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2009.05.18
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カテゴリ: ばくばく冒険小説
古田日出男の犬の神話を読んだ。

○ストーリー
冬のシベリアで1人の若者が丸太小屋にたどり着く。彼を助けてくれたのは年老いた猟師だった。だがあることが起こり,小屋の地球儀からは犬の頭骨が取り出される。その骨の祖先の歴史,そしてその骨に連なる子孫の系譜。人間のものだと思われていた20世紀が,「犬の世紀」として力強く語られ直す。

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聖書だ。古田日出男は犬の聖書を書いてしまった。

物語は現在進行形で進む”大主教”と”娘”,そして彼らと暮らすベルカという名前の犬のパート,そしてベルカに至るまでの犬の一族の叙事詩のパートの2つに分かれる。

おそらくジャンルとしては冒険小説ではあるが,ひょっとしたら世にもまれな犬のために書かれた本なのかも知れない。なんだか本気でそうしているんじゃないかと思わせる不思議な真剣さがある本だ。

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叙事詩の部分は1943年から1990年後半の間に,ベルカの祖先の一族の流転が語られる。これはたかが50年だが,人間の6倍ぐらいのスピードで年をとる犬の時間で考えれば,300年に渡ってある一族の歴史を追ったことになる。



犬たちは時には人間に歯向かう。軍用犬として敵の兵士を征圧するもの,野生化し家畜を襲うもの,そして飢えて人間を喰うものも登場する。

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”大主教”と”娘”の物語は,叙事詩とほぼ交互に語られる。このパートはそれなりに読みなれた冒険小説のように進む。だが所々に「これはどういうことだろう?」という思わせる展開があり,最後に見たことのない地点に到達してみせる。

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とにかく型破りな作品だ。特に叙事詩のパートには小説10冊分ぐらいの物語が惜しげもなく押し込まれていて圧巻だ。日本の作家で似たような作品を書く人はいるのだろうか?イマジネーションの奔流という意味では初期の村上龍に似ているかもしれないが,その奔流をきっちりと現代史とからめて見せる手腕は明らかに異なる。その辺りはクィネルという冒険小説の作家を思わせた。

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犬のための物語だが,別に犬が日本語でとうとうと語り始めるワケではない。「来テハダメダ」などカタカナの短文が意思として表現される。この短文の無骨さシンプルさが,この物語に登場する犬たちの生き様に見事にマッチしている。

今の日本はかつてないペット犬のブームらしいが,愛玩犬に飼い主たちにこの物語に登場する獰猛で美しい犬たちの姿を教えてやりたい気がした。

ひさびさに圧倒された。









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Last updated  2009.05.20 00:01:35
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