩せ細って、体をぺたりと地面に横たえていた。どうすればいいのか途方に暮れる。あの頃は猫を保護して里親に出している人たちの存在も知らず、こんな時に連絡するところと言えば、保健所しか思いつかなかった。でも保健所に連絡することが何を意味するかも知っていた。どうすることもできず、その場を立ち去った。散歩に出たついでにスーパーにも寄った。買い物をしながらも仔猫のことが頭に浮かぶ。せめて仔猫自身が他の場所へ歩いて行って、優しい誰かに拾ってもらえるように、自力で頑張れるパワーが出せるように、ご飯を食べなきゃいけないよね?だからついでに、ちょっとだけ、そうほんのちょっとだけ、そう思って、小さなお刺身のパックを一つ買った。どきどきしながら公園に戻った。けれどそこにあの仔猫はもういなかった。自分で移動したのだろうか? 誰かが拾ってくれたのだろうか?保健所ではありませんように。それだけを祈った。もっと自分にできることは他にはなかっただろうか? と胸を痛め、お刺身をあげなくても済んだことに、ほっと胸を撫で下ろした。お刺身がもったいなくて、ほっとしたんじゃない。猫を飼った経験もなくて、弱った仔猫にお刺身をあげてもいいのか不安だったし、あげているところを近所の人や大家さんに見られたらどうしようと心配だったから。それに、中途半端に手を出さずに済んだことにも安心したから。それ以来、その仔猫を見ることはなかった。きっと優しい人が拾ってくれたんだ。そうでなければ迷子になっていた子猫を、飼い主が見付けて連れて帰ってくれたんだ。そう信じたい。だけど、夜、カーテンを開けた時にぱちりと合った仔猫のあの目。あれから何年も経って、あの時まだ小さかった子供も小学生になったけど、今でも仔猫を見かけると、あの時の仔猫の目の色が、胸一杯に、まるで辛い片思いみたいにどうしようもなく、甘酸っぱく闇に光る。 ※この話は実話をもとに書き起したフィクションです。 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○ぽちっとランキングにご協力を♪ 思ったことや感じたことを、普通に日記に書こうとしたのですが、どうにも筆、というかキータッチが進まず、一部実話をもとに、エッセイ風物語にまとめてみました。どうしてもこんな風にしか書けない私…。^^;ブログ仲間のは~ちゃんのところで、数日前に知った情報なので、既にご存じの方も多いと思いますが、東京で仔猫の里親になり、数ヶ月後に外に捨てるという被害が続出しているそうです。一度人との生活に慣れさせておいてから、捨ててしまう…。以前、窓の外で鳴いていた仔猫を思い出しました。詳細はりっぴぃ0510さんのブログ「杏の福福♪百万両」の2009年03月18日付「★緊急★ 里親詐欺に関しての情報」をご覧ください。さて、我が家の子供たちも春休み真っ只中。ただでさえ忙しい時期なのに、昼ご飯も用意しなきゃだし、パソコンも使いたがるし…皆さまのところへの訪問がいつも以上に滞っています。当分かなりの気紛れ訪問になりますが、お許しください。m(__)m■□■ 10年前に別れた恋人との同居から始まる物語 ■□■「poincare ~ポアンカレ~」はこちらから↓ 今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)v
March 30, 2009
コメント(28)
「poincare」を読んでくださった皆さま、ありがとうございました。いつも応援くださったこと、心より感謝していますあ、最初に謝っちゃいますが、ラストがハッピーエンドにできなくてごめんなさいっ!! m(__)mハッピーエンドの最終話も考えてはみたんですけどね、何だか嘘っぽくなちゃって…。フィクションだから別に嘘っぽくてもいいのか?( ̄∀ ̄;)ノ紗英がどうなったのかハッキリさせない終わり方とか、いきなり数年後の話で吾朗たちが想い出を語っちゃってるとか、そんな展開も考えましたが、どれもこれもとってつけた感じ…結局、ブログで連載する前から浮かんでいたラストのまま書きました。というか私にはそれしか書けなった…? ^^;書き上げて最初に思ったことは、「やっと下書きが終わった~」 …えっ?(-◇-;)書き終えたら、もっと達成感とかあるかな~と思ってたんですけど…毎回何度も書き直しては読み返し、読み返しては書き直してUPしてましたが、逆に時間をかけ過ぎたのか?初めの頃と終わりの方では書き方も随分変わったし、書ききれなかったこと、書き忘れてることも結構ある~!ので、これから密かにまた書き直していこうかと。^^;展開を大きく変えるつもりはないので、ブログでの再UPは今のところ考えていませんが、携帯小説とか、メルマガでの連載とか、何らかの形でお披露目できればな~と。私にとって「誰かが読んでくれる」というのが何よりの原動力なので。こうして完結できたのも、皆さまのおかげです。続きを書いたら、付き合ってくださる方がいる…ひょっとして無理矢理お付き合いさせてた…?^^;それが「poincare」を書く上での、大きな原動力でした。最初はブログで連載することは色々と不安でしたが、思い切ってやってみて良かった~! 心からそう思ってますまた誤字・脱字、表現のおかしいところ、分かりにくいところ、リンク先の間違いなど、ご指摘くださった方々、ありがとうございました!文章から感じたことをその場で聞かせてもらえて、その上、校正までしてもらえちゃうブログでの公開意義はとても大きかったです!また何か物語を書きたいとは思っているのですが、それにはまだまだ準備不足なので、しばらくはこんな感じで不定期に徒然なるままを書こうかなーと思ってます。そうそう坂下琢人メインの吾朗とくるみの三人の物語もまたいずれ。この話はだいたい構成は出来上がっているので、ホントはこのまま続けた方がいいのかもしれませんが、なんだかそれだと「poincare」が終わった気がしない…。なので、ここはやっぱりひとまず間を開けます。コメントやメールをくださった方のところにお邪魔して、個々にお礼をお伝えしていますが、まだお邪魔させていただいてない方、毎日少しずつ回らせていただいてますので、もう少しお待ちください。おっ、やりましたね、侍ジャパン! 2大会連続優勝おめでとうございます! ワクワクをありがとう♪私たちもワクワクを胸にいっぱに頑張りましょう~■□■「poincare」本編はこちらからどうぞ ■□■最終話「光」 第1話「月」 途中の回を読まれる方ぽちっとランキングの応援してくださると嬉しくて、見えないところでこっそり安来節を踊ってるかも (ノ≧∀≦)ノ♪ 今日もありがとうございました♪ ぽあんかれ (*^^)v
March 24, 2009
コメント(32)
◆小説のあらすじ・登場人物◆ 最初または途中の回は◆ 一覧 ◆から ※ リンク先は携帯では表示できません。 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○ 紗英と坂下の二人が海に出かけた日、夜になって紗英から電話がかかってきた。「今日は楽しんできたか?」 てっきり喜びの報告だろうと思った僕の問いに返事はなく、耳に当てた携帯の向こうには消灯後の病院の床の冷たさだけが感じられた。「紗英?」 微かに聞こえるすすり泣くような声。「生きていたいの。もっと…、吾朗ちゃんやくーちゃんや、琢人のそばにいたいの。死にたくない…」 紗英の心がこぼれ出す。 今日までずっと平気なふりをして、我慢してきたのだろう。 限界まで何でも一人で抱えてしまうのは、未婚の母になることを選択した気丈な母親譲りの気質なのか。それとも一人で自分を育ててくれた母親に、心配かけまいとして身についた習性なのか。 我がままで勝気な態度でコーティングした奥に、本当は人一倍臆病で繊細な心を隠している。 その本音を見せない、強がりな紗英が泣いている。生きていたいと泣いている。 紗英がこんなふうに心を曝け出すのは、珍しいことだった。 坂下への想いが、頑なな紗英の心の殻を中から突き割って溢れ出したのだろう。それなのにどうして坂下ではなく、僕に電話をしてきたのか。その理由は、聞かなくとも見当はついた。「そうだよな。生きていたいよな。明日も坂下に笑顔を見せたいよな。これからもずっと、きれいな笑顔でいたいよな。だったら今はいくらでも泣いていいよ。一晩中でも付き合ってやるから。明日また、坂下に笑顔で我がまま言えるように、今は、しっかり泣いておけばいい」 紗英は声を強めて泣いた。 それから一週間、夜になると何度かそんな電話があった。ある時は紗英がすすり泣くのを、また別の時にはやけになって怒りながら泣くのを、ただ黙って聞いていた。「ごめんね、こんな電話ばかりで。ごめんね」 最後はいつも、泣きながらごめんねを繰り返す。 僕は紗英の声の全てを漏らさないように、ひたすら耳を傾け続けた。どうか奇跡が起こりますように、それだけを願いながら。 だが、何の前触れもなくその日は突然やって来た。「紗英が危ない」 坂下からの電話は部長とともに取引先に向かっている最中だったが、友人が危篤だと話すと部長は一刻も早く行くようにと言ってくれた。「望みは捨てるな」 そう言ってくれた部長に深く頭を下げて、タクシーに乗り込んだ。 普段と何も変わらない平日の午後。渋滞気味の道路。街を行き交う大勢の人々。信号の変わるタイミングも、くすんだビルを照らす午後の陽射しも、病院の正面玄関の自動ドアの開く音だって、何一ついつもと違うものはなかった。なのに、どうして…。 幾度となく通ったホスピスへの通路を駆け抜け、紗英の部屋に向かった。 坂下の隣で、先に来ていたくるみは泣くのを堪えて唇を噛んでいた。「紗英、吾朗が来たぞ、分かるか? 分かったら手を握り返してくれ」 紗英のか細い指先が微かに動き、坂下の手を握り返す。「紗英、聞こえるか? 僕だよ。しっかりしてくれ。紗英…」 僕たちは紗英に声をかけ続けた。バレンタインにはうんと着飾って、坂下とまた食事にでも行ったらいいとか、春になったらみんなで花見に行こうとか。 そして淡い西日に、部屋の中の全ての影が縦長に伸び始めた頃、消え入りそうな微笑みを最後に、紗英の時間はあっけなく止まった。 夕闇に包まれた部屋には、世間の時間の流れとは別に、重たい時間が淀みながらかろうじて流れていた。 ベッド脇のキャビネットに置かれた小さな箱の中には、紗英の母親の形見の銀のロケットがあった。中には両親と生後間もない紗英の写真。色褪せて変色した上に傷だらけで顔が判別し難かったが、紗英を抱いて写っている男性の出で立ちは、今見ると確かに僕の親父そのものだった。 別室に運ばれ着替えを終えた紗英は、くるみが買ってきた白いコートを羽織り、優しい夢でも見ているかのような安らかな顔をしていた。 その手のひらにロケットをそっとのせた。こぼれた僕の涙がロケットを濡らし、銀色が鈍く光った。 葬儀は紗英の母親の墓がある鎌倉の寺で行われた。参列したのは僕と坂下とくるみの三人だけだった。 火葬場で待つ間、止まりそうになっていた僕たちの時間が次第にペースを取り戻しつつあるのを感じていた。 親父の時もそうだった。辛いのはこれからだ。こうして悲しい色に包まれている間はまだいい。 けれど背中を押されるようにして日常に戻った時、何も変わり映えのしない世界に、たった一人いなくなったという事実がどれ程受け入れ難いことかを知る。 外の空気を吸ってくる、そう言ったまま戻らない坂下が気になって僕も外に出た。 空に届きそうな煙突から立ち上る煙を、坂下は見上げていた。昼間見える三日月のようにうっすらと細く棚引いた煙は、先の方で空に溶け込むように消えていった。「お前と海に行った日の夜、紗英から電話があったんだ。もっと生きていたいって。お前のそばにいたいって、そう言って泣いていた」「そうか」 坂下は少し安心したような顔をした。「紗英が自分の葬式の手配まで考えていたのを、吾朗、お前は知ってたか?」 そんなこと初耳だった。葬儀は病院の出入りの葬儀屋に坂下が手配してくれたんだと思っていた。「実家を売却して入院費も葬儀にかかる費用も用意して、葬式やこれから先の墓のことも…、だいぶ前になるが、紗英はさっきの寺の住職に自分で相談しに行ったんだ」 僕は耳を疑った。じゃあ、いつか紗英のお母さんの墓参りに行ったあの日、住職と今後のことを話してくると言っていたのはそのことだったのか?「俺の目には、あまりにも潔いというか、淡々と準備をしていく紗英の姿が、いつ死んでも構わないって思っているように見えて…。辛いことが多かったから、無理もないのかと思っていた。だが、もっと生きていたいって思ってたんだな。もっと生きていたいって思えたってことは、幸せだったってことだよな」 坂下は遠い目をして、自分に言い聞かせるようにそう言った。「ああ、そうだな。辛いことも多かっただろうけど、紗英はきっと幸せだった」 ふいに紗英が言った言葉を思い出した。「どんな状況の中でも、夢を見ることは誰にでも許されていることだから。一つ駄目になったらまた新しく、そうやっていつも夢を見ながら、明日に繋いできたの」 そうだったよな、紗英。胸が押し潰されそうなこんな状況の中でも、お前は夢を見続けようとした。お前がそうしてきたように、この先どんなに辛くても、僕たちも夢を見ながら明日に繋ごう。 いつか証明されることを信じて、ポアンカレ予想にたくさんの数学者たちが挑んできたように、僕たちもいつか遠い未来に、百年後の未来に、生まれ変わって再会できたら、また一緒に幸せを感じられるように。光に満ちた明日を信じて、今日を繋いでいかないとな。そうだろ? 紗英。epilogue ~ takuto 始 ~ 病棟の裏手にある職員専用の駐車場に車を停め、坂下琢人は車から降りた。すぐそこにホスピスが見えた。クリーム色の外壁は朝日を浴びて、これから始まる一日のために暖かさを蓄えているかのようだった。 そこに紗英はもういない。現実が容赦なく坂下の胸を射る。 紗英が使っていた部屋は窓が開けられ、次の入室者を迎えるための準備が始められていた。 坂下は医局に向かった。 デスクの上には、紗英が使っていたシルバーのノートパソコンがあった。坂下はそれを紗英と一緒に買いに行った日のことを思い出した。「私が使えなくなったら琢人にあげる。だから琢人が一番欲しいのを選んで」「じゃあ、一番高いやつだな」 悲しみを打ち消すようにそう言って笑ったことが、遠い昔のことのように感じられた。 坂下はパソコンを起動させ、生前の紗英の指示通りに「sae」という名前のファイルを探した。検索をかけるとすぐにワープロの文書ファイルがヒットした。 あいつのことだから間違っても愛の言葉なんか残してはいないだろう、坂下は苦笑いしながら文書名をダブルクリックした。すると、鮮やかなオレンジ色の花の画像と、紗英からのメッセージがそこにあった。 彼はこの花の名前も花言葉も知らなかったが、オレンジ色の明るい雰囲気がどことなく、笑っている紗英を思い起こさせた。ねえ 琢人、今 笑ってる?あなたの今日が、たくさんの笑顔に包まれた一日でありますように。 紗英 こうきたか。坂下はそんな顔をして可笑しそうに口元を緩めた。 彼が知らない花の名は「ミムラス」、花言葉は「笑顔を見せて」。 しばらくその画面を眺めた後、坂下はパソコンを閉じて白衣に腕を通した。そして寂しさを払拭するかのように勢いよく医局のドアを開け、しっかりとした足取りで廊下を歩き出した。 こうして今日もまた、新しい一日が始まる。 「poincare ~ ポアンカレ ~」 完 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!後書きはまた後日あらためて。(*^^)v今回の物語の補足銀のロケット 第9話・紗英の母の墓参り 第18話実家の売却・住職との話 第20話・パソコンを買いに行った日 第28話 Copyright (c) 2007 - 2009 “poincare ~ポアンカレ~” All rights reserved.※迷惑コメント対策で「http:」を禁止ワードに設定しました。URLをご記入の際には最初の「h」を省いてお書きください。
March 19, 2009
コメント(44)
いつもありがとうございます!(*^^)v前回「予定では次回が最終話です」とお知らせした通り、現在最終話を準備中です。準備中なんですが…9日からの1週間は皆さまのところにも1~2回くらいしかお伺いできなかったと思います。全くお邪魔できなかったところもかなりありました。59話、60話あたりでコメントいただいておきながら、今だにお礼にも伺っていない方、申し訳ありません!後日あらためてお伺いさせていただきますが、この場でもお礼を…コメント、ありがとうございました!またこちらからはほとんど応援に伺えずにいる中、ランキングの応援に来てくださる方々にも、心からのお礼を申し上げますそう、なんだかんだと忙しくしています~(>_
March 15, 2009
コメント(31)
◆小説のかなり大雑把なあらすじ・登場人物◆は、記事の下のコメント欄を。 最初から、または途中の回からは、◆ 一覧 ◆からどうぞ。 ※ 申し訳ありませんが、リンク先は携帯では表示されません。 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○ 血相を変えた琢人が、乱暴に部屋に入って来た。「どういうことなんだ。今、ナースステーションで聞いたら、紗英に変わりはないって」 琢人に電話をかけてくれた看護師の積木さんが、今にも吹き出しそうになるのをこらえて話す。「どういうことなんだって言われても…。私は、急いで来てください、月野さんが海を見に行きたいそうですって言おうとしていたのに、月野さんが、まで言ったら、先生が分かったすぐ行くって電話を切っちゃたんじゃないですか」「何だよそれ。急いで来てくださいなんて言われたら、緊急だと思うじゃないかっ」 怒っているというよりは、取り乱した自分を見せてしまったことを恥じている琢人を、吾朗ちゃんがここぞとばかりにからかった。「お前でもそんな顔するんだな、耳まで赤くしちゃって」 琢人はますます赤くなった。これ以上、機嫌を損ねちゃうと厄介だから、ここは素直に謝っておく。「ごめんね、余計な心配かけちゃって」 バツが悪そうに、琢人は頭の後ろに手をやった。こう言うときの琢人って、ホント可愛い。「ということで、頼むよ、坂下。今日は休みだろう? 紗英に海を見せてやってくれ。僕が連れて行ってもいいんだけど、何かあったら困るだろう? その点、お前が一緒なら安心だし」「何でまた、急に海なんて…」 琢人がそう言いかけたとき、今度はくーちゃんが息を切らして入って来た。「良かったぁ、間に合った」「あれ? くるみも行く気になってる? 行くのは紗英と坂下だけなんだけど」「分かってるわよ、そんなこと」 くーちゃんは抱えていた大きな紙袋を開け、白のロングコートを取り出した。「はい、これ、紗英さんに。海、寒いから暖かい格好していかないとね」「そのコート見覚えが…」 びっくりしている吾朗ちゃんに、くーちゃんが笑いかけた。「いつか一緒に買い物に行ったときに眺めていたの、覚えてる? さっき電話したときに吾朗君から、紗英さんが海を見に行くって聞いて大慌てで買ってきたの」 そういうとくーちゃんは私の方に向き直った。「これね、紗英さんに似合いそうだって、ずっと前に吾朗君と言ってたの。ね、ちょっと着てみて」 コートの袖に腕を通す。少し絞られたウエストと長めの丈がきれいなラインを作り出す。「やっぱり、よく似合う」 くーちゃんと吾朗ちゃんは顔を見合せて、満足そうに微笑んだ。何だかいい感じ。そんな二人の様子を見るのはとても嬉しかった。「お姉ちゃんのコート、ドレスみたい。真っ白で結婚式みたいだね」 その声に振り向くと、部屋の入口から夢芽ちゃんが覗き込んでいた。「お母さんのお見舞いのついでに、遊びに来てくれたの?」 夢芽ちゃんはこくりと大きく頷いた。「夢芽ね、今日リボンでお花作ってお母さんにプレゼントしたの。きれいにできたからお姉ちゃんにもあげようと思って」 そう言うと夢芽ちゃんは、色とりどりのリボンで作った可愛い花束を差し出した。「ありがとう」「あのね、これ、お姉ちゃんの結婚式のブーケにしてもいいよ」 照れくさそうにそう言った夢芽ちゃんに、私は大きく頷いた。「くるみちゃん、俺にも白のタキシードとか用意してくれたら良かったのに」 落ち着きを取り戻した琢人が、いつもの調子で要らないことを喋り出した。「え、お姉ちゃん、この先生と結婚するの? やめておいた方がいいと思うよ。この先生、とっても軽くていい加減なことばかり言うって、お母さんが隣のベッドのおばちゃんと話してたもの」 みんな、笑った。琢人だけが苦虫を踏み潰したような顔をした。「僕の妹を頼むぞ。泣かしたりしたら、承知しないからな」「全く、今日は何ていう日だ」 琢人はブツブツ言っていた。 着いたのは病院から車で三十分程行ったところにある、高台の駐車場だった。駐車場をぐるりと取り囲むガードレールの向こうには、冬の海が広がっている。 空と海を遮るものは何一つなく、降り注ぐ太陽の光が荒れた波の上を飛び跳ねるように光っていた。「外に出るか?」「うん」 車を降りた途端、強い海風が吹き付けた。よろけそうになった私の肩を支え、飛ばされそうだな、と琢人が大きな声で言った。 駐車場の片隅に小屋のようなものがあった。夏場だけ有料になるこの駐車場の料金窓口のようだった。人影もない今は、周りにブルーシートが巻き付けられていて、その端がバタバタと風に煽られてやけにうるさい。 私は琢人の腕にしがみ付くようにして海を見つめた。「いつまであなたの傍にいられるのかな。もうそんなに長くはないような気がするの」 琢人が何も言わないので、顔を覗いた。海を見つめる瞳にうっすらと涙が滲む。「ごめん、変なこと言って…。ごめんね」 琢人は優しい笑みを浮かべ、小さく首を横に振った。 何も言えない時間が流れる。「琢人…」 呼ばれて顔を向けた琢人の頬を、てのひらで包みこむ。冷たい頬が、指先の熱を奪う。 そっと微笑んで、静かに唇を重ねた。 眩いほどに反射する光の波の中で、潮騒が遠ざかっていき、全身がゆらゆらと波間に沈んでいくような錯覚が起きる。海の底へ、底へ。深く、ずっと深く。けれどもそこは光の届かない闇ではなく、光の束が揺れる透明な世界。 私を抱き締めた腕に込められた力の強さに、目眩を覚えそうになるくらい、幸せな今。 きっとこれから先何十年も何百年も、私たちの想いはこの波に抱かれて、永遠の営みの中でいつまでも輝き続けていく。海も空も風も、この瞬間の私たちのことをきっと覚えていてくれる。 何だかそんな気がするの。また吾朗ちゃんに壮大な他力本願だって笑われそうだけど。 だから琢人、あなたの中の私への想いがいつか消えてしまっても、私は大丈夫。 私がいなくなったら私への想いはこの海に任せて、一日も早く忘れて新しい恋に出会ってね。その代り今は、最期の一分一秒まであなたのことを好きでいさせて。(つづく) ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○読んでくださり、ありがとうございました!ぽちっとランキングへの応援を。励みになってます 今回の物語の補足前回、夢芽ちゃんが登場した場面 第49話吾朗が白のロングコートを眺めていた場面 第38話予定では次回が最終話です。さて、前回書いた息子の(小3)の反抗期色々コメントをお寄せくださり、ありがとうございました。温かいお言葉の数々、嬉しい限りです息子はもともと感情が激しく、怒ると物に当たり散らし、これまでに2回、家のガラス戸を割りました。きっと15の夜には、盗んだバイクで走りだすんだろうな…。それで学校の窓ガラスを鉄パイプで割ったりするんだろうな…。そんな感じ。(-ω-;;)それでも普段はとても優しい子。怒り散らすこともしょちゅうではないのですが、先々週は常にイライラが酷かったんです。そう、先々週は。先週からぴたっと治まってます。最初は私が最近忙しくて、夕飯の支度をしておいて、兄弟で食べててね~と言って、出掛けることも何度かあったし、(今住んでいる所はPTAも地域のことも集まるのは夜。以前住んでた所では考えられませんが、地域により様々ですね)旦那も年度末で帰りが結構遅いので、寂しいの? とも思いましたが…違いました少し前から鼻がつまると言うので、軽い風邪だと思っていたら、やたらと目をこすりだし…ひょっとして…花粉症?!3/2、病院で間違いありませんね~とお墨付きで、花粉症デビュー。(>_
March 8, 2009
コメント(51)
◆小説のかなり大雑把なあらすじ・登場人物◆は、記事の下のコメント欄を。 最初から、または途中の回からは、◆ 一覧 ◆からどうぞ。 ※ 申し訳ありませんが、リンク先は携帯では表示できません。 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○ お正月の病院はどことなく静かだった。外来も休診で、売店も閉まっていた。 元日に病院から少し歩いた所にある神社に、初詣に行こうと琢人に誘われた。ちょうど吾朗ちゃんもくーちゃんも来ていたので、皆で一緒に。 大晦日に聞こえた除夜の鐘は、その神社でついていたものだった。 皆で引いたおみくじ。大吉を引き当てたのに、正直ちょっと複雑だった。 今年の運勢? 私にとって今年ってあとどのくらいあるのだろう。おみくじを引いたことを後悔した。 顔には出さないようにしていたつもりだったけれど、私が素直に喜んでいないと見抜いたのか、琢人がからかうように言った。「良かったじゃないか、最後に引いたおみくじが大凶ってのも嫌だろう?」 琢人は気が付いていたかなぁ。あの時、くーちゃんも吾朗ちゃんも顔を引きつらせていたことに。 けれど慰めになっていない彼の遠慮のない言葉は、私にはかえって楽だった。変に気を使わないでいてくれるから、私も気を使わずに済む。「そっか、それもそうだね」 そう言って、笑ったのは強がりなんかじゃない。心からそう思えたの。 年明け最初の土曜日は、この時期にしてはとても暖かかった。 一時帰宅していた入院患者も病室に戻り、病院はいつもの雰囲気を取り戻していた。「天気もいいし、ちょっと外に出てみないか? 駐車場から中庭抜けてきたら、池のそばの木に黄色い花が咲いていてきれいだったから見に行こう」 吾朗ちゃんに誘われて、外に出てみることにした。 黄色い花、多分それは蝋梅(ロウバイ)のこと。昨年の今頃、私も母を誘って中庭に見に行ったっけ。あれから一年。大きな出来事が重なってしんどかった分、二年にも三年にも感じられた。 中庭には蝋梅を見に来た先客がいた。母がホスピスに移る前に同じ病室にいたおばあさんだった。あの頃から、ずっと入退院を繰り返しているらしい。 おばあさんは車椅子に乗った私を見て驚いた様子だった。「今、母がいたのと同じホスピスにいるんです」「そうだったの」 私の言葉におばあさんは目を細めて、少し顔を曇らせた。「そう言えばあなたご結婚されてたのよね。こちらが旦那様?」「あ、いえ、結婚はしていましたが、母が亡くなってしばらくしてから離婚したんです。この人は…」「僕は月野紗英のいとこで、居村と言います」 すかさず吾朗ちゃんがそう答えた。そうだよね、私の母のこと知っている人に「兄」とは名乗れないものね。いちいち説明されても、された方も困っちゃうだろうし。 私もいつかくーちゃんに、自分は吾朗ちゃんのいとこだと、咄嗟に嘘をついたのを思い出した。「そう、旦那様じゃないの。良かった」 良かった? 私はおばあさんの微笑みに戸惑った。「どういうことですか?」 おばあさんはクスクスと小さく笑った。真っ白になった髪の毛が、日差しに透けて細く光る。「だって、旦那様があなたに付き添っていたら、坂下先生が焼きもち焼くじゃない」 何を言い出すかと思ったら…。後ろで吾朗ちゃんまで小さく笑った。「やだ、何言ってるんですか。母が入院してた頃、ふざけて看護師さんたちに私のこと恋人とか言ってましたけど、坂下先生は患者さんもお見舞いの人も、誰彼構わず自分の恋人って言ってるんですよ。あの先生の言うこと真に受けちゃダメです」「あら、そうかしらねぇ。そんなことはないと思うけど」 おばあさんはいたってまじめな顔付きだった。「確かにあの先生、誰でも僕の恋人って言ったりするけれど。レントゲン撮りに行くとき、私にまでデートのお誘いって言うしね。でもそうじゃないの。言っていることは皆同じかもしれないけれど。いつかあなたとあそこの廊下で会ったことがあったでしょう? あなたを見つけた時の先生、嬉しそうと言うか、照れくさそうというか、きっと先生はあなたのことが好きなんだって、あのときに思ったの。あのときのあなたも少し緊張したように見えたから、先生を意識して緊張しているのかと思ったんだけど。違った?」 それは私が吾朗ちゃんのアパートに住んでいることを、琢人に打ち明けた日のことだった。もう私のことに関わらないでと、琢人に告げたのもこの日だった。「坂下先生のことは別に…。それに私は、もう…」「もう自分は長くはないから、傷が深くならないように坂下先生にはなるべく関わらないようにしよう、そんなふうに思っているの?」 とても優しいその声が、私の胸を貫いた。「だとしたらそれは違うと思うの。一般病棟からホスピスに移ったときに、あなたのお母さん、お見舞いに来る人が自分を不幸にするって嘆いていた。皆が自分を可哀想な目つきで憐れむって。私はまだ生きているのに、これから最後の一分一秒まで、もっともっと幸せになろうと思っているのに、そう言ってたのを覚えているわ。あなただって、もっともっと幸せにならなくちゃ」 日の光を照り返してキラキラ光る池で鯉が跳ねた。穏やかだった水面に波紋が広がる。「それにね、悲しませてしまうことばかり心配するより、あなたにだってまだ誰かを幸せにできる力も時間もあるんだから、今のうちにそれを使わなきゃいけないと思うの。諦めないで。大切な人と一緒に幸せになりなさい」「紗英、余計なことかもしれないけど…」 それまで黙っていた吾朗ちゃんも口を挟んだ。 蝋梅の花は五分咲きといったところだった。黄色い花の色が、澄み切った空の青さを際立たせる。その青さが私の胸に沁み込んでいく。甘く、切なく、痛い。 私は大吉のおみくじのことを思い出した。今更だよね。今更だけど…。(つづく) ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○読んでくださり、ありがとうございました!ぽちっとランキングへの応援を。励みになってます 今回の物語の補足紗英が吾朗とはいとこだとくるみに言った場面 第6話病院の廊下で紗英とおばあちゃんが会った場面 第35話今回登場した蝋梅(ロウバイ)ブログで交流させていただいている、yasu41asyさんと殻をつけたヒナさん からお写真をお借りしました。(画像をクリックするとそれぞれの日記にジャンプします)青空に映える狼狽がなんともきれいですよね~(^o^)丿以前もご紹介させていただいたヒナさんの写真。美しい…(*^。^*)yasuさん、ヒナさん、快くお写真を提供していただき、ありがとうございました~♪私、ちょっとここのところ、忙しいのが重なったり、子供が反抗期なのか言うこと聞かなかったり、結構ストレスがたまってしまい、胃の調子を壊しました。(-_-;)昨日(2/28)は午後になって吐き気と寒気が止まらず、夜は大変な目に…今日はだいぶ落ち着きましたし、旦那が子供を連れ出してくれたので、こうやってのんびり更新することができました。皆様のところにお伺いするのもかなり途切れがちになっていますが、暇を見てお邪魔させていただきますので、どうぞお許しください。m(__)mそれにしてもウチの息子は「親の心、子知らず」で…私も子供の頃、そうだったよな~今更だよね。今更だけど…。お母さん、ごめんね!(ノ_<。)グスンッ今日もありがとうございました ブログ管理人・ぽあんかれ
March 1, 2009
コメント(57)
◆小説のかなり大雑把なあらすじ・登場人物◆は、記事の下のコメント欄を。 最初から、または途中の回からは、◆ 一覧 ◆からどうぞ。 ※ 申し訳ありませんが、上記リンクは携帯では表示できません。 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○ 夜が怖い。考えないようにって思っていても、ベッドに入って目を閉じると、もしもこのまま…そんな想いがいつも頭の片隅にある。この前、倒れてからは特に。 ぐずぐずと眠れないままでいたら、どこからか鐘の音が聞こえてきた。除夜の鐘。年が明ける。 近くにお寺なんかあったっけ? しっかり聞いておこう。なぜかそんな気になって、私はベッドの上に身を起こした。こんなに神経を集中させて、鐘の音を聞いたのは初めてだった。冷たい空気を伝ってくる振動が、耳に心地良い。 最後の鐘が鳴り終わる頃には、すっかり目が冴えていた。 そうだ、今のうちにブログを書いておこう。そう思って、ノートパソコンの電源を入れた。 (注・以下、紗英のブログです) ------------------------------------------------------------------------ Happy New Year! 私もなんとか“今年”を迎えることができたみたい。(笑) 新年早々こんなこと書くのもどうかと思うんだけど。 実はね、この前倒れちゃったんだ。 一時的にだけど意識不明。マジ、焦った。 いや意識がなかったから、私は焦ってはいないか。(笑) 笑ってる場合かっ?! っていう、みんなからのツッコミが聞こえてくるわ。 それでね、ちゃんと今のうちに、みんなに『ありがとう!』って言っておきたくて。 だって、ほら、私、友達いないじゃない。(泣) こっちの友達とは、十年前、お兄ちゃんのこと知った時 誰にも何も打ち明けられなくて、早くお兄ちゃんの傍を離れたくて 友達には何も言わずに京都に行っちゃって、それ以来、ほぼ音信不通! 何で京都だったのかって? それはね、京都に行く前にお兄ちゃんのこと忘れようと思って 一人で北海道に行ったの。 何で北海道かって? 聞かれてないけど答えちゃう。 何となく、失恋・傷心って言ったら、北の方じゃない? 辛いのに沖縄とか行って弾けちゃうのもどうかと思って。 今思えば、それもありだったかな?(笑) 話は北海道に戻すけど そこでたまたま私に声をかけてくれた人が、京都から来てた人だったの。 名前も連絡先も何も聞いてなかったけど 優しくしてくれたその人に、もう一度バッタリ出会えたら これって運命? な気分じゃない。 それで京都。結局、会えなかったけどね。 運命じゃなかったのね、きっと。 離婚して、こっちに帰って来るときは別れた旦那に、私の居場所がバレないように、 やっぱり誰にもろくに挨拶もせずに、これまた音信不通! きっと、常識のない薄情者って思われてるよね。(笑) だから、話せる人って結局、タックンしかいなかったの。 でもタックンにも、って言うか、タックンだからこそ言えないこともあるじゃない? だから、誰にも話せない気持ち、ここでみんなに聞いてもらえて、 たくさんたくさん励ましてもらえて、ホント、救われた。 ありがとう! 不思議だね。会ったことも、電話で話したこともないのに。 パソコンの画面の中の文字列でしか知らないのに。 だけど、ここで繋がっている。 ありがとう! ずっと支え続けてくれたこと。 これからも誰かを支え続けられる、そんな、みんなでいてね。 もし荒らしとか、炎上とか、ネットで悪さしたら、私、化けて出るからね。(笑) そうそう、タックンへのメッセージ、色々書いてはみたんだけど… ファイル、全部削除しちゃった。重いかな? と思って。 あ、重いのはパソコンの動作が、じゃないよ。って、分かるよね、フツー。 動作が重くなるほどのメッセージって…どんだけよ?(笑) あんまり色々と書かれてもね、かえって辛いんじゃないかって、思ったの。 だから一番言いたいこと一つだけ、それだけ書き直して、あとは全部Delete! それと、このブログ、更新するのは今日が最後。 三日後にはブログ自体、削除するね。 もし四日後過ぎてもこのブログがあったら、もう私はいないと思ってね。 ほらほら、そこ、泣かないの! って、泣いてない? 今まで、どうもありがとう。 何もできないけれど、心から感謝の気持ち。 個別に訪問するのも、ちょっと辛いので、これが私からの最後のごあいさつ。 みんな、どうか、お元気で。 ごめんね。新年早々こんな話で。 今年も、来年も、ずっとずっといつまでも、みんなの幸せな時間が続きますように。 by poincare_days ------------------------------------------------------------------------ 入力しながらぽろぽろ、ぽろぽろ、涙がこぼれて止まらなかった。 けれど、不思議と気持ちはさっきより落ち着いてきた。 軽い眠気。これなら、目を閉じていれば眠れそう。 ブログをアップした後、部屋の灯りをつけたまま再びベッドに横になる。 ハンドルネーム“poincare_days”とも、これでお別れ。これから先、私がいなくなった後も、ずっと未来に向かって流れ続ける時間に思いを馳せて考えた、私のネットでの名前。「百年過ぎる頃には、私たちはこの複雑な関係から解放されてるわけだし、それにその頃になったら未来の誰かが、こんがらがった私たちの関係をスパッと解決する法則とか発見してくれるかもしれないでしょ? そう思ったら少しは楽にならない?」 私がそう言ったのを、吾朗ちゃんは壮大な他力本願だと笑ったっけ。 サイドボードに飾ったピンクのミニバラからほんのりと漂う甘い香りに誘われて、いつの間にか眠りに落ちた。 その三日後、宣言した通りに、私はブログを削除した。(つづく) ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○読んでくださり、ありがとうございました!ぽちっとランキングへの応援を。励みになってます 今回の物語の補足紗英のブログ・ハンドルネーム 第16話紗英のブログ・琢人へのメッセージ 第28話壮大な他力本願と吾朗が言った場面 第49話念のため、紗英のブログの中のお兄ちゃん=居村吾朗 タックン=坂下琢人 です。ごめんなさい、今回、ちょっと重過ぎたというか…悲し過ぎたかな? (-ω-;;)紗英のブログの形式は今回が2回目。紗英が抱えていたものを全て明らかにした今、1回目のブログ形式の28話をもう一度読んでいただけると最初に読んでいただいたときと随分印象が変わるかと。良かったら、お時間のある方は28話も読んでみてくださいね。さて前回57話は物語を書きながら、私も色々考えるいい機会となりました。紗英の元夫の取手の最後の思いを書かなかったことで、分かりにくかった点も多かったと思いますが、皆さんそれぞれ思ったことをコメントに寄せていただき、とても勉強させていただきましたありがとうございました!(^0^)ノ私は法事で明日から横浜の実家にしばらくいます。皆様への訪問やコメント・メールへのお返事が滞ると思いますが、ご了承ください。今日もありがとうございました ブログ管理人・ぽあんかれ
February 21, 2009
コメント(56)
◆小説のかなり大雑把なあらすじ・登場人物◆は、記事の下のコメント欄を。 最初から、または途中の回からは、◆ 一覧 ◆からどうぞ。 ※ 申し訳ありませんが、上記リンクは携帯では表示できません。 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○ 紗英さんのお見舞いに行く前に、最近の容態を聞いておこうと思って吾朗君に電話をかけ、昨夜彼女が倒れたことを知った。 そして紗英さんの別れた旦那様が、またやって来たということも。 自分も後から行くから、もし私がいる時にその人が来ても、紗英さんには会わせないで欲しいと吾朗君は言っていた。 だから病院に着いた時、少し離れたところから紗英さんの部屋の入口を見ている男性が、その人に違いないとすぐに分かった。「紗英に会うのはあきらめてくれって言ったんだけど、僕とは話していても無駄だって怒って出て行ったんだ。病院名は具体的には言わなかったけど、紗英のお母さんが入院してた病院にいるってことは簡単に推測できるだろうし、ホスピスにいるなんて言わなきゃよかった…」 吾朗君が言っていた通り、この人はもう紗英さんの居所を捜しあててしまったらしい。「紗英さんのお見舞いですか?」 声をかけると、男性はゆっくりとこちらに顔を向けた。「紗英の友達の方?」「はい。あの、あなたは?」「紗英の元夫の取手(とりで)です」 吾朗君の話から想像していたイメージとはちょっと違っていた。陰湿なストーカーみたいな人を思い浮かべていたけれど、見た目は優しそうでそんなに嫌な感じはなかった。 ただやつれた顔に生気はなく、酷く疲れている様子が見て取れる。 その顔には見覚えがあった。この人に見覚えがあるというのではなく、顔から受けるこの感じ。それは吾朗君と紗英さんのことを勘ぐってばかりいた頃の、鏡の中の私の顔。 この人もまた、好きだという気持ちに翻弄されている。そんな気がして、ついこの前までの自分と重なった。「紗英さんに会われるんですか?」 自分の夫と不倫相手の間にできた子供。その子供を堕胎したことに対する紗英さんの想い。それはあまりに複雑過ぎて、私には計り知れないものがある。 でも自分の親の死、さらには自分の死と向き合っている間に、浮気していた夫というだけでも私はこの人を絶対に許せなかった。 そんな人が今更のこのこ来たって、紗英さんに会わせる必要なんかない。この人の顔を見るまでは、確かにそう思っていたのに。「会うつもり来たんですけど、ここまで来たら何だか勇気が出なくて」 寂しそうな横顔。無下に帰ってくださいとは言えなくなってしまった。 紗英さんはどうなんだろう? 会うのはきっと辛いよね。でもこのまま会わなくてもいいのかな。彼女の気持ちを確認するべきなんだろうか。でも私にはその勇気はなかった。 ふいに隣の部屋のから女の人が出てきた。外に買い物に行くらしく、お財布と傘を持っていた。 出てきたのが紗英さんじゃなくて、隣の部屋の人で良かった。ほっと胸をなで下ろした。やっぱり急に会わせるわけにはいかない。「あの、私から提案があるんですが」 そう言うと取手さんは不思議そうに私を見つめた。「今日は紗英さんに気付かれないように、どこか離れた所から一目姿を見てあげてください。急に会われると紗英さんも驚くと思うし、今朝はあまり体調がよくなかったらしいので心配だし」 取手さんが私の話に怒り出したらどうしよう。そう思ってびくびくしながら話していた。「どうしても直接会われると言うのであれば、後日改めて、いきなりではなく私にまず電話してください。会える状態かどうかお医者様にも相談してからの方がいいと思うので。今日は紗英さんが部屋から出てもいいようなら、入口のロビーでお茶しようって誘ってみますから、どこかでそっと見ててください」 少し考えるようにしてから、取手さんは同意してくれた。 お互いの連絡先を交換して、私だけが紗英さんの部屋に入った。 紗英さんは眠っていた。起こすのもどうかと思ったので、私は交換したばかりのメールアドレスに今は眠っているので、起きてから連れ出す前にメールしますと書いて送った。 窓から見える空には暗い雲が低く広がっていた。午前中に降り出した雨は止みそうになかった。 しばらくして目を覚ました紗英さんは、私が来たことをとても喜んでくれた。体調はどうかと聞くと、タップリ寝たからもう大丈夫だと答えた。「でもね、しばらくは大人しくしてろって、今日から当分の間、車椅子使えって琢人に言われたの」 部屋の隅には一台の車椅子があった。 その上にはピンクのミニバラのアレンジメントと一枚のカード。カードには「ここに座すべき姫君へ」と書いてあった。「本当にバカな奴でしょ、琢人って」 部屋の外での出来事を何も知らない紗英さんが、無邪気な笑顔を咲かせてみせた。「それじゃあ、姫君、これに乗って、ロビーで午後のお茶でも楽しみましょうか?」「やだ、変なのは琢人だけで十分だから。くーちゃんまでおかしくならないでよ」 全然関係のない友達にメールするふりをして、今から部屋を出ますと取手さんに送ってから、紗英さんの乗った車椅子を押して廊下に出た。 ああは言ったものの、突然目の前に取手さんが飛び出してくるかも知れない。内心怖くて仕方がなかった。でも私たちはロビーでしばらく話した後、何事もなく部屋に戻った。 車椅子に座っている元妻を、元夫はどんな気持ちで見ていたのだろう。 その翌日、取手さんからメールが来た。『紗英には会わないまま、京都に戻ります。紗英のこと、よろしくお願いします。』それ以来、取手さんが私たちの前に現れることはなかった。 本当にこれで良かったのかな。だけど、その答えは多分誰にも見つけられない。 坂下さんからのピンクのミニバラは、紗英さんのベッドの脇のサイドボードに置かれ、優しい香りをそこはかとなく漂わせていた。きっとその香りだけが、答えを知っている。そんな気がした。(つづく) ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○読んでくださり、ありがとうございました!ぽちっとランキングへの応援を。励みになってます PCの不調で、ご心配・ご迷惑をおかけしました。PCって機械のくせに気分屋な奴で困りますねーさて前回と今回の紗英の元夫の話。実は最初の構想の中にもあったものの、最近はもう書かなくてもいいかな~と思ってました。でもふと「思うところ」があって書きました。ぶっちゃけ、物語の展開に何か刺激も欲しかったし。笑でもこの二話を書いたことで終りがまた先延びに…^^;多分最終話は61話くらいになると思います。今のところ。その「思うところ」というのは、許すと言うことの大切さ、難しさ。自分自身ももちろんですが、それを子供たちにどう伝えるか。ある事件を通じて、そんなことを考えたんです。勝手にリンクしちゃいますが、詳細はこちらzero0923さんのブログ「太陽の欠片 月の雫」の1/31の日記です。(恥ずかしながら私の思ったこと、コメントさせていただいてます)zero0923さん(大西隆博さん)の小説・「太陽の欠片 月の雫」もよろしく♪それと本文とは関係なく、皆様にお願いです。緊急です! 取り残されてしまいます!!リンクの協力募ってます。一時預かりでも宜しくお願いします!詳細はバナーのリンク先にてご確認ください。今日もありがとうございました ブログ管理人・ぽあんかれ
February 15, 2009
コメント(64)
◆小説のかなり大雑把なあらすじ・登場人物◆は、記事の下のコメント欄を。 最初から、または途中の回からは、◆ 一覧 ◆からどうぞ。 ※ 申し訳ありませんが、上記リンクは携帯では表示できません。 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○ コーヒーをドリップするのも面倒で、ちょうど電気ポットでお湯を沸かしている最中だった。僕はインスタントコーヒーの瓶を手にとって紗英の元夫に声をかけた。「コーヒーでいいですか? インスタントですけど。あ、その辺に適当に掛けてください」 インスタントとは言え誰かのためにコーヒーを入れるのは、随分久しぶりのような気がする。まさか紗英の元夫のために入れることになるとは、夢にも思ってはいなかったが。「どうぞ」「どうも、すいません。あの、それで紗英は? 今日はいないんですか?」 ふと妙な気分に襲われた。僕と紗英は兄妹、つまりこの男は僕にとって義理の弟だったわけだ。親近感を覚えるどころか、今までに味わったことのない違和感を僕は噛みしめた。「紗英は、もうここにはいません」「じゃあ、どこに?」「紗英ともう一度話すつもりなんですか?」 僕の聞き方が気に入らなかったと見えて、男の顔には一瞬にして苛立ちが広がった。「あなただって前に来た時にお互い落ち着いてから話し合った方がいいって言ってたじゃありませんか。紗英はどこにいるんですか? 俺はやり直すために来たんです。仕事も休みに入ったし、時間をかけてもう一度話し合うために、こうして京都からやって来たんです」 生涯の伴侶として紗英が選んだ男。浮気したのも紗英がいない寂しさから。浮気相手に子供を堕ろさせたのも、紗英と別れたくなかったから。自身に甘い、その身勝手な行動は許せないけれど、紗英に対する気持ちは本気だったのだろう。 だとしたら適当に追い返しても、また来るに違いない。中途半端にはできない。ここできっぱり諦めて欲しい。それが僕の本音だった。「紗英にはもう会わないで欲しいんです」「はっ…」 ひきつった顔で男が僕を睨んだ。「落ち着いて聞いてください。紗英は今、入院しています。ホスピス、あるいは緩和ケア病棟をご存じですよね?」 その施設には聞き覚えがあるはずだった。案の定、男は驚き、力無く訊き返した。「ホスピス? 紗英のお母さんがいた…」「紗英はお母さんと同じ病に侵されています。紗英に残された時間はあと僅かしかありません」「よくそんな作り話を。そんなのデタラメに決まっている。紗英に会わせないようにするために、あんたは嘘をついている」 男は激情して、声を荒げた。「嘘じゃありません。本当のことです。紗英はお母さんの看病をしていた時に、自分も病気であることを既に知っていたんです。だから…」 紗英は自分が去ることで、この男と相手の女性が一緒になることを望んでいた。いや、望んでいたのは男と女性の間にできた子供が幸せな人生を生きること。 俺を馬鹿にしているのか、いい加減にしろと、男が怒鳴り立てる中で、僕は淡々と話を続けた。「紗英の両親は不倫の関係だったことを紗英から聞いてますか? 前にあなたがここに来たときに、紗英は遊びだったから許せないと、あなたが相手の女性のことを本気で愛していたらまだ救わたのに、そう言ってましたよね。あの時、僕には正直その言葉の意味が分からなかった。自分じゃなくて、夫の浮気相手に対して本気だったら救われたなんて、妻が言うことじゃないでしょう?」 あんた、何も分かってないなと、男は呆れ返った様子で居直った。「紗英はああ見えて根が優しいんだ。だからあの女にまで気を使って…」 今度はこっちが呆れる番だった。「分かっていないのはあなたの方です。確かに紗英は優しいコだ。でもあれは相手の女性を気遣ってのことなんかじゃない。あなたはできてしまった子供を堕ろさせた。それが紗英には耐えられなっかったんです。紗英とその子供は同じ立場だったから。あなたは紗英を殺したのも同然なんです」 テーブルの上に置かれたまま口もつけられていないコーヒーは、既に冷め切っていた。不透明な深い茶色の液体には、ただ天井の照明が白く浮かんでいた。「紗英もあなたのことを本気で好きだった。だから結婚もした。けれどその好きだった相手に紗英は殺されたのも同然だった。あなたがどんなに謝っても、顔を見るのも辛かったに違いない。例え過ちを許していたとしても、その辛さは消えなかった。だから紗英は去ることを選んだんじゃないですか?」 言い返すこともできずにいるのか、それとも込み上げてくる怒りを必死に抑えつけているのか、男は黙ったままわなわなと震えていた。「これ以上、紗英を苦しめないでください。紗英には残りの時間をできるだけ穏やかに過ごしてもらいたいんです」 次第に声に力が入っていく僕に、男は怪訝な眼差しを向けた。「どうしてそこまで言われなきゃならないんだ。あんたは紗英の昔の男だった。それだけでしょう?」 僕は男を見据えて、こう言った。「紗英の母親の不倫の相手が、僕の親父だったんです」 ひょっとしたら、もう紗英はこの男に会うことをそんなに拒みはしないのかもしれない。「そういうことだから、私のことはもういい加減忘れちゃってね」 そんなふうに笑いながら、かつての夫に軽く言いそうな気もする。 だけど、例え紗英が構わなくても、僕がそれを許せなかった。 元夫婦だった二人に、ああしろこうしろという資格は僕にはないのかもしれない。それでもこの男が紗英に会うことがどうしても許せなかった。兄としての感情なのか、昔の彼氏としてなのか、その両方なのか。 いつの間にか降り出した大粒の雨が、時折激しく窓ガラスを叩きつけた。今朝ホスピスのロビーで見たテレビの天気予報は、見事に外れてしまったようだ。(つづく) ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○読んでくださり、ありがとうございました!ぽちっとランキングへの応援を。励みになってます えーっと、今度こそ週末更新をと思っていたのですが、またしてもこんな時間の更新となってしましました(現在2/9 am2:15 良い子は寝てる時間だ~)が、今回は 不可抗力です~ ( p_q)エ-ン 前兆は1月の終わり。クリックしたとき、文字を変換したとき、いつも以上に“ブーン”とか言って頑張ってるmy PCそのうちどんどん動作が重くなり、ゆっくり~ ゆっくり~ フリーズ!まるで昼食後の私? こっくり~ こっくり~ スリープ!ペットは飼い主に似るって言うけど、パソコンも持ち主に似るのね~、なんて笑ってる場合じゃない。(>_
February 8, 2009
コメント(50)
◆小説のかなり大雑把なあらすじ・登場人物◆は、記事の下のコメント欄を。 最初から、または途中の回から続きを読まれる方は、◆ 一覧 ◆からどうぞ。 ※ 申し訳ありませんが、上記リンクは携帯では表示できません。 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○ 夜が明けた。だが病院らしいクリーム色の無地のカーテンを開けると、空には重そうな雲が広がっていた。今日は雨になるのだろうか。「吾朗…ちゃん?」 振り向くと紗英は目を覚まして周りを見回していたが、心電計に気が付き顔を歪めた。「少しは眠れたか?」 紗英は小さく頷いた。 ナースコールで紗英が目を覚ましたことを告げると、しばらくして女性看護師がやって来た。「気分はどうですか? もう少ししたら坂下先生も来ますからね」 看護師の明るい声が、それまでの緊張した部屋の空気をぱっと蹴散らした。「先生ね、もう勤務時間は終わってるくせに、何だかんだ言ってまだ病院にいるんですよ。月野さんのことが心配なんでしょうね。だったらここにいればいいのに。どうせ勤務時間外なんだから。ホント、坂下先生って、照れ屋って言うか、素直じゃないんだから。ねぇ」 看護師はてきぱきと紗英の血圧を測りながら、可笑しそうに喋っていた。その間、紗英はただ苦笑いしているだけだった。 やがて看護師と入れ違いに坂下がやって来た。何となくその場に居辛かった僕は、喉が渇いたので何か買って来ると二人に告げて部屋を出た。 ホスピスのロビーに行くと車椅子に座った老人が、一人でテレビの天気予報を眺めていた。今日の天気は曇りのち晴れ。どうやら雨は降らないで済むらしい。 僕は自販機で紙カップのコーヒーを買い、部屋には戻らずロビーの椅子に腰を下ろした。気が緩んだのか、急に疲れが出て強い眠気が襲ってきた。 コーヒーがカップの半分程に減った頃、坂下がやって来た。「お前、何で部屋に戻らないんだ?」「いや、何んとなく…」 坂下もコーヒーを買って、僕の隣に座った。「紗英の容態は落ち着いたようだ。後はまあ、さっき言った通りだ」 天気予報が終わり今年の芸能界十大ニュースというコーナーが始まると、車椅子の老人はテレビを消してどこかへ行ってしまった。「なぁ、余計なことだとは思うが。紗英とのこと、お前は本当にこのままで…」 僕が何を言おうとしているのかを察した坂下は、またその話か? と言って笑いながらコーヒーを啜った。「それより、お前とくるみちゃん、やり直さないんだってな。この前、紗英から聞いたよ」「その話は…」「まあ、いいから聞けよ。お前には一言、言っておきたかったんだ」 今さら言っても仕方ないことだろうけどと前置きをして、坂下は話し始めた。「俺に言われるまでもないだろうが、お前、ちゃんと反省しろよ。結婚を前提に考えてる彼女がいるのに、いくら紗英が強引だからって押し切られて元カノと一緒に暮らす奴がいるか? その時点で妹だってことは知らなかったわけだし。くるみちゃんがよく許してたと思うよ。普通、他の女と暮らしてるって分かった時点でご破算だろ。だいたい紗英も紗英だ。いくら余命があと僅かだからって、何やっても許されるって訳じゃない」「そんな言い方ないだろう?」 紗英に対する容赦ない正論に、一瞬ムカッときた。 だが僕自身に関しては、自分の非を認めるしかなかった。ブラックのコーヒーがやけに苦く感じた。「悪かったのは僕だ。紗英の様子がおかしいことばかり気になって、くるみの気持ちを考えることができなかった。そりゃあ、良くは思っていないことは分かっていたけど、くるみの口から聞くまで、くるみがどれ程苦しんでいたのか知らなかった。僕にはくるみに信じられているっていう、自惚れもあったのかもしれない」 僕の言葉を聞いて、坂下は笑った。「少しは自分を正当化したらどうだ。お前も紗英も、悪かったのは自分だって言うし、くるみちゃんはくるみちゃんで、自分で自分を追いつめたとか言ってるんだろう? 三人とも悪役希望とはな」「お前、何が言いたいんだ。僕に反省しろって言ったり、正当化しろと言ったり」「さあな。俺も疲れてるみたいだ。要は反省しとけってことだ。だが自分を責めることはないだろう。そんなことしても何にもならないからな」 そう言うと坂下は一気にコーヒーを飲みほして、一般病棟へと戻って行った。 紗英の容態が落ち着いたので、僕は一旦家に帰った。誰もいない部屋はカーテンが閉められたまま、暗く冷え冷えとしていた。 紗英と一緒に暮らした二ヶ月間はついこの前のことなのに、遥か遠い昔のことのように感じられる。 正月は実家でゆっくりしている場合じゃないな。顔くらいは出せるだろうけど。母さんに電話しておかないと。何でって聞かれたら、何て説明すればいい? くるみと別れたこともまだ話していないし。 そんなことをぼんやりと考えていると、玄関のチャイムが鳴った。 回覧板でも回ってきたのか? こんな年の瀬も迫った頃に何だろうと思いながらドアを開けると、そこには紗英の元夫がいた。「突然すいません」 男には以前訪ねて来た時のような荒々しさはなく、今日は落ち着いた様子だった。「連絡してから来るべきでしたが、紗英の新しい携帯の番号とか分からないし、こちらの電話番号も伺ってなかったので連絡の取りようがなくて。ところで紗英は?」 いつかまた来るんじゃないかと思ってはいたが、今更…。 僕は戸惑いながら、紗英の元夫を部屋に入れた。(つづく) ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○読んでくださり、ありがとうございました!よろしければ、ランキングへの応援お願いします。励みになります 今回の物語の補足 紗英の元夫が吾朗のアパートで暮らす紗英を訪ねて来た時の話 「第30話 ~ goro(15) 雫 ~」またしても週末に間に合わず、こんな時間の更新…(;一_一)(これ書いてるのは2/2 AM1:15です)週末、見に来てくださった皆様、ごめんなさい心からお詫び申し上げます。m(__)mさて、今回は本文とは関係なく、皆様にご報告&お願いです。一つ目は 昨年の10月にお願いした「遠位型ミオパチー 患者会」の署名について2008年末までの目標は60万筆でしたが、100万筆突破 だそうです!!ご協力くださった皆さん、ありがとうございました患者会並びに関係者の皆様、これからが勝負!頑張ってください!!詳しくは 二つ目は、昨年里親を募集した40匹のワンちゃん達のその後現在も里親募集とあらたに寄付金・支援物資のご協力をお願いしています。 詳しくは それではまた、次こそ今週末UPを目標に頑張ります!(と、一応書いておきます。あくまで一応…)風邪やインフルエンザにお気をつけて、今週も元気にお過ごしください。また体調を崩されている方は、1日も早く回復されますように。(*^^)v今日もありがとうございました ブログ管理人・ぽあんかれ
February 1, 2009
コメント(49)
◆小説のかなり大雑把なあらすじ・登場人物◆は、記事の下のコメント欄を。 最初から、または途中の回から続きを読まれる方は、◆ 一覧 ◆からどうぞ。 ※ 申し訳ありませんが、上記リンクは携帯では表示できません。 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○ 紗英が倒れた。 病院から連絡があったのは、仕事納めだった日の翌朝、まだ夜が明けていない午前四時前のことだった。 車で高速を使えば片道三十分で着く距離が、果てしなく遠く感じて、ただ気ばかりが焦っていた。 病院に着いてからも焦る気持ちを抑えられず、廊下をバタバタと駆けてホスピスへと向かった。薄暗い廊下の所々に非常口を知らせるライトが淡く浮び、ワックスがけされた床はその僅かな光を反射させて濡れたように緑色に光っていた。 紗英の部屋のドアを開けて飛び込んできた光景に、僕は一瞬たじろいだ。様変わりした物々しい雰囲気。この前まではなかった心電図などの計器類が、紗英のベッドを取り囲んでいた。「ついさっき眠り始めたところです。今はだいぶ落ち着いています」 強張った僕の顔を見て、看護師の一人がそう言った。「ちょっといいか?」 坂下に促され、部屋を出た。無言のまま案内されたのは、ホワイトボードと机と椅子しかないがらんとした狭い部屋だった。「紗英に何があったんだ?」 その問いかけに、坂下は僕から視線をずらして淡々と答えた。「三時の巡回で、ベッドの脇に倒れている紗英を看護師が見つけた。お前を呼び出したのは、一時的にだが意識を失っていたからだ。ついさっき意識も取り戻したし、今回はこのまま安定すると思うが、今後またこういうことがあるだろうし、何の前触れもなく突然の場合もある。いずれにしても覚悟はしておいてくれ、それと…」 助かる見込みのない場合、無理な延命処置は行わない。それが紗英の希望だと坂下は言った。 覚悟、延命処置、それらの言葉が意味すること。それを理解することを、僕の心は頑なに拒んでいた。 僕は動揺を隠せなかった。「お前は大丈夫なのか? 紗英とお前は付き合ってはいないって言ってたが、でもお前は紗英のこと… 」 失笑にも似たため息が、坂下の顔をほんの少し和らげた。「優しくしないでくれとか、これ以上構うなとか、これまで紗英には何度振られたことか。あいつにとって俺はいいお友達だ。それ以上でも、それ以下でもなく。だから俺もそれでいいと思っている」「友達? そんなわけないだろう。紗英だってお前に惚れている。お前だって、本当はそれを分かっているんじゃないのか? 紗英のことだから自分が逝った後、お前が悲しむのを心配して、これ以上優しくするなとか構うなって言ってるだけだろう?」「どうしてそんなことが言えるんだ。紗英が何か言ってたか?」 坂下は関心もなさそうな顔で、力無くどこか遠くを見つめていた。「いや、あいつはそういうこと口にする方じゃないし、どうしてって言われても…」 時間がないのは紗英だけじゃない。坂下だって紗英といられる時間は後僅かしか残されていない。二人のために何かできることはないのか。ただそれだけを考えていた。「何て言うか、紗英を見ててそう思うんだ。勘と言うか…、僕のDNAがそう感じてる。紗英はお前に惚れてるって」 そう言った途端、坂下は茶化すように軽く笑った。「DNA? そういや紗英も以前同じようなことを言ってたっけ。ホント、お前ら考えることや、感じ方まで似てるんだな。兄妹だから? DNAレベルでお互いの情報をやりとりできるとでも言うのか。俺は俺の兄貴が考えていることなんて、これっぽっちも感じたことはないぞ」 その顔にうっすらと浮んだのは、哀しく儚げな笑みだった。「俺に対する紗英の気持ちが何なのか、それはどうでもいいんだ。今はただ紗英が望むようにしてやりたい。後に残る俺を悲しませたくなくて俺の気持ちが負担になるなら、このままいいお友達ってやつでいてやりたいんだ。紗英が望まない限り、この距離を無理に壊したいとは思ってないよ」「お前は、それでいいのか? 本当にそれで構わないのか?」「ああ」 穏やかな表情で坂下は頷いた。 部屋に戻ったときも、紗英はまだ眠っていた。今回はもう大丈夫だろうと言って、坂下は部屋を出て行った。 点滴が一滴、また一滴。その落ちる音が聞こえてきそうなくらいに静かな部屋の中で、僕は親父が息を引き取った時のことを、その場に泣き崩れてしまった母のことを思い出した。 覚悟なんてできるもんじゃない。できているつもりでもいざその時を迎えたら、ほとんど何の役にも立たないことを僕は親父の死を通して知っていた。 何の心構えもなくある日突然というよりは、ある程度の心の準備はできるかもしれない。だがそれは悲しむたのめの準備ができる程度であって、心が動じないための準備などではない。そんな準備はできる訳がなかった。 そして大切な人を失った悲しみは、一気に高さを増す津波のように襲いかかり、傷跡を残して去っていく。完全には癒えることのないこの傷跡が再び痛みに疼いたとき、波はまたやってくる。繰り返し、繰り返し。それを乗り越えながら、僕らは生きて行く。 悲しみの波の中で、坂下は後悔しないだろうか。 紗英、お前はこのままで本当にいいのか。「余計なお節介よ、ほうっておいて」 何を言っても、お前はそう言って突き放すだろうな。だけど…。 うっすらと夜が明けて行く。今年もあと三日。新年はもうすぐそこまで来ていた。(つづく) ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○読んでくださり、ありがとうございました!よろしければ、ランキングへの応援お願いします。励みになります 今回の物語の補足 DNAの話・紗英が坂下琢人に「もう私のことに関わらないで」と言った場面は「第35話 ~ sae(11) 窓 ~」さて…「順調に更新できれば続きは次の週末に♪」なんて、自分に気合を入れるためにも前回書きましたが…無理でした。(>_
January 26, 2009
コメント(64)
◆小説のかなり大雑把なあらすじ・登場人物◆は、記事の下のコメント欄を。 最初から、または途中の回から続きを読まれる方は、◆ 一覧 ◆からどうぞ。 ※ 申し訳ありませんが、上記リンクは携帯では表示できません。 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○ 泣き出したくーちゃんの背中に手を当てて、私はただただ謝っていた。 謝れば謝るほど、くーちゃんは泣き崩れていくように見えたけれど、他に私にできることは何もなかった。「ねえ、吾朗ちゃんともう一度やり直してみたら?」 くーちゃんが落ち着いたのを見計らって、そう声をかけた。「今ならまだやり直せると思うし、吾朗ちゃんだってまだくーちゃんのことを…」 二人とも私のことで色々動揺してただろうけど、落ち着きさえすれば元の鞘に、そう思っていたのに。「今、やり直すつもりはないの」 俯いていた顔を上げ、くーちゃんは少し眩しそうに窓の外に目をやった。「変な話、私ね吾朗君と別れてから、気持ちが軽くなった気がするの。初めは紗英さんや吾朗君を恨んでいて、全部二人のせいだって思って、悔しくて苦しくてたまらなかった。でもね」 寂しさを帯びた瞳。でもその横顔は、冬のやわらかい陽の光の中で晴れ晴れとして見えた。「完全に吹っ切れたわけではないけれど、何て言うか、別れたんだから変な心配とか不安とか、そういうものはもういらないんだって、ある意味安心したというか…。気が付いたら気持ちが楽になってたの。こんなこと思ってもみなかったから、自分でもびっくりしたわ。きっと別れる前が、あまりに一杯一杯になり過ぎていたからだと思う」「ごめんね、そこまで追い詰めちゃって」「ううん」 くーちゃんは静かに首を横にふった。 窓の外に見える花壇には、葉牡丹が規則正しく植えられている。その真紅にも近い深いピンク色が、殺風景な景色にほんの少し彩りを添えていた。「私を追いつめたのは、私自身だったと思う。前に友達にも忠告されたことがあったんだけど、今になって分かった気がするの。紗英さんが病気だからとか、吾朗君の妹だからとかってことで、気を使って言ってるわけじゃないの。気持ちが楽になったら、自然とそんなふうに思えたの」 周囲に存在を誇示するような華やかさは葉牡丹にはなかった。どちらかと言えば地味に見える。でも冷たい土の上にしっかりとその身を置き、寒さの中でも懸命に太陽の光を集めようとする姿には、頼もしいものがあった。 今のくーちゃんに似ている。そんな気がした。「でも私が現れなければ、こんなことには…」「もう、しつこいなぁ」 私の言葉を、くーちゃんは笑顔で遮った。「紗英さんが現れなければ、こんなことにはならなかったかもしれない。せめて話してくれてたらって思う。確かに本当のこと知っていたら、あなたや吾朗君の顔を見るたびに私は泣いてたかもしれない。でも何もかも隠したままなんて…。紗英さん、何だかフェアじゃないよ」「ごめん…」 くすくすと笑うくーちゃんの言葉には、余裕のようなものが感じられた。 ひょっとして、いつの間にか、私の方がたじろいでいる?「あなたが吾朗君の妹だっていう話を聞いて、私もショックだった。でもそれ以上に吾朗君のことが心配で。吾朗君、酷い状態だったから。私たちの関係がどうのなんて、言ってる場合じゃなかったの。ひょっとするとね、そのおかげで私と吾朗君の関係が妙に落ち着いたのかもしれない。今はお互いの距離を保つことができて、いい感じなの。恋人でもなく、他人でもなく、でも大切な存在」 スッキリした顔でくーちゃんはそう言った。「本音を言えばこのまま元に戻ってしまったら、また同じこと繰り返しそうで怖いの。だからまた付き合うのでも完全に離れてしまうのでもなく、居心地がいいこの距離をしばらくは保っていたい。いつかもっと自分に自信を持って、吾朗君と向き合えるようになれたらいいなと思う。それまで待っていてとは言えないし、その時に友達としてなのか恋人としてなのか、どうしたいのかは今は分からない。もちろんお互いに、他の誰かを好きになっているかもしれない。それでももう人のせいにして誰かを責めたりしないつもりだし、後悔もしないわ」 その言葉には強い決心が込められていた。「それにね、これからの関係がどう変化したとしても、あなたのお兄ちゃんのことを見捨てたりはしないから、紗英さんも安心していてね」 私は花壇のプレートに書かれていた説明を思い出した。そこに書かれていた葉牡丹の花言葉は「慈愛」「物事に動じない」「祝福」そして「つつむ愛」。 もう大丈夫。くーちゃんは前に向かって歩き始めたんだね。そう思った時だった。「いつまでも待っているって言ったら、かえって負担になりそうだから、僕も待たないことにするよ」 声に驚いて振り向くと、いつの間にかそこに吾朗ちゃんが立っていた。「吾朗君…」 驚いているくーちゃんに、吾朗ちゃんは笑いかけた。「これから先、僕たちの関係はきっと色々と変わっていくと思う。だから僕はただ待つことはしない。でもその時々の僕たちの関係は大切にしていきたい。例えくるみの気持ちが誰に向けられようとも、それも受け入れて、いつでもくるみの力になれるような僕でいられたらって。理想論かもしれないけれど、そうありたいと思うんだ」「うん…」 大きく頷いたくーちゃんの頬に、光の粒が転がり落ちた。 あーあ、吾朗ちゃん、またくーちゃん泣かせちゃった。ホントくーちゃんは、泣き虫なんだから。 こっちまで泣き虫がうつりそうになって、私はくーちゃんから視線をそらした。 言った吾朗ちゃんは、かなり照れくさそうにしている。 今は黙って行かせてあげるんだね。例えくーちゃんが向った先にいる人が、吾朗ちゃんとは限らなくても。 吾朗ちゃんにしては、まあまあの出来? 「よくできました」ってところかな。 窓辺にほんのりと広がる温もりに包まれて、私たちは優しい冬の中にいた。このまま、今が永遠に続けばいいのに。ずっと、ずっと、永遠に。(つづく) ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○読んでくださり、ありがとうございました!良かったら、ランキングへの応援をお願いします 今回のくるみと吾朗の想い、なかなか思うように表現できなくて…表現したかったのは、男女の恋愛ではなく、お互いを思いやる愛 だったのですが。(^^;)男女間ではこうした関係って、実際には難しいのかもしれません。ましてや過去に恋愛関係にあった二人では…。でもかつてお互いを一番大切に思っていた恋人どうしだからこそ、遠く離れてもお互いに、相手の成長や幸せでいることを願い合えるそんな存在でいられたらな、なんて思うんです。甘ちゃんなんでしょうかね~、私。(^_^;)さて、今回登場した“葉牡丹”というのはこれ花言葉は本文に書いたものの他に「思慮深い」「愛を包む」「利益」など。…って、「利益」? 何でまたこんな現実的な言葉が…(●▼●;)葉牡丹は結球はしませんが、キャベツの仲間。中国三国時代、諸葛孔明が戦場で兵士の食料用に栽培したことから、「利益」 という花言葉が生まれたそうです。原産はヨーロッパ。日本では江戸時代から栽培されてきました。葉の形状から、次の3つのタイプがあるそうです。 名古屋系…葉の先が大きく縮れる 東京系…葉が縮れず平滑になる 大阪系…名古屋と東京の中間ご存じの方も多いと思いますが、色付く部分は葉っぱで、「本当の花」は、春に咲く黄色い花。以上、知って得するわけでも何でもない、ぽあんかれの葉牡丹情報でした。ちなみに私が葉牡丹に詳しいのではなく、全部ネット情報です。こんなふうに陰に隠れて(?)結構下調べなんかもしちゃってたりします。あんまり本文には役立っていませんけどね~。笑それではまた、順調に更新できれば続きは次の週末に♪(*^^)v今日もありがとうございました ブログ管理人・ぽあんかれ
January 17, 2009
コメント(74)
◆小説のかなり大雑把なあらすじ・登場人物◆は、記事の下のコメント欄を。 最初から、または途中の回から続きを読まれる方は、◆ 一覧 ◆からどうぞ。 ※ 申し訳ありませんが、上記リンクは携帯では表示できません。 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○ 紗英さんに会いに行く前、吾朗君は迷っていた。会って何を言えばいいのか分からないと。 でも私自身は会って伝えなければいけないことがあるような気がしていた。 ごめんねという、その一言。 でもどうして私が? 私が何かしただろうか。紗英さんを誤解していた事? でもあの時は仕方がなかった。私は私でただ必死なだけだった。だけど…。「お姉ちゃん、この前買ったダウンジャケット貸して」 何の前触れもなく唐突に私の部屋に入って来た妹に、私も何の前触れもなく訊いてみた。「あのさ、もしもね、今あなたが付き合ってる彼が自分と血の繋がった兄だって、後から分かったらどうする?」 妹はきょとんと目を丸くした。「何それ? ヨン様とかビョン様とかの韓国ドラマの話?」「いいから答えてよ」 思いの外きつくなった私の声に、妹はどうしてそんなことを訊くのかという顔をしていた。「そうだなぁ、とりあえず別れて新しいカレシ探すかな。でも今付き合ってるあいつはアニキって感じじゃないよ。アニキにはもうちょっと賢そうな人がいいな。知的だけどスポーツも万能な人。あいつはおバカなところが可愛いけど、兄としてはねぇ。弟の方がまだいいや」 何も考えずに妹はそう答えた。 そうだよね、そんな程度にしか考えられないことだよね。現実的にピンとくる話じゃない。 いきなり突き付けられたそんな現実を、紗英さんはどんな想いで乗り越えていったのだろう。 妹はもういいでしょ、と言わんばかりに私のクローゼットからダウンジャケットを引っ張り出して、鼻歌を歌いながら行ってしまった。 紗英さんに会いに行くことは、吾朗君には伝えていなかった。 病院へと向かうバスの中で、引き返したいという気持ちがなかったわけではない。けれど吾朗君のことは抜きで、二人で話さなくてはならない気がしていた。 病院に着いてからもためらう気持ちを残したまま、私はホスピスへの廊下を歩いていた。そこで向こうから歩いてくる紗英さんにばったりと出くわした。「あれ? くーちゃんじゃん」 彼女はどうしたのかという顔付をして、私を見た。 以前より頬がこけ、体もさらに細くなっていた。それでもベージュピンクのカーディガンをふんわりと羽織った姿には、相変わらず華があった。「元気にしてた?」 あの日、最後の別れ方は酷いものだったのに、紗英さんは何事もなかったかのようにそう言った。 そのまま廊下の真ん中で一言二言交わしていたら、凄いスピードでストレッチャーが運ばれてきたので、私たちは窓際に寄った。外からの陽射しで、そこはほんのりと温められていた。 外を眺めるように並んで立つと、ガラスを拭いた跡が光の加減で幾筋も光って見えた。「吾朗君から全部聞いたの。あなたの病気のことも、それから妹さんだったってことも」 紗英さんは穏やかな笑顔で頷いた。「私にだけでも、本当のことを話してくれれば良かったのに。だけど言えないか、言えないよね」 呟くようにしか話せないでいる私に、紗英さんは朗らかに笑いながら言った。「だって本当のこと話したら、くーちゃん、吾朗ちゃんの顔を見るたびに泣くんじゃないかと思って。そんなんじゃ、いつ吾朗ちゃんにバレちゃうかヒヤヒヤもんでしょ。でもそのせいで、くーちゃんと吾朗ちゃん、別れることになっちゃってごめんね。謝って済むことじゃないけどさ」 謝るより先に、謝られてしまった。それも何かのついでのようにとても軽く。 こっちの方が泣きそうだった。彼女はそれを分かっている。だからこんなふうに軽く笑うんだよね? 初めて紗英さんの温かさに触れた気がした。ううん、きっともっと前から、あなたはそうやって私にも気遣ってくれていた。だからあんなに吾朗君のことを信じろって…。 殻の中に閉じこもった私は、冬の窓辺にこんな温かい陽だまりがあるということにも気が付いていなかった。何も感じないようにただ逃げて、紗英さんの言うことはおろか、吾朗君が言ったことまでも、何もかもに耳を塞いでいた。 私自身の心の声にも。 被害を受けたのは私。でも自分を可哀想な被害者に仕立てあげてしまったのも、私自身だったのかもしれない。 いつか玲菜が言った言葉の意味が、今ようやく分かった気がした。「そんなふうに考えてたら辛いだけでしょ。辛くて心が疲れちゃったら、いざってときに頑張れない」 涙をこぼしてしまった私を見て、紗英さんが今度は心配そうな顔をして謝り続ける。 違うの、そうじゃないの。 あなたのアプローチの方法がもう少し違っていたら、私もこんなふうにはならなかったかもしれない。 でもね、あなたを責めるつもりはないの。謝って欲しい訳じゃないの。 謝りたいの、あなたや吾朗君の気持ちを疑ってばかりだったことを。知らなかったこととは言え、自分のことだけでも辛いあなたに、気を使わせていたことを。あんなふうにあなたと吾朗君の気持ちを、踏みにじってしまうことしかできなかったことを。 そして、あなたと吾朗君のせいにして、大切な恋を投げ出してしまった私自身にも。 ごめんね。ごめんね。ごめんね…。(つづく) ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○読んでくださり、ありがとうございました!良かったら、ランキングへの応援をお願いします 「poincare」やっと更新致しました。(^^;)今回の補足はこちらにて ・くるみと紗英の最後の酷い別れ方は、第42話 ・いつか玲菜が言った言葉は、第39話さて、今回は1冊の本をご紹介いたします。昨年末、リンクスのコミュニティで知り合い、ブログで交流させていただいているzero0923さん(大西隆博さん)が書かれた「太陽の欠片 月の雫」という小説です。「いじめで苦しむ子供が少しでも減りますように、優しさに包まれた世界が広がりますように」という思いが込められたこの1冊。zero0923さんは中学校の教師として、これまでのご経験や学ばれてきたことをもとに、子供たちの「いじめ」を、教師、子供、親、地域といった多方面からとらえ、小説の中でその構造を分かりやすく伝えられています。私も購入し、拝読させていただきました。お子さんがいらっしゃる方、また子供に関わるお仕事をされている方、その他、たくさんの方に読んでいただけたらと思います。 著者: 大西隆博 出版社: 文芸社 発行年月: 2008年11月 ISBN:9784286053776 本体価格 1,100円 (税込 1,155 円)zero0923さんのブログ「太陽の欠片 月の雫」から楽天ブックスでも購入できます。zero0923さんのブログも、良かったら読んでみてくださいね。(*^^)v今日もありがとうございました ブログ管理人・ぽあんかれ
January 10, 2009
コメント(55)
「poincare」に訪れてくださった皆様へ2008年は大変お世話になり、ありがとうございました2009年もどうぞよろしくお願いします「poincare」の連載を始めて、2回目のお正月です。これまで何度も小説を書き始めては、途中で頓挫していた私ですが、この「poincare」は初めて最後まで書き上げることができそうです。これも皆様のあたたかい応援のおかげ…ブログで発表しながら書いていくのは、最初はとても勇気が必要でした。(今でも毎回そうですけどね。^^;)でも勇気を出して、ブログで連載していくというスタイルをとって、本当に良かったと、今心から思っています。もしブログで書いていなかったら…「続きはまた今度書けばいいや~」となってしまい、物語は私の頭の中だけで完結したまま、文字となって息を吹き込まれることはなかったと思います。拙い小説モドキ、それも気儘な気紛れ更新でありながら、温かい目で見守ってくださる皆さんに出会えて、本当に良かった…これからもどうぞ宜しくお願いします。m(__)mさて、本編は何とか昨年中に52話まで更新したいと思っていましたが、なかなか時間がとれないまま、年末年始を迎えてしまい、仕上げまで至りませんでした。子供の冬休みが終わってからの更新となりそうなので、もう少し時間をくださいね。まだまだ“出来次第更新”ってことで…。(^_^;)今年も気紛れブログに付き合ってやるか… と思った方は応援を(笑) ※ご訪問・コメント・メッセージ・メールへのお返事が滞りまくっており、大変申し訳ございませんコメントとメッセは携帯から読ませていただいてますが、PCからのログインは何日ぶり?という状態です。順次、お返事をさしあげますので、今しばらくお待ちくださいますよう宜しくお願いします。 12/16更新の最新話◆第51話 ~ sae(16) 聖 ~◆は、こちらからどうぞ。 最初から、または途中の回からの続きを読まれる方は、◆ 一覧 ◆からどうぞ。 ※ 申し訳ありませんが、一覧は携帯では表示できません。■□■ ちょっとお知らせです♪ ■□■いつも仲良くしていただいているブログ仲間の aoiさんの詩が、Docomoの公式サイトにて、携帯の待ち受け画像になりました。 ダウンロードは携帯から → 「365日 僕らの言葉」(http://365poem.com/i/?uid=NULLGWDOCOMO)※ トップページの「アーティストで選ぶ」に aoi さんのお名前があります。Docomoのマイメニュー登録が必要です。情報料は月額158円です。とても素直なステキな詩を書かれる方です。その表現力に、いつも感動するばかり。aoi(k aoi)さん の詩のブログ 「コトノハ コトダマ」へは、このブログのトップページのサイドバーにある「Bookmark」からどうぞ!今日もありがとうございました ブログ管理人・ぽあんかれ
January 1, 2009
コメント(79)
全111件 (111件中 1-50件目)