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October 28, 2025
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カテゴリ: SF映画
​​​​​近未来。グレイ・トレイスと妻のアシャは、修理した車を顧客に届けた帰りに、謎の組織に襲われる。アシャは殺され、グレイ自身も全身麻痺の重症を負ってしまう。失意のグレイのもとを大企業の経営者エロンが訪れる。エロンは、運動機能再生のために、AIチップ〔STEM〕を体内に埋める実験を提案する。手術の結果、グレイは再び体を動かすことができるようになる。そればかりか、人間離れした動きができるようになり、人間を超越した身体能力を手に入れてしまうのだった。さらに、〔STEM〕はグレイと脳内で対話し、インテリジェンス面も強化する。グレイは手に入れたこの力を駆使して殺された妻の復讐を決行する。
この映画、ざっとあらすじを読んでみて、新手のスーパーヒーローものなのかと思いました。

それは
「全身麻痺の重傷を負った主人公が、AIチップを人体に埋め込むことで、再び体を動かせるようになるばかりか、人間離れした動きが可能になり、人間を超越した身体能力を手に入れる」
という内容紹介から、推測したわけです。
スーパーヒーロー贔屓として、つい自分が望む方向を見てしまいます。

スーパーヒーローは、様々なきっかけで、「大いなる力」を手に入れます。
この映画では、AIチップにより、スーパーヒーローになるのかと解釈したわけです。
しかし、コスチュームをまとった正義の味方は登場しませんでした。

『アップグレード』は、超人による勧善懲悪のストーリー展開ではなく、主人公の成り行きや行動を通して、あるメッセージを感じさせるのでした。

1.アナログ対デジタル
グレイは、アナログレコードの音色を愛し、古い高級マニュアル車の修理、調整を生業としています。
一方、彼の愛する妻のアシャは、最新鋭の補装具を製造する会社に勤め、全自動運転カーに乗っています。

グレイは、修理が終わった車を顧客に届けるため、アシャに伴走を頼みます。
アシャの車を帰りの足としたいからです。

顧客の家に着き、マニュアル車の持ち主が超一流企業、ヴィッセル社の経営者エロン・キーンだとわかり、アシャは驚きます。
エロンは、アシャが同業であるとわかり、ふたりに最新のAIチップ〔STEM〕を見せるのでした。
〔STEM〕とは、運転、会話、計算、何でも万能にできる新たな高い頭脳だとのこと。
そうしたエロンの説明を聞き、グレイは言います。
「そいつに任せたら、失業者が増えるだけだ」

帰路、全自動運転カーの中でも、グレイがつぶやきます。
「機械が世界を支配したら、俺は仕事がなくなる」

ここまでのやりとりは、とても重要です。
アナログとデジタル。
人間とコンピュータ。
この映画は、そういったところに着眼点を置こうとしています。

2.謎解きミステリー
グレイとアシャは全自動運転カーでくつろぎながらマイホームに向かっているはずが、車は予期せぬ道を走っていきます。
途中で、グレイはそのことに気づくのですが、全自動運転カーは指示をまったくを無視し、あげくの果てに派手な転倒事故を起こしてしまいます。
そして、追跡してきた何者かの襲撃を受け、アシャが殺されてしまうのです。
さらに、グレイも、行きがけの駄賃のようなかたちで、後頭部を撃たれます。
なんとか命は助かりましたが、全身麻痺で寝たきり状態のグレイのもとへ、企業経営者のエロンがやってきます。
エロンは、
「体内に、AIチップ〔STEM〕を埋め込むことで、体の自由を取り戻せる」
と、非合法の手術をグレイに進めます。
グレイは、自己の不甲斐なさを克服して妻の仇をとるために、極秘の手術を受けることにします。

自宅に向かったはずの全自動運転カーは、なぜコースを変更し、制御が効かなくなってしまったのか?
誰が、何の目的があって、妻は殺されたのか?
エロンが、グレイにAIチップ〔STEM〕を提供したのは、気の毒に思ったからではないだろう。何か裏があるのでは?

これらのミステリーでストーリーがリードされます。
また、その謎解きに辿り着いたとき、そこにあった戦略の全貌を理解するに至ります。

3.AIが自我をもつ。
それについては、様々な映画がつくられています。
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング(2025年)』など。
この映画も、そうした内容で語られた一本です。


しかし、そう都合のいいことばかりではありません。
高度に発達したAIは、自我をもつに至ります。
そうすると、AIは自分中心で、自分の都合でものごとを考えるようになりかねません。

また、人間にとっての幸福感とは、ドーパミンが出ているときで、そこにひたりすぎるとドーパミン中毒になりかねません。
例えば、バーチャル・リアリティの世界で、何のストレスもなく、ぬるま湯につかっているような感覚を提供されれば、ドーパミン中毒から抜け出せなくなることも考えられます。
今でも、四六時中スマホを手放せない現実があるのですから。
〔STEM〕は、そういう甘美な仮想現実を人間に提供することもできるのです。

『アップグレード』というタイトルは、主人公のグレイが、AIチップによって人としての能力を「アップグレード」するストーリーだからかと思っていました。
しかし、実際は、人間がAIに依存することや、AIがますます「アップグレード」する怖さを描いていました。





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Last updated  October 28, 2025 07:32:03 AM
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