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2006.12.08
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有栖川有栖の火村シリーズに含まれない,独立した長編を読んだ。

○ストーリー
シナリオライターを目指す青年・恭司は,大学を休学し,アジアからヨーロッパへと旅し,アムステルダムに流れ着いた。日本料理店でアルバイトをし,そこで暮らし始めた恭司に,衝撃の事件が襲いかかる。数少ない友人の日本人が,バラバラ死体となって市内のあちこちの運河に流されていたのだ。そしてそれは恭司が,自分の小説の中で大阪を舞台にして描いたストーリーとそっくり同じだった。

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”裏有栖川No.1”という不思議なPRをされている作品だが,確かにいつもの新本格推理の正統派,という作風とは異なっている。有栖川が旅行で訪れて気に入ったアムステルダムを舞台にしているということもあるのだろうが,情感たっぷりで,かつての「学生アリスシリーズ」のタッチを思い出した。

有栖川作品の主人公はきまじめなタイプが多いが,この作品の主人公・恭司は青春の彷徨というカンジで,アムステルダムでもドラッグに手を出すなど,少しだけハメを外す。ドラッグの影響下の恭司を表すために,文字のお遊びのタイポグラフィーアート(AAか?)を使ってみたり,赤い文字を挿入してみたりと,有栖川も少しハメを外しているのが面白い。

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ミステリー作品として接した場合,不満が残ってしまうと思う。なにしろ犯人は一応いるのだが,確定的ではない,まして動機など全く不明,という状態。そして圧倒的なのが,ラストの事件への展開だ。題名が「幻想運河」だから,やはり幻想小説なのだろう,ってイージーかなあ?

ただし作品としての完成度は高い。冒頭で発見されるバラバラ死体のシーンから始まり,恭司の書いた作中作,アムステルダムの事件,そして最後の事件と,きれいにつながっていて,最後に「なるほど」と,うならせられる。



アムステルダムと大阪の相似性は,作中で何回も言及されるのだけど,ちょっとピンと来なかったなあ。






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Last updated  2006.12.09 22:02:46
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