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2009.04.13
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カテゴリ: びしびし本格推理
ある名作が含まれている島田荘司のノンシリーズ短編集を読んだ。

○ストーリー
ラジオの深夜番組に自殺の予告めいた暗号のメッセージが届けられる。DJとラジオ局はこれを非常事態だと判断して,メッセージの分析を行い,またそれを放送してリスナーに暗号解読を求める。暗号は少しずつ解け始めるが,予告の時間も刻々と迫る。そこに決定的な情報をもたらしたのは・・・

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今となっては珍しい島田荘司のノンシリーズ短編集だ。御手洗潔シリーズの人気が奇跡の復活を遂げる前なのでケレン味が抑えられている。この後の時期の社会批評の姿勢が見え始めていたりして,イロイロと島田荘司作品の流れの中では面白い本となっている。

ノンシリーズであるため絶版となっている。そのため今住んでいる街の図書館には所蔵していなくて,隣町の図書館の保存庫にリクエストを出して,ようやく読むことができた。

表題作の「毒を売る女」を含め8編の短編が収められている。いわゆるシリーズキャラクターである吉敷刑事が登場するのは「土の殺意」1編だけで,どうしても地味な印象が強い。だが若くメランコリックな作風が出ていて,「御手洗潔シリーズ」の人気が高騰する前の素直な島田荘司の姿が見えるような気がする。

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さてこの短編集で僕が素晴らしいと思った1編は,1年チョット前に講談社Boxから刊行された「島田荘司very Best 10」に収録された。長いこと絶版だった本からどうしてベストに選ばれることになったのか詳しいことは知らないが,同じ印象を持つ多くの人がいたということになんだか安心をした。



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各編について簡単に述べる。
「毒を売る女」:医者の妻である靖子は,友人の幼稚園ママから伝染病に感染していることを告白される。それが不治であることを知った友人は,靖子とその家族に病気をうつそうとつきまとう。そしてとうとう・・・島田荘司の作品で女性が主人公の場合はほとんどと言っていいくらい,事件に翻弄され精神的にギリギリまで追い込まれる。この作品もそのパターンだが,短編としてのまとまりで救われている。

「渇いた都市」:サギを働いた女を見つけた男は,それをネタに彼女と関係を持とうとする。さらに彼女に惚れてしまった男は,女を自分の愛人にしようとするのだが・・・シュールだか奇想だか判断がむずかしい作品だ。登場人物がビンボーくさい悪人ってのもいただけない。

「糸ノコとジグザグ」:自殺予告のメッセージを受け取ったDJは,それを公開しリスナーに暗号解読への協力を呼びかける。そこで起きた奇跡とは?・・・○○区は○○○の形をしていないと思う。だがそうした細かいことは抜きにしたパワーがこの作品にはある。1つには暗号が徐々に解ける知的興奮,そしてもう1つは人を信じる気持ちの暖かさだと思う。この作品の「センセイ」が○○○だというウワサは本当なのだろうか?

「ガラスケース」:私が川から拾ってきて部屋の中のケースで育て始めた生命は,どんどんと進化を見せ,2本足で歩くようになった。そして・・・藤子不二雄のようなSF短編だ。こんな作品もあるとは!

「バイクの舞姫」:私の運転する車の前をバイクに乗ったサエコが通り過ぎる。だが彼女は15年前に死んだはずだった。・・・「夏,19歳の肖像」などいくつかの島田作品を思い出させる短編だ。もう少しヒネリが欲しかったが。

「ダイエット・コーラ」:ダイエットドリンクが大当たりした蓑村は,1日を25時間で過ごすべく毎日少しずつ地球上を移動していた。ところが彼の身体は・・・これはSF短編でも星新一風だ。

「土の殺意」:バーで口論の後に老人を殺害したとして,逮捕された地上げ屋の男が語ったことから東京の意外な断面が見えてくる。・・・吉敷刑事が登場するのだけど,それよりも東京の都市計画,地上げ,土地の相続問題と言ったいわゆる社会的な問題ばかりが語られる。吉敷刑事のとまどいは,ほとんど読者のそれと同じだと思う。「関係ないぢゃん・・・」

「数字のある風景」:「歴史とは数字の波だ」。数字の秘密に気付いた私がたどり着いた結論度は・・・安部公房的な,つまり文学作品のような印象の短編だ。









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Last updated  2009.04.13 22:42:01
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