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2017.10.03
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東野圭吾の”ミステリーではない作品”を読んだ。

〇ストーリー

父を亡くし,母に育てられた武島剛志と直貴兄弟は,その母も亡くしてしまう。直貴を大学に行かせるために,母の代わりに懸命に働く剛志だが,身体を痛め職を失ってしまう。魔が差し,田園調布の豪邸に空き巣に入った彼は,いないと思っていた家主の老婦人に見つけられ,パニックに陥り彼女を刺し殺してしまう。突然,殺人者の弟となってしまっい,自分で生活費をかせぐことが必要となった直貴は,高校だけは卒業したが,進学をあきらめリサイクル会社で働き始める。そんな彼に獄中の兄からは毎月手紙が届く。だが兄が殺人者ということで,直貴はミュージシャンになる夢,恋人との将来,せっかく就職した会社,結婚して生まれた娘の幸せな毎日,全ての場面で後ろ指を指されることになる。直貴はある決心をするのだが・・・

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読みながら,いつミステリー要素が始まるのかと期待していたが,そうしたことはほとんど起きず,ただ淡々と直貴の不幸な半生が描写される。

ある見方をすれば,「殺人者の弟」ということで差別を受け,どんなに努力をしても次々と幸せを諦めなけれならない主人公を描いた胸くその悪い物語だ。

恋人だった女性の許嫁だという男・嘉島孝文を除けば,とことん悪い人間というものは登場しない。基本的に自分,あるいは自分が大事に思う人々を守るために,武島直貴を区別して扱おうとする人々ばかりだ。

そうしたスタンスって,下手をすると読者自身なので,それが分かってくると,あまり直貴の周りの人々を悪く言えなくなってしまう。この辺りの逆転のロジックについては,作者が狙っていた通りではっとさせられる。

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そこに会社の社長が現れ,直貴に励ましの言葉を掛けると思いきや,社長は「差別は当然なんだよ」と言い始める。この作品自体が東野圭吾が意図的に組み上げたメッセージなので,不幸の連続なのだが,ほとんどの場合,直貴の知人,隣人は「差別はいけないが,自分や自分の大事なものは守りたい」という意識だった。

この社長はさらに新しいロジックだが,これはほとんど読者の意表を突くためだけだと感じてしまった。何回か直貴を気遣っている態度を見せる社長なのに,なぜか兄の罪と,それに付随する村八分的な差別は全力で肯定する。だったらすぐクビにするのが正しい選択だと思うのだが,ずっと直貴を働かせ,彼が辞職する際に「よく考えさせられたよ」と言っている。

なんだよ,適当かよ。というか,これもまた不幸積み重ねパターンのための流れだった。

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「ミステリーではなかった」ということが自分にとっては一番の驚きだったが,強引な流れとは言え,ぐっと引き込まれて読み進めてしまうのは,東野圭吾マジックだと言える。

直貴が最後まで曲がらずにきちんと生きているのも良かったし,不思議ちゃんとは言え,白石由美子と知り合いになれたことも良かった。

純ブンガクには程遠いが,ミステリーの要素を除いても,読者を感動させることが出来るというのは,大した筆力だと思う。













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Last updated  2017.10.03 22:45:55
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